日銀の黒田東彦総裁は2日午後1時から、衆院議院運営委員会で再任に向けた所信を述べた。議員との質疑応答で、黒田総裁は日銀として2%の物価目標の達成時期を2019年度ごろとみているのを踏まえ「(金融緩和の)出口というものをそのころ検討するようにするのは間違いない」と語った。
5年前の総裁就任以降、異次元の金融緩和を続けてきた黒田氏が、緩和からの「出口」に関する時期に言及したのは初めて。市場は敏感に反応し、長期金利は上昇、円相場は急伸した。
長期金利の指標となる10年物国債利回りは黒田総裁発言を受け、一時は前日比0.025%高い(価格は低い)0.080%を付けた。債券先物は一時40銭安の150円55銭まで急落した。円の対ドル相場は1ドル=105円71銭近辺まで上昇し、2週間ぶりの円高水準を付けた。
<黒田総裁発言を受け、債券先物相場は急落>
<円の対ドル相場は急伸して105円台後半に>
黒田氏は金融緩和からの出口戦略について「18年度ごろに具体的な議論をして出口を探ることになるとは考えていない」と述べた。「現時点で具体的な戦略を語ることは適切ではない」とも語り、「出口」を迎えた際には「適切にコミュニケ(対話)していく」と強調した。
日銀は金融緩和の一環として年間6兆円のペースで上場投資信託(ETF)を買い入れており、その額は累計で18兆円に上る。ETF買い入れからの出口戦略を問われた黒田氏は「十分慎重に考えていく必要がある」と語った。ETF購入が「(株式の)リスクプレミアムに一定の効果を持っているのは事実だ」とも述べた。
海外要因などで長期金利に上昇圧力がかかることについては「直ちに受け入れて操作目標を引き上げるのは現時点では慎重・消極的に考えている」と述べた。日銀が長期金利の誘導目標をゼロ%程度としている点も強調した。
一方、黒田氏は「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けることで2%の物価安定目標の実現を目指す。総仕上げを果たすべく全力で取り組んでいく」と述べた。「必要があればさらなる緩和の検討が必要だ」とも説明。物価安定目標については「2%に向けたモメンタムは維持されている」との認識を示した。
衆院は5日14時15分から、日銀の新しい副総裁候補の雨宮正佳日銀理事と若田部昌澄早大教授から所信を聴取する予定。
参院は6日13時から黒田総裁、7日13時から両副総裁候補の所信を聴取する予定だ。
【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一、鈴木孝太朗、福島悠太】
※NQNが配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。