28日の東京株式市場で日経平均株価は前日比321円(1.4%)安の2万2068円と反落し、安値引けとなった。下げに拍車がかかったのは午後。きっかけは、再任が固まった黒田東彦・日銀総裁の国会での発言だ。午前の取引時間中は27日の米株急落にもかかわらず80円安にとどまっていたが、市場は日銀発の「ヘッドラインリスク」に敏感になっている。
「現在の強力な金融緩和政策が続くとは思わない」。28日午後、衆院財務金融委員会に出席していた黒田総裁の発言を一部報道が伝えると、株価指数先物に売りが膨らみ、日経平均は下げ幅を広げた。「物価目標が達成できたあかつきには」という前提が付くのだが、これまで一切、金融緩和の「出口」を封印してきた黒田氏だけに、市場は即座に反応した。
「発言の報じられ方があまりにも金融政策の正常化にバイアス(傾斜)がかかっていた」(国内証券の債券ストラテジスト)という声も聞かれた。だが、市場は日銀の一挙手一投足や黒田氏の発言にうの目たかの目となっている。
午前の取引時間には日銀が国債買い入れオペ(公開市場操作)の減額を発表すると、外国為替市場で円相場が下げ渋り、株式市場では輸出関連株に売りが増えた。この日の減額は「行きすぎた超長期国債の利回り低下を抑えることが目的で想定内」との見方が専らだが、投機マネーはそれを承知で売りを仕掛けてくるようになっている。
金融政策がらみのキーワードに海外のヘッジファンドが手掛けるアルゴリズム(コンピューターによる自動売買)取引が過敏に反応して相場が振れる「ヘッドラインリスク」だ。
日経平均は後場寄り直後にも大きく値を下げる場面があった。この日、「日銀は上場投資信託(ETF)買いを見送る」との観測が流れたからだ。実際には日銀はETFを購入したが、株式相場は日銀の動きに振り回されやすくなっている。
【日経QUICKニュース(NQN) 張間正義】
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