日本株相場が乱高下を繰り返すなか、ある外国証券を通じた株価指数先物の売りが話題となっている。日本株の営業から実質的に撤退した証券会社の手口が目立ち始めたのは、相場が大きく調整した2月に入ってから。株安の背景を読み解くカギになるとの見方が広がっている。
「まだ売るのか」。メガバンクの運用担当者は、大阪取引所が毎日発表する証券会社別の先物手口に注目する。その対象はバークレイズ証券。今月に入って累計で5000億円超を売り越している。今週は22日までに日経平均先物を約1100枚、TOPIX先物は約3200枚売り越した。
外国証券の売りが膨らむことは時々あるが、話題になったのはバークレイズだったためだ。同社は2016年に日本株の現物取引から撤退し、手掛けるのは先物などデリバティブ関連の取引だけ。「その先物も専任担当者はおらず、実質的に東京では委託注文を受けていないようだ」(外国証券のトレーダー)。日本で営業活動をしていない証券会社の突然の売りに、市場では様々な思惑が広がっている。
市場で有力視されているのが、「恐怖指数」と呼ばれるVIXに絡む取引だ。同社はVIXが低下するほど運用成績が良くなる上場投資証券(ETN)などの組成に積極的だったことで知られている。その商品を購入した海外投資家がリスク回避のため、バークレイズの電子取引システムを使って日本株の先物を売却。バークレイズ自身も保有する関連商品の損失回避のために売りを出したとの見立てだ。
バークレイズの手口への市場の関心が高いのには理由がある。売りが目立ち始めたのは相場が調整を始めた局面。日経平均株価が取引時間中に節目の2万1000円を下回った14日を含む2月第2週(13~16日)に、日経平均先物を約6000枚、TOPIX先物では約1万1000枚を売却した。
その売越額は売買高加重平均価格(VWAP)をもとにすると約5000億円。株価指数先物の投資部門別売買動向によると、同期間の海外投資家の売越額は5200億円だ。バークレイズ1社で同規模の売りを出した計算になる。
16日時点でバークレイズのTOPIX先物の買建玉は5万4152枚だ。1月末時点で約6万7000枚あったことを考慮すると、2月に入ってから持ち高を大規模に整理しており、世界の株式相場を揺るがした「VIXショック」が契機になったことがうかがえる。
バークレイズは日経QUICKニュースに対し、先物の売り手口について「取引内容ついてはコメントできないが、海外投資家からの注文が多い」(広報部)と回答した。売りの真相は定かではないが、日本株相場の先行きを占う材料として市場の関心はじわりと高まっている。
【日経QUICKニュース(NQN) 張間正義】
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