5日月曜の米国市場でNYダウは大幅続落し、1175.21ドル(4.60%)安の24345.75ドルで終えた。一時は23923.88ドルまで下げ、前日比で1597.08ドル安となった。引けにかけて下げ渋ったが、米経済専門チャンネルのCNBCによればザラ場の下落幅としては過去最大を更新した。これまでの過去最大の下落幅は2015年8月24日につけた1089.42ドル安で、この日は終値で588.40ドル安まで下げ渋っていた。
前週末からの世界同時株安の流れが強まり、2日連続でダウの採用30銘柄が全て下げた。下落寄与度トップはボーイングで137ドルの押し下げ要因となった。
恐怖指数のVIXは大幅続伸。一時は35.73まで上昇して106.41%の急騰となり、2015年8月25日以来、2年5カ月ぶりの高水準に達した。昨年11月の米大統領選時につけた高値(21.48)を優に上回った。
S&P500指数は4.09%安となり、2011年8月18日以来、7年半ぶりの急落となった。NYダウは年初来でマイナスとなり、米金利上昇をキッカケにした世界同時株安の流れが強まる展開となっている。
原油や金が下げる一方、米債は質への逃避で買われた。この日の米国市場では30年債が3%の節目を割り込んでフラッシュ・クラッシュ気味に買われる中、この日の米国市場ではリスク・パリティ戦略に伴う売りが相場の下げ要因になったとの見方が出ていた。
著名金融ブログのゼロ・ヘッジがゴールドマンのシステマティック・ストラテジストの分析として紹介していたもので、S&P500が2735のテクニカル的に重要な水準を下回ったことでCTAの売りが膨らんだという。リスク・パリティファンドのほか、CTAはこの日だけで米株を700億ドル、グローバル株式を1900億ドル売る必要に迫られたと推計され、売りが売りを呼ぶ展開になったとみられるとのこと。今後1週間でも売りが出る可能性があるということから、世界的にボラティリティが上昇する中、株や債券を問わず、様々なアセットクラスが不安定な動きをする恐れがある。
ドル円が109円台で底堅い展開となっているが、ハイベータな日本株が米株のヘッジ手段として売られる恐れがあり、きょうも大幅安で激しい展開が警戒されそうだ。2008年のリーマン・ショックから間もなく10周年となるが、当時は米金融株の下げを受け、CTAがハイベータの日本のメガバンク株を売ってヘッジする動きがあったという。
世界的にボラティリティが高まっているため予断を許さない状況だが、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエーツを率いる米著名投資家のレイ・ダリオ氏が5日にリンクトインに「金融引き締めがどんなものになるか経験したばかりである」と題するコラムを掲載した。
その中では、強い(経済)成長と所得の増加によって、債券と株式の価格が下がるだろうと見込んでいたが、Fedの金融引き締めがクレジット市場で価格づけられているよりも早いペースで行われるとの見方からそれが正当化されているなどと指摘した。その上で、「これらの大きな下落は小さな調整で、(市場が)壊れた際に買うための多くの現金が横にある」と指摘。長期的に、最近の下落は注目に値するものではないとの見解を示した。
5日の米国市場でNYダウは一時1500ドル超下げてザラ場ベースで過去最大の下げ幅を記録したが、引けにかけては421ドルほど戻した。Brexitや米大統領選など、最近の相場急変の際には大きな値動きとなるものの24時間でいったん織り込む傾向にあった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ回数が増えるとの思惑はともかく、経済のファンダメンタルズや企業業績がここ1カ月で大きく変わった訳ではないので、急落したところで落ちたナイフを掴んだ投資家が報われる展開を見込みたい。
(QUICKデリバティブズコメント)
※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。