31日の東京株式市場でオムロン(6645)が大幅に下落した。30日に発表した2017年4~12月期連結決算(米国会計基準)で、10~12月期の営業利益率の低下が明らかとなり、売りが出た。株価を大きく左右する制御機器事業では今後、先行投資による利益圧迫が見込まれる。2018年3月期の業績見通しも据え置いた。上方修正期待が強い銘柄だっただけに、投資家の間で失望を誘った。
一時は前日比8.6%安の6610円まで売られ、年初来の上昇を帳消しにした。2017年10~12月期の連結業績は営業利益が前年同期比6%増の210億円だった。7~9月期は同29%増の207億円で、増益率は鈍化した。売上高に対する営業利益率は9.8%と、前年同期の10.1%や前四半期の10.0%から悪化した。
同社主力の制御機器事業(IAB)はアジアの活発な工場自動化の需要を取り込み、好調に伸びているものの、将来のさらなる成長には先行投資が不可欠だ。このため研究開発費は増えている。
市場では「IABを中心とした先行投資負担増による利益率への悪影響を確認した」(モルガン・スタンレーMUFG証券の担当アナリスト)との見方があった。会社は通期の営業利益目標を850億円に据え置いたが、そこから1~3月期の営業利益予想を逆算すると206億円となり、営業利益率は9.2%とさらに悪化する。
株価は昨年末の6720円を一時下回った。みずほ証券の田中健士シニアアナリストは30日付の投資家向けリポートで「過去、株価と相関が高かったIABの業績モメンタムは鈍化が見込まれ、株価は徐々にアウトパフォームするのが難しくなる」との見方を示した。
株価は過去5年、IABの営業利益の増減に連動する傾向がある。15年3月期のIABの営業利益は前の期比41%増え、14年度の株価上昇率は27%と伸びた。一方、16年3月期の営業利益は12%減で、15年度の株価は38%下落した。
会社は今回の決算発表で「今後も積極的に投資を実施していく」(同社広報部)方針を示している。中長期的な成長期待はなお強いが、株価はいったん調整局面を迎えた可能性がある。
【日経QUICKニュース(NQN ) 楠千弘】
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