人民元安、資金の大量流出招く 香港にも株・不動産の下落が波及

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2016年2月3日にQUICK端末で配信した記事です。

株安対応に追われる中国市場、元安にも影響

今年に入り、中国人民元建てA株の下落が続いている。上海総合指数は1月27日に一時2638と約1年1カ月ぶりの安値をつけた。海外の株安が重しとなったほか、投資家の中国経済減速に対する懸念や人民元の更なる下落が中国株の弱気な見方につながった。中国人民銀行(中央銀行)は昨年8月、人民元の市場化の度合いと基準性を高めるため、対米ドル為替レートの基準値(中間値)の算出方法を改善することにしたと宣言した。これは2005年7月21日の為替制度改革に続く、人民元の為替レート形成システムに関する新たな改革となった。
この新たな為替制度改革のあと、人民元は対米ドルで大幅に下落した。背景には多くの原因がからんでいるが、中でも株式市場が大きく関係している。昨年6月以降に中国株のバブルがはじけると、中国政府はシステマティック・リスクが発生することを回避するために一連の措置を取った。これらの措置には人民銀による様々なルートを通じた市場への流動性の提供が含まれたが、これにより通貨の投入量が過剰となり、人民元の引き下げ圧力となった。

元安はリスク要因…介入効果に疑問

経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)面では、過去約2年間に人民元が対米ドルで上昇し、既に中国のファンダメンタルズからかけ離れた水準にあった。また、人民元高は製造業や輸出に深刻な重しとなった。海外の需要が弱まったこともあり、15年の中国の輸出は前の年から1.8%減少した。一方、新興国市場で通貨が大幅に下落した影響で実質実効為替レートが過度に人民元高となったことも、人民元相場の押し下げ圧力となった。

人民元米ドル

 これまで人民元相場の長期的な上昇の流れを背景に、海外から大量のホットマネーが中国に流入していた。こうしたホットマネーの一部は不動産市場に流れ込み、不動産価格の高騰を引き起こし、バブルを形成した。しかし、過去約2年間で不動産市場は減速し、不動産価格に下げ圧力がかかった。多くの海外資本が不動産を売却して利益を確定し、資金を海外に送り返し始めている。人民元に下落圧力がかかると、こうした海外資本の資金回収意欲が一段と強まる。また、これまで持続的に人民元が上昇するとの予測に加えて、欧米や日本の金利が量的緩和で過度に低水準にあったことで、多くの中国企業は様々な手段を講じて海外融資を行っていた。人民元安になれば、こうした企業は深刻な為替差損を抱え込むことになる。
 人民元の持続的な下落は、中国の外国為替資金残高の大量流出を招いた。昨年12月末時の外国為替資金残高は24兆8500万元と前月比で7082億元減少し、減少幅が過去最大となった。一方、中国の外貨準備高は3兆3304億米ドルで、約3年ぶりの低水準となった。昨年通年では約5120億米ドル減少し、記録が存在する限りで過去最大の減少幅だった。外貨準備高の持続的な減少は人民元相場に今後更なる押し下げ圧力がかかることを示唆しており、市場の人民元安観測が強まることになる。人民銀が介入したとしても必ずしも人民元安の流れを変えられるとは限らないだろう。

香港不動産価格、調整長引く恐れ

一方、香港では人民元安が異なる影響をもたらす。為替レートでは、人民元安は同じく香港ドル相場の押し下げ圧力となる。1月20日に香港ドルの対米ドル為替レートは一時、07年8月以来の安値水準にまで下落した。香港ドル相場の下落を受けて香港株も大幅安となり、主要株価指数であるハンセン指数は1月21日に一時1万8534ポイントの安値を付けた。経済面では、人民元安が中国本土からの旅行客、その中でもとりわけ個人旅行客の香港における消費減につながり、香港の小売業に打撃となる。これまで人民元の持続的な上昇に伴い香港の不動産価格が相対的に安くなり、大量の中国本土資金が香港の不動産市場に流れ込んでいた。人民元の下落により、香港の不動産市場へ流入する資金が今後は減少し、香港の不動産価格に更なる調整圧力がかかることになるだろう。

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