23日の東京外国為替市場で円相場は続落し、16時過ぎに一時1ドル=111円18銭近辺と前日22日の17時時点に比べ40銭の円安・ドル高水準を付けた。日銀の黒田東彦総裁が23日の定例記者会見で「(現行の金融緩和政策からの)出口を検討する局面ではない」などと語り、9日の国債買い入れ減額をきっかけに海外で強まっていた緩和縮小の観測にひとまず歯止めをかけた。
日銀はきょう正午ごろまで開いた金融政策決定会合で現行の量的・質的金融緩和政策の維持を決めた。債券や株式市場では「緩和継続」と好意的に受け止め、債券高・株高となった。
一方、外為市場は結果が伝わると即座に円買いで反応し、円は対ドルで一時1ドル=110円台半ばまで急伸した。市場では「追加緩和派で知られる片岡剛士審議委員が何も対案を示さなかった点などを材料視したようだが、それだけ海外投資家の心理が緩和縮小の思惑と円買いに傾いていたということだろう」(みずほ証券の末広徹・シニアマーケットエコノミスト)との指摘が聞かれた。
こうした雰囲気の中、黒田総裁は15時半前に始まった会見で安全運転に徹した。「強力な金融緩和を粘り強く続けていく」との決まり文句の後に出口論議をはっきりと否定し、「最近の円高はユーロ高・ドル安の波及が大きい」と解説してみせた。オペについても「先行きの政策スタンスを示すことはない」との認識を改めて強調。緩和縮小にかかわるコメントを待ち構えていた円高派にとっては「ゼロ回答」といっていい。
では、円高圧力はこのまま収まるのだろうか。
黒田氏が円高の主要因として挙げた「ユーロ高・ドル安」はユーロ圏経済の力強い成長と欧州中央銀行(ECB)による量的緩和政策の縮小観測がもたらしている。米景気も好調を維持している。欧米などでの輸出拡大の恩恵を受ける日本にも遠からず出口検討のタイミングが訪れるはずだ――。9日のオペ減額をそう解釈した海外マネーが、黒田総裁のコメントを額面通りに受け取り、円買いを止めるかは微妙だろう。
【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】
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