米ブルームバーグが10日、「中国の外貨準備を見直す当局者らが米国債の購入を減らすか停止することを勧告した」と報じた。これを受け、同日の米債券市場では長期金利の指標である米10年物国債利回りが一時2.59%と10カ月ぶりの高水準をつけた。外国為替市場で円相場は一時111.27円までドル安・円高に振れた。
中国の外貨準備運用を巡っては、昨年末以降、様々な噂が飛び交っていたことは事実だ。
今回の報道はフェイクニュースなのか。市場関係者の見方をまとめた。
UBS、「中国の米債購入減額、米債利回りを動かすカギになるとは思えない」
UBSは10日付のリポートで、「中国の米債アロケーションが米債利回りを動かすカギになるとは思えない」と指摘した。中国が2013~2016年に米債を売却していたのは良く知られているが、当時は保有額を2000億㌦減らしていたとのこと。しかし米債利回りは低下(債券価格は上昇)し、中国の米債売りの影響は限られていた。一方で現在、米国債を最も多く持つのは米連邦準備理事会(FRB、2兆5000億㌦)のため、「FRBが緩やかなペースでバランスシートを縮小させる方針のため、米債利回りへの影響を考えるのは価値が無いことだ」とも指摘。その上で「もし中国が米債購入を調整するとしても、それは緩やかなものになるだろう。為替相場を管理するために加えて、(米債のボラティリティが高まって)自らが保有する米国債が傷まないようにするためだ」とも指摘した。
BMOキャピタル、「中国の米債購入減額、為替介入を減らすなら起こるかも」
BMOキャピタル・マーケッツは10日付のリポートで、「中国のニュースは誇張されたもので、統計からは中国が2017年10月に米国債を1270億㌦を買い増したことが示されている」と指摘した。その上で、「中国が大きな(外貨準備の)資産を持つ上で(米国債以外に)他の選択肢は無い」とも指摘。最終的な結論として、「中国が過去の一定期間に米国債の買い入れを減らしたのは、元安を進めるための為替介入(ドル買い・元売り)を減らしたことに起因するものだった」として、「そのような事象が再び起こるかも知れない」と見込んでいた。
MKMパートナーズ、「中国の米債購入減額、フェイクニュースだろう」
投資銀行のMKMパートナーズは10日付のリポートで「中国が保有する米国債の残高は過去6年以上、1兆2000億㌦ほどだった。この間、米債利回りは1.4~3.2%のレンジで揺れ動いており、我々の考えでは、今回の報道はフェイクニュースとして扱われるだろう」と指摘した。その上で、「本当にニュースなことは、なぜ金利がさらに上昇しないのかということだ」とも指摘した。
SGHマクロ、「中国は米国債の減額を決定せず、為替の安定が優先事項」
米調査会社のSGHマクロ・アドバイザーズは同日付のレポートで「中国政府の米国債の購入減額や停止に関する質問が多く寄せられた」とし、「中国政府が米国債の購入の減額や停止を決定したというはないだろう」と指摘した。
「米連邦準備理事会(FRB)が年3回の利上げを示唆していることから米国債の先行きを警戒しているのではないか」とする一方で、「通貨を安定させ為替市場でショックを避けることが最優先事項となるだろう」との見方を示した。
「中国政府と米政府に協定があると当社は理解している。中国人民銀行が米国債の買い入れ額を大幅に変更する場合、米政府に事前に通達する公算が大きい」とした。
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