米南部アラバマ州で12日、上院補欠選挙が投開票された。大接戦の末、与党共和党候補のロイ・ムーア元州最高裁長官を抑えて民主党候補のダグ・ジョーンズ氏が勝利した。圧勝といわれていたムーア氏の敗因は、少女へのわいせつ疑惑だった。トランプ政権は共和党地盤の同州で議席を失ったことにより、税制改革など看板政策の実現に影響が生じる可能性がある。米政治の不透明感から13日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比108円(0.47%)安の2万2758円で終えた。円相場では一時円が買われ、1ドル=113円台11銭まで円高が進む場面もあった。市場関係者の見方をまとめた。
▼双日総合研究所 チーフエコノミスト 吉崎 達彦 氏
12日に投開票が行われた米アラバマ州の上院補欠選挙で、民主党のダグ・ジョーンズ候補が勝利したと各メディアが伝えた。セクハラ被害報道が出ていた共和党のロイ・ムーア候補は破れ、これで米議会上院の議席数は共和党が51、民主党が49と僅差になった。
ムーア氏が勝利すれば52対48で2人が造反しても大丈夫な状況だったが、総合的に考えればムーア氏が敗退したとはいえ、議会共和党としてはポジティブな影響が大きいと思う。共和党のエスタブリッシュメント議員からすれば、ムーア氏はかなり特異な人物のため、「来ても困る」という事になっていただろう。内心、ホッとしているのではないか?今後は議会で民主党と協議していけば良いし、予算案・減税案も年内可決に向けて今回の補選を踏まえて動いていたとみられる。
最も重要だったのは、経済界や政界など各方面に広がっているセクハラ被害の問題を止めることだ。アラバマの有権者がその判断を下したことは、トランプ大統領としても素直に負けを認めた方が得策だろう。今回の補選を経て「浄化された」という事になるのではないか?
選挙結果を受けて、スティーブン・バノン元首席戦略官・上級顧問が率いるブライトバート・ニュースは「ユニパーティ・ビクトリー」と報じていた。ムーア氏を推していた保守強硬派のバノン氏としては怒り心頭とみられ、さらに規制を強めなければと主張してくるかも知れない。トランプ氏としてはどっちの候補が勝っても困る事態だったとみられるが、強硬派の影響力が弱まれば、トータルでみても良かったねと言うことになるだろう。
▼米投資会社トレンドマクロ 最高投資責任者(CIO) ドナルド・ラスキン氏
ラスキン氏は12日付のレポートで「共和党のロイ・ムーア候補が敗退したことはサプライズだった」とする一方で、「米税制改革の可決の障壁にはならず、後押しする要因になるだろう」との見方を示した。
「民主党のダグ・ジョーンズ氏が正式にアラバマ州の上院議員に就任するのは1月になる公算が大きい」とし、「税制改革法案の可決には期限がなかったが、共和党候補の敗退でクリスマス休暇までに可決する必要に迫られる。期限までに可決できるように共和党の上院議員は妥協するだろう」という。「上院での共和党の優位性を利用できるうちに利用したいという思惑がはたらく。2018年の中間選挙を視野に入れると、共和党は減税という実績を残したい」とした。
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