年初来安値圏の楽天株 何が問題なのかを考察してみた

日経平均株価がバブル崩壊後の高値圏で推移するなか、年初来安値圏に甘んじている日経平均採用銘柄が数社ある。その一つが楽天(4755)だ。11月24日終値でみても、昨年末の水準(1145.5円)を下回って推移している。

楽天が13日に発表した2017年7~9月期決算では、国内でのEC(電子商取引)流通総額が前年同期比13.7%増の8559億円、楽天市場における楽天カードでの決済比率は9月に54.3%(前年同月比5.3pt増)に上昇。三木谷浩史会長兼社長が提唱する「楽天経済圏」は順調に拡大しているようにもみえるが、ポイント施策による影響が大きいことに留意したい。

最近、楽天の格好をしたパンダが「SPU!SPU!SPUでけんさくしてね」というCMが頻繁に流れているが、ご覧になったことはあるだろうか?。「SPU」とは、楽天市場での買い物で最大8倍のポイントがもらえるという「スーパーポイントアッププログラム(SPU)」のこと。楽天市場では通常100円(税込)の買い物に対して「楽天スーパーポイント」1ポイントの付与となるが、SPUの適用により、「楽天市場アプリ」、「楽天カード」、「楽天モバイル」、「楽天プレミアムカード・楽天ゴールドカード」の利用状況に応じて、ユーザーは、自動的に付与ポイント倍率が増加する特典を受けることができる。これまでは最大7倍だったが、10月からのプログラム拡充でSPU対象サービスに「楽天ブックス」が加わり、一定の条件を満たすと当月の「楽天市場」での買い物で付与されるポイント倍率が最大8倍にアップした。さらに、11月商戦の「ブラックフライデー(11月24日午前10時から27日まで開催)」では、最大36倍に高めるセールを開催するという。

日本貿易振興機構(JETRO)が7月末に公表した「ジェトロ世界貿易投資報告」2017年版によれば、日本のEC市場における企業別のシェアはAmazon(アマゾン)が20.2%でトップ。楽天は僅差の20.1%で2位となり、3位はソフトバンク(Yahoo!ショッピング)の8.9%だった。上位3社の合計で市場シェアの約5割を占めるなど、寡占市場といえる。

また、視聴行動分析サービスを提供するニールセンデジタルが今春発表した、国内Eコマース利用状況調査によると、2017年3月におけるEコマースアプリ利用者トップはAmazonで1753万人、2位が楽天市場(楽天)、3位はメルカリだった。興味深いのは性別の利用者数で、女性は楽天が最多の990万人、男性はAmazonが最多の934万人。3位のメルカリは女性が735万人で男性の約2倍にまで達するなど、性別による利用者数の違いが際立つ。さらに、興味深いのは「Amazonのみ」利用の男性は33%いるのに対して、「楽天のみ」利用の女性は24%にとどまった。

ポイント還元策が生命線

さらに、マーケティング支援事業などを手掛けるドゥ・ハウスが今夏発表した「インターネット通販サイトの使い分け」に関する調査によれば、消費者がネットショッピングを利用するときに重視する要素は、すべてのモールで「商品の価格」の割合が最も高く、「送料・手数料」や「品揃え」も重視されているという。「ポイント還元率」を重視する割合はECモールごとに差が大きく、Amazon利用者は約1割にとどまるのに対して、「楽天市場」利用者は約3割を占めた。また、利用者の属性はAmazonが男性の比率が高い一方で、楽天は女性の比率が高い。値段にシビアで目移りしやすい女性が主要顧客である楽天にとって、ポイント還元策は生命線であり、楽天はSPUで最大8倍のポイント還元を謳っているが、今後はこれ以上の倍率を打ち出さない限り顧客離れが起きかねない。見た目上、好調にみえるポイント施策は、もろ刃の剣となりそうだ。

楽天とアマゾンチャート

楽天市場を取り巻く環境は厳しくなりつつあるようだ。ヤフーショッピングが出店料無料で切り崩しに動き、Amazonはグローバルに膨張して日本でも日増しに存在感を高めている。ヤマト運輸の配送問題が社会問題化したが、これはAmazon利用者が急増している証左。また、楽天市場からは撤退するテナントも相次いでいるという。その要因としては、◇楽天市場で目立つためには商品の価格を下げなければならない(ポイント◯倍、送料無料など)、◇楽天市場のイメージカラーである赤が似合わない企業に違和感がある、◇派手なデザインにしないと目立たない、◇外部リンク禁止の制約でInstagramなどSNSとの連携ができない、◇自前の通販サイトで勝負する企業が相次いでいる、◇ユーザーの個人情報が得られないなど使い勝手が悪い、◇出店料に見合う収益が稼ぎにくい――などが挙がる。これまでは、ECショッピングモールの集客に頼らざるを得なかった企業にとっても、現在は様々な選択肢があり、その一つである楽天市場への出展に固執する企業は少なくなりつつあるのではないだろうか。

海外戦略に苦戦、欧米からの撤退も?

楽天は社内公用語を英語にするなど、グローバル志向が強く積極的に海外事業を展開したが、苦戦しているようだ。国内ではAmazonに対抗しうる存在であるが、海外では天と地の差。Amazonは各国で2割前後のシェアを持つのに対して、楽天は1%以下で勝負にならない。既にアジアでは撤退が相次いでおり、中国からは2012年に早々と撤退したほか、2016年3月にインドネシア、マレーシア、シンガポールで通販サイトを閉鎖。同4月にはタイでネット通販を手掛ける事業会社を売却。欧米の一部地域で細々と継続しているが、撤退は時間の問題と冷ややかな見方が多いようだ。そのような環境下で、サッカー・スペインリーグの名門であるFCバルセロナとパートナー契約を締結し、2017~18年シーズンからの4年間で契約金総額は275億円にのぼる。パートナー契約初年度の今シーズン、現在のところバルセロナはリーグ首位を快走しているが、看板選手であるネイマールが流出。大黒柱のメッシも流出という事態となれば、広告価値は著しく落ちかねない。楽天は欧州事業の立て直し策として銀行経営に進出したが、先行きは不透明といえそうだ。

M&A戦略の失敗も目立つ。楽天の買収戦略は初期の金融事業やトラベルなど、比較的安い案件でも楽天ブランドなどに取り込むことで価値を上げることに成功したが、最近の案件はどうも失敗続きに見える。

2010年に仏ECサイト「プライス・ミニスター」を約225億円で買収し、三木谷氏の肝煎りで2011年にカナダの電子書籍「kobo」を約240億円で買収したが、数年後に減損計上を余儀なくされた。2014年にキプロスの無料対話アプリ「viber」を約900億円で買収したが、業績への貢献は限定的だ。国内では打倒メルカリを目的に2016年に「フリル」を数十億円で買収し、楽天が既存で手掛ける「ラクマ」との相乗効果を狙っているが前途多難。足元では利用者数を伸ばしているが、収益を度外視した「手数料無料」などでメルカリのおこぼれを狙っている感が拭えない。上場に向けて規約を厳しくするメルカリと、偽物・コピー品の出品率の対策が劣るとされるフリルでは、中長期的に差は広がる一方になるだろう。MVNOの「楽天モバイル」はフリーテル買収などで存在感を高めているが、グループ全体の暗雲を吹き飛ばすほどの力はなさそうだ。

【QUICKエクイティコメント・本吉亮】

※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

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