2017年初めから軟調に推移してきた不動産投資信託(REIT)に下げ止まりの兆しが出てきたとの見方が増えている。東証REIT指数は11月22日は反落したが、21日まで4日続伸するなど反発色が鮮明だ。10日に付けた年初来安値との比較では約5%上昇した。特に20日は東証上場のREITが、ほぼ全面高の展開だった。
東証REIT指数は安値から5%上昇
買いのきっかけになった材料は定かではない。「社債などの信用スプレッドが広がらない中、海外投資家がイールドハンティング(利回り追求)の一環で買いに動いた」(外国証券のアナリスト)との説が有力のようだ。下げ止まりを見て国内の機関投資家の一角も買いに動いたとの声も聞かれた。
年初来高値である1863.91は、大発会翌日の1月5日に記録した。今年の東証REIT指数はほぼ一貫して右肩下がりの値動きだ。背景には金融庁による毎月分配型投信に対する批判があるとされる。銀行や証券会社などが毎月分配型の販売を自粛したため、毎月分配が多い国内REIT投信から個人などの資金が流出。10月までの7カ月間に累計で約2400億円が流出していた。
一方的な下げは終了か
それがここにきて「一方的な下げは、もう止まったのではないか」(みずほ証券の大畠陽介シニアアナリスト)との見方が広がりつつある。さすがに割安だろうということだ。NMF(3462)のように時価総額上位の銘柄でもNAV倍率(純資産価値に対する時価総額)が1倍を割る銘柄も出てくるなど、このところ特に割安感が指摘されていた。これ以上の下値余地は乏しいとの見方が広がった。
さらに大畠氏は「REITの自己投資口取得(株式の自社株買いに相当)やM&A(合併・買収)などが出てくるようになった一方、追加の投資口発行(公募増資に相当)や新規上場も減っている」と指摘。需給改善を意識させる材料も、なくはないというわけだ。
ただ、投信からの資金流出を忘れてよいわけではなさそう。まとまった買いが入ると「売りたい強気」でいったん売りが引っ込むことはあっても、売り需要が根強いことに違いはない。今後も基準価格(株の終値に相当)の低迷が続くようだと、分配金の減額によって一段と資金流出が加速するとの警戒感も残る。ひとまず下げ止まったとはいえ、当面は東証REIT指数の戻りが鈍い展開を予想する声は多い。
岩沙氏「REITの特徴が際立ってきた」
REITの業界団体である不動産証券化協会の岩沙弘道会長(三井不動産会長)は14日の理事会後に開いた記者会見で、REIT相場の下落に触れて「実物の不動産マーケットはあくまで好調とあって、安定的に分配金を受けられるという、株とも債券とも異なるREITの特徴が際立ってきた」とあくまで強気だ。「長期的な資産形成の観点から、(個人向けイベントの)J-REITフェアなどで若い世代向けの手応えを感じている」と話していた。
不動産証券化協会の岩沙弘道会長
金融庁が毎月分配型の投信を批判するのは、複利効果が得られにくいほか、投資元本を削って分配金に充てる商品も一部にあり「顧客本位でない」ということ。一方、REITの一部にも元本を取り崩して分配する銘柄があるが「減価償却が大きい物流施設などに投資するREITの場合、物件を取得した後の追加投資などが不要であれば、手元に余裕のある現金が増えるため投資家に返すのが合理的」(協会の内藤伸浩専務理事)という。個人などにも分かりやすく説明する必要がありそうだ。
REITは賃料収入の手堅い不動産ファンドを個人でも手軽に扱えるのが魅力の1つ。しかし、現時点で個人はREITのメーンプレーヤーとは言い難い。株や債券とは異なる商品性は、分かりにくさと裏腹になっている可能性もある。投信の売りによる下げが一服したところで、短期の値幅取り狙いでない個人の買いが入るかどうかは、REITが利回り商品として定着するかという観点でも興味深い。
【QUICKエクイティコメント・山本 学】
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