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神戸鋼、脱踊り場の鍵は石炭火力?

記事公開日 2017/9/27 09:59 最終更新日 2017/11/2 15:19 経済・ビジネス コラム・インタビュー 金融コラム

※QUICKのオプションサービス「QUICKエクイティコメント」で配信された記事を再編集しています。

神戸製鋼所は9月12日に加古川製鉄所(兵庫県加古川市)で2期目の脱りん炉が8月に稼働を開始したと発表した。高炉から取り出したばかりの溶けた鉄から、不純物を取り除くための設備で、設置に90億円を投じた。自動車向けの高級鋼板などを製造するには欠かせない工程だ。これで総額1045億円をかけた加古川製鉄所の設備投資が完了したもよう。10月末の神戸製鉄所(神戸市灘区)で高炉を停止し、加古川製鉄所に集約するための準備がひととおり整ったことになるという。

<10月末で停止を予定する神戸製鉄所(神戸市灘区)の高炉>

 

高炉跡地に石炭火力発電所 「電力事業」を収益の柱に

神戸製鉄所の高炉跡地に建設を予定するのは石炭火力発電所だ。同社は既に隣接地で、2基の石炭火力発電所を運転している。1基目が運転を開始したのは2002年で、04年に2基目を増設。現在は140万キロワットを発電して、電力を関西電力に販売している。これだけでも神戸市のピーク時の約7割をカバーする電力だが、さらに神戸鋼は2基130万キロワットと大規模な発電能力を持つ発電所を建設する予定だ。

16年4月に発表した21年3月期を最終年度とする中期経営計画では、従来の鉄やアルミ・銅の「素材系事業」、圧縮機やコベルコ建機などの「機械系事業」に加え、新たに「電力事業」を収益の柱と位置付けた。16年7月には都市ガスを燃料に火力発電する真岡発電所(栃木県真岡市)を着工。神戸製鉄所の高炉跡地に増設する発電所についても、環境アセスメントの手続きに入っており、「収益の3本柱」化は順調に見える。

 

火力発電に地元住民から不安の声

ただ、ここにきて神戸鋼の株価は踊り場状態が続いている。中国での鋼材需要回復などを追い風に、JFEHDが今月14日に年初来高値を更新したのに対し、神戸鋼は7月31日の年初来高値を上回れないままだ。アナリストの間では高炉株におおむね強めの投資判断が目立つ中で、あるベテランの市場関係者が「神戸鋼は電力事業が当初の計画通り順調に進むかという点で、先行きに不透明さを感じる投資家も一部にいるようだ」とこぼしていた。

 

<神戸鋼とJFEHDの7月末を100とした株価チャート QUICK端末(ActiveManagerより)

というのも、神戸で増設する発電所が石炭火力であることから、環境への影響を懸念する住民の声が増えているからだという。地元紙の神戸新聞が手厚く報じている。いくつか拾ってみると「石炭発電に意見書495通 神鋼公表『健康被害心配』の声も」(9月21日付)、「石炭火力発電所計画 神鋼 問われる説明姿勢」(9月20日付)、「神鋼火力発電 公害患者団体 設置是認せず 県などに要請書提出」(9月1日付)――といった見出しが並ぶ。

神戸鋼が現在、売電用に運営しているのは神戸の出力140万キロワットの発電所のみ。建設中の真岡発電所は出力124.8万キロワットの計画だ。新たに神戸で計画している発電所は130万キロワットだから、同社の出力全体で約3分の1を占める重要な発電所になる。23年3月期までに順次稼働する予定だが、建設が遅れたり、あるいは建設できないといった事態になれば、電力事業の中長期的な収益予想を大きく見直す必要に迫られかねない。

7月に4回の住民説明会 「国の計画、法を順守」

神戸鋼はQUICKエクイティコメントの取材に対し、7月に4回の住民説明会を開催したうえ、環境影響評価準備書への一般意見に対する事業者見解の提出や、公聴会への出席を通じて、住民からの意見に対応していると説明。大気汚染や二酸化炭素の排出など環境への影響についても、高効率の発電設備を導入することなどで「国の計画、法を順守していく」(秘書広報部)としている。客観的に見れば、法的に逸脱している部分がなければ、発電所建設は計画通り進む公算だ。

とはいえ足元では石炭火力発電の建設に逆風が吹いている。同じ兵庫県内でも今年4月、Jパワー(9513)が石炭火力で発電する高砂火力発電所(兵庫県高砂市)の建て替えを延期したことが明らかになっていた。売電先である関西電との交渉がまとまらなかったという。その関西電も1月、節電の浸透などを受けて当初の見込みより投資回収に時間がかかると判断し、赤穂発電所(兵庫県赤穂市)で石炭への燃料転換を取りやめたと発表した。

神戸鋼が中期計画で目指す財務指標である「ROA(総資産利益率)5%以上」「負債資本倍率(DEレシオ)の1倍以下堅持」は、21年3月期の目標。神戸の新たな発電所稼働は、ひとまず織り込まれていない。だが、中長期的な成長イメージの中に、新たに収益の柱として「電力事業」をきちんと位置づけられるのか。それを見極めるうえで今後、神戸製鉄所の石炭火力発電所計画が改めて注目される展開もありそうだ。

【QUICKエクイティコメント:山本学】

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