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勢いを取り戻しつつある人民元の国際化 HSBCレポート

記事公開日 2017/7/20 09:25 最終更新日 2018/2/5 12:20 経済・ビジネス コラム・インタビュー 中国・韓国・アジア アジア特Q便

 QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBCグレーター・チャイナ統括 チーフ・エグゼクティブのヘレン・ウォン氏がレポートします。

 

人民元、世界的利用拡大へ インフラ整備拡充進む

 人民元の国際化はこの1年減速したとみられるが、中国は水面下では人民元の世界的利用拡大のために引き続き金融インフラの整備拡充を進めてきた。国際取引での人民元の利用は2016年に大幅に減少した。世界中の銀行が国際資金決済のために利用している通信ネットワークであるSWIFTによれば、人民元建ての国際決済額は2016年に30%近く減少し、通貨別の国際取引額ランキングでは現在7位となっている(2016年初めには5位だった)。

 オフショア人民元の預金も同様な状況にある。中国本土以外での人民元の預金残高は2015年初頭以来縮小してきた。オフショア人民元の世界最大の拠点である香港での人民元の預金は4月末現在で5280億元と、香港の預金残高がピークをつけた2014年末の1兆元強から50%近く減少した。
 人民元の利用と保有の減少は、中国経済の減速、人民元の下落、国際資本移動に関する規制強化に対する懸念と無関係とは言えない。しかしこうした現状に対して、中国は外国人投資家が売買可能な国内資産の範囲を拡大して人民元の国際化を進めた。

3つのコネクト制度が人民元国際化の戦略を証明

 まず中国の株式市場の開放が挙げられる。深セン市場と香港市場の間の相互株式投資制度(ストックコネクト)の導入が昨年8月に発表され、発表後4ヵ月足らずで運用が開始されたが、この制度によって外国人投資家は、より小規模で起業家精神あふれる企業に投資することが可能となった。こうした企業の成長は中国の経済改革の重要な構成要素となっている。現在では、世界中の投資家は香港市場を通して中国本土の市場に上場されている企業の大半に直接投資できるようになったが、こうした機会はわずか3年前には存在しなかった。

次に中国の債券市場の開放を挙げることができる。中国は今年5月に、中国の債券市場を世界につなぐ取引接続制度である「債券通(ボンドコネクト)」の導入を発表した。中国債券市場の発展におけるこの最新の画期的な改革が正式に導入されれば、中国の資本市場開放における重要な出来事となるのは確実とみられる。

急成長している中国の債券市場の規模は世界第3位であるが、海外投資家の参加は限られている。中国の国債市場における外国人投資家の保有比率は2%未満にとどまり、日本の10%、英国の25%超、米国の50%程度を大きく下回っている。中国の債券市場の段階的な開放によって、発行者、投資家だけでなく、両者をつなぐ全ての取引仲介業者にも豊富な事業機会がもたらされるとみられる。
 

3つのコネクト制度、つまりボンドコネクト、深セン・香港ストックコネクトと2014年に一足先に導入された上海・香港ストックコネクトの導入の意義は、中国本土の債券、株式の世界的指数への組入れを実現したことだけにはとどまらない(MSCIは2017年6月20日に中国A株を同社の新興国市場指数に組み入れると発表した)。これら制度は人民元の国際化が中国の中長期的な戦略となっていることを証明するものでもある。直近では今年3月に中国人民銀行がこの見方を再確認した。

人民元決済の拡大、一帯一路構想も影響

 国際取引で人民元の利用が2016年に減少したにもかかわらず、外国為替市場と金融市場の改革を進め、中国経済と金融市場を開放し、人民元の国際通貨化を推進する姿勢を中国が明確にしているという事実に変化はない。
 

オフショア人民元市場は、貿易決済額と預金残高が減少しているため、短期的な課題に直面する可能性はあるが、引き続き戦略的に重要な市場である。ボンドコネクトのような国際投資のための制度を導入することは、オフショア人民元市場の広がり、深さ、健全性を改善させるだけでなく、同時に人民元の国際化に再度弾みをつけるであろう。

 もう一つのきっかけは、一帯一路構想である。人民元国際化の背景には中国の貿易額の拡大に加えて、人民元によるその決済がある。2016年には一帯一路に関係する国々と中国との貿易額の伸び率が中国の貿易額全体の伸び率を上回ったことを考慮すると、一帯一路は、地域内および地域間の接続性を強化することにより長期的に一帯一路沿いの地域の貿易を拡大させるのに加えて、貿易決済での人民元の使用も拡大するとみられる。

 さらに重要なのは、一帯一路構想によって資金調達の際の人民元利用の増加が見込まれる点である。政府の後押しもあって、中国企業は一帯一路関連プロジェクトに積極的に参加している。一帯一路関連プロジェクトを推進している国々で事業を展開することにより、これら企業は人民元建てのバランスシートで管理されるため、現地の人民元建て流動資産のプールは拡大するとみられる。プロジェクトを推進している国では全ての通貨が常に流動性不足に直面しており、また多国籍金融機関は十分な資金を供給できるとは限らないため、人民元は資金調達通貨として競争上の優位性を備えている。

 従って、オフショア人民元の流動性プールの拡大に加えて、人民元建債券発行に対する需要の増加によって、価値保蔵手段としての人民元の魅力が高まるとみられる。さらに一帯一路関連のインフラ建設プロジェクトによって人民元のヘッジのための需要も増加するとみられる。中国の国内債券市場の開放も手伝って、人民元の国際取引での利用も増加するとみられる。

 人民元の国際化はこの1年減速したかもしれないが、中国は資本市場の開放を続けてきた。さらに、一帯一路構想の影響で徐々に貿易取引および資金調達通貨としての人民元の利用は拡大するとみられる。人民元の国際化は勢いを取り戻しつつある。


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