金融市場がまた1人、「異能の人」を送り出す。メガバンクを年内中に退職するHikariさんはコスプレーヤーの経験を活かした起業家の道を歩み始める。夢は日本のコスプレ文化の輸出だけでなく、海外へ関連グッズの販売を手掛けるスタートアップを立ち上げることだ。
リーマンショック直前に大手生保入社、1年目から株式運用部門へ
金融女子といってもHikariさんの経歴を表現するなら「運用エリート」が正確かもしれない。リーマンショック直前に国内大手生保へ入社し、1年目から株式の運用部門へ配属された。それまで興味のなかった運用だが、株式分析などを学ぶうちに関心を持った。QUICKなどの金融情報ベンダーの端末を使って毎日、データとにらめっこしていたという。英語も使えたため海外のプライベート・エクイティ・ファンド(PE)やヘッジファンド(HF)投資に関する運用チェックも任された。世界的なファンドともやり取りするようになった。
人事ローテーションの時期にリーマンショックが重なると、運用部門からの異動に現実味が増した。そこで選んだのが外資系生保へ転職。ここでもPEやHF投資に携わった。その後、縁あってメガバンクへ中途入行し、投資業務を継続した。
しかし、入行してからすぐに「印鑑の押し方が違う」と指摘されカルチャーショックを受けた。このまま銀行員として働き続けても、自分のやりたいことと違う道を進むだけではないかと疑問が膨らみ始めた。
コスプレへの目覚めは16歳 「かわいい」と言われ自信に
コスプレに目覚めたのは16歳。中学校時代に受けたイジメがトラウマだったが、先輩コスプレーヤーから「かわいい」と認められたことが大きな転機につながった。
「男子からかわいくないなど言われていたのに、『私もかわいくていいんだ』と自信が持てるようになった」(Hikariさん)
※映画「魔女の宅急便」の主人公・キキに扮するHikariさん。衣装は自主作成、撮影前にメイクも自分でこなした
社会人になって封印したコスプレ。解禁のきっかけはここでもリーマンショックだった。金融市場が大混乱に陥り、仕事にかかる負荷が急増。ため込んだストレスを発散するため再び衣装をまとった。
自費ながらコスプレーヤーとして「海外進出」も果たした。今では米国やドイツのほかアジア諸国などに多くのファンを抱える。
現地に赴いて実感したのは、日本のコスプレ人気は高いものの関連グッズの入手が困難な状況。趣味と実益を兼ねたビジネスモデルが次第に膨らみ始めた。軍資金についてもあてがないわけじゃない。金融界でファンド投資に携わった当時に築いた人脈がある。金融市場から撤退しコスプレに絡んだ進路を海外の投資家やシリコンバレーの関係者に伝えると「面白そうだね。何かやる時は声かけてよ」と出資意欲を示してくれたという。
今後も何らかの形で運用にはかかわっていきたい
今後はテレビにも出演する予定もあるHikariさん。「運用の奥深さを知りました。今後立ち上げようと考えているビジネスもスキームは金融市場で学んだことがベースになります。そして、今後も何らかの形で運用にはかかわっていきたい」と話していた。金融スキルを使ってクールジャパンの旗手へと躍り出るのか。新たな挑戦が始まった。
※Hikariさんのインスタグラム: https://www.instagram.com/hika_ringo00/
【QUICKコンテンツ編集グループ:岩切清司】