日興アセットマネジメントが6日に開催した機関投資家向けセミナーで米コロンビア大学の伊藤隆敏教授が登壇し、日米の出口戦略をテーマに基調講演をした。問題視されている日銀の債務超過の可能性について伊藤氏は、「損失は最小限に抑えることができる」と否定した。
米金融政策のメーンシナリオは、年内にもう1回の追加利上げとバランスシート縮小の開始だ。これを基に日銀の金融政策への影響を考えた場合、米金利上昇に伴い日本国債の金利に上昇圧力がかかるなか、日銀がイールドカーブ・コントロールを維持するかどうかが注目される。日銀はある程度の金利上昇を容認するとみている。国債保有残高の増加額のメドは80兆円から足元で60兆円までペースを落としてきた。バランスシートが膨らむことを避けたいため、80兆円に戻す選択肢は恐らくないだろう。
日銀は物価目標2%に届かなくても出口戦略に動く可能性がある。ただ、インフレ率が1.5%少なくとも1.0%を超えて上昇傾向になるまでは動けないだろう。仮に0.5%で出口に向かえば円高となってデフレに戻ってしまうからだ。米国に加えて日本も雇用環境が改善するなど実体経済は堅調なため、インフレ率は来年以降に上昇すると予想している。
出口戦略の手法は米国と同様に利上げとともに償還を迎えた債券の再投資を見送ってバランスシートを縮小させる形になるだろう。出口に向かうプロセスでの問題として日銀の債務超過が懸念されているが、いくつかの手段を講じることで回避できる。例えば、バランスシートを一気に縮小せず、ある程度再投資して3%程度の付利を得る方法もある。一部で日銀の損失額は当初7兆円前後と予想する向きもあるが、私は2.5兆円程度とみている。
コロンビア大学 伊藤教授
物価目標2%、達成できないとの見方が目立つ
QUICKでは毎月、証券会社および機関投資家の債券担当者にアンケート調査をして「QUICK月次調査<債券>」として公表しています。直近6月の調査では日銀の「出口戦略」について140人に聞いたところ、物価目標2%について6割が「達成できないが、目標は維持される」と予想していました。一方、「達成できず、目標が変更される」との予想が3割、「達成できる」はわずか4%にとどまりました。
また、出口がくるとすれば、何がきっかけになるかとの問いでは、「首相の交代」との回答が最多で3割弱、次に「変更後の目標を達成」と「金融市場の激変」がともに約2割でした。