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ニューエコノミーの離陸 HSBC中国レポート

記事公開日 2017/6/21 09:13 最終更新日 2017/6/21 09:13 経済・ビジネス コラム・インタビュー 中国・韓国・アジア アジア特Q便

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC中国のデビッド・リャオ(David Liao)社長兼CEOがレポートします。

雲に覆われた風の強い5月の午後に、上海浦東国際空港から乗客を乗せていない旅客機が離陸した。オレンジ色のジャンプスーツを着た5人のテストパイロットが操縦するその旅客機は長江デルタの上空を1時間ほど飛行すると帰路につき、浦東空港に着陸した。

目的地のない短時間の飛行ではあったが、この飛行は中国初の国産大型旅客機となる「C919」の試験飛行の成功を象徴するものであった。過剰設備と非効率性から脱却し、国内製造業の生産能力を向上させようとする中国の経済改革路線における画期的な出来事である。

 中国は、高度ハイテク産業を世界最大で最先端の国と競争できるものに仕立てることを通じて国内経済の新しい局面を切り開く取り組みを積極的に推進している。

中国、2016年から供給サイドの構造改革 

市場規模は数兆ドルと推計される世界のジェット機市場において、今後20年のうちに中国の国産旅客機がボーイング社やエアバス社の旅客機と競争する存在となることは果たして可能だろうか。これを疑問視する見方もあるが、中国がしばしば驚くべき能力を発揮することも確かである。パソコンやスマートフォン、民生用ドローンなどの産業において中国は当初は全く意識されない存在だったが、その後世界を主導する立場に成長している。

 GDP成長率が過去数年にわたる減速を経て安定化している現在は、中国にとって大切な経済転換のための過渡期である。重要なのは、2011年から減少が続いていた民間投資がようやく回復に転じ、素材・機械設備の製造業からサービス業にいたるまで広範なセクターで投資が反発を見せていることである。輸出も世界的需要の増加と供給サイドの改善を背景に成長していくと見込まれている。

 2016年初めから中国は供給サイドの構造改革を進め、新しい技術や産業、製品を振興するかたわら非効率的な国有企業の経営刷新や生産設備の削減、負債の圧縮に取り組んできた。 これらの取り組みは、高度な製造業セクターでの「メイド・イン・チャイナ2025」戦略や、経済成長の新たなけん引役を育成するための革新的な「ニューエコノミー」戦略と統一性がとれている。

ニューエコノミー、起業家精神などの推進力が必要

ニューエコノミーが定義する範囲は広い。昨年、李克強首相はその概念について、eコマースやクラウドコンピューティングといった新興産業にとどまらず、スマート製造業や大規模カスタマイズ生産、家族経営農場までを包括するものであると説明している。このような経済には起業家精神や技術革新といった推進力が必要となる。従って中国の民間セクターがこのニューエコノミーをけん引する上でより大きな役割を担い、一段と持続可能な経済成長を実現するための課題に対応していくことになる。

 すでに中国では、起業家精神にあふれる企業が先導的役割を果たす例が目立つようになっている。4月にはメッセージと通話のアプリのウィーチャット(WeChat)を生み出したIT企業テンセント(騰訊)が時価総額で世界10位となり、11位には中国の大手eコマース企業アリババが続いた。この2社が中国企業の時価総額1位と2位を占めていることは、国有銀行や国有エネルギー会社がかつての支配的地位から徐々に退きつつある実情を物語っている。

 そしてニューエコノミーの勝者であるこれらの企業には、なお一層の成長の余地がある。HSBCがテクノロジーに対する消費者の信頼感に関して5月24日に発表した調査結果からは、テクノロジーで生活が向上するとの信頼感において中国の消費者が世界をリードしていることがわかった。これは巨大かつ有望な市場を創設していく機会を革新的な中国企業に与えるものである。

テンセント、メッセージアプリは月間9億4000万人が利用

深センを本拠地とするテンセントを例に挙げれば、3月末時点で同社のメッセージアプリのウィーチャットおよび微信(Weixin)の月間アクティブユーザーは約9億4,000万人に達し、より若い世代をターゲットとする「QQ」アプリでは8億6,000万人を超えた。消費者はこれらのアプリをオンライン・ゲームの支払いやその他の料金の支払いだけでなく、資産管理にまで利用している。しかしそれにとどまることなく、これらのプロダクトを収益化する斬新で創造的な手法が継続的に生み出されている。

中国のテクノロジー企業は未来への備えも進めており、人類の生活に将来与える影響としてはかつての電気の発明に匹敵するとも予想される、人工知能(AI)の最前線の研究に取り掛かっている。3社まとめて「BAT」と呼称される百度、アリババ、テンセントの大手テクロノジー企業はこぞってAIやソフトウェアに巨額の投資を行い、医療機器や自動運転車、決済サービスなどの面からプロダクトを強化していく態勢にある。

 中国のハードウェア企業も技術革新の面では遅れをとってはいない。いずれも深センを本拠地とするスマートフォン製造のZTEとファーウェイ(華為技術)の2社による昨年中の特許出願件数は約8千件に達し、発明企業として世界1位と2位の座を占めた。国内のスマートフォン市場を制覇した中国ハードウェア企業のプロダクトは国外でも支持を伸ばし、ファーウェイやオッポ(OPPO)、シャオミ(小米科技)などの製造業企業は東南アジアからインドにいたるまでの新興国市場で市場シェアを獲得している。

中国のシリコンデルタとして急速に知られるようになった珠江デルタ地域を中心に、テンセントやファーウェイのような大規模テクノロジー企業がさらに出現する可能性がある。米国のシリコンバレーに倣って、深セン市はベンチャー投資家や起業間もない企業に少額投資を行うアクセラレーター、ハイテク大手の創始者などをつなぐエコシステムの構築を進め、次代の有望な新規事業の創出に備えている。

例えば、中国の配車サービスアプリ市場で米国のウーバー(Uber)との競争を制したことで知られる滴滴出行(Didi Chuxing)は、現在では世界における最も貴重な新興企業の一つとされる。創業者はかつてアリババで経営幹部を務めた人物であり、またテンセントは早い段階から同社に投資していた。

中国政府、ネット企業支援の1000億元基金を創設

こうした経済構造の転換を支える最近の動きとして、今年中国政府はインターネット企業を支援するための1,000億人民元の基金を発足させた。それに先立って広東省では、ロボット工学や医療機器の分野などの関係団体を地理的に集積させるスマート製造業クラスターの計画が発表されている。

 中国の「ニューエコノミー」に参加したいと考えている中国国外の投資家の選択肢も広がっている。中国本土で上場されている株式が香港市場で取引されるようになったことで、国外投資家は一段と多くの中国企業への投資が可能となった。また中国の債券市場を、香港市場を介して国外投資家に開放することも計画されている。中国本土企業の株式や債券が世界的な指数に組み込まれる可能性があり、そうなれば投資機会はさらに広がる。

 中国の経済構造転換の今後の道のりが長いことは、国産旅客機C919の初の試験飛行からも明らかである。そして国外から調達した部品がC919型機に使われていることと同じように、中国がニューエコノミーを確立するためには国際的な協力と専門的技術が欠かせない。そこに投資機会が存在する。

 


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