「クラスター爆弾」への投融資に関する報道相次ぐ…ESG投資への関心高まるきっかけか

「クラスター爆弾」への投融資が話題に

テレビ朝日朝日新聞は5月23日夜、「非人道兵器」とされるクラスター爆弾の製造企業に投融資している世界の金融機関リストを取り上げ、日本の金融機関では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、オリックス、第一生命保険がリストに挙がっていると報じました。この報道がネット上で話題となっています。

報道されたのは、オランダを拠点とする国際NGO「PAX」がまとめた報告書です。この報告書では、クラスター爆弾の製造企業としてChina Aerospace Science and Industry(中国)、Norinco(中国)、Hanwha (韓国)、Poongsan (韓国)、Orbital ATK (米国)、Textron (米国)を取り上げ、金融機関との関係を調査。この6社に投融資している機関を「不名誉リスト」(Hall of Shame)、投融資を禁止している機関を「名誉リスト」(Hall of Fame)、投融資禁止に取り組んでいるものの不十分な機関を「次点リスト(Runners-up)」の 3 つに分類し、公表しています。

日本の金融機関では、上記の4社が「不名誉リスト」に入っています。いずれも米国のOrbital ATK と Textronに対する投融資が指摘されています。また「不名誉リスト」には、日本法人を持つ国際的な運用機関であるインベスコやブラックロックの名前も挙げられています。

「名誉リスト」に日本の金融機関の名前はなく、三井住友信託銀行(SMTB)は「次点リスト」に入っています。報告書では、SMTBはアクティブ運用商品の投資対象からクラスター爆弾製造企業を除外し、その方針は投資銀行や商業銀行の活動にも適用されているとしつつも、関連企業である三井住友トラスト・アセットマネジメントと日興アセットマネジメントに及んでいない点を不十分と指摘しています。

また今年の4月には、日本の公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」がTextronの株式を保有していると各紙で報道されており、こちらも話題になりました。報道を参照する限り、運用委託先の運用会社が採用している株価指数(インデックス)の構成銘柄にTextronが含まれていたようです。

インデックスへの投資とは

大手の金融機関や運用会社は、日経平均株価のような市場を代表する指数と連動するように運用する手法(インデックス投資)を用います。日本の株式全体、米国の株式全体、新興国の株式全体というように、市場全体に投資することが狙いです。インデックス投資の場合、個別の投資対象を選定せず、指数を設定する会社が選んだインデックスの構成銘柄を買うことになります。

GPIFのTextron株保有の例のように、投資対象として積極的にTextronを選定しなかったとしても、投資対象として選んだ株式指数の構成銘柄にTextronが含まれていれば、結果として保有することになります。NGOの指摘した日本の金融機関の投融資も、株式・債券の投資については、インデックス投資の結果組み込まれた可能性もあります。

各社の実態

クラスター爆弾は空中で容器が開き、無数の子爆弾を広い範囲でまき散らすものです。不発弾も含め民間人への被害が大きいことから、保有や製造、使用を禁止したオスロ条約が2010年に発効され、日本も加盟。全国銀行協会は2010年に、市民への被害が深刻な問題になっているクラスター爆弾の製造を目的とした事業に対しての投融資を禁じることを申し合わせています。

さて、クラスター爆弾の製造企業としてリストアップされていたのは、どういった企業だったのでしょうか。QUICK  FactSetデータベースを使って実態を探ってみました。(いずれも売上高は5/24時点の為替レートで掲載した、2016年度の概算値です)

Textron (米国)

今回、日本の金融機関の融資が多かったTextronは、傘下にベル・ヘリコプターや、セスナ・エアクラフトを抱える航空機メーカーで、芝刈機やゴルフカートなども手掛けています。ベル社とボーイング社が共同で開発した航空機(垂直離着陸機)V-22は「オスプレイ」として日本でも知られています。以下が、売上高(約1兆5400億円)の内訳となります。

同社のテキストロン・システムズ事業がクラスタ爆弾「Sensor Fuzed Weapon」を製造していましたが、昨年、クラスタ爆弾の生産を中止すると発表しています。ただ、NGOは、最終注文分の製造完了を確認してから、クラスター爆弾の製造企業リストから外すとしています。

 

Orbital ATK (米国)

オービタルATKは、米国の航空宇宙・防衛企業で、固体ロケットの推進システムや中小型打ち上げロケット、衛星などを手掛ける一方、精密誘導などの防衛関連システムも手掛けています。売上(約4990億円)の内訳は以下となります。

 

Hanwha

ハンファは韓国の企業グループで、旧社名は韓国火薬でした。現在は爆発物のほか、様々な事業を手掛けています。火薬や花火、化学薬品といった韓国火薬以来の事業に加え、太陽光や金融業にも進出しています。

 

Poongsan (韓国)

Poongsanは韓国の非鉄金属企業で、売上の6割が非鉄金属事業に由来しています。防衛事業では主に弾薬を製造しています。

 

China Aerospace Science and Industry(中国航天科工集団公司)

中国の宇宙・防衛を担う国有企業の一つです。1997年に中国航天工業総公司が、中国航天科技集団公司と中国航天機電集団公司(現・中国航天科工集団)に分割されることで誕生しました(参考資料)。同時に誕生し、同様に宇宙・防衛を担う国有企業である中国航天科技集団は今回、報告書のリストからから外れています。

QUICK FACTSETのデータによれば、同社はソフトウェア開発の航天信息、輸送機器メーカーの航天科技控股集団、軍事通信を手掛ける航天通信HD集団といいた中国の上場企業の大株主となっています。

 

Norinco(China North Industries Corporation、中国北方工業)

中国最大の兵器メーカーです。中国各地にあった人民解放軍の兵器工廠を統合し、民営化した企業とされています。

 

金融機関の取り組み

長期的な視点でみると倫理的、社会的に投融資するべきではない対象があるのではないか、そうであれば投融資対象から外す方針を定めて実行しなければいけないのではないか…こういった問題を踏まえた投資として、 SRI(責任投資)やESG 投資といった考え方があります。

QUICKのESG研究所では、運用機関に対してのインタビューを継続的に実施し、各社のESG投資の方針について調べてきました。これまでに取材した運用機関の中では、以下のように、クラスター爆弾への投資除外を明言している機関も確認しています。

アムンディ・ジャパン

大和証券投資信託委託

日本コムジェスト

ドイチェ・アセット・マネジメント

 

今回の件は、ESG投資への関心が国内で高まっていることの現れとして捉えることができそうです。個人を含む投資家の間でESGを気にする傾向が強まれば、金融機関はESGへの取り組みを一段と進める必要があるかもしれません。

 

(編集:QUICK Money World)

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