米大手運用のティー・ロウ・プライスで債券運用部門のテッド・ウィース氏が来日し、16日にメディア向け説明会を開催した。世界の債券で選好する市場について「足元の各国の金融政策を踏まえると、利下げに動いたロシア、ブラジル、インドネシア、ニュージーランド、豪州の債券価格の上昇が見込める」との見方を示した。一方で「金融引き締めに転じている米国、南アフリカには注意が必要だ。メキシコは利上げに転じる見込みのため、デュレーションを短くして対応している」と明かした。
世界経済については「中国の景気減速はグローバル経済にとって懸念材料」と警戒する。そのうえで「中国の影響が大きくなっている。例えば、日本の2016年10~12月期実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比1.2%増だったが、この増加分の半分が中国への輸出によるものだった。米国経済への影響も大きい」といい、同国経済の先行き次第では世界経済の重荷になる可能性をにおわせた。
また「ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭、欧州では英国やドイツでの総選挙といったイベントを控えている。中央銀行による流動性の供給が減少している中、こうしたリスクが意識されれば、ボラティリティが高まる局面もありそうだ」とした。
最近の米経済指標には強弱の結果が交錯している。「米国は完全雇用の状態だが、インフレ率は抑えられている。金融引き締めにより景気が減速する可能性があるものの、この先1年は景気後退リスクがほとんどないとみている。米景気は景気拡大期の中盤に位置にある」と楽観的だ。
そのうえで米国の金融政策は「FF金利(フェデラルファンド金利)が実質金利を下回っている限り、FRBは緩やかな引き締めの継続にとどめるだろう」という。市場が注目するトランプ政権の経済政策については「財政出動、減税、通商政策はトランプ氏が議会との交渉が不得手のため、実現は難しいかもしれない」。
説明会では国債相場の先行きに関する質問も出た。国内では将来的に財政破たんのリスクを警戒する声が根強いものの「日銀が国債を買い支えており、何十年も低位で安定推移している。リターンは限定的だが、グローバル債券市場がボラタイルになった際、日本国債を投資先の選択肢の一つとして考えてみてもいいかもしれない。日銀の買い入れ額は今後、減少するだろうが、イールドカーブ(利回り曲線)の形は維持できるだろう」との見方を示した。
テッド・ウィース氏
ティー・ロウ・プライスの債券運用部門の責任者として債券運用を統括