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日本、アクティブ運用者にとって非常に魅力的 米運用会社の野本氏

記事公開日 2017/4/20 11:26 最終更新日 2017/11/2 15:34 経済・ビジネス コラム・インタビュー 金融コラム

米大統領選後の上昇相場に一服感が強まっている。足元では地政学リスクが高まるなど日本株を取り巻く投資環境には不透明感が増している。長期的に日本株はどのような位置づけにあるのか。米運用会社コロンビア・スレッド・ニードルで日本株運用担当責任者を務める野本大輔氏に話を聞いた。

 

 

海外投資家「日本企業は改革のスピードが遅い」がコンセンサス

 

──今後1~3カ月後の日本株の見通しを教えてください

 「日本企業の株主還元に対する理解が浸透しつつあり、日本株に対して当社では強気に見ている。米国株式や債券といった他のアセットクラスよりも魅力的だ」

 「年間約300社のトップマネジメントと議論をする中で株主還元への意識の変化を実感している。2015年にコーポレートガバナンス・コード(持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指した企業統治改革)が策定され、徐々にではあるが日本企業は、株主を含む様々なステークホルダーとの協業に基づいた持続的な成長を意識する様になった。今後は、更に、長期的な株主価値向上につながるM&A(合併・買収)、自社株買いや増配による余剰キャッシュの株主への還元などを通して、日本企業は資本効率を向上させる余地が十分ある」

 

──海外投資家は日本の企業統治改革についてどのように捉えていますか

 「日本企業の企業統治改革が正しい方向に進んでいると考えている。だが、『改革のスピードが遅い』というのがコンセンサスだ。コーポレートガバナンス・コードは、株主との対話や株主への説明責任を求めるもので、改革の度合や時間軸は企業の自主性によるところが多いからだろう」

 

──地政学リスクが強まるなど短期的には投資のリスクを意識せざるを得ませんか

 「目先は日本企業が保守的な業績見通しを出して日本株が弱含む可能性や、地政学リスクの高まりなどが懸念材料。特に北朝鮮情勢は日米中のパワーバランスに影響を与えるファクターとして考慮すべきだろう。中国が米国に協力するのであれば、為替や通商面で譲歩する用意があるともいわれている」

 「軍事・為替・通商をまとめて『ディール』するのは、いかにもトランプ政権らしいやり方だ。一方で、これは日本の政府にとって、気がかりな動きではなかろうか。対米貿易黒字が大きい日本に対して強硬な姿勢をとる可能性が高い。また、将来的に、中国が北朝鮮を押さえつける条件として、韓国に配備予定の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の設置中止や、日米安保を尖閣に適用しないといった要求をしてきたら、トランプ政権はどのように対応するのだろうか。『ディール』で片付けられる類の問題ではない」

 

日本、アクティブ運用者にとっては非常に魅力的

 

──トランプ政権は為替相場の水準も意識しているように見えます。日銀に対し通貨安として働く金融緩和策に注文を付ける可能性はあるのでしょうか

 「金融緩和はデフレからの脱却と安定的に2%のインフレをもたらすためのものであり、日本は、為替をターゲットとしていないとの主張し続ける必要がある。とはいえ、貿易赤字を解消したいトランプ政権としては大幅な円安を許容することはないだろう(個人的にはドル高が長期的に米国の国益にかなうと思うが)。通商問題では、日本の自動車や農業が攻撃対象となる公算が大きい。いずれにしても、日本にとって厳しい交渉になろう」

 

──日本株へのアプローチはどのように考えていますか

 「最近はパッシブ運用が人気だが、日本株においては、魅力的な個別企業に長期投資するアクティブ運用が極めて有効と考える。指数との連動を目指すパッシブ運用は手数料率が低いという利点がある一方で、超長期のリターンは名目国内総生産(GDP)潜在成長率に影響される。日本の場合、インフレ率が低く名目成長率は高くない。一方で、日本には世界に誇る高い技術力がある会社、品質の高い製品メーカー、ユニークなビジネスモデルを有する多くの企業が、本源的な価値を下回る株価水準で放置されている。アクティブ運用者にとっては非常に魅力的な市場だ」

 

──日本株全体の見通しは

 「市場全体で見たとき、株価に割高感はなく、冒頭で述べた持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指した企業統治改革が今後更に深化することで、日本株はリスクに見合ったリターンを創出しうるアセットクラスとみている。マクロ面での長期的な課題は、いかに早急に人口減少と高齢化による労働参加率の低下を反転させるかである。社内で日本株の話になると、対国内GDP比での債務問題やや人口減少問題が必ず議論になる。逆に言えば、人口問題解決に向けた改革(働き方改革、待機児童ゼロのみでは不十分)の道筋が見えれば、多くのグローバル投資家が日本株に注目するであろう。日銀による年間6兆円のETF買いがなくても、中長期的に上昇軌道を維持できると期待する」

 

日本株の持たざるリスクは低下

 

──人口減少の問題を解決するための有効な手段はありますか

 「教育水準、生活水準、治安、物価などの点から、日本で仕事をしたい、生活したいという外国人は少なくないと思われる。日本で働く外国人は4年連続で過去最高を更新し100万人を超えたと言われているが、更に積極的に受け入れるべきだ。無論、テロや犯罪行為を防止すべく、極めて厳格なスクリーニングの実施や、充実した受入れ体制が必須条件であるが、外国人労働者・永住権保持者の増大以外に日本経済を構造的に成長させる術はない」

 「米大統領選挙でのトランプ旋風を見て感じたのは、アメリカにはこんなにも多くの不満を持った白人中間層がいるということだ。補助金を出してでも日本で一定期間、労働者として受け入れるという取り組みも一考に値しよう(トランプ大統領、『日本はモノだけでなくヒトもアメリカから輸入します!』)。労働者受け入れに当り、一部産業では更なる規制緩和が必要となるが、一般企業、介護、保育、英語教師など、様々な分野で活躍してもらえる場を提供できるはずだ」

 「移民政策で労働人口が増加に転じれば、消費は喚起されるであろうし、そうなれば企業収益にも好影響、ひいては税収増大、賃金上昇といったサイクルが生み出される。アベノミクスの第3の矢に大胆な移民政策(働き方改革、待機児童ゼロだけでは不十分)を含めれるべきと思われる。スマート「J」イミグレーションに期待したい」

 

──人口減少に歯止めがかかれば日本株の『持たざるリスク』も意識されるのでしょうか

 「資産運用において『持たざるリスク』が意識されるのはウエイトが大きいアセットクラスを持っていない局面だ。日本の世界全体のGDPに占める割合は年々低下している。グローバル運用担当者も以前は日本株の持たざるリスクを大きく意識していたが、その程度は低下しているのではなかろうか。人口問題の解決に向けた大胆な構造改革が打ち出され、全世界のGDPに占める日本のシェアが上昇すれとなれば、海外投資家は持たざるリスクを意識せざるを得なくなるし、長期的かつ安定的な資金流入につながるのであろう」

 

(聞き手はQUICKデリバティブズコメント西本)

 

 

 


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