QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2015年12月28日にQUICK端末で配信した記事です。
利上げに伴うドル高・元安で中国製品の輸出に恩恵
米国は10年間に及ぶ長い期間を経て利上げをした。ただし、今後は緩やかな引き上げにとどめると表明した。香港は通貨を米ドルとペッグ(連動)させているが、近年、累計1300億米ドル超のホットマネーが域内に流入し、銀行資金が潤沢であるため、域内の銀行は米国に追随した利上げを行わなかった。投資家たちがより注目するのは米利上げ後の人民元の動向だ。現状を見る限り、人民元はここ数カ月の下落基調の延長で緩やかに下げ続ける見通しで、こうした状況を中国政府も歓迎するもようだ。
米国が昨年に量的緩和政策を終了したあと、米ドルは次第に上昇傾向になった。今回の利上げが資金流入へとつながり、米ドルの上昇基調を一段と強めることになるだろう。反面、人民元は今年8月に中間値(基準値)設定の改革を行い、人民元レートを市場の実勢に近づける施策を実施したあと、下落が続いている。このため、人民元は米利上げ後に対米ドルで下げ基調を一段と強めることになるだろう。しかし、実際のところ、人民元安は中国製品の輸出に有利となる。よって、中国政府は人民元安を歓迎するはずだ。
もはや人民元は対米ドルのみで比較できない?
中国がこのほど発表した政府傘下の中国外貨取引センターによる為替レート指数(人民元相場指数)は、人民元と通貨バスケットとの連動を算出基準としている。中国は同指数を用いることで米ドルや他の通貨に対する人民元の実勢を示すことを望んでいる。世界の主要通貨の中で米ドルのみが堅調で他の通貨はいずれも軟調だが、実際のところ、対通貨バスケットの実質的な人民元の為替レートはさほど軟調ではなく、むしろやや堅調なのだ。こうしたことから、中国は外貨取引センターの人民元相場指数を用いて人民元の実勢を示すことを望んでいる。この人民元相場指数が国際的に広く採用されるようになれば、人民元の為替レートで対米ドルについてのみ市場が注目するようなことがなくなり、人民元安がもたらす国際的な圧力を軽減できる。よって、人民元は今後、徐々に米ドルとの緊密な連動から脱却し、対通貨バスケットでのパフォーマンスを強めていくことになるはずだ。
このような動きはさほど非難すべきことではない。中国と欧州連合(EU)や日本、英国、アジア近隣諸国との経済や貿易の往来はますます緊密さを増しており、為替レートは米ドル以外の通貨と比較する方が経済の実情に合致するようになっているからだ。もっとも、人民元が米ドルとの「実質的なペッグ解除」を行えば、今後、対米ドルでの下落が続くことになる。香港ドルが米ドルと連動しているため、対米ドルで人民元安が続けば、人民元は対香港ドルでも引き続き軟調となるだろう。
中国と香港、相互承認ファンド第一弾を登録
数カ月前に中国と香港が合意に達した両地間のファンド相互承認プランで、ようやく第一弾の相互承認ファンドが認可された。中国証券監督管理委員会(CSRC)がついに香港の相互承認ファンド3本を登録したのだ。内訳はETF(上場投資信託)、株式ファンド、債券ファンドで、これらの香港のファンドは中国本土で販売できる。一方、香港の証券先物委員会(SFC)も第一弾の中国本土の相互承認ファンド4本を正式に登録した。これらのファンドは主にハイブリッド証券ファンドと株式ファンドだ。中国と香港のファンド相互承認が実施されれば、香港で今後登録されるファンドはCSRCへの登録申請が可能になり、認可されれば億単位の中国の投資家に販売できる。外国資本にとって、香港でファンドを登録して業務展開することによる市場の潜在性が大きく高まることになり、香港の資産管理業務の発展に追い風となるだろう。日本のファンドにとっても、可能性を秘めた投資チャンスとなるはずだ。