ブラックフライデー、ネット通販が好調な出だし
11月中旬に発売された「ハリー・ポッターと呪いの子 第一部 第二部」の売れ行きが好調なようです。毎週火曜日に公表している八重洲ブックセンター本店の集計によると、3週連続でフィクション部門の売り上げトップでした。同シリーズはあらゆる世代に人気が高いため、クリスマスプレゼントとして考えている人もいるのではないでしょうか。
■八重洲ブックセンター本店の週間ベストセラーランキング(11月20~26日)
【フィクション部門】
【ノンフィクション部門】
クリスマスをビッグイベントとして楽しみにしている人も多いと思いますが、実は株式市場にとっても重要行事の一つにです。特に消費大国の米国はその年のクリスマス商戦の行方が国内総生産(GDP)を左右するため、世界的に注目されています。
米国のクリスマス商戦は、祝日である11月第4木曜日の感謝祭の翌日に幕開けします。小売店で一斉に値引きが始まり、セール初日の金曜日は店舗の収支が黒字になるほど活況なため、「ブラックフライデー(黒字の金曜日)」と呼ばれています。日本経済新聞などによると、今年の米クリスマス商戦の出だしは平均支出額こそ前年同期を下回ったものの、ネット通販の売上高が34.5億ドル(約3880億円)と1日の売り上げとしては過去最高を記録したそうです。なお、全米小売業協会(NRF)は11~12月の小売売上高を前年同期比3.6%増の6558億ドル(約67兆円、自動車・ガソリン・外食を除く)と予想。この水準は米国の実質GDPの約4%に相当する規模です。
そして米国に次ぐ経済大国である中国の消費動向にも注視したいところです。同国では11月11日の光棍節(こうこんせつ)に中国のネット通販各社が大規模なセールをする「独身の日」を開催。中国最大手のアリババ集団の売上高は、この日1日だけで約1.9兆円と過去最高を記録しました。現在はクリスマス商戦に突入しています。
政府も検討、日本版ブラックフライデーは受け入れられるか
日本では小売大手のイオン(8267)が米国のブラックフライデーにちなんだセールを11月25日から3日間実施しました。イオングループで総合スーパー(GMS)を展開するイオンリテールの広報は、「セールは好調だった。売上は前年の同じ期間と比較して2割増となった」といいます。目玉商品のほか、気温の急激な低下を受けてダウンコートや羽毛布団などの防寒用品の販売が伸びたそうです。
政府も米国のこのイベントに関心を寄せています。経団連と連携し、2017年2月から毎月最終週の金曜日に「プレミアムフライデー」と称した消費喚起策を検討しています。経団連に属する企業にはイベント当日、午後3時ぐらいに早期退社することを呼びかけるそうです。こうした試みの背景には、政府が掲げる「名目GDP600兆円」や「働き方改革」をなんとしてでも達成したいとの意向があります。消費の活性化には所得アップが欠かせませんが、政策の後押しに加え、クリスマスやハロウィーンなど海外イベントを好む日本では、ブラックフライデーも浸透するかもしれません。
小売業の株価が堅調な月は意外にも…
クリスマス商戦は小売りやメーカーなどが主に影響を受けます(下表参考)。稼ぎ時となるため、月次や四半期の売上高に株式市場の注目が集まります。
では、冬場は小売業の株価が上がりやすいのでしょうか?2006年12月~2016年11月までの東証業種別株価指数の「小売業」と、日本株全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)の月間騰落率を比較してみたところ、小売業がTOPIXを上回った回数は120回中、ほぼの半分の59回でした。さらにこれを月別に分析してみると、6月が8回と最も多くなりました。クリスマス商戦時期の11月と12月はともに5回でした。投資タイミングを考える際、こうした過去のデータも参考にしてみてください。
<クリスマス商戦関連銘柄>
<小売業の月間騰落率がTOPIXを上回った回数は?>
※東証規模別株価指数の小売業とTOPIXの2006年12月~16年11月までの120カ月間の月間騰落率をそれぞれ比較
(編集:QUICK Money World)