▲米大統領選における各州の票数
米大統領選挙や米議会下院・上院選挙の投開票日を8日に控えるなか、大手証券会社も続々と、勝敗や結果に応じた相場への影響を公表している。全般的には共和党候補であるドナルド・トランプ氏が勝利した場合、経済の先行き不透明感が強まりドル安(円高)・米株安という展開を、民主党候補であるヒラリー・クリントン氏勝利の場合はドル高(円安)・米株高という展開を予想している。
ドイツ銀行は、上院で共和党が過半数を維持できれば米国株が堅調という視点も提示している。各社のコメントの要旨は以下の通りだ。
ドイツ銀、「上院で共和党が過半数維持ならS&P500は2200ポイントへ」
米大統領選挙や米議会下院・上院選挙の投開票日を8日に控える中、ドイツ銀行(DBK)は「S&P500指数は2100~2200ポイントのレンジ内で今年を終えるだろうが、上院で共和党が過半数を維持すれば2200ポイントに接近しそうだ」と予想した。
8月以降、クリントン氏の優勢が伝わってからヘルスケア関連株は民主党の快勝を織り込むかのように打ちのめされていたとしながら、「民主党の快勝は緩やかなFEDの利上げシナリオも示唆するものの、仮に上院で共和党が過半数を維持できればヘルスケア・銀行株が主導するかたちでS&P500がラリー(徐々に上昇)する」公算が大きいという。4日付のリポートで見解を明らかにした。
ゴールドマン、クリントン氏の勝利予想を維持…金の予想価格も据え置き
ゴールドマン・サックスは7日付のレポートで「予想を据え置き、引き続きクリントン候補が大統領選挙を制すると想定している」と指摘した。一方で「大統領選挙は接戦になり、9日の早朝まで結果がわからない可能性もある」とした。
金の価格とトランプ候補の支持率には直近で強い相関関係があるが、ゴールドマン・サックスは金の先行きに対する予想を継続。四半期先と半年後の金の予想価格を1オンス1280ドルに据え置いた。7日時点の清算値(1279.4ドル)とほぼ変わらずの水準だ。1年後の予想も1250ドルに据え置いた。据え置きの理由は「トランプ氏が勝利するためには多くの州で支持率を逆転する必要がある」とした。
野村、トランプ氏勝利なら「米利上げ先送りも」
ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルは7日付のレポートで、米大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン氏が勝利した場合、経済は現状を維持するとの見方を示した。その場合、経済成長率はおおむね2%とした失業率については緩やかな低下を持続する一方、米政治の停滞も続くと想定する。
共和党候補ドナルド・トランプ氏が勝利した場合については「企業や家計がトランプ氏の政策の先行きが不透明として設備投資や消費を遅らせるか、減らす可能性がある」と指摘。金融環境が引き締まる可能性から「米連邦準備理事会(FRB)は想定している12月の利上げを先送りすることも可能」とした。ただ、トランプ氏が打ち出している貿易に対する保護主義はインフレ圧力を高め、FRBは速いペースの物価上昇に直面することになるとの見方も示した。
ソシエテ、クリントン氏勝利で「新たな円安トレンド」
ソシエテ・ジェネラルは7日付のレポートで「トランプ候補が大統領になれば不透明要因が募りリスクオフになる一方で、クリントン候補が勝利すればリスクオンになるだろう」と指摘した。
クリントン氏が勝利した場合、米連邦準備理事会(FRB)の12月利上げが確実になりドル高の進行を見込み円相場は新たな円安基調が生まれるという。米株式市場には安心感が広がり「短期的にはS&P500指数は2150~2200のレンジに戻り、中期的には史上初の高値を更新する可能性もある」としたうえで、2017年4~6月に2350ポイントまでの上昇を予想した。
一方、トランプ氏が勝利した場合は、安全資産とされる円が買われ1ドル=100円の節目割れもあるとする。米株式にも売りが膨らみ、S&P500株価指数は7日終値(2131.52)から大きく下げて1950が下値メドなるという。また、トランプ氏は通商政策に消極的であり「米国外の売上高の大きい銘柄で構成されるナスダック総合指数はより大きな打撃を受ける」と警戒する。恐怖指数で知られるVIX指数(7日終値:18.71)から25~30に水準を切り上げるとも指摘した。
JPモルガン、クリントン氏勝利なら「105円台乗せも」
JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏は8日付のレポートで「クリントン氏が勝利を決定した場合にはUSD/JPY(ドル円)は一時的に105円台乗せもあり得るであろう」とする一方「トランプ氏勝利の場合には来週に向けて一時的に100円を割り込むこともある」との見方を示した。
そのうえで「結果がすぐに決定しない場合は100円前後で膠着する可能性が高いと見る。もっとも、いずれにしても、当社は大統領選挙の結果だけでUSD/JPYが99円台~105円台のレンジのどちらかを大きく抜けるとはみていない」と指摘した。
UBS・WM、「クリントン氏の勝率75%」米株式は緩やかな上昇へ
UBS・ウエルス・マネジメントは7日付のレポートで「米大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン氏が勝利すれば米株式市場は緩やかな上昇に転じるだろう」と指摘した。米国の関連部門にあたるUBSオフィス・オブ・パブリック・ポリシーはクリントン氏の勝率を75%と予想している。一方で、トランプ氏が大統領になった場合は「株式市場から資金が流出し、国債や金といった安全資産に資金が流入する」とした。
(※この記事はQUICKの有料コメントサービス「QUICKデリバティブズコメント」の一部を抜粋したものです)
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(取材:QUICKデリバティブズコメント)
(編集:QUICK Money World)