米大統領選挙に市場が振り回されています。全3回のテレビ討論会を終え、いったん民主党候補である「ヒラリー・クリントン氏の勝利確実か」というムードが高まりましたが、ここにきて勝敗の行方が不透明になってきました。
クリントン氏失速…円高が進む
というのも、ヒラリー・クリントン氏が、国務長官在任時に私用メールを使っていた問題で米連邦捜査局(FBI)が新たに明らかになった電子メールを再捜査すると伝わったためです。11月に入ってから公表された米ワシントン・ポストなどの世論調査で、トランプ氏が逆転優位となる場面もありました。
「クリントン氏勝利」ムードが広まっていた10月後半に1ドル=105円台で推移していたドル円相場は、11月に入ると急速に円高が進み、102円台まで上昇しています。共和党候補であるドナルド・トランプ氏の勝利は「ドル安・円高要因」という調査結果もあるため、市場はトランプ氏の勝利を積極的に織り込もうとしているのでしょうか。関連銘柄の値動きを見る限りでは、そうとは言いきれないようです。
「クリントン・バスケット」と「トランプ・バスケット」がともに軟調
前回、クリントン氏とトランプ氏、それぞれの関連銘柄の株価推移を比較し、マーケットが「クリントン氏勝利」を織り込み始めた様子をお伝えしました。関連銘柄は現在、どのように推移しているのか確認してみましょう。
青色がクリントン氏の関連銘柄「クリントン・バスケット」の値動き、緑色がトランプ氏の関連銘柄「トランプ・バスケット」の値動きです。第3回のテレビ討論会のあった10月19日以降、わに口のように二つのグラフの差は開いていきましたが、ここにきて急速に青色、つまりクリントン・バスケットが下落しています。
一方、トランプ・バスケットのチャートも軟調推移が続いているため、トランプ氏の勝利を市場が積極的に織り込んでいるわけではないようです。
「クリントン・リスク」が浮上…どちらが勝っても手控えムードか
さて、足元で急浮上してきている単語が「クリントン・リスク」です。これまで「もしトランプが大統領になったら」つまり「もしトラ」リスクに市場は身構えていましたが、それとは異なるリスクのようです。
日経QUICKニュース社の記事をみると、市場では「クリントン氏は大統領選で勝利しても米連邦捜査局(FBI)の捜査を受ける大統領として政権基盤は軟弱になる」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)、「クリントン氏は訴追を免れても歴代で最低水準の支持率となる可能性が高く、対外的には強硬な姿勢をとりそうだ」(SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリスト)といった指摘があるようです。
仮にクリントン氏が勝利しても、就任当初から低支持率や議会との関係などで政権運営に苦慮するのであれば、クリントン氏の政策などに基づいて選ばれたクリントン・バスケットが利益確定売りに押される展開は考えられます。
現在は「どちらが勝ってもリスクを積極的に取りにくい」という様子見気分が市場に広がっていると考えるべきでしょう。混戦の様相を強める米大統領選挙に、市場は先行き不透明感を強めています。もちろん、市場で「トランプ・リスク」が再燃すれば、トランプ・バスケットが上昇に転じるかもしれません。その時はさらに円高が進む懸念もあります。
日本時間11月9日に結果が判明する米大統領選の投開票。引き続き、選挙の動向に敏感な銘柄や金融商品の値動きには注視が必要でしょう。
(編集:QUICK Money World)