株式投資家にとって目下、最大の関心事は、12月14日に行われる衆議院議員の総選挙でしょう。
今回の争点は、2012年12月からスタートした「アベノミクス」に対する信を問うというもの。475議席を巡る戦いが繰り広げられるなか、自民党単独で300議席超を獲得するという下馬評も流れています。与党の勝敗ラインは270議席。クリアできなければ、マーケットに波乱が起こるのは必定です。
アベノミクスに対する評価は「保留」
市場関係者は今回の選挙結果をどのように予測しているのでしょうか。12月2日から4日にかけて、証券会社および機関投資家の株式担当者271名(回答者数176名)を対象に行われたQUICKの月次調査(株式)で、特別質問として尋ねてみました。
まずアベノミクス全体に対する評価は、「判断は時期尚早」という回答が全体の57%を占め、まずは様子見ムード。ただ、「成功に向かっている」が34%で、「失敗の可能性が高い」は9%に過ぎません。マーケット関係者に対しては、辛うじて「そこそこ良い」という評価のようです。
アベノミクスに対して積極的に「成功」という評価が下されないのは、第三の矢に対する評価が低いからでしょう。成長戦略に対する評価は、「積極的に評価する」と「ある程度評価する」を合わせて46%。対して「あまり評価できない」と「全く評価できない」が合わせて52%を占めました。
野党は今回の選挙で、成長戦略に対する現状評価を争点にしてくる可能性が高く、安倍首相がこれに対して「成長戦略は軌道に乗りつつある」ことを有権者にどう印象づけられるかが、勝敗を決するといっても過言ではありません。
ちなみに、消費税率再引き上げ延期に対する評価は、「積極的に評価する」と「やむを得ない」を合わせて80%が、評価の意向を示しています。
勝敗ラインを超えた議席上積みが焦点
さて、気になる総選挙ですが、マーケット関係者の票読みは、圧倒的に与党勝利を見込んでいます。与党勝敗ラインである270議席を確保して与党が勝利を収める確率を株式市場関係者に聞いたところ、単純平均は84%強(最頻値は90%)となりました。
ただ、「自民党単独300議席」という下馬評が出ているだけに、たとえ与党勝利でも、270議席程度の確保では、逆にマーケット関係者の間に失望感が広まる恐れがあります。選挙結果がマーケットから前向きに受け止められるかどうかは、270議席からどこまで議席を上積みできるかに左右されそうです。
前回高値に迫る日経平均株価、予想平均値は1万8000円超え
選挙結果という不透明要因はあるものの、株式相場自体は堅調です。1カ月後の日経平均株価の予想は、単純平均で1万7919円。11月調査が1万7126円だったので、大幅な上方シフトとなりました。
また、3カ月後の2015年2月末時点の日経平均株価は1万8053円予想で、大台乗せ。さらに6カ月後の2015年5月末時点は1万8493円予想となっており、来年前半にかけて、株価の見通しは強気になっています。
ちなみに、この原稿を書いている12月8日時点で、日経平均株価は1万8000円の大台に乗せてきました。1万8000円台の回復は、2007年7月24日以来、7年4カ月ぶりのこと。2007年2月26日につけた前回高値の1万8300円まで、あと一歩というところまで迫ってきました。
今後、6カ月程度を想定した場合の注目材料としては、「景気・企業業績」、「政治・外交」の指数が上昇する一方、「内部要因・市場心理」、「金利動向」、「為替動向」が低下。「海外株式・債券市場」がほぼ横ばいとなりました。
また、最も注目している投資主体としては、「個人投資家」と「事業法人」の指数が上昇する一方、「投資信託」や「金融法人」が低下しました。前回調査に比べて指数的には低下したものの、「企業年金・公的資金」は72.7と高い水準を維持。
この指数は50を超えると、株価にとって上昇インパクトになるとみなされるので、相変わらずマーケット参加者の間では、企業年金や公的資金に対する買い期待が強いことを意味しています。
ファンド運用者のスタンスは意外と慎重?
自社資金や年金運用の担当者を対象に、今後の日本株の組入状況を聞いたアンケートでは、比較的慎重なスタンスが垣間見られます。
現状のポートフォリオについて、「かなりオーバーウエート」、「ややオーバーウエート」を合わせたオーバーウエート比率は、11月調査時点では52%。これに対して12月調査時点では45%に低下しました。この間、ニュートラルは41%から46%に上昇。株価は上昇傾向にありますが、全体で見ると株価の上昇に対して冷静なスタンスを維持しています。
また当面のスタンスについても、「かなり引き上げる」と「やや引き上げる」を合わせた回答比は、11月調査時点の30%から、12月調査時点では25%に低下。「現状を維持する」が、67%から70%に上昇しています。
11月調査時点では0%だった「かなり引き上げる」の回答比が、5%に上昇したことは、マーケットに強気筋が回帰しつつあることを伺わせますが、同時に「やや引き上げる」が30%から20%に大きく低下しており、総じて見れば、ファンド運用者の見方は慎重であることが分かります。