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税制改革・後継者難でM&A注目 「食品界のREIT」目指す企業も

QUICKコメントチーム=弓ちあき

先進国の景気先行き不安が広まる一方、各国の金融緩和でカネ余りのムードは強い。企業の手元資金はどこに向かうのか。有力な使い道の1つがM&A(合併・買収)だ。レコフデータ(東京・千代田)の調べでは1~9月期のM&A件数は前年同期比10.4%増の3038件で、3年連続で最多を更新。金額ベースでは前年の武田薬品工業(4502)によるシャイアー買収の反動で減ったが、マクロ環境が読めない中で成長加速の原動力を外に求める動きは活発だ。自民党の甘利明税調会長もM&Aに対する税制優遇に前向きな姿勢を示しており、2020年度の税制改正大綱の取りまとめに向けた議論が注目される。

少子高齢化、人口減少の構造問題を抱える日本にとって、M&Aは大企業ばかりでなく中小企業のニーズも高い。特に経営者の後継がいない企業の事業承継の選択肢としてM&Aの需要は拡大している。帝国データバンク(東京・港)によれば2018年の日本企業の後継者不在率は66.4%で、非同族を後継者とする企業は17年比で1.5ポイント上昇し、33%となっている。

そうした場面でM&Aを仲介する関連企業としては、日本M&Aセンター(2127)、M&Aキャピタルパートナーズ(6080)、ストライク(6196)の3社が上場している。最大手のM&Aの19年3月期の成約件数(取引数)は402件で、前の期比21%増だった。M&Aキャピの19年9月期の成約件数は140件の見通しで、前期比22%増。ストライクは20年8月に同38%増の143件の成約を目指す。

M&Aは事業承継支援を手掛ける青山財産ネットワークス(2部、8929)に出資してサービス共同提供などを進めるほか、M&AキャピはM&A助言のレコフ(東京・千代田)の子会社化のほか、みずほフィナンシャルグループ(8411)傘下のみずほ銀行と提携して事業承継ニーズの獲得を狙う。ストライクは強みであるネット仲介を強化しつつ関係性の強い会計事務所などとのネットワークを活用に力を入れるなど、それぞれ顧客の取り込み加速する。好環境を背景に、3社の株価は年初来で見ると、37%~2.4倍に軒並み上昇し(25日時点)、TOPIX(東証株価指数)を大きく上回っている。過去3年を振り返ってもアウトパフォームし、数年来の安定した成績ともいえる。

M&A仲介企業では、専門性ばかりではなくオーナーの信頼を勝ち取るには人間性の高さも必要と、適正人材のハードルは高い。平均年収ランキングの上位にも仲介企業が並ぶように獲得競争は熾烈(しれつ)なようだ。成約件数を伸ばして事業拡大を進めるうえでは人材獲得がボトルネックになりかねない。

一方、M&Aを成長の源泉に位置付ける企業としてユニークな存在が、中小の食品企業を傘下に持つヨシムラ・フード・ホールディングス(2884)だ。16年3月上場の企業だが、16年以降で10社を子会社化している。ホームページのトップに「M&A募集」項目を掲げるほど現在も熱心で、子会社として受け入れる食品会社(健康食品含む)を探している。余談だが、かつて筆者の知人も東京で記者として活躍していたが実家の製麺会社を継ぐことになり夫と故郷に帰った。今も店頭で商品を見かけると必ず買い、陰ながら応援を続けているが、食品業界は後継者問題に悩む中小企業が多い業態でもある。

そもそもヨシムラフードの吉村元久最高経営責任者(CEO)は外資系金融の出身で食品の専門家ではない。筆者は上場して間もないころに取材の機会を得たが、吉村氏が目指すのは食品業界の「REIT(不動産投資信託)」のイメージだと話していたのが印象的だった。

1社では投資対象にならないほど小さく、また課題を抱えていても、同社が「中小企業支援プラットフォーム」と名付ける基盤を活用して、グループ企業それぞれの「弱点」をテコ入れし、「強み」を他に生かすのがビジネスモデルの特徴だ。

たとえ弱者でも、まとまれば互いの持つノウハウや流通ルートを共有しながら成長していく道筋を描くことが可能になる。いわば「三人寄れば文殊の知恵」の発想だ。また1社が逆風下にあっても、別の1社が稼ぎ頭として活躍できれば、グループ全体では悪影響やリスクを緩和することもできる。複数の不動産物件を束ねて投資商品に仕立て上げるREITとの共通点だ。

15日に発表した2019年3~8月期連結決算は、売上高が前年同期比29%増で営業利益は3倍、純利益が76%増だった。一部子会社で原材料価格の上昇が収益を圧迫しているものの、新規子会社の寄与で補っており、グループ運営のメリットの一端を垣間見る内容だった。足元は調整基調とはいえ、年初からは株価は約2倍の水準だ。

4月にはシンガポールに統括のための現地法人を設立し、海外展開に本腰を入れつつある。日本同様、シンガポールも高齢化の加速に伴って今後、後継者探しのM&Aニーズの高まりが予想されるという判断のようだ。日本食ブームの追い風に乗る好機を着々と狙っている。

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