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IPリポート VOL.13【小売り】ステーキも回転寿司も、どっちもウマい

記事公開日 2019/9/2 10:15 最終更新日 2019/10/15 23:52 注目銘柄 国内 いきなり!ステーキ 外食 小売 特許・知財 特許ランキング IP最前線

上場している小売業(外食など含む)のうち、特許を保有しているのはわずか26%。ただ、重要特許を保有している企業には、ユニークな商品やサービスを提供しているところが多く、特許が小売業にとっても重要な武器になっている。

重要特許保有ランキングでは、1位は「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービス、2位には回転寿司チェーンのくら寿司が入った。いずれも出願姿勢に知財意識の高さを見ることができる企業で、知財戦略を業績拡大につなげている好事例と言える。

「いきなり!」「くら」は差別化戦略で高成長

正林国際特許商標事務所

証券アナリスト=三浦 毅司

第1章  小売業の特許保有は4社に1社

高成長の外食関連が上位に

日本の株式市場に上場する小売業364社(2019年8月1日現在)の中で、有効な特許を保有している企業は93社と全体の26%にとどまる。知財権利化が遅れている業界のひとつだ。

(PatentSQUAREを元に正林国際特許商標事務所作成)

保有する特許の重要性を、KKスコアを用いて、保有する特許の重要性に注目してランキングした。1位は「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービス、2位にはくら寿司と外食産業で高成長を続ける企業が上位に入った。

小売業の重要特許ランキング上位には、ユニークあるいは高度な商品やサービスを提供する企業が多くみられる。こうした商品やサービスの特許を出願することで、他社との差別化を実現、業績を伸ばしていると考えられる。小売にとっての特許は、大きな武器になっていると言えるだろう。

■小売業のKKスコアランキング(正林国際特許商標事務所)

 

第2章 個別企業分析

●ペッパーフードサービス(3053)

ペッパーフードサービスが保有する特許のうち、高評価なものは以下の2つだ。特に(B)のステーキの提供システムに関する特許は注目される。

  • (A)電磁誘導加熱を利用した加熱装置(特許第3680942号)
  • ステーキを顧客に提供する際、ステーキを置く鉄板の温度を適温の290~300℃にするための加熱装置に関する特許。従来は加熱時間を調整していたが、加熱前の温度が状況により違い、適温に加熱することが難しかった。この装置は、赤外線センサを用いて鉄板の温度を測定、IHヒーターにより鉄板を加熱し、適温になったら加熱を停止することで、効率的かつ確実な温度設定を可能にした。温度センサーの汚れ防止のため、エアーノズルも設置されている。
  • (B)ステーキの提供システム(特許第5946491号)
  • 立食ステーキの提供システムを特許にしたもの。顧客は、案内された立食テーブルでステーキ以外を注文した後、テーブル番号の書かれた札を持ってカットステージに移動、好みの量、焼き方を注文して、自分の立食テーブルに戻る。食事が終わったら顧客は精算し、サービスを終了する、という一連の提供するサービスを特許出願したもの。

(B)の特許は競合先にとって、眼からうろこだったに違いない。そば、寿司、居酒屋など立食のサービスはありふれている。また洋食でも、2011年に「俺のイタリアン」が開業、ステーキの立食は「いきなり!ステーキ」の開業が2013年12月とむしろ後発だった。

しかも、特許(B)の対象となっている業務フローの一つ一つは目新しいものではなく、それをパッケージとして特許出願したことに意味がある。ビジネス方法の特許は、通常、ICT(情報通信技術)を利用して実現された発明であることが必要だが、この特許に関しては高度なICTを活用しているわけではない。

このため、この特許(B)は2016年11月に「発明ではない」として特許異議の申し立てがなされ、一度は2017年3月に特許が取り消された。ところがペッパーフードサービスはあきらめなかった。2017年には意見書の提出、訂正の請求を行い、2018年10月には知財高裁において取消決定が取り消され、特許が確定した。

この特許の効果は大きい。他社が立食ステーキという業態を採ることを難しくさせ、業績の急伸につながったと評価できる。この特許出願は経営者の高い知財意識によって実現したと見ることができるし、こうしたユニークな業態展開においては知財戦略が極めて重要であるという例と見ることもできる。

■ペッパーフードサービスの業績推移

出所:会社資料

くら寿司(2695)

くら寿司の特許で評価の高いのは、いずれも2000年から2001年ごろに出願された、飲食物の注文装置、店内用飲食物搬送装置、容器回収装置に係る特許だ。

回転するコンベアが寿司などを顧客の席まで届けるシステムはすでに1980年代に特許が出願され、その後、第2世代ともいうべき発明が2000年に入ってから相次いだ。くら寿司が出願した発明は、タッチパネルで飲食物を注文できるシステム、飲食物の到着を顧客に確実に認知させるシステム、テーブルで食べ終わった皿を効率よく回収するシステムなど、より顧客の利便性を高める発明となっている。

回転ずしを主力とする4社の経常利益を比較しても、くら寿司の安定した収益が目に付く。

■くら寿司の業績推移

■上場回転ずし4社の経常利益

(2019年9月2日)

(免責事項)本レポートは、レポート作成者が信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、レポート作成者及びその所属する組織等は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であること、重要な事項の記載が欠けていないこと、将来予想が含まれる場合はそれが実現すること及び本レポートに記載された企業が発行する有価証券の価値を保証するものではありません。本レポートは、その使用目的を問わず、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、その使用結果について、レポート作成者及びその所属組織は何ら責任を負いません。また、本レポートはその作成時点における状況を前提としているものであって、その後の状況が変化することがあり、予告なく変更される場合があります。

正林国際特許商標事務所 (三浦毅司 takashi.miura@sho-pat.com 電話03-6895-4500)


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