IPリポート【番外編】空中ディスプレイで世界に挑む アスカネット

QUICK編集チーム=伊藤央峻

映像が空中に浮かび、触れることもできる「空中ディスプレイ」。ハリウッドのSF映画に出てくるような、こうした独自の特許技術を武器に世界と渡り合っている企業がある。フォトブックの作成などを手掛けるアスカネット(2438、マザーズ)だ。特許の価値を算出する「KKスコア」のランキングで上位に入ったその知財戦略の現場をご紹介する。

本社の玄関に「バーチャル受付」

東京から新幹線とJR可部線を乗り継いで約4時間半。下祇園駅で降りて、静かな住宅街を10分ほど歩くとアスカネットの本社屋が見えてくる。

広島市の本社

エントランスで来客を出迎えてくれるのは、空中ディスプレイを使った「新受付案内システム」。受付台の前に立つと、ディスプレイが宙に現れた。タッチの操作で画面に映る受付嬢のアニメーションがフロアの案内などをする。空中のため触れた感触はなく、センサーが指の位置を読み取って画面を切り替える仕組みだ。

画面の前に立つとスクリーンが浮き上がり……

横にずれると画面をのぞいても見えなくなる

国内外の展示会でも好評を博すというこの空中ディスプレイの技術、実は他社から技術者ごと特許を買い取ったのが始まりという。2011年、空中ディスプレイの研究をしている企業から特許買い取りの打診があり、画像映像の新しい表現方法を模索していたアスカネットが手を挙げた。

「あんなこと、できたらいいな」の空想が原点

もしかしたらモノになるかもしれない――。暗くてぼやけていて、製品化に耐えないように見えた空中ディスプレイ特許の獲得に動いたのは、経営陣の空想がきっかけだ。「ドラえもんのような世界ですが、あんなことができたらいいな、と語り合うのが我々は好きなんです」と功野顕也・最高財務責任者(CFO)は話す。もともと画像や映像に強みを持つ同社が新しい表現を追い求めていた中で、この技術に「ビビッときた」のだという。

開発担当者も「何かとしがらみが多い大企業と違って、自分の裁量を生かして開発できる」と移籍に同意。アスカネットの「エアリアルイメージング事業」として空中ディスプレイの研究が継続されることになった。「うまくいかなくとも何らかの知見は残る」というダメ元覚悟のチャレンジ企画で始めたが、数年後に品質が大幅に改善。「大きなビジネスになるポテンシャルを確信している」(功野氏)という。手で直接触れずに操作できるため衛生的で、医療分野や飲食関連、自動車、アミューズメントなど様々な用途が期待されている。

知財戦略を説明する功野顕也CFO

不要な特許は躊躇なく権利放棄

空中結像の分野は「1年で技術が陳腐化する」(同)というほど進化も競争も激しい分野だ。手間とお金もかけた同社の特許に注目した大手の製造業などからディスプレイ発注の引き合いが増えているほか、アスカネットの技術を前提にした特許も多く出願されるようになった。アスカネットは空中で像を結ぶ技術の基礎部分の特許をがっちり押さえているため、それが他社の安易な製品化を防いでいるという優位性があるわけだ。

特許は取得して終わりでなく事業に役立つかどうかが重要で、優先順位をつけて取捨選択する必要がある。技術ごとにランク付けして、製品化の核になる重要な特許を中心に取得。不要と判断すれば躊躇なく権利を放棄することもある。功野CFOは「特許が高い評価を受けたことは嬉しいが、あくまでビジネスの手段の一つで、ビジネスとして成功することがもっとも重要」と強調する。

■フォトブックと遺影関連が好調

アスカネットの本業の2本柱は好調だ。ォトブックの受注生産事業は7期連続で、遺影写真の加工・編集の事業は上場した05年以降の全ての期で増収を続けている。それらで生み出したキャッシュが空中ディスプレイの研究を加速させるドライバーとなっている。

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