アップルショックから4週間 見えなくなるもの、見えてくるもの【米決算プレビュー:10~12月期】

アップルが29日の大引け後、2018年10~12月期(1Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによれば、1株当たり利益(EPS)の市場予想の平均値(35社、24日時点)は前年同期比7.1%増の4.17ドルとなっている。アップルは2日に1Qの売上高が当初予想よりも5~10%低い840億ドルにとどまる見込みだとして従来予想を下方修正済み。利益ベースの業績悪化に加え、前回決算時のカンファレンスコールでiPhone販売台数を開示しない方針を示していた経緯もあり、市場では2018年1~3月期(2Q)の見通しなども含めて先行き不透明が強い状況だ。

【10~12月期決算の市場予想】 (前年同期比)
・売上高      840億ドル ( -4.8%)
・EPS(1株利益) 4.17ドル ( +7.1%)
・iPhone販売台数 6782万台  (-12.2%)

【1~3月期決算の市場予想】 (前年同期比)
・売上高      593億ドル (-2.9%)

アップルは2018年9月に有機エレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレー(OLED)のiPhoneXS、XS Maxに加え、液晶パネル(LCD)モデルのiPhoneXRの計3機種を発表した。需要期である10~12月期を前に買い換えが期待されたが、需要低迷といった報道が相次ぎ、アップルの販売戦略や多機能携帯電話(スマートフォン)市場の飽和懸念が強まる状況だった。また昨年11月2日の4Q決算発表時のカンファレンスコールで、ルカ・マエストリ最高財務責任者(CFO)が今後、決算でiPhoneなど個別製品の販売台数・平均販売価格を発表しない方針を表明したことで、情報開示に対する姿勢に疑問符もついた。24日には自動運転開発を進めるプロジェクト・タイタンで200人以上の人員を削減したと伝わっており、iPhone以外の成長シナリオが見つかりづらい状況である。

ゴールドマン・サックスは24日付のリポートで「2018年1~3月期(2Q)の弱い業績見通しを受けて株価は弱含みそうだ」と指摘した。2日に売上高見通しを下方修正したことについてアップルは中国など新興市場の需要の弱さを理由にしていたが、GSは「中国は依然として弱いと考えられるが、欧州でシェアを失っているとみられる」と指摘。1QのEPSを4.17ドルとコンセンサス並みで予想しつつ、2Qについては売上高が583億ドル、iPhoneの販売台数を4230万台と見込み、それぞれ市場予想(593億ドル、4499万台)を下回る弱気な見方を示した。

「バイサイドの推定はさらに我々を下回る可能性が高い」としつつ、「アップルは今後、iPhone販売台数を公表しないため、2Qの動向についてはより高いレベルの議論と変動が予想される」と先行きに不透明感があるいう。GSは2018年9月に中国のスマホ市場が弱いことを検出したため10月からアップルの収益にリスクがあると積極的に指摘してきたとしつつ、「中国の潜在需要環境に改善の兆候はみられないが、悪化の速度は鈍化している」と指摘した。

またリポートでは、アップルが今月8日に会計を変更した点に着目。音声認識のSiri、無料のiCloudなどの償却をiPhoneやiPad、Macなどその他の製品の販売価格とまとめてサービスの売上高として計上するという。「これにより、iPhoneなどの製品の売上げを効果的に減らしつつ、それに相応してサービスの売上高粗利益率の向上に役立つと確信する」と指摘した。投資判断のニュートラル、目標株価140ドルを維持していた。

ベアード・エクイティ・リサーチは24日付のリポートで「2019年の予想は依然として高いか?」と先行きに警戒した。ガイダンスに注意として「2Qと2019年通期の市場予想が中国やその他に地域が困難な状況であることを踏まえると、依然として高い」と指摘。アップルのエコシステムの優位性や潤沢なキャッシュフローという長期的なポジティブ要因はあるが、「短期的に市場のコンセンサスがリセットされるまでは慎重に見たい」と指摘。投資判断のアウトパフォーム、目標株価185ドルは維持した。

アップルの株価は今月3日に142ドルまで下げ、2日に売上高を下方修正したことを受けて一時は10%超の急落となった。昨年10月に付けた上場来高値(233.47ドル)からは39%もの下げを記録している。その後は相場の地合い改善を受けて戻り歩調にあるが、一時は1兆ドルを超えた時価総額も7000億ドル台で低迷し、マイクロソフトやアマゾン・ドットコムの後塵を拝している。

QUICK FactSet Workstationによれば、同社をカバーするアナリスト41名の目標株価の平均値は179.62ドル(24日時点)で、24日終値から17.6%のアップサイド余地があると見込まれている。株価は悪材料を織り込んだ状態にあると言えるが、年明け以降は投資判断や目標株価の引き下げが相次ぎ、「買い」の投資判断を下している比率が49%に低下し、2005年12月以来、14年ぶりに買い推奨の比率が過半数割れとなった。2007年に初代iPhoneを発売して以降、初めてのことである。市場のセンチメントが弱気に傾いていることは確かで、映像コンテンツなどでiPhoneに変わる成長シナリオを示せるかどうかが焦点となりそうだ。(片平正ニ)

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