「ドル一強」から2019年は「ドル高・円高」へ――。QUICKと日経ヴェリタスが共同実施した外国為替市場関係者への調査で、来年の最も強い(上昇が見込まれる)通貨に米ドルと円を挙げる見方がそれぞれ30%台と多くなった。ドルは米国経済の底堅さへの期待から買われ、円の場合は米国や世界景気の減速などリスクオフで買われるという理由が目立つ。
ドルは今年、複数通貨に対する名目実効レートが33年ぶりの高水準を記録するなど、独り勝ちの状況だ。雇用統計をはじめ、好調な経済指標をうけて米連邦準備理事会(FRB)は3回の利上げを実施。世界の投資マネーが米国に流れ込み、そのあおりでトルコやアルゼンチンなど新興国の通貨が急落する局面もあった。
調査では19年も引き続きドル=最強を予想する回答が32%にのぼったほか、円を選んだ人の割合も36%と拮抗している。これは、為替相場への影響が極めて大きい米国の金融政策についてのとらえ方の違いによるものだ。
今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では今年4回目の利上げが確実視されるが、問題は来年の回数。調査では「2回」の予想が47%、「1回」が41%と、見方が分かれた。これまで3~4回の強気な予想も多かったが、パウエル議長のハト派的発言などもあって足元では雰囲気が変わってきた。
「ペースが鈍ったとしても利上げする国の通貨は強いし、米経済は世界の中で相対的に堅調」(証券会社)とみればドル高のシナリオ。逆に、「利上げ打ち止め、景気減速に伴うリスク回避」(投信投資顧問)と見れば、ドルが売られて円が買われやすくなる。
住友商事グローバルリサーチの鈴木将之シニアエコノミストは「米経済が弱くなり、景気が鈍化あるいは減速に向かっていけば、円高傾向が強まると考えている」と話す。
では19年末の円の対ドル相場をどう読むか。調査では「1ドル=110~115円」の予想が34%、「105~110円」が31%となった。
今年の円の対ドルの高値は104円半ば、安値が114円半ばで、約10円の値幅は歴史的にみても狭い。「ドル・円相場は2年続けて狭いレンジに留まっており、動く力が蓄積されている可能性がある」(MU投資顧問の菊池宏債券運用部チーフストラテジスト)との声がある。来年は相場のボラティリティー(変動率)にも関心が集まりそうだ。
調査で最も弱い(下落が見込まれる)通貨に挙げられたのは英ポンド(50%)だった。現在は1ポンド=1.26ドル台と年前半の1.43ドル台から切り下がっている。欧州連合(EU)離脱協議の難航や政局混乱でポンド売りの展開はまだしばらく続くとの見方が多い。
月次調査は10~12日に実施し、金融機関や事業会社の外為担当者78人が回答した。(QUICKナレッジ開発本部 永島奏子)
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。ヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。