取引の停滞が著しい国内債券市場が活発化するには何が必要か。QUICKが2日まとめた月次調査<債券>によると、債券担当者の8割(複数回答)が日銀の長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール、YCC)を撤廃するべきと答えた。日銀が今の金融政策で金利を低位で抑えつけているかぎり、市場の停滞は続くという見方が大勢だ。
※QUICKは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として公表しています。今回の<債券>の調査期間は6月26~28日。回答者数は141人。
国内債券市場は盛り上がりを欠き、現物債の取引が成立しない時もある。取引が活発になるには「YCCの撤廃」(82%)のほか、「日銀による国債の買い入れの停止」(63%)といった金融政策の修正が不可欠という意見が多かった。「物価の上昇」(40%)、「首相・日銀総裁の交代」(35%)という声も目立った。
調査では「YCC政策で国内債券市場のボラティリティは低位で安定しており、原因がはっきりしている以上、金融政策の変更がなされないかぎり市場の活性化にはつながらない」(国内銀行)との指摘があった。「債券市場を活発化させるだけなら現在の政策をやめて、市場のことは市場に任せればいいが、それには株価暴落など大きな痛みを伴う」(証券会社)という声も聞かれた。
一方、「日銀が金融政策を動かそうとしても、政権が許さない」(投信投資顧問)といった見方や「本格的な債券市場の機能回復には、政権交代がないと難しい」といった意見もあった。
政府は6月15日に経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)と新たな成長戦略「未来投資戦略2018」を決めた。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化について「2025年度を目指す」とし、2019年10月に予定している消費税率10%への引き上げは「実現する必要がある」と明記した。
債券担当者に消費税率の将来の見通しについて聞いたところ、2019年10月時点の消費税率は単純平均で9.7%となった。回答者の84%が予定通り「10%」になるとみているが、16%は「8%」のまま据え置かれると予想しているためだ。さらに5年後の2024年12月末時点の税率予想は10.9%。回答者の58%が「10%」の見通しを示し、次いで「12%」に引き上げられているとの答が24%を占めた。
市場関係者は「19年10月には予定どおり10%に引き上げられると見込んでいる。ただ、安倍政権の後に再び消費税率の引き上げに切り込める強い政権が生まれるとは考えにくく、さらなる引き上げは見通せない」(信託銀行)との声があった。
成長戦略で最も効果があると思う取り組みを聞いたところ、最も多かったのが「外国人材の受け入れ」で37%、次いで「多様な人材の活躍(女性活躍・高齢者雇用など)」が22%だった。「人材への投資(教育の無償化など)」が15%、「働き方改革(長時間労働の是正、最低賃金の引き上げなど)」が14%と続いた。
回答者からは「『外国人材の受け入れ』は、日本の産業に大きく寄与する人材を確保できるメリットが大きい。一方で、『人材への投資』の教育無償化は長期的な視点では国の成長につながるが、結果が見えるまで時間がかかる」(信託銀行)との意見があった。
※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。