GPU(画像処理半導体)大手のエヌビディアが日本時間9日朝、11~1月期(4Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによると、市場予想のEPS(1株利益)は前年同期比16.8%増の1.16ドルが見込まれている。主力のゲーム部門、データセンター部門の好調により、四半期ベースで2桁増収増益を続ける公算が大きい。ただ、増収率・増益率ともにやや鈍化しており、若干の減速感が意識される可能性はある。
ソフトバンク(9984)は10兆円ファンドと称される「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じてエヌビディアに多額の出資を行っており、エヌビディアの業績はソフトバンクの株価動向にも影響を与える。
【エヌビディアの株価とEPSの推移】
(注)グレーの折れ線は株価、水色の棒グラフはEPS予想の最高値、青色は最安値、緑と赤の●はEPS実績値をそれぞれ示す
【11~1月期決算の市場予想】(前年同期比)
・売上高 :26億7220万ドル(23.0%増)
・純利益 : 7億2280万ドル(10.3%増)
・EPS : 1.16ドル(16.8%増)
【売上高の部門別内訳】
・ゲーム部門 :15億7300万ドル (16.7%増)
・映像化部門 : 2億4200万ドル (7.6%増)
・データセンター部門: 5億5000万ドル(85.8%増)
・自動車部門 : 1億4900万ドル(16.4%増)
・OEMその他 : 1億7000万ドル (3.4%減)
※QUICK FactSet Workstationより
エヌビディアはコンピューターグラフィックスの先端を行くビジュアルコンピューティング企業で、PCやモバイル機器に搭載される高性能なグラフィックスチップとプロセッサの開発・製造を手掛ける。製品用途は、PCの画像処理から、ゲーム機、専門可視化装置、データセンター、AI(人工知能)、仮想通貨のデータ処理、自動車等へと拡大。任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」のメーンプロセッサーにエヌビディア製のモバイルプロセッサ「Tegra」が採用されている。
ゲーム向けのグラフィック処理などに使ってきたGPUはAIの技術を取り込みやすい特長があり、ディープラーニングに適しているとみたトヨタやテスラなどが相次ぎ採用。エヌビディアのGPUは世界の自動車・部品大手に自動運転車の研究で使われており、レベル5と呼ばれる完全自動運転の技術開発に弾みがつく可能性があるとみられている。
主力のゲーム部門は、好調が続く「ニンテンドースイッチ」向けプロセッサー販売の伸びが期待されるが、注目は成長著しいデータセンター部門だろう。アマゾン、グーグル、マイクロソフトなど米主要クラウド提供会社がエヌビディアのGPUを採用していることから、クラウド市場の伸びの恩恵を享受しそう。
アマゾン、マイクロソフトの10~12月期決算ではクラウド事業の伸びが顕著で、エヌビディアのデータセンター部門の業績にも追い風となるとみられる。
【過去20四半期決算分析】
EPS実績 対市場予想
上振れ回数 18
下振れ回数 2
EPS実績/市場予想(%)
平均乖離率 +39.7
平均上振れ率 +47.5
平均下振れ率 -30.2
決算発表直後1日の値動き
上昇回数 14
下落回数 6
平均騰落率 +6.1
平均上振率 +10.2
平均下振率 -3.4
(注)QUICK FactSet Workstationの「サプライズ履歴」より作成
同社の決算発表は概ね市場予想を上回って着地するケースが多く、過去5年(20四半期)で18回も上振れ。その際の平均上振れ率は48%にも達する。その一方で、2回下振れしたが、その下振れ率は30%。この決算発表直後1日の値動きは、14回が上昇し、6回下落。平均上昇率10.2%、下落率は3.4%だった。
傾向的に市場予想を大幅に上回る着地となり、株価もポジティブに反応することが多い。ただ、市場予想を上回る決算ながら利益確定売りなどで売られたケースも少なからずあることには留意したい。
世界同時株安に揺れた2月5日に急落したものの、依然として最高値圏をキープするなど、業績期待は根強い。市場予想を大幅に上回る好決算となれば、最高値を更新することは十分考えれよう。しかし、PER(株価収益率)が50倍強とバリュエーション面で割安感に乏しいだけに、市場予想を下回る着地で業績の伸び鈍化が意識されると、利益確定売りに押されるかもしれない。
(QUICK エクイティコメント)
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