金融庁は3月下旬、機関投資家の行動原則を示したスチュワードシップ・コードの改訂案を示しました。改訂の背景には、公表から約3年が経過したなか、いまだ形式的な対応にとどまっているのではないか、との指摘があるためです。そこで、今回は毎月実施している市場関係者を対象とした「QUICK月次調査<株式>」を通じて、スチュワードシップ・コードの効果について聞きました(証券会社および機関投資家の株式担当者160人が回答、調査期間は5月9日~11日)。
スチュワードシップ・コード「企業価値向上に一部効果」6割弱
スチュワードシップ・コードとは、機関投資家に求めれられる行動原則です。投資先企業の持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図ることを目的としています。英国の取り組みを参考に金融庁が2014年2月に公表し、足元で受け入れを表明した機関投資家は200社超とされています。企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)とセットで考えられます。
まず、このスチュワードシップ・コードのこれまでの効果について市場関係者に聞いたところ、「企業価値の向上に一部の効果が認められる」が最も多く6割弱を占めました。ただ、「形式的には整備されたが、実効的な効果が認められない」との回答が3割あり、「企業と株主との対話は依然として効果的に行われていない状況であるため、今回のスチュワードシップ・コード改訂を機に企業価値が高まるような対話が実現することを期待したい」との声が聞かれました。
今回の改訂案ではアセットオーナー(企業年金)のコード受け入れ表明が期待されているほか、議決権行使の個別開示の要請、パッシブ運用のエンゲージメント(目的を持った対話)が求められています。そこで、これらについても市場関係者に聞いてみました。まず、アセットオーナーの受け入れは進むと思いますか、と聞いたところ、最も多かった回答は「受け入れ表明は一部に限られる」が5割、「多くのアセットオーナーが受け入れを表明する」が4割でした。また、個別開示は企業価値向上に効果があるかと聞いたところ「多少は効果がある」が6割を占めました。市場関係者からは「投資家と企業の双方が適度な緊張感を持ち、対話をするようになることは互いにとってプラスだと思う。個別開示は運用会社にとってはリスクではあるが、個別具体的な議論をした方が企業の考えや行動が変わるきっかけになると思う。即効性のある取組みではないが、企業価値向上には寄与するだろう」との見方がありました。
パッシブ運用のエンゲージメント(目的を持った対話)についてどう思いますかと質問したところ、「オーナーが適正なコストを負担すれば、実施すべき」と、「そもそもエンゲージメントはパッシブ運用と理念があわないため、実施する必要はない」が拮抗する結果になりました。市場関係者からは「パッシブ運用のコストが増大することは好ましくないが、議決権の行使に消極的な姿勢は改善する必要があると思う。パッシブ運用の担当者も企業のガバナンス向上と成長の持続のためにも議決権の行使には積極的な姿勢を見せてほしい」といった声も聞かれました。
5月末の日経平均は1万9966円
「QUICK月次調査<株式>」で毎月調査している日経平均株価の見通しについては、5月末の水準で1万9966円(平均値)の予想でした。前回調査(確報)の1万8975円に比べて大幅な上方シフトとなりました。上方へシフトしたのは2カ月ぶりです。また、7月末には1万9929円、10月末は2万62円と小幅ながらも上昇基調の見通しです。
今後6カ月程度の株価の変動要因としては「景気・企業業績」が4割を超え、注目度がさらに高まっています。北朝鮮や欧州の政治的リスクやが高まった前回調査より「政治・外交」は15%に減少し、かわって「為替動向」が20%に上昇しました。
「電機・精密」の注目度が高い
国内の資産運用担当者60人を対象にしたアンケート調査で、現在運用しているファンドにおいて国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、「ニュートラル」が58%まで上昇する一方、「ややオーバーウエート」が27%まで低下しました。
セクター別の投資スタンスについては、「オーバーウエートとアンダーウェート」のバランスをみると、前回調査に比べてオーバーウエートの比率が最も上昇したのが「電機・精密」で、逆にアンダーウェートの比率が最も高いのが「公益」でした。