証券会社や銀行など、外為市場関係者を対象に毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の3月調査を13日に発表しました。今回の調査では金融市場で今、最も注目されている米国の利上げのほか、来年の4月に任期が切れる日銀の黒田東彦総裁の後任人事などについても聞きました。調査期間は3月6~9日、回答者数は金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者70人。
3月米追加利上げなら、マーケットはどう動く?
イエレンFRB(米連邦準備理事会)議長が3月3日の講演で14~15日に開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを検討する方針だと明言したほか、米FRB高官が相次ぎ早期利上げを示唆する発言をしたことから、3月の利上げ観測が急速に広がりました。
そこで、FRBは3月に追加利上げに動くと思いますか、と聞いたところ、「追加利上げ」との回答が94%を占めました。また、FRBは年内に何回利上げすると予想しますかとの質問で、最も多かった回答は「3回」で59%、次いで「2回」が29%となりました。
FRBが3月に追加利上げに動いた場合、各マーケットはどのように動くと予想しますか、との質問には、ダウ工業株30種平均は「横ばい」が46%で最も多く、「弱含み」が28%、「強含み」が26%と続きました。ドル円相場については「弱含み」が52%で最も多く、日米の金利差を背景にドルが買われて円が売られるとの予想が多くなりました。
また、3月のFOMC後に最も注目するテーマやイベントは何ですか、と聞いたところ、最多は「トランプ政権の経済・通商政策」で63%でした。次いで「欧州政治動向」が21%、「FRBの金融政策」が7%、という結果になりました。
日銀次期総裁は誰に?
日銀の黒田東彦総裁は2018年4月8日に任期満了となります。では現時点で、黒田総裁の後任は誰になると予想しますか、と質問したところ、最も多かった回答は「中曽宏・日銀副総裁」が33%、次いで「黒田東彦・日銀総裁(再任)」が28%、「雨宮正佳・日銀理事」が16%で続きました。
市場関係者からは「目標も達成せず、EXITの道筋も示さず、ただ金融機関と年金生活者にストレスをかけて、問題を後任に丸投げするのはあまりに無責任。せめてEXITの際の国民負担を明示し、それでも引き受ける意思のある人に後を任せるべき。黒田総裁というより政治の責任」、「就任時に約束した成果は全く出ていないが、根雪のようなデフレマインドを溶かすにはそれなりの時間がかかるはずであり、黒田総裁の責任ではない。日本経済に様々な弊害を及ぼすデフレを許容する日本銀行の政策スタンスを180度転換した黒田総裁を変えるべき理由は全くないのではないか」と、賛否が分かれました。
プロの予想は目先1ドル=114円台と円安方向にシフト
毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは2月末の平均値で1ドル=114円03銭と、2月調査(112円58銭)に比べて円安にシフト。3カ月後の5月末には114円11銭、6カ月後の8月末には114円43銭との予想です。
今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円とドルが「金利/金融政策」、ユーロは「政治/外交」でした。
企業の前提為替レートは111円台後半
ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面どのようなスタンスで臨むのかを聞いたところ、「ニュートラル」が前月の63%から75%へと上昇する一方、「アンダーウエート」が25%から13%に低下しました。「オーバーウエート」は変わらず13%でした。市場参加者の慎重姿勢が、引き続き高まっていることがうかがえます。
事業法人に業績予想の前提為替レートを聞いたところ、有効回答数8社の円相場の平均値は対ドルで1ドル=111円59銭、有効回答数4社平均の対ユーロが1ユーロ=119円39銭でした。