金融庁の本気度示す「つみフェス2019」 遠藤長官は強歩大会の前に登壇

金融庁が20日午後に東京・赤坂のイベント会場で開いた「つみたてNISAフェスティバル(#つみフェス2019)」は、緑色の服や小物を身に着けた約250人の個人投資家が集まった。積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」の普及を通じて、国民の安定的な資産形成を推進する金融庁の肝いりイベントも今年で3回目。田中良生・内閣府副大臣や金融庁の遠藤俊英長官が登壇し、個人投資家との交流を深めた。

<参加者の内訳>
(性別)男性:73%、女性:27%
(年代別)20代:14%、30代:36%、40代:31%、50代:19%
(投資経験)なし:8%、3年未満:35%、3年以上:54%、過去に投資していたが今はしていない:1%

■田中副大臣「まいた種が豊かに実ってほしい」

最初の挨拶に立ったのは田中副大臣。「グリーンはつみたてNISAの公式キャラクター『つみたてワニーサ』」の色であると同時に、春の芽生えを感じさせる」と語り、「私もつみたてNISAを始めたところだ。まいた種が芽吹いて将来、豊かに実ってほしい」とつみたてNISAを活用した資産形成の広がりに期待を寄せた。

続いて、投資教育家として著名なファイナンシャル・ヒーラー(ヒーラーは「癒し」の意味)の岡本和久氏が基調講話に立ち、お金は汚いものではなく「感謝のしるし」と諭した。具体的な投資先については世界全体の株式を対象にしたインデックス投資を勧めた。

背景として、ノーベル経済学賞受賞の学説であり、現時点での株式市場には利用可能なすべての新たな情報が直ちに織り込まれているため、株価の予測は不可能としてインデックス運用の合理性を説明する「効率的市場仮説」などの専門的理論を紹介した。

■遠藤長官「顧客本位は収益追求とのバランスの問題」

参加者から事前に募った質問を5つにまとめ、「長官に聞いてみよ~!」として、ファイナンシャル・プランナーのカン・チュンド氏(しんようFPオフィス代表)が遠藤長官にするどく切り込んだ。

(質問1)「つみたてNISA」のメリットを教えてください!
(質問2)金融機関は、顧客本位の業務運営を怠っていた?
(質問3)投資が当たり前になるような土壌を作れば投資家が増える?
(質問4)幼少期に必要な金融教育とはどんなもの?
(質問5)つみたてNISAの今後の方向性を教えてください!

遠藤長官は質問に丁寧に答えながら、補足する形でつみたてNISAを取り巻く金融行政の考え方も示した。遠藤長官の発言要旨は以下の通り。

・目の前の顧客の長期的な利益に沿う商品の販売を行うのが顧客本位の業務運営の本来の姿。金融機関が収益を追求するのも大事だが、収益目標にとらわれるあまり、高い手数料の商品の回転売買で収益を上げるのは顧客本位とは言えない。金融機関の収益追求と顧客本位のバランスが大事。

・顧客(投資家)も市場の短期的な動きに合わせて売買する近視眼的傾向が強い。(価格が)急落してもそこで踏みとどまり長期保有するのは難しい。

・金融機関の販売窓口が顧客の投資リテラシーを高める投資教育を行う前線にいる。短期売買を勧めるのではなく長期保有するメリットをアドバイスするのも投資教育。

・外貨建て保険を保険部分と運用部分に分け、運用部分については運用内容や手数料、コストなどを一般の投資信託と比較できるよう分かりやすい情報開示が求められる。

・投資教育は親子で学ぶのが効果的。子供が面白がるのを見て、親がつみたてNISAを始めた例もある。

・給与の振込先が銀行に限定される必要はない。利用者の安全性を守りながら、金融を銀行、証券会社といった業態別から預金・決済・送金などの機能別に整理する方向性を考えている。

・つみたてNISAの制度恒久化については、恒久化が国民的要請であり優先度が高いことを政治に納得してもらう必要があり、そのためには利用者拡大の実績づくりが不可欠。

金融行政の事務方トップである金融庁長官が一般投資家向けイベントに「生出演」するのは異例で、金融庁のつみたてNISA普及に向けた不退転の強い意志を感じさせた。遠藤長官は「つみフェス」の終了後に、約80kmの道のりを夜通し歩く「強歩」大会に参加するとのことで、強歩用のウォーキング・シューズも会場からの視線を浴びた。

■著名ブロガーが投資クリニック、生きた投資教育へのつながり

「つみたて投資クリニック」と銘打ったコーナーでは、投資経験豊富な著名投資ブロガーの虫とり小僧氏、たぱぞう氏、吊られた男氏、NightWalker氏の4人が登壇。虫とり小僧氏が進行役になり、事前に寄せられた個人投資家からの質問を「カルテ」としてスクリーンに映し出し、診断結果を説明した。

(カルテNo.1)投資信託での資産形成は、何年続ければ良いのか、一般的にどれくらいの金額と時間をかけているのか。(30代、男性)
(カルテNo.2)世にあふれる投資話が玉石混交状態で、自分が何をしたらよいか分からなかった。(30代、男性)
(カルテNo.3)昨年のように、現時点での推薦図書を教えてほしい。(50代~、男性)
(カルテNo.4)マイナスの時も淡々と続けていたらその後の回復で報われたのに・・・(涙)(50代~、女性)
(カルテNo.5)仕事で時間が足りません。(50代~、男性)
(カルテNo.6)投資している人=仕事に身が入らない奴のようにきめつけられないか不安。(40代、男性)
(カルテNo.7)長期投資では、どのタイミングで引き出すべきなのか?(20代、女性)
(カルテNo.8)積み立て後、老後の資産の取り崩し方。出口戦略について知りたい。(40代、男性)
(カルテNo.9)国内株式、外国株式、外国債券などもバランスを見て保有すべきでしょうか。(40代、女性)
(カルテNo.10)投資信託を買っているが、米国株、世界株どちらに比重をおいて投資していくべきか。(30代、男性)
(カルテNo.11)税金が不安。(年代・性別、記載なし)
(カルテNo.12)今は2万円くらいプラスになっているので、元本割れする前に、売って益を確定させたくなってしまいます。(30代、女性)
(カルテNo.13)ファンドの目論見書に前年の実質コストを明記して、実質コストでファンドを比較出来るようになったらいいのに・・・(30代、男性)
(カルテNo.14)同様のファンドで、より信託報酬が低いものが出た場合、それに切り替えた方が良いのか?(20代、男性)

ブロガーの診断結果は「20年くらいは続ける」「忙しい人はインデックス投資がおススメ」「出口は気にしなくていい」「推薦本は昨年のランキング上位などでいい。1年でそれほど変わらない」「米国株、世界株のどちらか自分で続けられそうなほうを選ぶ」「利益2万円で売却は論外。ここで売却せずに続けられるかどうかが長期の複利効果を得るうえでの勝負の分かれ目」「新たな低コストに乗り換えるのはよっぽどの時。つみたてNISAはファンドの乗り換え(スイッチング)が不利。売却せずに新たな買い付けを低コストの方にするのでいい」などだった。

紹介されたカルテはつみたてNISAの意見交換会(つみップ)でも同じように繰り返される質問だ。個々人でライフスタイルが異なるので、画一的な正解があるとは限らない中、個人が自分自身でなんらかの答えを出せるところに持っていくというのが生きた投資教育の目標ということになるのかもしれない。

■パネルディスカッションは新規参入3社の幹部が登壇

締めくくりのパネルディスカッションは「金融業界に迫りくるITの波」と題し、膨大な数にのぼるスマホ利用者に対して各種金融サービスを拡充しようとしている3社(LINE Financial、KDDIアセットマネジメント、ソフトバンク)の幹部らが登壇。新規参入の動きが資産形成を取り巻く環境をどう変えるのか探った。

操作性が優れたアプリなどを通じて、初心者が投資を始めるハードルはかなり下がりそうだが、それと同時に投資のリスクや長期・積み立て・分散投資の効用など、投資家の金融リテラシーを高めるための投資教育の重要性が図らずも浮き彫りになった。

■「金融庁長官の登壇は本気度の証し」「投資は歯磨きのようなもの」の声

ブロガーを中心に参加者の感想を聞いた(カッコ内はハンドル名)。

「金融庁長官の登壇と話が素晴らしかった。ブロガーの登壇企画はちょっと真面目すぎたかなと反省。こうしたイベントも、投資と同じように相場環境が悪くなっても『続けて』いくことが大切だと思う」(虫とり小僧氏)

「金融庁長官の話は保険分野での大きな変動を予感させる。企業収益と顧客本位という一見、二律背反になりがちな点をどう両立させるかという金融機関の大きな命題には今後も注目したい。新規参入各社がトータルなサービスで顧客にあらゆる利便性を届けようとする熱意は伝わってきた」(たぱぞう氏)

「金融庁長官が登壇し、つみたてNISA普及に向けた強い発言をしていたのはすごい出来事で期待したい。一方、さらなる制度充実には実績が必要というのもその通りなので、参加者は家族友人にもつみたてNISAを広めてもらえると、登壇者の一人としてうれしい」(吊られた男氏)

「金融庁長官がかなり踏み込んだ発言をしていたのが印象的。ごく普通の人がこういったイベントに参加してきてくれているという印象も強い。一歩ずつ、普通の人につみたて投資が浸透してきていることを感じられて、うれしく思う」(NightWalker氏)

「初めて参加したが、学びがたくさんあり有意義な時間だった。普段ツイッターで連絡し合っている個人投資家と顔を合わせる機会にもなった。田中内閣府副大臣の言葉が印象的。日本全体の投資活性化のために、国だけでなく民間企業や個人ブロガーとも手を取り合っていく強い意志を感じた」(20代、FP投資家リーマンとさか氏)

「ツイッターのハッシュタグ『#つみフェス2019』は参加できなかった人にも情報を伝える上で画期的と感じた。ネット中継も検討してはどうか。つみたてNISA普及には一般著名人による『わたしのつみたて体験』といった体験談を共有する場があるといいかもしれない」(20代、なまずん氏)

「副大臣や金融庁長官ら硬派な方から、ブロガーという緩い人間まで『投資』というくくりでいろんな意見を聞くことができ、とても有用なイベントだった。会場に20代の同世代が少なく感じ寂しかった。もっと若年層が集まれる会になるといいなと思った」(20代、ミドノン氏)

「金融庁長官がざっくばらんに話していたのがよかった。制度やイベントへの想いが伝わり、金融庁の取り組みに期待したいと改めて思った。パネルディスカッションは識者の意見を聞くよりも参加者からの質問に答えて欲しかった。イベントのネット配信を検討してはどうか」(Taku(金融系SEの投資のつぶやき)氏)

「金融庁長官が自ら金融機関への苦言やNISA強化への意気込みを肉声で語ったのはかなりインパクトがあった。ただ特にNISA制度については、国民側にも、制度の意義を理解し制度を活用するリテラシーや実行力を持つように、責任を投げかける内容でもあった」(安房氏)

「非常に豪華な面々が登壇し、つみたてNISAで資産形成していくことを本気で推進させていきたいという金融庁の本気度が伝わってきた。ただ、初心者向けの制度説明がほとんどなかった。スライドを交えて、簡単でもきちんと触れておいたほうがいいのかなと感じた」(パーサモウニアス氏)

「今回初めて参加して、改めてインデックス投資はいいと思った。コストは低く抑えられるし、状況によっては数十年後には結構なプラスも期待できる(絶対にプラスになる保証はないが)。つみたてNISAは若い人たちの口座開設が多いというのは、いい兆候だと思う」(Kojiro Nitta氏)

「金融庁長官の登壇は待ち望んでいた。つみたてNISAへ取り組む意気込みなど本気度も改めて感じ取れた。恒久化はぜひ実現して欲しい。通信・IT業界の金融分野の参入はまさに変わろうとしている印象を受けた。まだ手探りの感じも受けたがニーズはあると思う」(Livamoz氏)

「登壇者もプログラムも多様でメリハリがあった。一番印象的だったのは、金融庁長官がつみたてNISAの使い勝手向上に言及した点。スイッチング導入や恒久化にはとても期待。一方で、一人ひとりの金融リテラシーの向上や長期投資へのコミットも大事と感じた」(ザリガニ氏)

「パネルディスカッションでは既存のサービスに関してだけでなく、投資の未来像にまで踏み込んだ話があってもよかったのではと思う。既存の枠組みにとらわれない金融口座のあり方とか、『量子コンピューターでこんな投資が可能になる!』といった話をして欲しかった」(毛流麦花氏)

「金融庁長官登壇が印象的。やはり金融庁トップが語る言葉は重みがあるし、期待が持てる。つみたてNISAだけでなくNISAの恒久化も実現して欲しい。フェスと称するのであれば、もう少し砕けた感じでお祭り色があってもいいのかなと思った」(Wakaba氏)

「参加者も多く、金融庁がつみたてNISA普及へ力を入れていることがよく分かった。つみたてNISAの恒久化などが検討されていることで今後への期待感も持てた。つみップのように、参加者との懇親会の場などがあれば一層良いと思う」(Sayasayan氏)

「田中副大臣や金融庁長官らの話から、国としてつみたてNISAを盛り上げていく意気込みをすごく感じた。進行時間が少しタイトでもう少し余裕を持って欲しかった。未経験者や初心者には難しい流れだったように感じた。もっと堅苦しい会かなと思ったが、意外と楽しめた」(ずずず氏)

「岡本氏の話は素直に義務教育から教えて欲しい内容。お金は『不浄なもの』という先入観があるが、実はそうではなくて、お金をどのように運用し使っていけば周りが豊かになれるのかを分かりやすく解説してくれた」(takachan氏)

「『投資は普段欠かさず行う歯磨きのようなもの。若い時にはしなくても困らないが、年齢を重ねた時に困る』という岡本氏の言葉が強く印象に残った。つみたてNISAで短期間に大きくもうけることは難しいだろうが、世界の経済の成長を信じコツコツ続けていくのが大事だと思う」(セロン氏)

「有名ブロガーによるちょっとゆるい雰囲気のコーナーは『数万円儲かった。儲かっているうちに売りたくなる』など初心者にありがちな相談に対して『ここが長く続けることができるか否かの分かれ道』と、とても共感できる実用的な回答(診断)を返すなど面白く楽しめた」(やすぎ氏)

「つみたてNISAの認知度はゆっくりと確実に上がっているとの印象を受けた。夫婦で参加も見かけた。投信運用会社の方も一般客席で最後まで残っていた。決して大口保有者ではない個人投資家の考えや要望をキャッチアップする姿勢に変化を感じうれしく思った」(go-en(文系おじさん)氏)

◇つみたてワニーサのツイッターはこちら

◇金融庁・つみップのサイトはこちら

(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

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