三菱UFJ国際投信はIT(情報技術)を活用した業務効率化の一環として、東京大学と産学共同で「AI(人工知能)を使った金融市況分析テキストの自動生成」の研究に取り組んでいる。投資信託の運用報告書などに掲載する市況分析コメントの作成をAIに任せることで、運用担当者が本来の業務に集中できる環境を整えるのが狙いだ。
■テキストマイニングで生産性を向上
コメントの自動生成は、テキスト(文字列)データを分析する「テキストマイニング」のAI技術を駆使。研究を担っている東京大学大学院工学系研究科の和泉潔教授と成蹊大学理工学部情報科学科の酒井浩之准教授は「AIが得意とすることは、AIに任せて人の作業を代替し、人は人にしかできない本来の業務に専念することで、社会全体の生産性を向上する成果を目指す」と強調する。
和泉教授
運用報告書などの市況分析コメントは、投信の運用成績に関連する市場の動向を保有者に説明するためのものだ。例えば、国内株式を運用対象にする投信では「8月の国内株式市況は、中国の景気減速懸念が台頭したことなどを背景とした世界的な株安を受けて大きく下落しました。日経平均株価は8.23%の下落となりました・・・」といった文章で、現在は運用担当者が執筆している。
■株価変動の因果関係を組み合わせた文章を自動生成
こうしたコメントを自動生成するためには、ある期間において株価が大きく変動したイベントを調べて(例えば、人民元の切り下げなど)、その中から株価が変動した理由(要因)と結果を抽出し、それらを組み合わせて人が読みやすい文章に仕上げる技術が必要になる。
共同研究では、この一連の手順を「ある特定期間に日経平均が大幅に変動した」という情報を元に、数千本の記事から関係するキーワードやそれぞれの因果関係を自動抽出し、運用担当者が作成しているコメントに近い形の読みやすい文章にまとめ上げるのに成功した。実際に運用担当者が作成したコメントと比較しても高い類似度を示したという。
酒井准教授
テキストマイニングは、単に業務の効率化だけでなく、投資判断を支援する技術としての活用も期待される。記事やレポート、開示資料など金融・資本市場に関する莫大な量のテキストを有効活用するために、機械的に解析する技術が求められている。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)