鴻海のシャープ買収提案、アップル受注が狙い 技術流出の懸念がネックに

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2016年2月10日にQUICK端末で配信した記事です。 シャープをめぐる経営再建問題、結論は1か月先送りへ シャープ(6753)の経営再建にあたって、同社の役員会は台湾の鴻海精密工業(ホンハイ、コード@2317/TW)グループとの提携に傾いているもようだ。鴻海グループに優先交渉権を提供することで、双方の提携が大きく動き出すことになった。  しかし、技術の外部流出の懸念があることから、日本の官民出資の投資ファンド「産業革新機構(INCJ)」と鴻海グループは交渉を継続することを表明し、 最終決定は1カ月以内に行われるという。急展開を見せる鴻海とシャープのドラマの結末は、さらに1カ月先送りされることになった。   鴻海董(とう)事長はシャープの液晶パネル技術を高く評価 鴻海グループの郭台銘董事長は、シャープの技術を極めて高く評価しており、韓国のサムスンに対抗するための最良のパートナーがシャープだと位置付けている。鴻海グループがシャープの堺ディスプレイプロダクト(SDP)を引継ぎ、資本参加や役員ポストの獲得まで考えているのは、液晶パネルでのシャープの独自技術への興味からだ。  鴻海グループの戦略に詳しいハイテク産業界の関係者によると、鴻海はシャープに巨額の資金を投入しようとしているもようだ。日本での報道によると、投資額は7000億円にまで追加される見込みだという。これは、米アップル(コード@AAPL/U)からの受注のためだ。 現在、鴻海グループは、アップルからアセンブリからコネクタ、金属筐体(きょうたい)、PCB(プリント基板)、タッチパネルなどのキーパーツまでほとんどの部分を受注している。唯一欠けているのが、低温ポリ・シリコン(LTPS)パネル技術なのである。シャープへの資本参加に成功すれば、鴻海はアップルのキーパーツサプライヤーとして最後に残されていた分野を完成することになる。  現在、世界のLTPSパネル市場は、シャープ、ジャパンディスプレイ(JDI、6740)、それに韓国のLGディスプレイによって占められている。LTPS市場のうち、50%以上が主にアップル向けに供給されている。 郭董事長はかつて、パネルは戦略物資であり、事業転換を目指す鴻海グループの発展戦略の重要な基礎だ、と語ったことがある。同董事長は、液晶パネル生産の核心技術の大部分をシャープが握っていると強調している。これが、「なぜ鴻海が積極的にシャープの経営への参加を求めているのか?」という疑問を解く最も重要なカギとなっている。 テクノロジーの流出について強い懸念も 鴻海グループとシャープによる2012年の交渉の際、鴻海が670億円を出資してシャープに資本参加し、シャープの株式の約10%を取得するという条件で双方はまとまっていた。しかし、シャープの経営陣は鴻海による資本参加に強い警戒心を持ち続けていた。当時の交渉では、鴻海に対して子会社4社による共同での資本参加方式を求め、1社当たりの持ち株比率を4%以内とすることで、鴻海が単一の最大株主となることを防ごうとした。  しかし、最近ではシャープ役員会の態度に変化が見られる。シャープの役員会は、鴻海グループとの提携によってより多くの資金が注入され、また部品調達で多大な協力が得られると判断したと考えられる。さらに、郭董事長が自ら日本に赴いてシャープの経営陣と面会し、人員削減を行わないこと、経営に介入しないこと、現在の経営陣体制を維持すること約束したことから、シャープ側の拒絶感を緩和させることができたようだ。  しかし、鴻海グループとシャープが何度も交渉を繰り返しながらこれまでまとまらなかったことは、日本側がキーテクノロジーの流出に対して非常に神経を尖らせていることを示している。もし、産業革新機構またはジャパンディスプレイが投入資金の金額を引き上げた場合、シャープが最後には外国人を選ばず、事業分割によって今回の経営危機を乗り越える道を選ぶことは間違いないだろう。

東南アジア、根強い資金流出継続への懸念 16年は4000億米ドル予想も

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※本記事は2016年1月27日にQUICK端末で配信した記事です。 新興国からの資金流出7350億米ドル…過去最高水準 中国経済の成長鈍化と原油価格の下落が重なったことをきっかけに、世界の株式市場は大幅な調整局面を余儀なくされている。中国・上海総合指数(コード@@SSE/HD)は年初以降で2割近く下落。先進国株のみならず東南アジア地域の株式市場も例外なく売りに押された。例えばマレーシア証券取引所の主要指標であるのFTSEブルサ・マレーシアKL総合指数(FBM・KLCI、コード@@COMP/KL)は5%強下落するなど、多くの投資家が同地域から投資資金を引き揚げる動きをみせている。  国際金融協会(IIF)によると、2015年に新興国市場からの資金流出額は7350億米ドルに達し、過去最高の水準を記録した。IIFは2016年については多少は状況が改善するとみているが、資金流出額は4000億米ドルを超える可能性があると予想している。 「現在の状況は2007年よりも悪い」OECD経済開発検討委員会 こうした動きのきっかけとなったのは、昨年半ばに中国政府が突然、通貨人民元の基準値の算出方法を従来の米ドルペッグ制に近い方法から変更し、その他の主要通貨のレートをより反映させると決定したことだった。中国政府の決定を受けて人民元は下落し、各国の金融市場に動揺が広がった。 原油価格が13年ぶりの低水準まで下がっていることもあり、アナリストらは人民元の下落基調が続いた場合、事態はさらに悪化する可能性があると警告している。  シティグループはとりわけ悲観的で、世界的な景気後退を懸念し始めている。同グループのアナリストらは「世界経済の見通しについて、その脆弱性が臨界点に達していると考えている。世界経済の成長への期待が薄れ、大規模な経済刺激策を導入することで取れていたここ数年のきわどいバランスが崩れつつある」と指摘。「当社はディスインフレ圧力は弱まらないと考え、2016年の世界経済成長予測を2.8%から2.7%に再び引き下げる。世界的な景気後退の危険性が高まっていることから、当社の成長予測がさらに下方修正される可能性も依然として残る」と述べている。  経済協力開発機構(OECD)の経済開発検討委員会のウィリアム・ホワイト議長は「世界は今、危険にさらされている」との見解を示した上で「現在の状況は2007年よりも悪い。我々は景気低迷に対するマクロ経済的な防御手段を基本的に使い果たしてしまった」と指摘。一方、負債は極めて高水準に達していると言及、「負債の大部分について、利子が未払いになるか、返済そのものが滞ることになるだろう」と付け加えている。 ラボバンクは債務免除を打診 ラボバンクのアナリストらに至ってはさらに悲観的で、多くの企業は現実的に債務を返済する術がないと指摘。債務の全額免除、言い換えれば「デット・ジュビリー(債務帳消し)」が唯一の解決策だと主張している。ラボバンクは「唯一の問題は、我々が現実を直視し、今後の事態に整然と立ち向かうことができるのか、それとも無秩序な状況に陥るのかということだ。デット・ジュビリーは5000年前のシュメール人の時代から存在する制度だ」と述べている。  結局のところ、市場の変動性の大きさを嫌がり、落ちてくるナイフはつかみたくない投資家にとって、先行きに対する警戒心は今後さらに高まることになりそうだ。 【翻訳・編集:NNA】

中国経済、市場の信認低下で苦境に 安定への即効薬は存在せず

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2016年1月25日にQUICK端末で配信した記事です。 投資家も戦々恐々…”朝令暮改”の中国市場 中国の金融市場が足元で苦境にさらされている。株式相場の大幅な下落が続いているだけでなく、人民元の信用に危険信号がともり、域外への資金流出の状況が深刻だ。こうした状況は外部経済の衰えと関連しているだけでなく、中国が最近相次いで誤った金融政策を打ち出したことで市場の信用が損なわれたことにも関係がある。中国経済は減速し、昨年の経済成長率が25年ぶりに7%を割り込んだ。中国政府は本来であれば景気てこ入れ策を強化すべきだが、人民元が軟調なため実施できる措置が限られている。  最近打ち出される多くの中国の経済・金融政策は方向性を失っている。昨年7月の人民元建てA株暴落に対処するための「暴力的な相場てこ入れ」では警察まで動員して空売りの動きを取り締まり、世界中の投資家を騒然とさせた。2016年に入り、上海株式市場と深セン株式市場の主要銘柄300銘柄で構成されるCSI300指数(コード@@SHSZ300/SH)の下落幅が7%に達すると市場の取引を終日停止させる「サーキットブレーカー制度」を、導入からわずか数日間で急きょ取り消した。  こうした朝令暮改の状況は、中国の経済・金融政策に対する投資家の信用を改めて損なった。中国人民銀行(中央銀行)は最近、域外への資金流出加速に対応するため、越境する資金の流動を制限するいくつかの措置を、突如打ち出した。こうした動きは、これまで提唱してきた人民元の域外流動の加速という目標と相反する。中国の経済・金融政策が方向性を失ってしまったのではないかと多くの投資家が懸念しており、今後、市場の信頼を取り戻すまでには一定の時間が必要となるだろう。 再度の大規模景気てこ入れは期待しがたい 中国が発表した昨年の通年の経済成長率は6.9%と、過去25年間で最も遅い成長率だった。このため、投資家たちは中国政府が景気てこ入れ策を打ち出すことを期待している。しかし、景気をてこ入れするには、大金をつぎ込んで景気刺激策を打ち出すか、または大規模な金融緩和策で融資コストを引き下げることになる。  大量の資金投入によるインフラ投資の促進は2008年の金融危機の際に実施したが、中国政府はいまだに当時4兆元を景気支援に投じたことによる後遺症の対処に取り組んでいる。中国政府は以前、需要の喚起と同時に「供給サイド」への取り組みも行い、在庫を減らして過剰生産能力を抑える必要があると明言した。再び大量の資金をつぎ込めば、生産能力が過剰な製品が大量に製造されて在庫が積み上がるばかりで、在庫と供給の削減を目指す現在の方針と相反する。このため、今回は中国政府が景気てこ入れに再び大量資金を投じるようなことはないだろう。 信用回復が急務 一方、更なる金融緩和策については、元安の現状下では利下げで資金の域外流出が加速され、元の急落を誘発しかねない。元に対する市場の信用が崩壊し、逆に中国経済に重荷となる。人民銀が最近、市場の不安解消の手段として銀行へ充分な資金を提供する方法のみを実施し、融資需要を刺激するための利下げや銀行の預金準備率引き下げを行なえないでいるのはこのためだ。  現時点で中国本土の金融市場が直面しているのは信用の不足であって、流動性の問題ではない。人民元に対する投資家の信用が失われ、金融市場に重荷となっている。経済を安定させて市場の信用を徐々に回復させる必要があるが、そのための即効性のある妙薬は存在しない。中国政府は大量資金の投入または大規模な金融政策といういずれの措置でも制約を受けており、大規模な相場支援策が実施されることへの投資家の期待は独りよがりの考えにすぎないのだ。

インドネシア、首都でのテロ攻撃 経済全体への長期的影響は軽微か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのHelmy Kristanto(ヘルミー・クリスタント)氏がレポートします。※本記事は2016年1月21日にQUICK端末で配信した記事です。 ISのテロ、小売産業に打撃…観光意欲減退の恐れも インドネシアではこれまで数年間、大きなテロはなかったが、オフィスや商業施設が立ち並ぶ首都ジャカルタ有数の一等地であるタムリン通りエリアで14日、爆発が起こった。現場は外国大使館や国連関連施設が立ち並ぶ地域。複数の爆発は、近くの警察署ならびにスターバックスの店舗を破壊した。報道によれば、テロ攻撃を仕掛けた容疑者5人を含む7人が死亡、20人が負傷したという。14日のテロ攻撃は、過激派組織「イスラム国」(IS)が関わっているもようだ。 今回の爆発は、9人の犠牲者と50人以上の負傷者を出した2009年のJWマリオット・ホテルとリッツ・カールトン・ホテル爆破事件以来の大きなテロ事件に発展している。テロがインドネシアの中長期の経済成長を頓挫させてはならない。 テロの影響は一時的で、長期的な経済への影響はなさそうだ。ただ、短期的には小売や輸送をはじめとする一部の産業分野にマイナスの影響をもたらす可能性がある。これはショッピングモールや飲食店への客足が遠のくためだ。今後、渡航警告発令が出されれば、インドネシアへの出張客、観光客の減少も免れないだろう。 テロの影響は一時的?株価は一か月で持ちなおす動き 事件の影響を受けるとされる企業は、小売り大手ミトラ・アディプルカサ(@MAPI/JK)と米系家具・日用品量販店「エース・ハードウエア」を運営するエース・ハードウエア・インドネシア(@ACES/JK)だ。両社の店舗の大半がショッピングモールにテナントを出している。タクシー最大手のブルーバード・グループ(@BIRD/JK)は、ジャカルタへの出張客、観光客が減少すれば、業績の重荷となり、国営ガルーダ・インドネシア航空(@GIAA/JK)も、インドネシアへの来訪者減少の影響を受ける。不動産開発大手アグン・ポドモロ・ランド(@APLN/JK)、パクウォン・ジャティ(@PWON/JK)、チプトラ・デベロップメント(@CTRA/JK)など、ショッピングモールを運営する複数の不動産企業にマイナスの影響を与える可能性もある。 2000年以降に発生した7回のテロ事件で、市場は当初はネガティブにとらえたものの、、ほとんどの場合は比較的早く立ち直り、実際のところ事件から1カ月後に株価は9~19%上昇した。インドネシアの軍隊が厳しい統制を敷き、治安回復に向け、さらなるテロを防ぐため反テロ諜報活動を強化することは確実だ。 金融・財政政策で景気浮揚実現へ…市場は利下げ予想 今回の爆発事件が起きた同じ日にインドネシア中央銀行(BI)が打ち出した利下げにも注目している。利下げは市場にとって明るい材料で、中銀が今後さらに金融緩和政策を打ち出す予兆だ。特に2015年10~12月期に財政面でのさまざまな景気刺激策やマクロ・プルーデンス政策の緩和などを講じたにもかかわらず、経済は大きく回復しなかった。現在、RHBK証券では今年後半にさらに0.25%の利下げが打ち出されると予想している。 今回の騒動がインドネシアの長期的な歩み、特に長期的な成長の強固な基盤を支えるインフラ整備に大きな影響を与えることはない。また、一連の政策が政府の切迫感の高まりに基づいていると確信している。また、市場の信頼度を高める財政面による景気刺激策の進展も期待している。【翻訳・編集:NNA】

台湾TSMC、アップル次世代プロセッサでサムスンに圧勝 今年は設備投資を拡大か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2016年1月15日にQUICK端末で配信した記事です。 TSMCとサムスン、ナノメートルの争い…TSMCに軍配 台湾積体電路製造(TSMC、コード@2330/TW)の16ナノ(ナノは10億分の1)メートル・プロセスが、韓国サムスン電子(コード@005930/KO)の14ナノを抑え込むことに成功した。半導体生産設備メーカーによると、サムスンはすでに半導体設備メーカーに対して、ロジックIC工場の建設を当面先送りすると通知している。これは、TSMCの16ナノが日の出の勢いを見せ、アップル(コード@AAPL/U)の次世代プロセッサ「A10」の受注をほぼ確実にしており、TSMCが先端プロセスでサムスンに圧勝していることを意味している。   サムスン、OLEDで巻き返し図るも携帯事業の不振が重荷に スマートフォンにおけるサムスンとアップルの競合は、常に半導体分野で注目の的となっている。サムスンは昨年、14ナノによってアップルの新世代プロセッサ「A9」の代理生産を受注した。しかし、サムスンのリードは短期的なものに終わった。昨年第3四半期(7~9月期)、TSMCが16ナノで正式にアップルからA9の代理生産を受注したあと、サムスンの14ナノによるアップルとの提携が色あせていった。 最近、サムスンはOLED(有機発光ダイオード)で再びアップルと提携する可能性が生まれており、スマートフォン新型機種のiPhone8に導入される見込みだ。また、一説にはアップルは台湾の友達光電(AUオプトロニクス、コード@2409/TW)に対する支援、さらには資本参加まで計画しており、友達光電によるOLED生産の確立に協力し、サムスンに対する依存を減らそうとしているとも言われている。 ただ、確実に言えることは、サムスンは自社ブランドの携帯電話端末の販売が不振となっていることの影響を受けており、さらにアップルの新世代プロセッサA10の受注はTSMCの手に渡ってしまった。こうして、サムスンの半導体部門はロジックICの工場拡張を先送りし、半導体生産設備メーカーから予定していた設備調達も緊急に停止した。 TSMCとアップルの提携関係、一層緊密に…設備投資拡大観測も サムスンは、今年の設備投資計画を変更するかどうかについて正式に発表したわけではない。しかし、最近のTSMCによる16ナノ生産体制の拡大から見て、TSMCが16ナノによって圧倒的な勝利を収めたことはほぼ確実となっている。  台湾の工業技術研究院IEK(工業研究院産業経済・情報サービスセンター)の統計によると、世界の半導体ウエハ・ファウンドリ市場におけるTSMCのシェアは54%に達し、そのリードは拡大しつつある。同社の共同CEOである劉德昱氏は、今年のシェアはさらに数ポイント上昇する見込みだと語り、自社の製造プロセスの技術に対して十分な自信を示した。  消息筋によると、TSMCとアップルの提携関係は非常に緊密で、すでにiPad Proに使用されるA9Xプロセッサを出荷しているほか、第1四半期(1~3月)にはiPhone6Cに搭載されるプロセッサの全数も供給することになっている。さらに、第2四半期(4~6月期)にはコストパフォーマンスでより優勢に立つ16ナノのFFCプロセスを打ち出し、米のクアルコム(コード@QCOM/U)、中国の海思半導体、台湾の聯発科技(メディアテック、コード@2454/TW)からのミドルエンド、ローエンド携帯電話端末向け需要に対応する。TSMCの今年の16ナノは、破竹の勢いと言える。ハイ、ミドル、ローの各エンドの携帯電話端末向けの需要をすべて獲得し、半導体メーカーの中で最大の勝者となっている。  市場では、アップルからの発注が引き続き増加していることから、TSMCは今年、設備投資を拡大すると見込んでいる。主に16ナノと10ナノの生産能力拡大に投じられる見込みだ。しばらく前に外資は100億米ドルを超えると予測していたが、最近、設備メーカーから伝えられているところでは、昨年の80億米ドルに近い規模になるだろうとのことだ。

中国株、今年は中国の景気減速とIPOが下押しか 香港株は米利上げが重荷に

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2016年1月8日にQUICK端末で配信した記事です。 ハンセン指数、昨年はボライタルな動き…中国A株の影響で連れ安 2015年の香港株のパフォーマンスには失望させられた。代表的な株価指数であるハンセン指数の通年の高値と安値の差は8221ポイント(ザラ場ベース)。高値は4月に付けた2万8589、安値は9月に付けた2万0368で、「先高後低」(年前半に上昇して年後半に下落)の展開だった。指数の昨年末の終値は2万1914と、前の年の14年の終値(2万3605)比で1691ポイント下落し、下落率が7.2%だった。一方、中国本土企業株のパフォーマンスを反映するH株指数の高値と安値の差は5904ポイントで、高値が5月に付けた1万4963、安値が9月に付けた9059だった。昨年末の終値は9661ポイントと、14年の終値(1万1985)比で2324ポイント安となり、下落率が19.4%だった。 ハンセン指数の高値と安値の差は13年と14年がそれぞれ4000ポイント余りだったのに対して、昨年は8000ポイントを超えた。主に中国の人民元建てA株のボラタイルな動きに影響された。昨年の上海総合指数の高値と安値の差は2328ポイント。高値は6月に付けた5178、安値は8月に付けた2851で、香港株と同様に「先高後低」の展開だった。上海総合指数の昨年終値は3539で、14年の終値(3235)から304ポイント上昇し、上昇率が9.4%だった。中国政府は昨年、株式相場の安定化に向けて、利下げや預金準備率引き下げ、政府機関からなる「国家隊」による株式市場への資金投入、上場企業の支配株主と幹部役人に対する株式売却禁止令の実施、新規株式公開(IPO)の一時凍結などの多くの措置からなる「複合技」を実施した。   中国景気、引き続き後退懸念…てこ入れ効果は表れるか 中国A株の相場は安定したが、市場は依然として中国景気減速の情勢や景気減速に伴う企業収益の収縮に関心を寄せている。16年上半期は中国景気に引き続き減速圧力がかかる見通しだ。中国政府は景気てこ入れに向けて緩和的な金融政策を採用し、利下げと預金準備率引き下げを繰り返し、低排気量の自動車に対する購入税半減の優遇政策などの積極的な財政政策を実施して消費を刺激した。固定資産投資では、中国はインフラ建設への投資を拡大したものの、不動産投資が顕著に減速して固定資産投資の伸びの足かせとなっている。不動産市場の売れ行きが減速して販売物件の在庫が増え、不動産開発企業の投資意欲の減退につながっている。とりわけ用地購入の意欲が顕著に衰え、このため地方財政に影響が出ている。こうした状況を受けて中国政府は不動産市場の在庫削減が景気てこ入れの最も重要な任務であると最近繰り返し述べており、引き続き優遇政策を打ち出すもようだ。 対外貿易は、不安定な海外の需要の影響で経済成長のけん引力にいまだなり得ていない。昨年8月以降、人民元が対米ドルで下落を続けている。元安は輸出にある程度有利となる反面、資金の対外流出を加速し、元建て資産に売り圧力をもたらし、香港株にもその悪影響が波及する。資金の対外流出に対応するため、中国人民銀行(中央銀行)は再び預金準備率の引き下げが必要となるだろう。 ハンセン指数、下値1万9500ポイント程度を予想 昨年第4四半期(10~12月期)に中国A株相場が安定したあと、中国証券監督管理委員会(CSRC)がIPO再開を発表した。市場はこれを好材料として受け止めたが、IPO登録制度が今年3月に実施されれば、IPOが今後加速し、市場に資金調達圧力をもたらす恐れがある。また、CSRCが昨年7月8日に実施した半年間の持ち株売却禁止令が1月8日に期限を迎えるため、その時点で売り圧力が強まるかどうかについて状況を見守る必要がある。さらに、今年は流通解禁となる売却制限付き株式の規模が大きいことも市場への圧力となるだろう。 香港株については、香港経済が不動産市場の減速や小売りの低迷の影響を受ける一方、米国の利上げ期入りに伴い、ペッグ制度下で香港ドルが米ドルと連動することから金利政策で米国に追随することになる。香港の金利が今後一段と上昇すれば、経済や株式市場に不利となる。今年上半期はこれらの不透明な要因が引き続き香港株に重荷となり、ハンセン指数が1万9500程度まで下値を試す展開が予測される。下半期に中国と香港の経済が安定すれば、ハンセン指数は2万4000にまで回復するだろう。

インドネシア、地場水産銘柄に脚光 女性水産相が違法取り締まり強化

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2016年1月6日にQUICK端末で配信した記事です。 DPUMのIPO成功でインドネシア水産セクターの上場期待広まる 株式相場が低迷する中、ある水産加工企業のIPO成功によって、インドネシア証券取引所(IDX)で同業の上場が今後相次ぐのではないかという期待が広がっている。  中ジャワ州パティ県に拠点を置く水産大手ドュア・プトラ・ウタマ・マクムール(@DPUM/JK)は国内投資家を中心に同社株に対する需要が発行済株式の10倍に膨れ上がった昨年12月末、増資によって9190億ルピア(6700万米ドル)を調達した。  外国船による違法漁業活動が相次ぎ、地場企業は十分な操業や操業の高度化に苦労する中、過去10年で初めての地場漁業会社によるIPOだった。 インドネシアの対米マグロ輸出、東南アジアで存在感示す ジョコ・ウィドド大統領がインドネシア海運の栄光を復活させるという目標を掲げて政権の座に就くとともに、政府は実務家のスシ・プジアストゥティ海洋・水産相の指揮の下、違法漁業の取り締まりを強化してきた。  彼女の政治的演出は、インドネシアの漁業法に完全に保証される範囲だが、これまでに170隻の違法漁船を燃やしたり沈めたりするというもので、違法漁業の拡大を阻止した。スシ・プジアストゥティ氏はまた、違法水産物の輸出隠蔽(いんぺい)によく用いられることを理由に、地場企業による中古外国船の買い上げを一時的に禁止。さらに貨物積み替え禁止令を出し、違法漁業を減らして、国内市場への供給を増やした。  海洋・水産省のシャリフ・ウィジャヤ次官は「インドネシアの政策はタイとフィリピンの漁業に大きな影響を与える。20151~9月期のインドネシアから米国へのマグロの輸出は前年同期比7.7%増だった。一方、タイの輸出は17%減、フィリピンは33%減だった。両国の輸出は、インドネシアの輸出におされているのは明白だ」と語った。同省は現在、2016年の水産品輸出を50%増と見込んでいる。 外国資本の上限出資比率100%も検討…インドネシア投資調整庁 国内水産業者の捕獲高の増加は、地場加工産業が加工・貯蔵能力を拡大する必要があることを意味する。インドネシアの投資調整庁(BKPM)は、水産・冷蔵保管産業の利益を押し上げ、その発展を加速させるために、水産・冷蔵保管産業への外国資本の出資比率を現在の上限39%から100%に引き上げることを検討している。  11月のドュア・プトラのIPOを成功に導いたBNI証券のアナンタ・ウィヨゴ社長は、「既存企業も事業拡大に向けて資金調達の必要があり、資金調達の手段として株式市場に関心が向かうだろう」と分析する。「政府がその漁業政策を強化したことに伴い、投資家らはこの分野の銘柄に現在、非常に関心を示している」とアナンタ社長は述べ、「わが社は別の水産会社の上場計画に取り掛かっているが、詳細は言えない」と含みを持たせた。  ドゥア・プトラ以外では、ダルマ・サムデラ・フィッシング・インダストリーズ(@DSFI/JK)が海洋漁業の加工・貯蔵業界で唯一の上場企業だ。その他の上場水産会社はニッチな分野に乗り出しており、セントラル・プロテイナプリマ(@CPRO/JK)がエビ養殖、インティ・アグリ・リソーシース(@IKP/JK)がアロワナの養殖を手掛けている。【翻訳・編集:NNA】

2016年の東南アジア、中国・原油安・債務の3問題を乗り切られるか

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※本記事は2015年12月30日にQUICK端末で配信した記事です。 2016年の東南アジア市場、3つの懸念材料に注意 投資家の多くは変動が大きく、市場のムードが揺れ動き、予想外の驚きに満ちた2015年と訣別することにうれしさを感じるだろう。特に新興市場にとって、2015年は原油価格の下落や主要輸出市場の低迷、これらの国々の企業債務の拡大などで厳しい時期となった。  世界経済から生じる不安により、2015年に世界でも最も深刻な打撃を受けた地域でもある東南アジア諸国にとっても同様の状況だった。では、2016年は東南アジアに何をもたらすのだろうか。考慮すべき3つの問題をここに挙げる。 「2016年の中国経済は過去17年間で最も緩やかなペースの成長率」…IMF予測 【中国】  新興市場だけではなく、世界のその他の地域にとっても最大の懸念材料は、2016年に中国の景気が浮上するかどうかだ。目覚ましい成長路線へ戻る道を見出せない中国となるのか、あるいは2015年の低迷の後に自らの足場を見出す中国となるのか――。  国際通貨基金(IMF)の予測が正しければ、2016年の中国経済は過去17年間で最も緩やかなペースの成長率により「足場を固める」年になる可能性が高い。  しかし、資産運用会社シュローダーのアジア債券部門トップは、実際はそうした単純に二元的な状況よりもはるかに複雑だとみている。同トップによると、中国は投資主導型成長から離れ、バリューチェーン(価値連鎖)型によって経済を浮揚させることで、「中所得経済の罠」を回避しようとしていると指摘する。  この過程の中で、国内総生産(GDP)成長率は低下し、経済そのものの再編に伴い、勝者と敗者が生じるだろう。そして情報技術産業に無関係の旧経済に属する企業は敗者となり、ハイテク企業やイノベーティブ企業が勝者になると彼は述べている。  この場合、新興市場への波及効果は明らかだ。消費財への需要も依然として存在するが、ニッチなサービスや製品に対して高まる需要を満たせるテクノロジー企業のような企業が最も恩恵を受けるだろう。 原油相場は「破綻」?債務返還問題の清算にも注目 【石油ショックの緩和】  過去1年半の原油価格の動向をすべて「調整」と呼ぶのは、控えめすぎるだろう。どちらかと言えば、「破綻」との表現が正しいかもしれない。  ブレント原油価格は金融危機時に記録した下落よりも今回、さらに大きく下がって過去11年間で最低水準なった。この下落トレンドは来年も続くのではないかという懸念に火をつけた。  原油価格の低迷は成長鈍化の明確な兆候だが、一方で主に石油輸入国である東南アジア各国にとっては朗報が待ち受けているかもしれない。  原油価格の低迷は、インドネシアやマレーシアなどの財政支出を低く抑えさせ続ける一因になるだろう。両国とも石油とガスを輸出しており、原油価格の下落の影響を受けるが、両国ともまた、補助金によって価格を下げつつ、エネルギーを大量に輸入している。補助金が減る中、原油価格の低迷は国庫の増加を助けるだろう。  原油価格の低迷はまた、インフレが弱まる可能性も意味し、消費者もまた恩恵を受けるだろう。しかし、それはまた、この地域の中央銀行がインフレ圧力を煽ることなく、金融政策を実施できることを意味してもいる。 【金利】  米連邦準備理事会(FRB)は、マーケット参加者をはらはらさせて待たせながら、12月になってようやく政策金利の引き上げを決めた。米利上げが深刻な影響を与える可能性は少ない。なぜなら利上げ幅は2019年までに3%程度の引き上げが予想される中、今回の利上げは無視できるほどわずかな0.25%だからだ。  スローペースにもかかわらず、ほぼゼロ金利だった7年間で蓄積された巨額の企業債務をどう返済するのか、大きな疑問符が新興市場そして東南アジア諸国に突き付けられている。国際金融協会(IIF)は来年に返済期限を迎える新興市場の債務は6000億米ドル相当で、うち約半分は借り換えられるものと推計している。  この債務問題を無事に乗り切ることができるのか、それともこれが時限爆弾になるのか。その答えが、2016年がどのような年になるかを決定付けるだろう。 【翻訳・編集:NNA】

インドネシア、来年は5%成長か 米利上げ後の通貨安定に努力 

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB OSK証券インドネシアのRizki Fajar(リズキ・ファジャラ)氏がレポートします。※本記事は2015年12月28日にQUICK端末で配信した記事です。 インドネシア中央銀行、政策金利を7.5%に据え置き決定 インドネシア中央銀行(BI)は17日に開いた理事会で、BIレート(政策金利)を7.5%に据え置くと決定した。貸出ファシリティー金利、翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)もそれぞれ8.0%、5.5%に据え置いた。年末にはインフレ率が3%を下回る水準まで鈍化し、経常赤字は2015年の国内総生産(GDP)の2%程度までの改善が見込まれる。マクロ経済の安定を背景に、BIは金融緩和の余地があると考えている。 中銀は16年に5%台の成長を予想 ルピア安定に引き続き努力 BIは今後、インフレ抑制、経済成長の促進、構造改革の加速に関して政府との連携を強める見通しだ。マクロ経済システムおよび金融システムの安定性を維持しつつ、経済成長を支えていくとしている。  また、BIは2015年の経済成長率を4.8%と予想。2016年には5.2~5.6%に伸びると見込んでいる。この予想は、政府のインフラ事業が進展すること、経済安定を強化する一連の政策の実施を受けて民間投資が拡大し、堅調な消費と政府支出が増大することを前提としている。世界経済の動向については、BIは外部リスク、特に中国の経済成長の鈍化や米金利引き上げ後の国際金融市場の不安定化などに対し、引き続き警戒していく方針だ。 米国の緩やかな成長は、消費と住宅セクターの改善によって支えられているものの、製造部門の収益低迷と低調な輸出がマイナス要因になっていることをBIは認めている。一方で、中国は投資主導から消費主導の成長に向かう一方で経済全体が減速した。  米国の金利引き上げの後、インドネシアの通貨ルピアはやや売り圧力にさらされたが、BIはマクロ経済の安定性と持続可能な経済成長を維持するため、自国通貨ルピアの基本的な価値を踏まえて、ルピアを安定させる努力を引き続き強化していくと述べた。 金融システムは安定 来年後半の政策金利引き下げを予想 金融システムは、信用リスク、流動性リスクに耐えるというより、むしろそれを上手く吸収していくような弾力性のある銀行制度によって支えられ、弾力的で堅固と考えられている。10月末時点の銀行の自己資本比率(CAR)は20.8%と、高水準を維持。同時に不良債権(NPL)比率はグロスで2.7%、ネットで1.4%と比較的安定した状態を保っている。一方で10月の預貸率の伸びは前年比9.0%だったのに対し、信用増加率は前月の11.1%から低下し、前年比10.4%にとどまった。  2016年の見通しとしては、経済活動の拡大とBIが採用する緩やかなマクロ・プルーデンス政策のスタンスに沿い、信用増加率は12~14%までやや改善することが予想される。  今後、インフレ率は安価な燃料価格により一段と低下するだろう。さらに経常赤字は管理可能な水準に維持される見通しで、BIに金融緩和の余地を与えるだろう。しかし短期的にBIは、米国の政策金利引き上げ後の国際金融市場とユーロ圏、日本、中国、米国の経済動向の影響を注視していく構えだ。  そのため、BIは政策変更について、慎重な姿勢を維持すると思われる。弊社の見通しでは、政策金利は、2016年初めは7.5%に据え置かれるが、来年後半には0.5%引き下げられて7.0%となるとみている。【翻訳・編集:NNA】

香港のファンド、ドル高・元安で中国進出に商機 日本のファンドにもチャンスか

 QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2015年12月28日にQUICK端末で配信した記事です。 利上げに伴うドル高・元安で中国製品の輸出に恩恵  米国は10年間に及ぶ長い期間を経て利上げをした。ただし、今後は緩やかな引き上げにとどめると表明した。香港は通貨を米ドルとペッグ(連動)させているが、近年、累計1300億米ドル超のホットマネーが域内に流入し、銀行資金が潤沢であるため、域内の銀行は米国に追随した利上げを行わなかった。投資家たちがより注目するのは米利上げ後の人民元の動向だ。現状を見る限り、人民元はここ数カ月の下落基調の延長で緩やかに下げ続ける見通しで、こうした状況を中国政府も歓迎するもようだ。 米国が昨年に量的緩和政策を終了したあと、米ドルは次第に上昇傾向になった。今回の利上げが資金流入へとつながり、米ドルの上昇基調を一段と強めることになるだろう。反面、人民元は今年8月に中間値(基準値)設定の改革を行い、人民元レートを市場の実勢に近づける施策を実施したあと、下落が続いている。このため、人民元は米利上げ後に対米ドルで下げ基調を一段と強めることになるだろう。しかし、実際のところ、人民元安は中国製品の輸出に有利となる。よって、中国政府は人民元安を歓迎するはずだ。 もはや人民元は対米ドルのみで比較できない?    中国がこのほど発表した政府傘下の中国外貨取引センターによる為替レート指数(人民元相場指数)は、人民元と通貨バスケットとの連動を算出基準としている。中国は同指数を用いることで米ドルや他の通貨に対する人民元の実勢を示すことを望んでいる。世界の主要通貨の中で米ドルのみが堅調で他の通貨はいずれも軟調だが、実際のところ、対通貨バスケットの実質的な人民元の為替レートはさほど軟調ではなく、むしろやや堅調なのだ。こうしたことから、中国は外貨取引センターの人民元相場指数を用いて人民元の実勢を示すことを望んでいる。この人民元相場指数が国際的に広く採用されるようになれば、人民元の為替レートで対米ドルについてのみ市場が注目するようなことがなくなり、人民元安がもたらす国際的な圧力を軽減できる。よって、人民元は今後、徐々に米ドルとの緊密な連動から脱却し、対通貨バスケットでのパフォーマンスを強めていくことになるはずだ。  このような動きはさほど非難すべきことではない。中国と欧州連合(EU)や日本、英国、アジア近隣諸国との経済や貿易の往来はますます緊密さを増しており、為替レートは米ドル以外の通貨と比較する方が経済の実情に合致するようになっているからだ。もっとも、人民元が米ドルとの「実質的なペッグ解除」を行えば、今後、対米ドルでの下落が続くことになる。香港ドルが米ドルと連動しているため、対米ドルで人民元安が続けば、人民元は対香港ドルでも引き続き軟調となるだろう。 中国と香港、相互承認ファンド第一弾を登録  数カ月前に中国と香港が合意に達した両地間のファンド相互承認プランで、ようやく第一弾の相互承認ファンドが認可された。中国証券監督管理委員会(CSRC)がついに香港の相互承認ファンド3本を登録したのだ。内訳はETF(上場投資信託)、株式ファンド、債券ファンドで、これらの香港のファンドは中国本土で販売できる。一方、香港の証券先物委員会(SFC)も第一弾の中国本土の相互承認ファンド4本を正式に登録した。これらのファンドは主にハイブリッド証券ファンドと株式ファンドだ。中国と香港のファンド相互承認が実施されれば、香港で今後登録されるファンドはCSRCへの登録申請が可能になり、認可されれば億単位の中国の投資家に販売できる。外国資本にとって、香港でファンドを登録して業務展開することによる市場の潜在性が大きく高まることになり、香港の資産管理業務の発展に追い風となるだろう。日本のファンドにとっても、可能性を秘めた投資チャンスとなるはずだ。

中国・紫光のM&A攻勢が台湾半導体を揺るがす 日月光のセキ品買収も不透明に

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2015年12月18日にQUICK端末で配信した記事です。 ”黒馬の騎士”日月光vs”白馬の騎士”清華紫光、攻防戦の行方は?  台湾をターゲットにした半導体企業のM&A(買収・合併)がいくどとなく山場を迎えている。10月に力成科技(コード@6239/TW)の株式25%取得を突如決めた中国大陸の清華紫光グループが、続いて12月11日にセキ品精密工業(コード@2325/TW)の株式取得を決定した。同社株式24.9%を1株当たり55台湾ドルで取得する。同グループは、さらに巨額資金を投じて南茂科技(コード@8150/TW)の株式25%を取得する。買収額は1株当たり40台湾ドル。3社への合計出資額は882億元に達し、同社の大胆な挙動が半導体市場を揺るがした。  中でも、セキ品精密への出資は568億台湾ドルの巨額とあって、注目を集めている。セキ品精密の林文伯董事長は今回の決定を中国との提携だと、対外的に説明した。取得資金のうち80%を台湾の生産能力拡充に、20%を江蘇省蘇州市の工場拡張に用いるという。  もっとも、セキ品精密は紫光グループに株式24.9%を譲渡して筆頭株主とする際に第三者割当増資の形式を取る。これに伴い、日月光半導体製造(コード@2311/TW)のセキ品精密の持ち株比率はわずか18%にまで低下することになる。明らかに、セキ品精密は紫光グループを自社の経営権を護衛する「白馬の騎士」とすることで、日月光が経営への介入を強めることに対抗しようとしたのだ。 日月光、敵対的買収から一転、友好的買収を提示へ 台湾の半導体業界の関係者は、セキ品精密の林董事長が紫光グループの出資を今回引き入れることにしたのは、同グループがセキ品精密の株主に有利な額を提示したほか、同社の経営権に干渉しないとしたためだと分析する。囲碁を得意とする林董事長が見事な一手を打ったというわけだ。しかし、世間では激しい反中感情が巻き起こり、台湾で数十年間の月日をかけて苦労して築き上げた半導体パッケージングテスト業のサプライチェーンを林董事長はいたずらに中国へ差し出すべきではないとの認識が広がった。 一方、苦労して進めてきた計画を紫光グループに台無しにされた日月光は、そのまま泣き寝入りするようなことはしなかった。3日後の12月14日、1株当たり55台湾ドルでセキ品精密の株式100%を完全取得するという友好的買収提案を同社の取締役会に突如提示。台湾の産業の国際競争力を擁護するなどといった大義を掲げ、両社が先入観を捨てて買収案で合意することを希望すると発表した。また、既存の会社制度、全取締役、全経営陣を維持し、従業員の利益を守り、改革は行わないと約束した。買収総額は約40億米ドル(約1313億台湾ドル)となる見通しだ。 日月光はセキ品精密に今月21日までに書面で回答するよう求めたが、セキ品精密は再度議論する必要があるとして即答を避けた。   市場は日月光の柔和路線を評価する見通し…懸念も 台湾の機関投資家は、日月光の買収案は水平統合であり株式の希薄化も起こらず、買収効果がすぐに表れると分析する。反面、セキ品精密による紫光グループの出資引き入れは増資を伴い、株式が33%希薄化する。両案を比べた場合、多くの外国投資家が日月光の買収案を支持するだろうとの見方を示した。日月光の迅速で果断な反撃には、セキ品精密の経営権を取得して半導体パッケージングテスト業トップの座を固めることへの決意がうかがえるという。 しかし、日月光によるセキ品精密の完全買収には、紫光グループによる取得価格の増額攻勢を受ける可能性やセキ品精密の取締役会での否決といった変数が依然として存在する。また、セキ品精密の株主が同意したとしても、合併に伴い世界シェアが大幅に拡大するため、各国の反トラスト法(独禁法)の厳しい審査を通らなければならない。こうした難関を順調に突破していくことができるのかどうかが注目される。

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