東南アジア、原油安一服も株価回復に懐疑論 3つのリスクを警戒

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※この記事は2016年5月25日にQUICK端末で配信した記事です。 ブレント原油価格、7カ月ぶりの高値…東南アジア株連れ高 年初以来、大幅に下落していた原油価格がここ数週間で回復し、17日には7カ月ぶりの高値を記録した。ブレント原油価格は昨年10月以来の高値となる1バレル49ドルまで上昇した。供給過剰状態が解消されつつある中で、ナイジェリアやカナダなどいくつかの産油国が供給を停止したことが追い風となった。東南アジア地域の株価も連動して値を上げ、同地域の取引所の株価指数は軒並み値を戻している。   米各大手金融機関、今後の株式市場には悲観的 ゴールドマン・サックスによると、原油価格は今後も回復傾向を維持する見通し。同社は、原油価格が20ドルまで下落すると予測していたが、現在は年末まで50米ドル前後で推移すると見込んでいる。しかし、原油価格が上昇しても、株式相場の回復が継続するとは限らない。アナリストらは、逆の現象が起こる可能性もあると指摘し、すでに東南アジア地域を含む株式市場の評価を引き下げている。 ゴールドマン・サックスのクリスチャン・ミュラーグリスマン氏率いるアナリストチームは向こう12カ月間の世界株式の成長率と評価に関する判断をニュートラル(中立)に引き下げた。同様に、シティバンクとバンクオブアメリカ・メリルリンチも株式市場の今後の方向について悲観的な見方を強めている。 シティバンクの株式ストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏はレポートで「不安な兆候を示している指数がいくつかある。株式相場が崩れる可能性を踏まえ、そうした指標の動向を注視する必要がある」と指摘している。ゴールドマン・サックスのアナリストらは「成長回復を示す継続的な兆候が見られない限り、株式リスクを取ることは避けたい。株価評価が上限水準に近いというのが主な理由だ」と語る。 バンクオブアメリカ・メリルリンチの株式ストラテジスト、サビタ・スブラマニアン氏によると、「夏に向かって、不安要素は増える」という。不安感を高める最大の要因は、企業収益の低下だ。 CIMBのレポートも「伝統的に底堅い市場であるシンガポールですら、企業収益が大幅に低下している」と指摘。「企業収益が悪化している企業は、収益が予想を上回っている企業の2倍に達している」と分析する。世界経済が依然として脆弱(ぜいじゃく)な中での原油価格の上昇は、需要が拡大しているというよりも供給が縮小していることを示している。 シンガポールの4月の輸出額(NODX、石油と再輸出は除く)は、前月から引き続き縮小し、前年同月比で7.9%減少した。同国の輸出額は東南アジア地域の輸出需要の指標とされることが多い。シンガポール市場が強気の地合いに回復するには、複数の大きな悪材料を克服する必要がある。 米国の”追加利上げ”と”大統領選挙”の行方が鍵 1つは、米国でさらなる利上げが実施される可能性だ。各国の市場は米国の金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)を6月に控え、神経質になっている。2つ目は、中国の債務状況の悪化だ。世界最大の資産運用会社であるブラックロックのラリー・フィンク会長兼最高経営責任者(CEO)は、中国の債務レベルの上昇はすべての人が懸念すべき問題と警告している。 最後の悪材料は、米国の大統領選挙だ。共和党の候補ドナルド・トランプ氏と民主党の指名を獲得する見通しのヒラリー・クリントン氏の接戦という好ましくない展開を市場は喜ばないだろう。つまり、今後の大きな変動に備える必要があるということだ。 【翻訳・編集:NNA】

台湾ハイテク、アップル影響し4~6月期は保守的見通し 半導体市況に回復の芽は?

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※この記事は2016年5月13日にQUICK端末で配信した記事です。 台メディアテック(2454/TW)、期粗利益率低下…四半期も続落予想 台湾主要ハイテク企業の2016年1~3月期決算発表が一巡した。台湾において米アップル(コード@AAPL/U)への依存度が高いことが影響し、今四半期(2016年4~6月期)を保守的にみる企業が多かった。特に台湾積体電路製造(TSMC、コード@2330/TW)は、通年のスマートフォン(スマホ)市場の成長予測を従来の8%増から7%増に下方修正。非アップル陣営で携帯電話機向けチップを供給する聯発科技(メディアテック、コード2454/TW)は、今四半期の売上高を前四半期に比べ20%超の増加と見込むものの、粗利益率の低下ピッチは予想を超えているとした。  ハイエンドの携帯電話機関連メーカーは世界経済の不調の矢面に立たされているが、主にミドルエンドやローエンドを対象とする非アップル陣営にとっては反撃の機会を得たこととなる。しかし、聯発科技の1~3月期粗利益率は前の四半期の38.5%から38.1%に低下。今四半期もさらに低下する見通しで、35%前後の水準を保てるかどうかの状況だ。 売上高、純利益共に2ケタ減…米アップル 同社は、市場の積極的な在庫積み増しにより今四半期の連結売上高を前四半期比24~32%増と見込む。とはいえ、依然としてマーケットシェア維持のために迫られた値下げ分の回復は難しく、海外勢は決算発表説明会後も売り越しを続けている。7営業日の累計で売り越し株数は3000万株近くに達し、株価も説明会前の245台湾ドル前後の水準から200台湾ドルの節目を割り込み、一時は192台湾ドルにまで下がった。市場がスマホ市況に感じる不安を反映したと言える。  アップルの1~3月期決算を見ると結果は不調と言えるもので、売上高と純利益はともに2ケタ減だった。これまで「最強」だったiPhoneの販売台数も前年比16%減と初めて減少。今四半期も減少傾向は続くとみられる。市場のアップル熱が冷めたか、あるいはアップルユーザーの買い替えサイクルが以前よりも長くなったことを反映したのだろう。  TSMCはアップルの新世代プロセッサーA10の主要な代理生産企業で、最先端の16ナノ(ナノは10億分の1)メートルのFinFET+(フィン型電界効果トランジスタ強化版)を代理生産している。主要生産工場は台湾南部科学工業園区のFab14(第14工場)で、4~6月期から生産を強化している。しかし、TSMCは今四半期の受注は主に新興市場からのものであると強調する。特に中国大陸のミドルエンドやローエンドのスマホであり、これが成長エネルギーとなる形で今四半期の連結売上高は前四半期に比べ6~7%増を見込んでいる。アップルの新旧モデルの交代時期であることを実証しているともいえ、今四半期は売上高と利益の減少圧力という苦しみに耐えねばならない。  しかし、これらの決算説明会の中で、投資家は依然として下期(2016年7~12月期)の半導体景気に関心を寄せており、不確定要素が多いかどうかに注目している。 セキ品精密工業董事長、4~6月期にも底入れ示唆…半導体景気 半導体の封止・検査大手のセキ品精密工業(SPIL、コード@2325/TW)の林文伯董事長は、これまで投資家と直に接することを避けていたが、4月下旬に(ネット上のオンライン説明会ではない)実際の投資家向け決算説明会を開き、自ら投資家の質問に答えた。  林董事長が強調したのは、半導体の在庫調整は既に完了しており、半導体景気は4~6月期にも底入れし年内に反発に転じるだろう、ということである。通年では穏やかな成長を見込んでおり、封止・検査業は6~7%程度の増加を予想している。そして林董事長はスマホ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、デジタルチューナー、指紋認証チップ、セキュリティ監視システムの5大領域が、今年最も有望な半導体応用領域であると指摘している。

インドネシア、インフラ支出増加 財源はどこから?

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのリズキ・ファジャル(Rizki Fajar)氏がレポートします。※この記事は2016年5月6日にQUICK端末で配信した記事です。 インドネシア政府のインフラ支出が増加 インドネシア政府のエネルギー補助金改革による補助金削減に伴い、2015年以降、政府のインフラ支出が増加している。 しかし、インドネシアの国家予算は、石油価格が予算の前提となる1バレル50米ドルより低い水準で推移しているため、今後は引き下げ圧力にさらされそうだ。 2016年の財政赤字は対昨年GDP比2.7%に拡大? 政府の支出拡大は2016年も続きそうだという当社の見通しを考慮すると、2016年上半期に導入予定のタックス・アムネスティ(租税特赦)法の不確実性もあることから、2016年の財政赤字は昨年の対国内総生産(GDP)比2.5%から2.7%に拡大すると予測する。にもかかわらず、政府は財源不足を克服するために予算支出を削減する計画だ。このことは、インドネシアの経済成長に何らかの影響を与えるとみられ、5.1%という当社の2016年の実質GDP成長予測に対して下方リスクをもたらすだろう。 物品税引き上げ観測も 短期的には、たばこや燃料、自動車を含む一定の製品に対する物品税が引き上げられる可能性がある。中期的には、税制改革は税基盤の拡大と付加価値税(VAT)率の引き上げを目指すべきだろう。一方、税務当局は脱税の抑制に向けてリスクに基づくアプローチをとるべきだろう。 【翻訳・編集:NNA】

中国経済、「三頭の馬車」に明るさ 香港株を後押しか

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※この記事は2016年4月27日にQUICK端末で配信した記事です。 中国GDP成長率、前年同期比6.7%…市場予測と合致 中国政府は15日、今年第1四半期(1~3月期)の重要な経済データを発表した。このうち国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6.7%と、市場の予測通りだった。2009年以来の低成長となったが、発表されたデータの中には着目すべき明るい材料も少なくなかった。このため、香港株は第1四半期の中国経済データ発表後に上昇も目立った。主要株価指数のハンセン指数は4月21日の終値が2万1622となり、15日の終値2万1316を300ポイント上回った。 固定資産投資、中国の経済成長をけん引 中国にとって固定資産投資は、経済成長をけん引する「三頭立ての馬車」のうち最も重要なものだ。第1四半期の固定資産投資は前年同期比10.7%増と、伸び率が2015年通年から0.7ポイント加速し、投資意欲が次第に回復しつつあることを示した。インフラ建設に加えて、不動産市場も固定資産投資の加速に大きく貢献した。第1四半期の不動産開発投資は同6.2%増と、伸び率が前年通年(1.0%)から5.2ポイント拡大した。不動産市況が回復に向かい、物件の売れ行きが大幅に増えたことが主な要因だ。第1四半期の販売用住宅の販売面積は33.1%増で、増加率が1~2月期から4.9ポイント拡大した。また、販売用住宅の販売額は54.1%増と、1~2月期比で増加率が10.5ポイント拡大した。不動産開発投資の加速に伴い、新規着工面積も19.2%増加した。一方、不動産関連の税収増加が加速したことなどから、1~2月期の財政一般公共予算収入は6.3%増と、増加率が前年同期から4.6%拡大し、昨年1月以来の高い伸びとなった。1~2月期の地方財政収入は10%増と、2ケタの増加を記録。地方財政収入の増加は今後の地方におけるインフラ建設の促進に有利に働くと同時に、地方の財務危機の解消に向けてプラスになる。 固定資産投資の加速は、鉄鋼やセメント、ガラスといった建築材の製造業銘柄に追い風となる。また、不動産市況の回復は本来、不動産関連銘柄に最も恩恵をもたらすはず。しかし、上海や北京、深センなど一部の主要都市で不動産価格が高騰したことにより中央政府による過熱引き締めが市場で警戒され、不動産関連銘柄は今回の相場全体の上昇の流れから取り残された。 輸出、消費面は上向き傾向 輸出は中国の経済成長をけん引する「三頭立ての馬車」のうち2頭目の「馬」だ。昨年は通年で前の年比1.8%減(人民元建て)と低迷。今年の第1四半期も引き続き減少が続いたが、3月単月では前年同月比18.7%増と大幅に増加した。ドル建てでも同11.5%と大幅に増え、9カ月ぶりにプラスとなった。一方、3月の輸入は人民元建てで同1.7%減少したが、前月に引き続き減少幅が縮小した。中国の対外貿易の改善は海運銘柄や港湾関連銘柄に追い風となる。 中国経済成長の3頭目の「馬」は消費だ。第1四半期の社会消費品小売総額は前年同期比10.3%増と、引き続き2ケタの伸びを維持した。このうち、都市部の消費品小売総額が同10.2%増、農村部が11.0%増となり、農村部住民の消費拡大が示された。また、第1四半期の1人当たり平均可処分所得は8.7%増の6619元だった。このうち、都市部の1人当たり平均可処分所得が8.0%増の9255元、農村部が9.1%増の3578元だった。農村部の可処分所得の伸びが都市部を上回ったことで、都市部との格差は2.59倍となり、前年同期の2.61倍から縮小した。 これまで低迷が続いていた工業部門にも回復の兆しが出ている。3月の工業生産高(一定規模以上の企業)は前年同月比6.8%増と、昨年6月以来の高い伸びだった。伸び率は1~2月期から1.4ポイント加速した。また、3月の政府発表の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2に達して、昨年7月以来久々に景気判断の分かれ目となる50を上回った。工業生産の増加加速に伴い企業の収益状況も改善し、1~2月期の一定規模以上の工業部門企業利益が前年同期比4.8%増と、約1年ぶりに増益に転じた。 最後に挙げる点は、中国経済の構造転換が引き続き確実に進行しているということである。第1四半期に第3次産業がGDP全体に占める割合は56.9%だった。前年同期から2.0ポイント拡大し、第2次産業を19.4ポイント上回った。中国経済は第2四半期(4~6月期)も引き続き上向き、香港株の上昇を後押しするだろう。

インドネシア、銀行株に強気 バンク・セントラル・アジアを推奨

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのエカ・サビトリ(Eka Savitri)氏がレポートします。※この記事は2016年4月22日にQUICK端末で配信した記事です。 貸出金利引き下げは銀行にマイナス…定期預金金利引き下げで調整 インドネシアの銀行株の投資判断を「オーバーウエイト(強気)」に引き上げる。政府支出の拡大により、国内総生産(GDP)が伸びるとともに、貸出残高が大きく増えるためだ。信用コストが1.61%で低位安定する中、利子収入も増えると見込んでいる。優れた資産内容と規制リスクの受けにくさから、民間最大手銀行バンク・セントラル・アジア(@BBCA/JK)と優遇住宅ローンの恩恵を最も受ける国営住宅金融バンク・タブンガン・ヌガラ(@BBTN/JK)を推奨する。 金融監督庁(OJK)は各行の貸出促進のために改定したガイドラインを導入したが、貸出金利の引き下げは、投資家に戸惑いを与えた。銀行の貸出金利を1桁台に引き下げる指示は、利子収入の減少につながり、銀行にとってマイナスだ。OJKが、各行に貸出金利を引き下げる余地を与えるための措置を取ると予測。3月の定期預金金利の最大1.25%引き下げは、銀行にとってプラスだ。 不良債権比率は16年第2四半期にピークへ われわれは国営銀行バンクネガラインドネシア(@BBNI/JK)と商業銀行バンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナル(@BTPN/JK)が最も影響を受ける一方、バンク・ラクヤット・インドネシア(@BBRI/JK)と国営住宅金融バンク・タブンガン・ヌガラ(@BBTN/JK)は利ざやがいくらか上向くと予想している。 不良債権(NPL)比率は上昇しており、16年第2四半期にピークに達すると予測している。調査対象の銀行の中で、国営バンク・マンディリ(@BMRI/JK)は貸出残高の多さから資産内容の改善に時間がかかるだろう。銀行業界全体の不良債権比率が2016年12月までに2%に減少する(2015年12月は2.1%)と見込んでおり、2016年末までに信用コストが1.61%で安定し、債権損失カバレッジは155.2%に改善すると予測している。 バンク・セントラル・アジアに妙味、介入リスク低く インドネシア銀行業界の預貸率は1月に90.9%に達し、余裕のある金利水準とより長期的な満期日構成を前提として、各行は銀行間市場を資金調達に活用するだろう。譲渡可能定期預金証書、債券、ミディアム・ターム・ノート(MTN)は、3大国有行にとって優先的な投資商品だ。 規制リスクと資産内容の懸念を前提とすると、バンク・セントラル・アジアの方がより魅力的だ。 同行の利ざやが政府介入リスクを最も受けにくく、資産内容も他行と比べて優っていることから、同行のプレミアム評価額(2016年度の株価純資産倍率で、他行平均1.8倍に対し、3.0倍)は適切だ。【翻訳・編集:NNA】

シンガポールの金融緩和、アジア通貨切り下げ競争への警戒強める

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※この記事は2016年4月20日にQUICK端末で配信された記事です。 シンガポール金融通貨庁、金融引き締めから中立へ…6年ぶり シンガポールの中央銀行に相当するシンガポール金融通貨庁(MAS)は14日、これまでの引き締めを軸としてきた金融政策を中立に変更した。シンガポールでは他国の中央銀行と異なり為替政策を政策誘導の目安としており、シンガポールドル高への誘導は金融引き締め、同ドル安への誘導は金融緩和を意味する。政策変更は6年ぶりで、MASによる金融刺激策がアナリストらを驚かせた。 為替も反応…アジア通貨全般も連れ安 MASは為替政策を変更し、シンガポールドルの名目実行為替レート(NEER)の誘導目標をこれまでの方針だった「緩やかで段階的な上昇」から「0%(ニュートラル)」に変更した。  MASの決定を受け、14日の外国為替市場でシンガポールドルは米ドルに対して1.2%を超える下落を記録し、また通貨の切り下げ競争が起こるのではないかという懸念から、米ドルに対してアジア通貨全般が下落した。マレーシアリンギやニュージーランド(NZ)ドルが1%前後下落し、インドネシアルピアは0.4%程度の下落となった。  前回、MASが為替政策をニュートラル、つまり0%状態に変更したのは金融危機のピーク時にさかのぼる。  より広域な地域経済の指標とみなされることが多いシンガポール経済が、後退局面に向かっている兆候はこれまで全くなかった。今年1~3月のシンガポール経済は、好調なサービス分野に支えられ、前年同期比1.8%増と順調なペースで成長していた。 DBSグループ担当者「経済状況は悪化し続けている」 しかし、MASの最新決定は、特に世界経済の中で今後はより厳しい時期が待っているとの見通しを明確に示している。「世界経済の展望は昨年10月以降、陰りをみせている。米経済の拡大ペースは、労働市場の強化が民間消費を支え続けているものの、投資と輸出が衰退しているため以前の予想よりも緩やかとなる見込みだ。ユーロ圏と日本では、さらに緩和的な金融政策を通じて成長をテコ入れしようという努力にもかかわらず、通貨高騰と外需低迷により、経済活動が阻まれるだろう」とMASは指摘する。  中国の経済成長は引き続き伸び悩むとみられるため、これはシンガポールの外需分野にダメージを与えるだろう。 4月と10月の年2回、政策方針を発表しているMASは、今回の決定により自国通貨を切り下げることを目的としているのではないと主張する。しかし、その影響は明らかだ。また、アジア域内の通貨が下落する中、タイやマレーシアを含む域内の他の国々もシンガポールの方針を見習う可能性があるという危惧もある。  シンガポールの地場銀行最大手DBSグループ・ホールディングスの上級エコノミスト(通貨担当)、フィリップ・ウィー氏は「前回のMASの会合以降、経済状況は悪化し続けている」と指摘。そのうえで、ウィー氏は「状況がすでに悪化しているのであれば、なぜ10月まで緩和を待つ必要があっただろう」と付け加えた。 【翻訳・編集:NNA】

中国の不良債権問題、債務の株式化でも解決せず 銀行のリスク管理が必須

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※この記事は2016年4月18日に配信された記事です。 中国の不良債権急増…銀行業、過去10年間で最悪 中国経済は、銀行の不良債権の急増という最大の不透明要素に直面している。この問題は足元で多くの国有銀行の業績を引っ張る足かせとなっており、こうした国有銀行の業績の伸びは過去10年間で最悪となった。中国では最近、企業が抱える大量の不良債務の問題解決に、債務を株式化する「デット・エクイティ・スワップ(DES)」を用いるのではないかといううわさが飛び交っている。中国の李克強首相もこのほど、DESの市場化などの方法で企業の債務を解決すると発言しており、DESは必然的な方向性であるようだ。問題は、DESという一手のみで企業の債務問題を完全に解決できるのかということだ。 DESとは、企業が銀行に対して負っている債務について、とりわけ質の悪い不良債務を株式に転換して銀行に取得させる方法である。企業の負債が軽減されるだけでなく、銀行の不良債権を減らすことができるという、一見すると一石二鳥の方法だ。第一弾のDESの対象額は1兆元に達する見通しだという。 債務の株式化、企業と銀行の相互努力がカギ しかし、DESは実施に先立って解決しなければならない数多くの問題がある。筆者が接触したある国際的な銀行の大中華圏トップは、DESを実施する場合に銀行側の選択権の有無がとても重要になると述べた。DESが不良債権の圧力を軽減することは間違いないが、どの債務の株式化を受け入れるかを決める際に銀行が選択権と主導権を握るべきだと指摘している。債務額や企業の状況、銀行が株式取得後に業績改善に向けて企業と協力できるか、などといった点を踏まえた上でDESに応じるかを決めるべきだという。DES実施後は銀行が企業の株主となるが、将来的に企業の貸借や未払金回収の処理が一段と複雑となり、うまく対処できなければ、逆に銀行の長期的な負担を増やすことになってしまうからだ。 不良債権残高は2兆元規模 しかし、中国政府が現在検討しているDES案では、必ずしも銀行に充分な選択の自主権を与えないもようだ。充分な自主権を与えた場合、銀行が「選り好み」する恐れがあり、DESの協力を最も必要とする質の悪い企業が恩恵を受けられず、DESの効果を最大限に発揮できなくなってしまうからだ。また、DESの株式への転換比率や単一の企業に対する銀行の持ち株比率の上限をどのように設定するかなど、DES実施には多くの問題がからむ。株式へ転換するために銀行が大幅に債権を削減しなければならないとなると、銀行の株主にとって必ずしも有利とならない。企業の清算手続きを行い、資産を売却して債権を回収するよりも得るものが少なくなる恐れすらある。半面、削減する債権を抑えて株式への転換比率を過度に高めれば、企業の既存株主の権益が大幅に希薄化し、企業側の株主の反発を招いてしまう。 また、問題を抱える企業に対してDESで銀行が出資するとなると、対象企業は1社や2社にとどまらない。中国本土の銀行が抱える不良債権残高は2兆元という驚くような規模とされており、関連する企業も必然的に膨大な数に上るという。銀行がDESで保有することになる大量の企業株をどのようにうまく管理・運用するのか、転換される株式の保有と処理を請け負う特定の機関を設置する必要はないのか、さらには、大量の株式を証券化して売却するか否かといった問題について、深く立ち入って検討する必要がある。 実際のところ、DESという方法のみで不良債権を処理するというのは対症療法にすぎず、根本的な解決策ではない。やはり長期的には、中国景気が復調して企業業績が改善し、銀行がきちんとリスク管理をして融資の質をモニタリングすることが重要だ。また、政府も政策的な圧力をかけて銀行に融資を促すようなことを二度とせず、銀行自身にリスクという観点から資金の貸し借りを判断させるようになって初めて、問題が解決するのだ。

インドネシア、課税逃れに恩赦検討加速 パナマ文書も影響

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は4月15日にQUICK端末で配信された記事です。 脱税者へ恩赦…法案審議、パナマ文書が新たな原動力に インドネシアの脱税者に恩赦を保証するタックス・アムネスティ法案が国民議会で支持を集めている。法案が成立すれば、一部の海外資産が国内に還流し、今年の歳入が拡大するだけでなく、国内の資産価格上昇にもつながる見込みだ。 タックス・アムネスティ法案の審議は2カ月以上遅れている。汚職撲滅委員会(KPK)を弱体化させる目的で国民議会が提出している別の法案を政府に認めさせるための取引材料として、一部議員らがタックス・アムネスティ法案を利用していたためだ。 しかし、パナマの法律事務所モサック・フォンテカから大量の資産情報(パナマ文書)が流出したことが、議員らにタックス・アムネスティ法案の審議を進めさせる新たな原動力となった。パナマ文書には、インドネシアの実業家、政治家、現役の官僚、議員らの名前が含まれていた。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は先週、税務当局に対してパナマ文書に名前が載っているすべての企業と人物を洗い出し、納税状況を調査するよう指示した。 インドネシア人の隠し海外資産額、同国のGDP上回る規模か 国民議会のアデ・コマルディン国会議長は、すぐに議会と政府の対立解消に向けて動いた。同氏は「国民議会はいかなる誤解も避けるため大統領とタックス・アムネスティ法案に関して再度議論する」と発言。「われわれは、法案が今年の税収拡大に不可欠であるということに同意している。また、パナマ文書で明らかになったような脱税行為の再発を防ぐ必要がある」と述べた。 ゴルカル党や開発統一党(PPP)、闘争民主党(PDIP)、民主主義者党など主要政党が公式にタックス・アムネスティ法案の支持を表明。反対勢力であるグリンドラ党も対立姿勢をやわらげたもようで、大統領との協議に応じることで合意している。 アデ議長によると、同法案は4月29日までに議会で可決される見通しだ。   インドネシア財務省は、課税を免れているインドネシア人の隠し海外資産額を同国の国内総生産(GDP)を上回る8,770億米ドル超と見積もっている。こうした状況を踏まえ、インドネシア政府が資産の一部を国内に呼び戻そうと提出したのがタックス・アムネスティ法案だ。同法案には、納税者が海外に隠した資産に関して1~3%の最終課税額を支払えば、滞納税を免除することなどが盛り込まれている。財務省によると、この措置により政府収入は44億米ドル増加する見通しという。 脱税者の資金、条件付きで投資許可へ…不動産業界に流入見こむ インドネシア税制分析センターのエグゼクティブ・ディレクターを務めるユスティヌス・プラストウォ氏は、「納税者にとっては、年内にタックス・アムネスティ制度の下で資産をインドネシアに戻すことが得策だろう。2018年に各国の税務当局とタックスヘイブンの間で自動情報交換制度が導入される予定で、海外口座の租税回避が困難になるためだ」と述べている。 ユスティヌス氏が言及しているのは、タックスヘイブンでの節税対策の金融資産情報を各国の税務当局に開示するという経済協力開発機構(OECD)の計画のことだ。対象となるタックスヘイブンには、インドネシアでも有名な英領ヴァージン諸島やケイマン諸島、シンガポールなどが含まれている。 タックス・アムネスティ法案では、脱税者はインドネシアに戻した資金を1年間、政府債に投資すれば、その資金をインフラ、小売り、不動産といった他の分野に投資することが可能になる。 インドネシア不動産協会(REI)のエディ・ハッシー会長は「インドネシアの不動産業界は2016年に前年比で10~12%の成長が見込める」と語る。昨年の成長率は7%だった。同氏は「タックス・アムネスティ制度が導入されれば、新たな資金がインドネシアの不動産業界に流入してくるのは時間の問題」との見方を示している。【翻訳・編集:NNA】

台湾・鴻海、シャープ買収に調印 「アップル受注」「3C成長力」で双方にメリット

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は4月6日にQUICK端末で配信された記事です。 シャープ買収劇、「4割引き」で終幕 鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー、コード@2317/TW)とシャープ(6753)の交渉がようやく実を結んだ。鴻海とシャープの協議は3月30日に合意に達し、調印した。鴻海グループと郭台銘会長個人が合わせて3888億円(約1166億台湾ドル)を出資し、シャープの株式の66%を取得する。1株当たりに換算した株式の取得価格は88円で、ほぼ「4割引き」の価格となった。  この3888億円という出資額は、シャープが2月25日の臨時取締役会で通過させた金額より1000億円少ないものとなっている。しかし、台湾と日本の企業史で4つの「第一」を記録することになる。まず、日本の百年以上の歴史を持つ企業が、海外企業からの買収を受け入れて再建に臨むのは、初めてということ。次に、鴻海にとって創立四十数年来で最大の海外投資だ。さらに、台湾企業が日本の液晶パネル大手メーカーを買収するのは、初めて。加えて、鴻海グループの副総裁がシャープの社長に就任することになるとみられているが、日本の百年以上の歴史を持つ企業に台湾人社長が誕生すれば、これも初めてとなる。 譲歩の末の調印…債務の返還期限迫り 鴻海とシャープは4月2日、日本で契約に調印した。双方が発動することになる新しい戦略が、世界から注目を集めている。  鴻海が提示した投資企画によると、鴻海、鴻海の英領ケイマン諸島子会社FFE、鴻準精密工業(フォックスコン・テクノロジー、コード@2354/TW)のシンガポール子会社FTP、郭台銘会長が個人的に投資するSIOが、共同でシャープに約2888億1100万円を出資する。  さらに、鴻海は約999億9900万円強の戦略的投資を行い、シャープが増資として発行する議決権のない種類株1136万3636株を取得する。これは、2017年7月1日に1対100の比率で普通株に転換できる。1株当たりの転換価格は88円となる。以上の合計で今回、鴻海からシャープへの投資は3888億円となる。  鴻海としては、値引きは求めてはおらず、双方が協議によって達成した合理的な投資額だと強調している。しかし、市場の焦点は、将来鴻海がシャープに資本参加した後、どれほどの有利な立場を確保したのかに置かれている。  消息筋によると、シャープの巨額の債務が返済期限到来を迎えようとしており、資金需要が切迫している。また、鴻海グループは技術を流出させないと約束した。これによってシャープは最終的に譲歩し、出資受け入れ金額を引き下げた。同時に、調印後、もし鴻海側の原因ではなく買収が破談に終わった場合も、鴻海がシャープの液晶パネル事業を切り離して買収する権利を認めた。しかも、「従業員の雇用を維持する」という点についても、シャープは譲歩し、新条項を追加することで、鴻海がリストラを検討できるようにした。     硬直体制打破できるか…経営立て直しの試練は続く 日本のメディアの多くは、鴻海がこの百年の歴史を持つ日本企業を買収することに対して肯定的な見方を示しており、鴻海グループのスピード感ある管理スタイルおよび完成されたサプライチェーンによって、硬直化した企業に新しい生命が注入されると考えている。  台湾側でも、鴻海はシャープの極めて高度な液晶ディスプレイ技術を利用することで、最大の顧客である米アップル(コード@AAPL/U)からのスマートフォン組み立ておよび部品供給の受注を揺るぎないものとでき、同時にシャープに3C(コンシューマー・エレクトロニクス=家電、コンピューター、コミュニケーション=通信機器)分野での成長力を注入できると考えている。  しかし、この取り引きには双方の間に文化的な差異が存在している。さらに、シャープの過去2年間に及ぶ巨額の赤字をどのように黒字転換させるのか。いずれも、鴻海グループとシャープの新経営チームの知恵が試されることになる。将来、鴻海とシャープの提携には、さらに無数の挑戦が待ち構えていると思われ、それをどう乗り越えていくのか注目したいところだ。

インドネシア中銀、今年3度目の利下げ 年内6.5%までの低下を予想

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのリズキ・ファジャル(Rizki Fajar)氏がレポートします。(※本記事は2016年3月25日にQUICK端末で配信された記事です) インドネシア、追加利下げで民間投資誘引 インドネシア中央銀行(BI)の理事会は17日の会合で、政策金利(BIレート)を0.25%引き下げて6.75%にすると決定した。同様に貸出ファシリティー金利と翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)もそれぞれ7.25%と4.75%に引き下げる。インドネシアのマクロ経済の安定に加え、米FRBの追加利上げが年内にほとんど見込めないことが利下げの背景だ。中銀は「マクロ経済と金融システムの安定を維持しつつ経済成長を支える」とを強調。目先の焦点として、金融調節の一貫性ある運用体制づくりをあげた。   一方で、中銀は、インフラプロジェクト開発の加速などの財政刺激策に支えられ、今年の経済成長が5.2~5.6%に上向くことを期待。さらに、最近の政府の規制緩和とそれに続く中銀の金融緩和を受け、今年後半には民間投資が回復すると見込んでいる。 外的リスクへの対処に尽力 世界経済の展望については、2016年と2017年の世界成長予測が以前よりも引き下げられていることから、中銀は外的リスクに対して引き続き警戒していくとしている。日本、欧州の不況と低インフレにより、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行はそれぞれ、流動性供給やマイナス金利政策を通じた追加緩和を強いられたと中銀は認識している。加えて長期に及ぶ中国の経済減速により、中国人民銀行(中央銀行)は低迷する自国経済を刺激するために預金準備率を引き下げた。  中銀は、今後もマクロ経済の安定と持続可能な成長を維持するため、インドネシア経済のファンダメンタルを踏まえ、為替相場の安定を維持する努力を強めていくと述べた。 さらに25bpの利下げを予想 インドネシアの金融システムは、弾力的な銀行制度と比較的健全な金融市場に支えられ、安定を維持している。2016年1月の各行の自己資本比率(CAR)は下限値の8%を大きく上回り、21.5%の高さを維持した。同時に不良債権比率(NPL)は依然低く、債権全体比でグロス値が2.7%、ネット値が1.4%と比較的安定している。これに対し、1月の貸付成長率は前年同月比9.6%と前月の10.4%から低下したが、同月の預金残高は前年同月比6.8%の伸びを記録した。  さらにRHB証券では、燃料価格の下落と軟調な国内需要が原因で、2016年はインフレが低水準で推移するとみている。2016年の経常赤字は対処可能な水準にとどまりそうだ。また、大量の外資流入と国内市場での外貨需要の低下が続き、ルピア高を促すと見込まれる。これらは中銀に対して、金融政策をいっそう緩和させる余地を与えるだろう。しかし中銀は今後の金融緩和の決定には慎重な姿勢を維持し、次の動きを決定する前に世界経済の成長を考慮するだろう。この点に関して、われわれは2016年中に政策金利がさらに0.25%引き下げられ、6.5%になると予想する。【翻訳・編集:NNA】

香港、浙商銀と天津銀が上場 中国の景気低迷で投資家に慎重ムードも

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。(※本記事は2016年3月25日にQUICK端末で配信された記事です) 浙商銀と天津銀が上場…合計200億香港ドル規模調達 中国の商業銀行である浙商銀行(コード@2016/HK)と天津銀行(コード@1578/HK)が、きょう30日に香港株式市場へ上場する予定だ。浙商銀行はH株(中国本土企業株)を33億株発行、公募価格のレンジを3.92~4.12香港ドルとし、約129億~136億香港ドルを調達する。現時点で今年初めて香港で調達規模が100億香港ドルを越える新規株式公開(IPO)となる。一方、天津銀行はH株9億9550万株を発行。公募価格のレンジを7.37~9.58香港ドルに設定した。レンジの中間の値で算出した場合、諸費用を除いた調達規模は約74億1500万香港ドルとなる。  昨年下半期(7~12月期)に香港で株式上場した中国系の金融銘柄と同じく、浙商銀と天津銀も比較的多くの中核的投資家を引き入れた。浙商銀は、浙江省海港運営集団、エン煤国際、紹興領雁股権投資基金パートナーシップ企業、申万宏源集団、アリババ集団(コード@BABA/U)傘下のアリペイ(香港)インベストメントの5社を中核的投資家とする。これら5社の引受額は合計約76億香港ドルで、今回の株式上場に伴う調達額の55.8~58.9%を占める。他方、天津銀が引き入れた中核的投資家は、中国船舶(香港)航運租賃傘下のFortune Eris Holding、華達、天津物産集団傘下の天物投資、天津房地産集団傘下の天房津城、山東天業房地産開発集団傘下の瑞フ祥投資、天津泰達投資ホールディングス傘下の泰達香港、および匯鼎ホールディングスの7社。同7社が今回の調達額の45.58~59.23%に相当する合計43億4800万香港ドルを引き受ける。 両社ともに成長率・資金繰りは高水準 浙商銀は浙江省に本部を置く全国規模の株式制商業銀行だ。国内の全国規模の株式制商業銀行12行中、2014年12月末時で総資産ベースで11番目の規模。浙江省や江蘇省、上海市といった華東エリアで主に業務を展開している。昨年9月末時点で北京市や上海市、江蘇省など11省(直轄市を含む)と浙江省内のすべての大規模都市を合わせた計約130カ所に支店を設けており、長江デルタや環渤海エリア、珠江デルタ、一部の中西部地域をカバーしている。12~14年にかけて総資産と経常収益の年間平均成長率(CAGR)がそれぞれ30.4%、28.9%と、香港に上場する中国の都市商業銀行の同期間の平均成長率を上回った。昨年9月末までの9カ月間の純利益は前年同期比26.8%増の56億3700万人民元で、上場している全国規模の株式制商業銀行の同時期の伸び率を上回り、同期間の自己資本利益率(ROE)も18.66%と、上場している全国規模の株式制商業銀行の同時期の平均より約0.7%高かった。  浙商銀は事業を急速に拡大させると同時に、リスク管理と内部統制に関する対策に慎重に取り組んでいる。昨年9月末時の同行の不良債権比率は1.22%と、他のすべての上場している全国規模の株式制商業銀行よりも低かった。また、同時期の不良債権引当カバー率が227.61%、貸倒引当金カバー率が2.78%で、大部分の上場している全国規模の株式制商業銀行よりも良好だった。浙商銀は調達資金を各業務の持続的な成長に備えるための資金に充当する。 一方、天津銀は天津市に本部を置く都市商業銀行だ。中国の都市商業銀行としては8番目の香港上場銀行となる。同行の営業網は天津市、北京市、上海市、河北省、山東省、四川省の6省・直轄市をカバーしている。総資産は14年末時点で4789億元。12~14年の期間では、総資産のCAGRが25.8%、純利益のCAGRが29.6%で、同期間の中国の都市商業銀行の平均CAGR(総資産が21%、純利益が16.6%)をそれぞれ上回った。資産の質については、昨年9月末時点の同行の不良債権比率が1.49%と、同時期における中国の商業銀行全体の不良債権比率(1.59%)より低かった。また、同行の不良債権引当カバー率は199.79%で、同時期の中国全体の商業銀行の不良債権引当カバー率(190.79%)を上回った。天津銀はIPOで調達する資金を業務の持続的な発展を支える資本基盤の強化に用いる。 市場参加者は懸念…中国景気の低迷で もっとも、中国景気の低迷が続く中、融資需要の減退と不良債権の増加への懸念から、香港の投資家たちは中国本土の銀行への投資に対して慎重になっている。昨年に香港株式市場へ新規上場した商業銀行の例では、鄭州銀行(コード@6196/HK)のIPOへの反応が比較的良かったのを除き、錦州銀行(コード@416/HK)や青島銀行(コード@3866/HK)ではいずれも株式購入の申し込みが応募枠に達しない状況だった。  

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