原油安メリット企業は意外に少ない? 金融はマイナス金利の影響直撃(2月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(2月1~26日調査分、上場企業418社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス10となり、前月調査から3ポイント悪化しました。これは2013年6月調査(プラス10)以来の低水準です。非製造業DIも6ポイント悪化のプラス30となり、結果、金融を含む全産業DIはプラス21と、前月から5ポイントの悪化となりました。なお、将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業、非製造業ともに悪化。製造業は3カ月先のDIがプラス7となりました。 マイナス金利の影響で金融機関の業況判断が悪化 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 全産業の業況判断DIをみると、2015年8月調査のプラス35でピークを付け、そこから徐々に下降線をたどり、今回2月調査ではプラス21まで低下しました。景気の現状に対する見通しはじわりと厳しくなっています。 特に注目したいのが、金融機関の業況判断DIが大幅に落ち込んでいる点です。2月調査では前月に比べて17ポイントも悪化し、プラス16まで低下しました。ここまで急落した理由は、1月29日に日銀が発表したマイナス金利政策の導入でしょう。10年国債の利回りまでマイナスになるなか、金融機関にとっては利ザヤの縮小が業績にどう影響するのか懸念されています。株式市場でも、銀行株を中心に大きく売られました。今後の業績に悪影響を及ぼすとの懸念が早くも業況判断DIの悪化で示されたといえます。 3年ぶりに「想定より円高」が「想定より円安」を上回る 生産・営業用設備の現状については、やや過剰感が強まりつつあるようです。過剰、適正、不足の構成比を全製造業ベースでみると、15年12月調査時点で①過剰(9%)、②適正(86%)、③不足(6%)だったのに対して、2月調査では、①過剰(12%)、②適正(80%)、③不足(8%)となりました。今年に入ってからの株安による景気の先行き不透明感が、特に製造業をベースにして過剰感の高まりにつながっていると考えられます。 次に雇用人員の現状についてですが、こちらもやや過剰感が高まりつつあるようです。非製造業も含めた全産業ベースでみると、15年12月調査では、①過剰(5%)、②適正(58%)、③不足(36%)だったのに対して、2月調査では①過剰(7%)、②適正(58%)、③不足(36%)となり、ごくわずかですが過剰との回答が高まりました。非製造業については依然として不足感がある状況ですが、製造業の過剰感が高まっており、全体を通じて雇用人員の過剰感が高まっています。 また、全産業ベースの円相場判断をみると、2月調査で「想定よりも円安」が18%、「想定よりも円高」が25%となり、「想定よりも円安」から「想定よりも円高」を差し引いたDIはマイナス7に低下しました。円相場DIがマイナス(想定より円高とみる企業が多い状況)に転じるのは、実に2012年12月調査以来、3年2カ月ぶりのことです。当時の状況はというと、野田首相(当時)が衆院解散を表明し、アベノミクス相場の起点になったとされる時期とほぼ重なります。ここから円安が進行したわけですが、3年の時を経て円相場に対する見方は転換点を迎えつつあることを示唆する結果となりました。足元では円高・株安に見舞われ日本市場は大荒れの展開となっていますが、まさにアベノミクス相場は正念場を迎えています。 原油安による劇的効果は望み薄? 2016年の金融市場の混乱を招く引き金ともなった原油相場。足元はWTIで1バレル30ドル台まで回復したものの、かつて100ドルを超えていた時期があったことを考えると依然としてその水準は安く、その影響が注目されています。 今回の特別調査では「貴社にとって、昨今の原油安は総合的に見てどのように影響しそうですか」と質問したところ、最も多かった回答は「ややプラスに作用」で43%を占めました。「大きくプラスに作用」(3%)を合計すると「プラスに作用」との回答は46%となり、「やや・大きくマイナスに作用」(14%)を上回りました。一方、「特に影響しない」は39%でした。 原油安は、中東やロシア、その他の産油国にとっては財政面でネガティブ要因になる一方、日本など海外から原油を輸入している国にとっては輸送コスト、機械を動かすのに必要なエネルギーコスト、あるいは原材料コストの低減につながるため、経済的にプラス効果が得られるといわれています。 ただ、「プラスに作用」以外と回答した企業が5割超を占めており、いくら原油価格が過去の高値からみて5分の1程度まで下がっても、「劇的」な経済効果にはつながらないということを示唆しています。「原油安は日本経済にとってプラス」という意見はよく耳にします。しかし、現在はグローバルに展開する企業が増え、産油国や新興国の景気動向が業績に影響を及ぼす比率も相対的に大きくなっているだけに、トータルでみれば劇的な効果は望み薄と受け止められているようです。 女性活躍、企業は「積極的な登用等の取り組み」を推進 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)が昨年、可決成立し、今年4月からは、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定が労働者301人以上の大企業で新たに義務づけられました。 これを受け、「厚生労働省が示す予定の取組分野のうち、貴社が特に重視するのはどれですか」と聞いたところ、「積極的な登用や評価、配置・育成・教育訓練に関する取り組み」が38%で最多となり、次に「積極採用や再雇用・中途採用、継続就業に関する取り組み」が26%で続きました。 安倍政権が打ち出している「1億総活躍社会」の実現に向けて、働き方に関するさまざまな取り組みが行われていきます。女性の社会進出を促進するための環境整備、昇進・昇給の男女差別を無くすための方策、あるいは60歳以降も働ける労働環境整備などが注目されると共に、上記にもある各項目への取り組みも注目されます。積極的な登用や評価によって、働く人のやる気を高めると共に、教育訓練によってボトムを引き上げることなども、これからの日本にとっては重要になると思われます。

賃上げ、現状維持が6割弱 日銀の物価目標達成に暗雲?(1月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(1月4~17日調査分、上場企業418社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス13となり、前月調査から4ポイント悪化しました。これは2015年1月調査(プラス13)以来の低水準です。一方、非製造業DIは4ポイント改善のプラス36となり、結果、金融を含む全産業DIは横ばいのプラス26となりました。将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業、非製造業ともに小幅ながら改善を示しました。 景況感の方向性は不透明 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 全産業の業況判断DIを見ると、直近でピークを付けたのが2015年8月調査分のプラス35でした。その後、徐々に低下傾向をたどり、12月調査分ではプラス26まで低下。今回の1月調査分も同じくプラス26となり、景況感の方向性が見えにくくなっています。 アベノミクスがスタートしてから3年が経過し、そろそろ景況感にもピークアウトの感が高まりつつあります。中国経済の成長率ダウンは、中国を一大消費マーケットと捉えて製品・サービスを販売している企業の売上高ダウンにつながりますし、年初来、急速に進んだ円高は、輸出企業を中心にして業績上振れ期待の後退を招きます。 また、中国人観光客を中心とする「爆買い」も、どうやら昨年の秋口でピークを打った感があり、国内消費のけん引役を失いかけています。業況判断DIはプラスを維持し、先行き判断についても製造業がプラス13(前月比1ポイント改善)、非製造業がプラス35(同5ポイント改善)と、それぞれ改善しました。しかし、国内の個人消費が盛り上がらない限り、数値の大幅な改善は期待しにくい状況といえそうです。 今後の注目点は、企業の従業員に対する利益還元がどこまで行われ、それが個人消費につながるかどうかでしょう。その意味でも、今年の春闘の行方は、国内景気の行方に大きな影響を及ぼすとみられます。 非製造業の雇用不足が深刻 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースで過剰から不足を差し引いたDIがマイナス3となりました。製造業はプラス2でやや過剰気味ですが、12月調査分に比べてプラス値は1ポイント縮小しました。一方、非製造業はマイナス8で、12月調査分のマイナス7からマイナス幅が拡大し、一段と不足感が高まっています。 また雇用人員の現状については、全産業ベースで見ると、2015年1月調査分がマイナス21だったのが、今回の1月調査分ではマイナス31まで拡大しています。製造業、非製造業の別にみると、製造業のDIがマイナス10であるのに対し、非製造業はマイナス48となっており、相変わらず非製造業における雇用不足は深刻な状況を示唆しています。 販売価格は金融を除く全産業ベースで、上昇から下落を差し引いたDIがゼロと、12月調査分のマイナス1から若干の改善。仕入れ価格DIは、金融を除く全産業ベースでプラス15となり、12月調査分に比べて4ポイント低下しました、仕入れ価格DIの低下は、為替の円安傾向に歯止めがかかったことを示していると考えられます。 賃上げ、「前向きに検討」41%にとどまる 前述した通り、国内景気の回復には個人消費がいかにけん引するかがカギの一つになりますが、個人消費を占う上で直近で最大の焦点となるのが「賃上げ」の動向といえるでしょう。 1月の特別調査では、「給与を底上げするベースアップ(ベア)を含む賃上げの可否」について質問しました。個人消費を活発化させるためには、自分が将来得るであろう収入が増えることへの期待感が高まる必要があります。その意味で、春闘を経て決定されるベアに対する関心が高まるわけですが、今回のアンケート調査の結果によると、「現状水準を維持する方向」と回答した企業が57%で最多となり、「大幅な賃上げを前向きに考える」(1%)と「小幅であれば賃上げを前向きに考える」(40%)を併せた「賃上げ検討」企業は41%にとどまりました。 年明け以降、国内の株式市場が大混乱となっていますが、その要因は中国リスクを背景とした世界経済への懸念やリスクオフムードに伴う円安期待の後退などが挙げられます。ドル円相場は現在、1ドル=117円前後で推移していますが、多くの上場企業の想定為替レートが118円であることを考えると、現状は業績への悪影響も警戒される水準となりつつあります。企業業績の先行き警戒感が強まれば、賃上げにも影響を及ぼす可能性は否定できません。 日銀の黒田東彦総裁は「賃金の上昇は日本経済の持続的な成長のために不可欠」と発言していますが、賃金上昇の有無は日銀が目標として掲げる2%の物価上昇にも大きく影響するでしょう。足元の株価下落や企業業績の先行き不透明感が台頭する中ではベアを含む賃上げを過度に期待することは禁物といえ、それは日銀にとっても逆風となりそうです。 実効税率引き下げ「プラスに作用」約7割 大企業にメリット もう一つは、法人税率の引き下げに関する質問を実施しました。「与党が法人税については実効税率を20%台に引き下げるとしています。今回の税制改正が日本の景気に与える影響について、どう予想しますか」と聞いたところ、「プラスに作用する」との回答が約7割を占める結果となりました。 一方、企業の規模別では少し違った景色もみられます。大規模企業と新興企業の回答を比べてみると、大規模企業は新興企業に比べて「ややプラスに作用する」という回答が高かったのに対し、新興企業は大規模企業に比べて「特に景気に影響しない」という回答が高いという特徴がありました。法人税は利益を出している企業に対して課せられるものですから、その減税効果は、より大きな利益を出している大規模企業ほど高まると考えられます。逆に、新興企業には赤字経営を続けているところもあり、法人税の実効税率が引き下げられたとしてもメリットが実感できない点が、この差異に表れていると考えられます。

2016年の日経平均、15年高値超え予想6割に 先行き景況感は悪化(12月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(11月18日~12月1日調査分、上場企業425社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス17となり、前月調査から1ポイント改善しました。一方、非製造業DIは4ポイントの悪化となり、結果、金融を含む全産業DIは2ポイント悪化しました。将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業、非製造業、全産業そろって悪化しました。 先行き景況判断が製造業・非製造業ともに悪化 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 2015年のQUICK短観をみると、全産業の業況判断DIは、1月がプラス20となった後、8月にはプラス35まで上昇しましたが、それをピークに下降し始め、直近の12月はプラス26となっています。12月は製造業がプラス17と1ポイント改善したものの、非製造業がプラス32と4ポイント悪化した結果、全産業ベースで2ポイントの悪化となりました。 後述しますが、2016年の日経平均株価の見通しについては、上値のメドについてやや慎重な雰囲気も垣間見えます。それは、QUICK短観にも表れており、企業の業況判断は強弱入り混じり、方向感が定まらない状態です。株価の上昇と共に景気拡大局面も2016年に入れば4年目に突入するとあって、そろそろ天井というムードが広まってもおかしくありません。 グローバルにみると、米国の景気は比較的堅調ですが、新興国では中国経済の成長率低下や原油など資源価格安の影響もあって、成長期待が後退しています。それが日本経済に及ぼす影響は無視できません。当面、日本経済の先行きについては、慎重な見方が広がる可能性も高そうです。 仕入価格の上昇はやや一服 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースで過剰から不足を差し引いたDIがマイナス2%となりました。製造業はプラス3%でやや過剰気味ですが、非製造業はマイナス7%と不足感のある状況が続いています。ちなみに、1月調査で非製造業の生産・営業用設備DIはマイナス3%でした。 雇用人員の現状については、やはり全産業ベースでみると、1月調査がマイナス21%だったのが、今回12月調査ではマイナス31%まで拡大しています。製造業、非製造業ともに雇用人員の不足感は強いものの、特に非製造業における雇用人員の不足感は高水準の状態にあります。 販売価格は金融を除く全産業ベースで、上昇から下落を差し引いた12月のDIがマイナス1%と4月調査以来、8カ月ぶりにマイナスに転じました。7月調査ではプラス5%と2014年4月調査(プラス6%)以来の高水準となっていましたが、その後は販売価格が下落したという回答比率が高まっています。 仕入価格の現状については、上昇から下落を差し引いたDIが、12月調査ではプラス19%と前月調査から1ポイント低下しました。内訳は上昇が25%、下落は6%。1月調査では上昇が38%、下落が5%で、差し引き33%のプラスでした。この1年の傾向をみると、下落したという回答率は大きく変わらなかったものの、上昇したという回答率が低下したことにより、仕入価格DIは低下する形となっています。円安の一服感などを受けて仕入価格の上昇にはやや歯止めがかかってきたと思われます。 2016年の日経平均、15年高値「超える」6割 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。ひとつは「2016年の日経平均株価の高値見通し」について、もうひとつは「政府が掲げる子育て支援強化などに伴う企業の取り組み」についてです。 日経平均株価は2012年以降、3年連続で上昇。そして2015年は12月3日の終値時点で14.26%の上昇となっており、4年連続のプラスが濃厚となっています。3日の日経平均は1万9939円。今年の高値は現時点で6月24日に付けた2万868円です。 2016年の日経平均について、最も高いところでどの水準まで上昇すると予想するか聞いたところ、「2万1000円台~2万2000円台」との回答が46%を占めました。「2万3000円台~2万4000円台」(12%)、「2万5000円以上」(4%)を合わせると6割以上が15年の高値(3日時点、2万868円)を上回るとみていることになります。 一方、今年の高値を超えられないという回答は37%。この水準を高いとみるか低いとみるか意見が分かれるところですが、上述したように景気の先行きに警戒ムードが広がっていることに加え、2016年3月期決算で減益予想の企業がみられる点、2016年は製造業の業績上振れをけん引してきた円安効果が薄まることなど、株価の見通しを巡っては不透明要因も多いため、やや先行きを慎重にみている面もあるようです。 ちなみに、日経平均がこのまま4年連続上昇となれば、2003~2006年(4年連続)以来の記録となります。そして、2016年も年間ベースで上昇することになれば、1980年代に達成して以来の上昇記録となります。2016年は日経平均の高値水準も関心事のひとつですが、「1980年代以来の5年連続上昇」という記録を打ち立てられるかという点も注目です。 子育て支援、企業側の注力ポイント「業務上の融通面の支援」が5割強 次に「政府は子育てや介護などへの支援策を強化する方針を示しましたが、貴社が従業員に対し、最も力を入れている方針は何ですか」との質問に対し、最も多かった回答は「休暇取得や職場復帰などを円滑に行える業務上の融通面の支援」で55%を占めました。「社員同士が協力し合えるための社内教育といった意識面の支援」は13%、「手当てなど金銭面での支援」は10%、「介護施設や託児施設などの設置・情報提供・紹介といった設備面での支援」は4%にとどまりました。 手当てのような直接金銭面で支援する方策や、介護施設・託児施設の設置などは、企業にとって経営コストの負担を重くするせいか、多くの企業は、休暇取得や職場復帰などを円滑に行える業務上の融通面の支援に力を入れているという結果になりました。 将来の人口減少を最小限に抑えるためには、働きながら子育てが出来る環境を整える必要があります。最近は親の介護を機に会社を退職するケースも増えており、企業としては有能な社員の流出を防ぐためにも、介護をしながら働ける制度設計が求められています。それだけに「特に力を入れている方策はない」と回答した企業が18%も占めている現状は、今後、改善される必要がありそうです。

TPP合意、事業に「良い影響」3割、景況感は3カ月ぶり改善(11月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(10月23日~11月5日調査分、上場企業422社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス16となり、前月調査のプラス14に比べて2ポイント改善しました。非製造業も1ポイント改善となり、金融を含む全産業では前月比2ポイント改善のプラス28となりました。 企業景況感、底入れ模索か 先行き判断も改善 企業の景況感は製造業・非製造業ともに3カ月ぶりに改善しました。日経平均株価も8月下旬の世界同時株安以降、約1カ月間の調整を経て戻り歩調を強めているだけに、10月調査分にかけての景況感悪化が一時的なものにとどまるかどうか、今後の動向が注目されます。 業況判断DIの先行きを見ると、全産業ベースはプラス26と前月比2ポイントの改善となっています。過去3カ月の平均をみると、6~8月調査分がプラス33だったのに対し、9~11月調査分はプラス25に低下しています。 その意味ではまだ先行きを慎重に見る必要がありそうですが、10月の米雇用統計が堅調だったことなどから11月に入り円安・ドル高基調が強まっており、今後の製造業の景況感にプラスの影響を与えることが考えられます。非製造業はインバウンド(訪日外国人)消費などの影響で高水準を維持しているだけに、製造業の景況感が回復すれば、先行きを含めて全体の業況判断DIを押し上げる可能性が広がります。その意味では、今後の為替相場の動向には要注目といえるでしょう。 雇用の不足感が一段と強まる 生産・営業用設備の過不足感を全製造業で見ると、過剰から不足を差し引いたDIは11月調査分がマイナス1%となりました。かねてより設備の老朽化が問題視されていましたが、かつては円高の影響で国内の生産拠点を海外に移す動きがあったため、国内で新たな設備投資意欲が盛り上がりにくい環境にありました。ただ、2012年末以降の円安・ドル高により生産拠点を国内に回帰させる動きも出始めており、徐々に国内における設備投資意欲が高まることも期待できそうです。 雇用については、11月調査分の全産業DIがマイナス32%となり、前月からマイナス幅が拡大しました。1月調査分がマイナス21%だったことから考えると、雇用の不足感は一段と強まっていることが分かります。ただ、非正規労働者が4割を占める現状からすると、雇用の不足感の高まりが必ずしも、雇用の安定化や個人消費の大きな盛り上がりにつながらない可能性もあり、状況を慎重に見極める必要もありそうです。 TPP合意、事業運営に「良い影響」が3割強 慎重な見方も 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。ひとつは「環太平洋経済連携協定(TPP)発効の影響」について、もうひとつは「職場積立NISA(少額投資非課税制度)」についてです。 10月5日、苦難の末にようやくTPP交渉は大筋合意に至りました。参加国は12カ国で、域内経済規模が世界の国内総生産(GDP)に占める割合は約4割に達します。域内において、関税などの貿易障壁が大幅に引き下げられ、ヒトやモノ、資本、情報が自由に行き来する、巨大な経済圏が出現します。これに関して、将来においてTPPが発効される場合の貴社の事業運営に与える影響を聞いたところ、「良い影響が出ることが想定される」(6%)、「どちらかと言えば、良い影響が出ることが想定される」(28%)と、「良い影響」との回答が34%に上り、「悪い影響」(8%)との回答を上回りました。企業全体としてはTPP発効により競争力の強化につながるとの期待につながっているようです。 今後、各国において議会承認のプロセスを経て正式に発効されますが、国内手続きが仮に順調に進んだとしても、正式発効は2016年後半とみられています。この間、米国では大統領選挙・連邦議会選挙があり、すでにTPP発効の是非を巡って、米国内では選挙戦の争点になりつつあります。今後も紆余曲折の展開が予想され、特に米国と日本における議会承認の行方が注目されます。実際、アンケート結果では、6割強が「TPP発効が事業運営に良い影響と悪い影響のどちらが出るか判断しづらい」と回答するなど未知数の部分も多いだけに、TPP発効承認に至る国内動向は、まだ予断を許しません。 職場積立NISA導入、「検討していない」が97%占める 次に「職場積立NISA」の導入に関する質問ですが、「特に検討していない」との回答が97%を占めました。 職場積立NISAとは、金融機関が取引先である企業の職場単位でNISA口座の契約をし、給与天引きや口座自動引き落としの形で、NISAの積立投資を行うものです。金融機関側から見れば、個人営業で1件ずつNISA口座を獲得するよりも、営業効率が良くなるという考えが働きます。もっとも、利用者側から見ると、職場積立NISAを利用した場合、個人で別の金融機関にNISA口座を開設するのが困難になり、運用する際の商品選択の自由度が狭められるといったデメリットも意識されます。今後は職場積立NISAの使い勝手向上に向けた金融機関の知恵が試されそうです。

業績上振れ見込みの企業はわずか6%…企業景況感の悪化続く(10月調査)

国内企業の景況感悪化が続いています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(9月28日~10月12日調査分、上場企業427社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス14となり、前月調査のプラス21に比べて7ポイント悪化しました。非製造業も1ポイント悪化し、プラス35となりました。   結果として、金融を含む全産業では前月比4ポイント悪化のプラス26となりました。 景況感はピークアウト? 実質GDP(国内総生産)の2期連続のマイナスが懸念されるなど、日本経済の先行き不透明感が強まっています。中国経済への懸念もくすぶるなか、来年には消費税率10%への引き上げが控えています。 全産業の景況感も今年8月のプラス35から徐々に低下傾向をたどっているだけに、国内景気のピーク感が漂ってきます。QUICK短観を株価の先行指標としてみると、この2か月における業況判断DIの悪化は、株価に及ぼす影響という点からも気になるところです。景気鈍化を踏まえれば、足元の株価下落には理由があることになります。 消費税率引き上げに向けて、日銀が追加の量的金融緩和を実施するかどうか。市場関係者の関心が向かいます。 気になる販売価格の下落ムード 金融緩和に絡めて言えば、企業の販売価格の下落傾向も気になるところです。 販売価格と仕入価格の指数(価格上昇の回答から下落の回答を差し引いたDI)は、全製造業の数字を見ると「販売」でマイナス12にマイナス幅が拡大。一方で「仕入」はプラス8に上昇しました。仕入価格の上昇は傾向として落ち着きつつありますが、これは、円安の傾向が一服しつつあるからでしょう。ただ、販売価格はマイナス幅が拡大しており、景況感の悪化とともに物価の下落プレッシャーが高まっているのではないかという点が懸念されます。 生産・営業用設備の現状を示す指数(過剰から不足を差し引いたDI)は、全産業ベースでマイナス2と、極端な不足感はなく、ほぼ均衡状態であると考えられます。 雇用についての指数(全産業)はマイナス31で、9月調査分に比べて2ポイント悪化しました。前月調査でも指摘したように、特に非製造業の人手不足が深刻で、6月調査ではマイナス35だったのが、9月調査ではマイナス41。10月調査分では、それを上回るマイナス47まで状況が悪化しています。人手不足は雇用を促進するため、好景気のサインでもあったのですが、最近の人手不足は若年労働者数の減少によるところが大きいと見られています。 消費税率引き上げ、「予定通り実施が適切」の声が半数以上 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。ひとつは消費税率10%への引き上げについて、もうひとつは今期通期の業績見通しについてです。 まず消費税率について。消費税率は現行8%ですが、2017年4月からは10%に引き上げられる予定です。また、消費税率の再引き上げに際して、食糧品など生活に必需な一部品目については、軽減税率を導入するとの見方もあり、今後、議論が行われます。 税率引き上げまでに、日本がデフレ経済から完全に脱却すると共に、景気がしっかり上向いているかどうかがポイントです。目下、原油価格の急落によって、消費者物価指数のコアCPIは2年4か月ぶりにマイナスとなりました。景気や株価の先行指標とされる景気ウォッチャー調査を見ても、このところの数値は決して芳しいものではありません。 しかし、2017年4月の消費税率引き上げは、すでに1度、延期したものだけに、安倍首相としては「再延期はしない。景気判断もしない」ことを表明しています。これは、景気がたとえ悪かったとしても、消費税率引き上げは実施されることを意味しています。 実際、企業としては、2017年4月予定の消費税率引き上げをどのように受け止めているのでしょうか。それに対する回答は、下記のようになりました。 総じて、消費税率の引き上げについては賛成であるものの、やはり景気の実勢を見極めつつ、引き上げのタイミングをどこにするかが最大の問題点のようです。 上振れ見込みの企業はわずか6% 次に今期通期の業績見通しについて。2016年3月期を中心とした今期の通期業績見通しはどうなるのか。株価にも直結する問題だけに、多くの投資家にとって関心の高いテーマです。 上振れする見通しの企業はわずか6%に留まりました。輸出企業の業績を押し上げる円安・ドル高傾向にも陰りが見えているため、強気の企業が減っていると考えられます。

人民元切り下げの影響に警戒残る…企業景況感が悪化(9月調査)

国内企業の景況感に影が差しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(9月1日~13日調査分、上場企業437社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス21となり、前月調査のプラス29に比べて8ポイント悪化しました。非製造業も1ポイント悪化し、プラス36となりました。 結果として、金融を含む全産業では前月比5ポイント悪化のプラス30となりました。 企業の景況感に影響を及ぼしている要因の一つが中国景気への懸念です。今回は特別調査で、人民元の切り下げの実際の影響についても質問しています。 先行きの指数も悪化、製造業の販売価格も伸び悩む 景況感の減速の背景にあるのは、8月後半の金融市場の混乱でしょう。人民元の切り下げや新興国・資源国通貨の下落、世界的な株式市場の下落などを通じて、日本の株式市場も大きく水準を切り下げました。株式市場も楽観から徐々に悲観が強まりつつあり、景気の先行きに対する厳しい見方につながっています。先行きの景況感を示す指数を見ると、全産業ベースではプラス25で、前月から8ポイント悪化しました。 生産・営業用設備の現状を示す指数は、全産業ベースでマイナス3(前月はマイナス2)と、若干、不足感が強まっています。製造業設備において老朽化が進んでおり、切り替え需要が高まっていることと関係しているとの見方があります。 雇用についての指数はマイナス29とマイナス幅が2ポイント拡大。引き続き非製造業分野での人手不足が深刻なようです。 製造業の価格転嫁状況を見ると、仕入価格の上昇は一服している一方、景気の先行き見通しの不透明さから販売価格の下落圧力が強まり、ややデフレ的な傾向が見られる点が、懸念されます。販売価格の現状を示すDI指数(販売価格の「上昇」の回答から「下落」の回答を差し引いたもの)をみると、製造業はマイナス10とマイナス幅が2ポイント拡大。一方、仕入価格のDIはプラス5と前月から12ポイント低下しました。 人民元切り下げの影響、今のところは限定的…今後に不安も 中国では人民元が大幅に切り下げられ、アジア通貨全般に下落圧力が波及しています。9月の特別調査では、話題となった人民元の切り下げが事業運営上、どのような影響を与えているか、企業に尋ねてみました。 8月に入り、人民元の切り下げが行われ、それが株式市場などに影響しているという見方がありましたが、具体的にマイナスの影響が生じているのは、わずか6%でした。 確かに、人民元は切り下げられましたが、他の新興国・資源国通貨の下落ぶりに比べると、まだそれほど深刻な下落にはなっていません。そのため「特に影響なし」という回答が38%も占める結果になったものと思われます。 とはいえ、中国の経済成長率は今後、さらにスローダウンすることも想定されるため、輸出に力を入れるため、さらに人民元を切り下げることも、考えられます。仮に、人民元がもう一段の切り下げを実施すると、円から見れば円高・人民元安になり、日本の輸出企業にとっては不利な条件になる恐れがあります。「今後、どちらかというとマイナスに影響しそう」という回答が50%を占めたのも、そういう不安が背景にあることの表れでしょう。 今後の中国経済の行方には、注目しておきたいところです。 在宅勤務制度については依然慎重…「現実的でない」74% もうひとつ、在宅勤務制度についてどのように考えているかを尋ねました。「事業の性格上、在宅勤務制度の導入は現実的でない」が74%と多数を占めました。 ダイバーシティ(多様性)が求められる現代社会ではありますが、まだ在宅勤務制度をはじめとして、多様な勤務体系に対するアレルギーは強いようです。 ただ、最近はクラウドソーシングのように、ITを活用して不特定多数の人に業務を委託し、企業やプロジェクトが必要とする作業、アイデア、コンテンツ制作などを委託する形の業務形態が、徐々に普及し始めています。社員の在宅勤務を実現するまでには、まだ時間がかかりそうですが、クラウドソーシングが今後拡大すれば、働き方の多様化が進む可能性も高まりつつあります。

業績連動型報酬、上場企業の6割が「導入の予定なし」(8月調査)

日本企業の景況感が改善しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(7月30日~8月16日調査分、上場企業427社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス29となり、前月調査のプラス23に比べて6ポイント改善。非製造業も6ポイント改善のプラス37と改善しました。 結果として、金融を含む全産業では前月比6ポイント改善のプラス35となりました。 景況感が改善、設備と雇用の不足感も強まる 8月のQUICK短観では景況感が大きく改善しました。4~6月期の決算発表が終わった段階で、2015年度の日本企業の増益率は2ケタが予想されており、景況感の改善につながっています。ちなみに先行きの景況感を示す指数を見ると、全産業ベースではプラス33で、前月から横ばいとなりました。 生産・営業用設備の現状を示す指数は、全産業ベースでマイナス2(前月はマイナス1)と、若干、不足感が強まっています。雇用についての指数はマイナス27とマイナス幅が2ポイント拡大。相変わらず非製造業分野での雇用不足感が強いようです。 企業業績における円安の織り込み度合いは? 2016年3月期の決算に向けて気になるのが為替レートの水準。足元の為替水準が想定以上に円安であれば、製造業を中心に業績の押し上げ効果が期待されます。 企業の声を聴く限りでは、徐々に「想定外の円安」というムードは落ち着きつつあります。今回8月の調査において、「想定よりも円安」と答えた回答比から「想定よりも円高」と答えた回答比を差し引いた指数(DI)を見ると、8月調査分はプラス53。「想定よりも円安」という回答が多いことを示していますが、7月、6月に比べるとプラス幅が減りました。 業績連動型報酬の導入については意外と慎重? 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。一つは、業績連動型報酬の導入について。もう一つは2016年春の新卒採用についてです。 役員報酬については、ストックオプション等の株式を活用した業績連動型報酬の導入が進んでいます。この手の報酬制度は、権利保有者からすれば、株価を上昇させるために会社の業績を向上させようとするインセンティブにつながると言われています。 今年に入ってから、業績連動型報酬の導入を発表する企業が増えていますが、その背景にあるのが「コーポレートガバナンスコード」です。同コードで、上場企業の経営者報酬制度の在り方について、「適切なインセンティブとして機能するような報酬ポートフォリオの検討」があり、それに基づいてストックオプションなどの導入が進められています。今回の特別調査では、業績連動型報酬の取組状況について伺いました。結果は以下の通りです。 調査の結果、業績連動型報酬の導入については、意外と消極的な企業が多いことが分かります。 上場企業の4割が「内定者を採用予定者より多めに確保」 2016年春卒業予定者の就職活動が、この8月から本格的にスタートしました。これまでの就職活動は、学部3年生の12月から採用情報および説明会情報が解禁されたのに対し、2016年春卒業予定者については学部3年生の3月から採用情報および説明会情報が解禁され、採用選考は8月からというように、3か月間後ろにずれました。 このところの景気回復を受けて、企業の新卒採用意欲は旺盛で、大卒者の就職率も上昇傾向をたどっています。大卒者就職率で過去最高だったのは、リーマンショック前の2008年春で96.9%。そこから大幅に落ち込み、2011年は最悪の91.0%でした。そこから4年連続で上昇傾向をたどり、2015年春の就職率は96.7%。2016年春は、それを上回る可能性があると見られるほどに、売り手市場と言われています。 アンケート対象企業の採用予定者数と内定者数について聞いたところ、次のような回答が返ってきました。4割の企業が、内定者数を予定者数より多めに確保する予定のようです。

安定株主増やす新種類株、「難しい」「不要」の回答3割(7月調査)

非製造業の景況感改善が一服しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(6月30日~7月14日調査分、上場企業456社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス23となり、前月調査のプラス19に比べて4ポイント改善しました。一方、非製造業は8ポイント悪化のプラス31と伸び悩みました。 結果として、金融を含む全産業では前月比3ポイント悪化のプラス29となっています。7月のQUICK短観を見ると、これまで改善基調だった景況感は、非製造業を中心に鈍化してきています。 中国株式市場が急変動していた時期だったため、アジアからの旅行者需要を享受していた内需企業の景況感に、何かしらの影響があったのかもしれません。非製造業の景況感の変化には、今後も注目した方がよさそうです。 仕入価格の上昇は一服か 雇用情勢については6月調査に引き続き、雇用の不足感が強いままです。生産・営業用設備については6月調査に比べて大きな変化は見られず、製造業がやや過剰、非製造業がやや不足という状況が続きました。 販売価格と仕入価格のDI(「上昇」の回答から「下落」の回答を差し引いて算出)を、金融を除く全産業で見ると、販売価格のDIがプラス5で6月調査から2ポイント上昇、仕入価格のDIがプラス29で同3ポイント下落しました。仕入れ価格の上昇ペースが緩むなかで、販売価格が上昇しつつある状況は、企業収益にとってプラス要因です。 安定株主増やす新種類株…「様子見」企業が5割、「難しい」「不要」は3割 今月のQUICK短観では、下記の2点に関する特別調査を実施しました。一つは、このところ株式市場で注目されていたトヨタ自動車の「元本保証型」種類株について、もうひとつは日本年金機構からの個人情報流出についてです。 トヨタ自動車が「元本保証型」と称されるAA型種類株式を発行すると決めました。発行後5年が経過すると、発行価格での取得(トヨタによる買い取り)を請求できる点が特徴のひとつです。発行価格は、発行価格決定日の普通株式の終値の120%ですから、仮に発行価格決定日の株価が8000円であれば、発行価格は9600円になります。また、発行から5年が経過するまでの配当は、以下のようになります。   発行日が属する事業年度・・・0.5% 2事業年度目・・・・・・・・1.0% 3事業年度目・・・・・・・・1.5% 4事業年度目・・・・・・・・2.0% 5事業年度目・・・・・・・・2.5% 6事業年度目以降・・・・・・2.5%   このように、保有期間が長くなるほど、徐々に配当年率が2.5%に達するまで上昇していきます。なお、配当額は、発行価格×配当年率になります。 こうした新しい種類株の発行に対して、一部では「安易な安定株主の増加で経営の規律が緩む」という批判があったと、一部のメディアで報じられました。 この手の種類株についてどのように考えるかを上場企業に聞いたところ、以下のような結果になりました。「参考にしたい」と言う様子見回答が56%と過半を占めましたが、同様の手法の導入について「難しい」「不要」という回答は計34%にのぼりました。 年金機構の情報流出、セキュリティー対策強化した企業は半数 日本年金機構が標準型メール攻撃を受け、125万件にも及ぶ年金の個人情報が流出しました。この機会にセキュリティー対策をどう見直したかを聞いたところ、下記の結果となりました。 対応を実施した(①と②)と、対応を見直していない(③)の回答が、おおむね半々となりました。

製造業の景況感改善が足踏み 気になる持ち合い株の行方(6月調査)

製造業と非製造業の景況感を見ると、明暗が分かれています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(6月1~14日調査分)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス19となり、前月調査のプラス24に比べて5ポイント悪化しました。一方、非製造業は8ポイント改善の39と好調が続きました。 結果として、金融を含む全産業では前月比3ポイント改善のプラス32となっています。 製造業、先行きは景況感の改善を見込む 悪化した製造業ですが、「先行き」指数を見るとプラス24に改善しています。今後、米国の利上げ可能性が高まり、円安が進めば、製造業にとっては為替差益が期待できるためと考えられます。企業側も、今後の米国経済の動向を見極めたいという状況でしょうか。なお、非製造業の「先行き」指数は38と、ほぼ横ばいを見通しています。 生産・営業用設備や雇用の状況については、5月調査に比べて大きな変化は見られませんでした。 販売価格と仕入れ価格の現状を、金融を除く全産業で見ると、販売価格について上昇から下落を差し引いたDIは、5月調査から変わらず。仕入れ価格は上昇から下落を差し引いたDIが32と、5月調査に比べて3ポイント上昇しました。仕入れ物価の上昇はまだ続いています。消費者物価指数の見通しについては、1年後で1%程度の上昇を見込む回答比が多数を占めました。 コーポレートガバナンスコード導入でどうなる政策保有株? 6月の特別調査は、コーポレートガバナンスコードによる政策保有株式(持ち合い株式)の方針と、長時間労働の削減に向けた取り組みについてアンケートを実施しました。 金融庁と東京証券取引所が6月から上場企業に導入したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、政策保有目的(純投資目的以外の目的)の株式について、経済合理性や将来の見通しを検証し、保有の狙いや合理性を具体的に説明すべきとしています。 <設問1> コーポレートガバナンスコード導入に伴う貴社の政策保有株式に関する方針をお聞かせ下さい。 1:説明責任を果たし、継続保有する・・・・・・・・24% 2:継続保有か売却か、保有する株式を精査する・・・20% 3:コード導入を機に売却を検討する・・・・・・・・0% 4:具体的に決まっていない・・・・・・・・・・・・33% 5:政策保有目的の株式はない・・・・・・・・・・・23% コーポレートガバナンスコードの実施により、一部の企業、特に金融機関の政策保有株式の売却が進むという意見がありましたが、アンケートによると、コードの導入を機に売却を検討するという意見は0%でした。 3割の企業が「長時間労働の実態はない」 厚生労働省は従業員に過酷な労働を強いる「ブラック企業」対策を強化し、違法な長時間労働を繰り返している大企業について、社名を公表します。長時間労働の削減に関する取り組みの状況などを尋ねました。 <設問2> 長時間労働の削減に向けた貴社の取り組み状況やその効果をお聞かせ下さい。 1:長時間労働の実態はない・・・・・・・・・・・・31% 2:対応策を実施し効果が出ている・・・・・・・・・40% 3:対応策を実施しているが効果は限られている・・・13% 4:対応策を検討している・・・・・・・・・・・・・10% 5:具体的に決めていない・・・・・・・・・・・・・6% すでに過半の企業は長時間労働の実態はない、もしくは対応策を実施し効果が出ているとしており、労働環境の改善は徐々に浸透しつつあるようです。

企業景況感の改善続く 「マイナンバー」対応の状況は?(5月調査)

上場企業の景況感改善が続いています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(4月28日~5月17日調査、対象は上場企業371社)では、全産業の景況感を示す業況判断DIが前月に比べて6ポイント上昇し、プラス29となりました。将来の景況感を見通す「先行き」の指数もプラス29と、前月比3ポイントの上昇となりました。 DIは「良い」という回答比率から「悪い」の回答比率を差し引いて、指数化したものです。DIのプラスが大きいほど、景況感が良いと回答する企業の比率が多いことを意味します。 ファンダメンタルズは徐々に改善傾向 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「企業短期経済観測調査」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されます。 全産業のうち、製造業の業況判断DIは2月調査のプラス16から、3月調査のプラス18、4月調査のプラス21と着実に上昇し、今回の5月調査ではプラス24になりました。非製造業も、前月のプラス25から5月は31と、6ポイントの改善となっています。 ちなみに、日銀短観の業況判断DIを見ると、大企業製造業の2014年12月調査分がプラス12、2015年3月調査分もプラス12で横ばいですが、QUICK短観の業況判断DIが、今年2月を底にして再び上昇傾向をたどっていることから考えると、日銀短観の6月調査分に対する期待感が高まります。 これらの数字から読み取れるのは、昨年4月に行われた消費税率引き上げによる景気のスローダウンが一段落し、再びファンダメンタルズが改善に向かっているということです。 急がれるマイナンバー制度への企業対応 5月の特別調査では、以下の2つの質問に対する回答を得ました。ひとつは、株式市場でも関連銘柄探しが活発な「社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度」についてです。 <設問1> マイナンバー制度が2016年1月に始まります。貴社では制度開始までに対応が完了する見込みですか。 1:完了している/ほぼ完了している・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2% 2:組織を作って対応を進めており、間に合う見込み・・・・・・・・・・・・・17% 3:具体的な対応はこれからだが、段取りは整っているので間に合う見込み・・・56% 4:具体的な対応は進んでおらず、間に合うかどうかわからない・・・・・・・・16% 5:まだ対応に着手していない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9% マイナンバー制度は、国民一人ひとりに固有の番号が付与され、複数の機関に存在している個人情報が同一人物の情報であることを確認するためのインフラです。これによって行政の効率化が進むと共に、行政機関が持っている自分の情報を簡単に確認できるようになる他、行政手続きも簡素化されるといったメリットが取り上げられています。 同時に企業としての対応も必要になります。というのも、会社が社員に給与を支払う場合など、マイナンバーが関わってきます。また、マイナンバーが外部に漏れた場合、厳しい罰則規定が設けられますから、セキュリティ面での対応も必要になります。 現状、75%の企業がすでに対応を終えているか、終えていなくても間に合う見込みとのことですが、「未着手」と言える4と5の回答が計25%となっています。すでに法律が成立し、国民全員が関係してくることだけに、企業は来年1月までに、これらシステムやセキュリティの対応だけでなく、社員全体への認知を広めていく必要があります。 新人研修は「2~3カ月」以下が大半 もうひとつは、新人の研修に関する質問です。 <設問2> 貴社では、配属前の新人研修(OJTを除く)をどの程度の期間実施しますか。 1:1週間以内・・・・・・・28% 2:1カ月程度・・・・・・・37% 3:2~3カ月・・・・・・・23% 4:半年またはそれ以上・・・9% 5:実施しない・・・・・・・3% 産業別の傾向を構成比で見ると、非製造業は1週間程度が35%、1カ月程度が36%で、ほぼ同じであるのに対し、製造業は1週間程度が20%である一方、1カ月程度が38%。さらに半年またはそれ以上が13%を占めています。それだけ、製造業の方が技術習得も含めた研修期間に時間を割く必要があるのが見て取れます。また同じ製造業でも、新興企業に比べて大規模企業の方が、より研修期間を長めにしているのが分かります。

「積極的な株主対話」と「ROE目標」に企業は慎重姿勢(4月調査)

上場企業の景況感が持ち直してきています。 日銀が発表する短期経済観測調査(日銀短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(4月1~14日調査、対象は上場企業368社)分によると、製造業の業況判断DIは前月に比べて3ポイント上昇し、プラス21になりました。将来の業況を示す「先行き」の数値もプラス24と、前月比6ポイントの上昇となりました。 DIは「良い」という回答比率から「悪い」の回答比率を差し引いて、指数化したものです。DIのプラスが大きいほど、景況感が良いと回答する企業の比率が多いことを意味します。 利益幅に懸念…製造業は値上げ進まず 製造業、非製造業とも業況判断DIは、前月比で上昇しました。ただ個別にみていくと、非製造業でじゃ設備や雇用の不足感が目立ち始めているほか、製造業では仕入価格の販売価格転嫁が進んでいないように見えます。 生産・営業用設備の現状では、製造業、非製造業ともに「適正」という答えが多かったものの、DIでは非製造業がマイナス7で、やや不足感が出始めています。雇用も「適正」の回答が多いのですが、DIでは非製造業(前月比4ポイント低下のマイナス39)の不足感が目立ちました。 なお販売価格では、製造業が相変わらずDIがマイナス(前月比3ポイント低下のマイナス12)で、販売価格の下落に歯止めが掛っていません。非製造業もDIはプラス6とプラス圏ですが、前月から6ポイント低下しています。仕入れ価格については製造業、非製造業とも上昇基調なだけに、製造業を中心に、利益幅の縮小懸念が残ります。 金融機関の業況判断DIが大幅に落ち込む 一方で大きく落ち込んだのが金融機関でした。4月調査はプラス33と前月から23ポイントのマイナス、「先行き」もプラス44とプラス圏ですが、前月比で23ポイントのマイナスとなりました。 金融機関は対象企業が9社と少ないため統計にブレが出やすい点を考慮しないといけませんが、景況感の伸び悩みの背景には何があるのでしょうか。長引く超低金利によって、特に銀行は預貸業務の収益性が低下。さらに預貸ビジネスの収益性低下を補ってきた手数料収入についても、金融庁が投資信託の回転売買について釘を刺したことにより、販売戦略の見直しを迫られています。こうした点が、金融機関の業況に影響を及ぼしている面はありそうです。 株主との対話に向けたスタンスはやや「消極的」 4月の特別調査では、「株主との対話」と「自己資本利益率(ROE)の目標導入」という、最近話題となっている上場企業のあり方について、2つの質問に対する回答を得ました。 <設問1> 「株主との対話」について、株主総会の場以外でも株主との間で建設的な対話を行う必要性が挙げられています。貴社の状況をお聞かせ下さい。 1:すでに積極的に対話している・・・・・・9% 2:従来も対話を心がけてきたが、一層積極化させる・・・22% 3:積極的に対話に応じる準備をしている・・・・・・11% 4:必要に応じて対応する・・・・・・54% 5:特に考えていない・・・・・・4% 3月5日に原案が策定されたコーポレートガバナンス・コードでは、企業が株主との間で建設的な、目的を持った対話を行うという考え方が導入されました。これによって企業は、株主との間で建設的な対話を促進するためのルール作りが求められ、さらにそのための体制整備や取り組みに関する方針を検討し、かつ明文化する必要があります。また、「コンプライ・オア・エクスプレイン」といって、ルールに従うか、従わない場合はその理由を説明しなければなりません。 「企業は株主のもの」と言われながらも、これまで多くの企業は、株主に対する説明責任をはじめとする意識が希薄でしたが、コーポレートガバナンス・コードの導入は、改めて株主の立場を明確にするものとして注目されます。 ただ、企業側としては、まだ消極的な姿勢を崩していません。「特に考えていない」の4%は論外にしても、「必要に応じて対応する」という、対処療法的なスタンスを取っている企業が、まだ54%も存在しています。今後、同コードの導入によって、企業側のガバナンスに対する認識がどう変化していくのか、注目されるところです。 ROE目標の導入には慎重姿勢 <設問2> 「ROE」の目標と導入する企業が増えています。貴社では目標を設定する予定がありますか。 1:すでに導入した・・・・・・17% 2:検討中・・・・・・43% 3:現時点で導入する予定はない・・・・・・40% ROEは、企業が株主資本をいかに有効活用して、高いリターンを上げているのかを示す指標のひとつです。ROEを高めることは、企業のオーナーである株主の利益最大化を図ることにつながりますが、それは設問1でも触れたコーポレートガバナンスにも直結するテーマになります。 ただ、「すでに導入した」という回答比が17%に過ぎないのは、目標未達に際して経営責任を問われることに対する懸念が、企業側に根強いことを示しています。 とはいえ、2014年1月から算出がスタートした「JPX日経インデックス400」は、組入条件のひとつとしてROEの向上を挙げています。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など機関投資家がインデックス運用を行う際のベンチマークにJPX日経インデックス400を導入する動きも広まりつつあるだけに、株価に対して意識せざるを得ない企業側としても、今後はROE向上に関するプレッシャーが高まっていくものと思われます。

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