企業の17年度の想定為替レートを先取り!?

  来週から2017年3月期の決算発表が本格化します。この際に注目されるのが18年3月期の業績見通しと、業績の前提になる円相場の見通しです。そこで今回は一足先に17年末の円相場の見通しと、まさに今実施されているかもしれない新入社員研修につい上場企業に聞いてみました。   今年のドル円相場は方向感出にくい? 2017年末のドル円相場の方向性について聞いてみたところ、現時点で17年末の円相場は6割がもみ合いと見ていました。東証1部や2部の大規模企業、マザーズやジャスダックに上場する新興企業など334社のうち、64%が「もみ合い・レンジ推移」と回答。一方、「ドル高・円安トレンド」と回答した企業は16%にとどまりました。上場企業からは「トランプ政権の安定化が喫緊の命題」、「トランプリスクが表面化しつつある」と米トランプ政権を不安視するコメントが目立ちました。「北朝鮮の動向が先行きの不透明感を醸成している」との声もありました。       2極化する新入社員教育  企業の4月入社の新人研修への取り組みは2極化しています。QUICKが2017年度の新人の研修期間をどれぐらい実施するか聞いたところ、2年前の調査と比較して「半年以上」と「実施しない」の回答が大幅に増えました。非製造業の研修期間の回答の内訳をみると、「1週間以内」が全体の35%から25%まで減少。「1カ月程度」や「2~3カ月」に変化はなかった一方、「半年またはそれ以上」が5%から7%に、「実施しない」が1%から8%に増えました。 人手不足が叫ばれている昨今、新卒採用者は会社にとって金の卵です。謙虚に学ぶ意欲の高い新人に対して、企業がどのような研修を与えるかは中長期的な成長力の基礎にもなります。もっとも、人手不足により新人研修をする余裕がない企業もありそうです。     なお、日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している4月のQUICK短観では、製造業の業況判断指数(DI)が前月比5ポイント改善のプラス27と2カ月ぶりの改善となりました。非製造業DIも前月調査から8ポイント改善のプラス37となり、金融を含む全産業DIは前回調査に比べて7ポイント改善のプラス33とでした。   <QUICK短観の推移>   *QUICKでは上場企業にアンケート調査した結果をまとめて「QUICK短観」として毎月公表しています。            

株主総会はハシゴせずゆったりと 開催日を分散する傾向に

  日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している3月のQUICK短観では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス22となり、前月調査から2ポイント悪化しました。悪化は8カ月ぶり。一方、非製造業DIは前月調査から変わらずのプラス29でしたが、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ2ポイント悪化のプラス26となりました。今回の調査期間は3月1~12日、回答者数は上場企業407社。       集中開催が課題の株主総会「すでに集中日を避けて開催」が最多 今回の調査では、開催日の集中が課題となっている「株主総会の集中緩和」について聞きました。平成29年度の税制改正では、コーポレートガバナンス強化に向け、上場企業等の株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大する見通しです。貴社では、株主総会の集中緩和のために開催日を変更することについて、どう考えますかと質問したところ、最も多かった回答は「すでに集中日を避けて開催している」が53%を占めました。次いで「検討しない」が21%、「延長拡大にかかわらず、検討している」が15%、「申告期限がさらに延長されるならば変更を検討する」が12%という結果になりました。調査対象である上場企業の半数以上が、すでに総会開催日の分散化に動いていることがうかがえます。   2018年春の新卒採用も「売り手市場」が続く 2018年春に大学卒業予定の学生を対象にした採用活動が3月1日に解禁されました。18年春採用(2018年4月入社)予定の社員数は、昨年と比べてどのようになりますか、と質問したところ、最も多かった回答は「ほぼ横ばいの予定」で65%で、次いで「増やす予定」が31%、「減らす予定」は4%となりました。採用を増やす予定の企業が3割を超えており、近年の人手不足を背景にした企業の採用意欲の高まりがうかがえ、学生優位の売り手市場が今年も続きそうです。   QUICK短観とは・・・ 日銀が企業経営者の景況感をまとめて四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つとともに、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。日銀短観は四半期に1度の公表ですが、QUICK短観は毎月調査・公表されているため、企業の景況感の変化を読み取ることができます。

米国への投資はどうする? 製造業DIは1年6カ月ぶりの高水準(2月調査)

  日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している2月のQUICK短観では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス24となり、前月調査から5ポイント改善。2015年8月以来1年6カ月ぶりの高水準となりました。一方、非製造業DIは前月比1ポイント悪化のプラス29となりましたが、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ1ポイント改善のプラス28でした。今回の調査期間は2月1~12日、回答者数は上場企業410社。     米国への投資スタンスは様子見 トランプ政権が1月に誕生して以来、企業を取り巻く事業環境も目まぐるしく変化しています。そこで、今回の調査では今後の米国への投資について聞きました。トランプ米大統領は「米国第一主義」のもと、法人減税など米国投資を促すための優遇策を公約に掲げていますが、今後の投資スタンスについてどう考えますか?  と質問したところ、「まずは現状維持で先行きを見守る」との回答が全体の6割と様子見姿勢でした。そのほか、「今後も投資姿勢は変わりそうにない」が4割弱を占めました。      長時間労働是正の対策、半数が「対応済み」 一方、国内では安倍政権が「働き方改革」に力を入れています。政府は14日、残業時間の上限を60時間と定めた案を提示しました。また、経済産業省と経団連が連携して2月から開始する消費喚起キャンペーン「プレミアムフライデー」では、午後3時ぐらいに早期退社することを呼びかけ、消費だけでなく働き方改革の相乗効果も狙うようです。そこで、今回は従業員の残業時間を減らす対応についても質問しました。従業員の残業時間を減らすためにどのような対応をしていますか? と質問したところ、最も多かった回答は「対策を検討中」が約4割でした。その一方で、「対策をすでに取っているが、効果はまだ出ていない」が3割超、「対策をすでに取っており、大きな効果が出ている」が2割でした。調査対象である上場企業の半数以上がすでに「対応をとっている」と、積極的に取り組んでいることがうかがえます。       <QUICK短観とは> 日銀が企業経営者の景況感をまとめて四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つとともに、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。日銀短観は四半期に1度の公表ですが、QUICK短観は毎月調査・公表されているため、企業の景況感の変化を読み取ることができます。    

上場企業、為替予約の利用は4割 新規に利用検討は4% QUICK短観

上場企業、為替予約の利用は4割 2017年1月のQUICK短観 日本の上場企業が2016年に為替予約を利用した割合は約4割だと19日、わかった。国内から海外に製品を輸出する企業、国内販売のために海外から輸入する企業にとって、為替予約は円相場の乱高下による業績変動のリスクを抑える。2017年から新規に為替予約の利用を検討する企業は全体の4%だった。 QUICKが上場企業にアンケート調査する2017年1月の「QUICK短期経済観測調査」で明らかになった。東証1部や2部の大規模企業、マザーズやジャスダックに上場する新興企業など344社が回答した。 製造業では為替予約を利用する企業は55%だった。そのうち13%は2017年では従来より為替予約の比率を高めると回答した。一方、非製造業では為替予約の利用は26%にとどまった。2017年も従来通り為替予約を利用すると答えたのは全体の34%、今まで通り為替予約を利用しない企業は58%だった。 2016年は外国為替市場で円相場は対ドルで1ドル=99円の円高水準から1ドル=121円の円安水準まで変動した。英EU離脱や米大統領選、日銀の金融政策決定会合などのイベントで大きく円相場が揺れ動いた。  企業にとって為替相場の変動による業績への影響は大きい。トヨタ自動車は対ドルで円相場が1円円高に進行すると年間の営業利益が400億円、富士重工業は100億円の利益押し下げ要因となる。 為替予約を利用すると急激な円相場の変動によるリスクを抑えられる。一方、為替予約をすると円相場の変動によるリターンも小さくなる。為替の変動による恩恵を受けようとしてあえて為替予約を利用しない選択肢もある。  長期の為替予約を利用する企業ではファーストリテイリングやニトリホールディングスなどが有名だ。 上場企業、機関投資家との対話は2社以上が7割 スチュワードシップ・コードが促す 上場企業の機関投資家との対話が活発化している。2016年までに2社以上の機関投資家と実際に対話した上場企業は7割だと19日、わかった。機関投資家の行動規範を定めた「日本版スチュワードシップ・コード」が2014年に導入されて3年目に入った。株主と経営者の建設的な対話が充実していけば日本企業の中長期的な成長にもつながりそうだ。 2017年1月の「QUICK短期経済観測調査」で明らかになった。「スチュワードシップ・コード」に関する質問には356社が回答した。 東証1部や2部の大規模企業では2社以上の機関投資家と対話したのは8割に達した。新興企業で2社以上と対話したのは43%だった。アンケートでは「面談では長期的な視点が増えてきた」との声があった。 一方で、機関投資家からコンタクトはあったものの対話に至らなかったのは全体の7%だった。機関投資家からコンタクトさえなかったのは全体の15%あった。大規模企業でも9%は機関投資家から対話を求められていない。「コードは原理主義的で会社にも投資家にもマイナスが大きい」との批判もあった。 金融庁は2017年に「スチュワードシップ・コード」を改訂する。機関投資家の株主総会での議決権行使の結果を原則は個別に開示を求める方針だ。機関投資家の行動を透明化し、機関投資家にとって最終的なお金の出し手の一般の労働者などの利益の向上を目指す。 【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】

来年の日経平均2万円超え難しい? 製造業DIは横ばい(12月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している12月のQUICK短観(11月22~12月4日調査分、上場企業414社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス14と、前月調査と同じでした。非製造業DIも前回と同じプラス30となりましたが、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ1ポイント改善のプラス24となりました。 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。日銀短観は四半期に1度の公表ですが、QUICK短観は毎月調査・公表されているため、企業の景況感を見るうえで、各月での動きを細かく読み取ることができます。 12月の日銀短観は上昇か? 製造業の業況判断DIは10~12月と3カ月連続同じ数字で足踏みとなりました。前述したようにQUICK短観は、3カ月に1度の頻度で行われている日銀短期経済観測調査(日銀短観)に先行した動きをみせる傾向があります。12月の数字が出たことによって、12月の日銀短観がどの程度の水準になるのかを予測しましょう。 製造業の業況判断DIは、10月、11月、12月とプラス14で推移しました。つまり3カ月間の平均値はプラス14です。ちなみにこれまでの3カ月平均は、次のようになります。 2014年10~12月・・・プラス21 2015年1~3月・・・プラス16 2015年4~6月・・・プラス21 2015年7~9月・・・プラス24 2015年10~12月・・・プラス16 2016年1~3月・・・プラス9 2016年4~6月・・・プラス8 2016年7~9月・・・プラス8 2016年10~12月・・・プラス14 今年は年初から低迷を続けた製造業DIでしたが、10~12月期は7~9月期のプラス8から6ポイント改善してきました。 これに対して、日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIがどのように推移したのかというと、 2014年10~12月・・・プラス12 2015年1~3月・・・プラス12 2015年4~6月・・・プラス15 2015年7~9月・・・プラス12 2015年10~12月・・・プラス12 2016年1~3月・・・プラス6 2016年4~6月・・・プラス6 2016年7~9月・・・プラス6 2016年10~12月・・・???? こちらも2016年1~3月期以降はプラス6で低迷していましたが、QUICK短観の業況判断が改善したことを考えると、12月の日銀短観はある程度の上振れが見込めそうです。 円安による仕入価格の上昇を販売価格に転嫁できず 生産・営業用設備の現状について、全産業ベースの「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、前月に比べてやや不足感が後退。2ポイント改善してマイナス3となりました。 雇用人員について、「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、全産業ベースでマイナス32でした。こちらも前月に比べて不足感がやや解消されています。 販売価格と仕入価格の現状は、「上昇」から「下落」を差し引いた販売価格DIについては金融を除く全産業でマイナス6となり、前月に比べて2ポイントの上昇。対して仕入価格DIは、金融を除く全産業でプラス9になり、前月比で2ポイント上昇しました。 ただ、上昇と下落の比率をみると、販売価格は「上昇」が6ポイントで「下落」が12ポイント。仕入価格は「上昇」が14ポイントで「下落」が5ポイントです。仕入価格は円安の影響で上昇する一方、それを販売価格に上手く転嫁できない状況が伺われます。 トランプ新大統領の影響はまだ見えず 12月の特別調査では、①トランプ次期米大統領の誕生に伴う事業運営への影響②2017年の日経平均株価予想――の2点について回答を得ました。 米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が就任することになり、米国や世界の経済の先行きが読みづらくなっています。トランプ次期米大統領の誕生は貴社の事業運営にどのような影響を及ぼすと考えるかとの質問について、「良くも悪くも業績への影響はなさそう」が54%で最多となりました。一方、プラス・楽観的とみる回答者は26%と、マイナス・悲観的にみる回答者(21%)を若干上回りました。 トランプ氏はまだ大統領に就任していませんし、具体的な政策が出てくるのは、来年1月20日以降ですから現時点では、メディアなどを通じて流れてくる情報から読み解くしかありません。なので、正直なところ先行きはまだ読めないのが現実でしょう。 いずれにしても、米国の政治問題ですから、日本企業の事業運営にすぐに影響が生じる類のものではなさそうですが、トランプ氏が今後、打ち出してくると思われる、環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退をはじめとした保護主義的な政策が、日本の輸出企業を中心に何らかの影響を及ぼすことは考えられます。一方、所得税や法人税の減税措置によって米国国内景気が再び回復すれば、現地日本企業の業績も恩恵を受ける可能性もあります。 とはいえ、いずれも現時点では何とも言えないことではあるので、来年以降、トランプ氏が打ち出してくる政策と、その実現可能性については、注意を払ってみておく必要があるでしょう。 日経平均、来年も「1万5000~1万9000円」で推移? 次に、今年の日経平均はおよそ「1万5000円~1万9000円」の範囲で推移しましたが、2017年はどのように推移すると予想するか聞いた設問では、「今年の範囲にとどまる」が75%に達しました。「今年の高値圏である1万9000円を超えていく」は21%でした。 「今年の範囲にとどまる」という予想が多数を占めていますが、これは現時点において、先行きが分からないからでしょう。証券市場関係者からすれば、出来ることなら今年の安値を割り込むような状態にはなって欲しくない。かといって、今年の高値圏を超えて2万円台にチャレンジするほどファンダメンタルズは強くないし、外部要因も不透明という点で、消去法的に考えれば、今年の範囲にとどまるというのが妥当な回答ということです。

トランプ勝利で注目される為替と景気の行方 製造業DI横ばい(11月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している11月のQUICK短観(10月26~11月7日調査分、上場企業419社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス14と、前月調査と同じでした。一方、非製造業DIは前月比5ポイント改善のプラス30となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ2ポイント改善のプラス23となりました。 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。日銀短観は四半期に1度の公表ですが、QUICK短観は毎月調査・公表されているため、企業の景況感を見るうえで、各月での動きを細かく読み取ることができます。 トランプ次期大統領の誕生で注目される為替と景気の行方 製造業の業況判断DIは、10月まで3カ月連続で改善してきましたが、11月調査では横ばいにとどまり、ここにきて若干足踏みした形です。 過去のQUICK短観の製造業(全産業)について、2015年11月から直近までを並べると、以下のようになります。 2015年11月・・・プラス16    12月・・・プラス17 2016年1月・・・プラス13    2月・・・プラス10    3月・・・プラス5    4月・・・プラス8    5月・・・プラス7    6月・・・プラス9    7月・・・プラス7    8月・・・プラス8    9月・・・プラス10    10月・・・プラス14    11月・・・プラス14 今回、足踏みをしたとはいえ、今年3月のDIがプラス5だったことを考えれば、徐々に製造業の景況感は回復基調をたどっていました。 ただ問題は、11月8日に行われた米大統領選挙によって、共和党候補のドナルド・トランプ氏が次期大統領に選ばれたことです。トランプ次期大統領はかねてから日本車に対して高率の関税をかけるべきだと主張しており、これを政策として推し進めれば、日本の自動車メーカーは大きな打撃を被ることになります。 また、円安政策に対しても批判的な立場を取ってきました。外国為替市場ではトランプ次期大統領が大統領選挙において得票を重ねるなかで、円高・ドル安が加速していきました。当面、この流れが続く可能性は否定できず、ドル円は1ドル=100円を割り込むと予想する市場関係者もいます。 結果として、製造業の業況判断DIに再び低下圧力が強まるリスクは否定できません。日銀短観の業況判断DI(大企業・製造業)の数字は、2016年6月のプラス3を底にして、9月はプラス6まで回復してきましたが、先行きは予断を許さない状況といえます。 円相場は「想定通り」が上昇も… 生産・営業用設備の現状について、全産業ベースの「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、マイナス5で、前月と変わらずになりました。 雇用人員について、「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、全産業ベースでマイナス34となり、前月に比べて1ポイント不足感が強まっています。製造業のDIは前月と変わりませんでしたが、非製造業のDIがマイナス50になり、不足感が一段と強まっています。 また、販売価格と仕入価格の現状ですが、「上昇」から「下落」を差し引いた販売価格DIについては、金融を除く全産業でマイナス8になり、前月に比べ1ポイント下落。同じく「上昇」から「下落」を差し引いた仕入価格DIは、金融を除く全産業でプラス7になり、前月に比べて2ポイント上昇しました。仕入価格DIの上昇と販売価格DIの下落は、企業収益悪化の懸念につながります。 なお、円相場については、前月に比べて「想定通り」の構成比が上昇しました。10月調査では33ポイントでしたが、11月調査では49ポイントまで上昇。また、「想定よりも円安」が3ポイントから7ポイントに上昇し、「想定よりも円高」が64ポイントから44ポイントに急低下した結果、DIはマイナス61からマイナス37に改善しました。 ただ、前述したようにトランプ次期大統領の政策次第では、一段と円高が加速する可能性もあり、もうしばらく見極めが必要となりそうです。 賃上げは現状維持 11月の特別調査では、①賃上げの状況②VR(仮想現実)技術の事業への導入――について回答を得ました。 まず、「賃上げについて現状どう検討しているか」について聞いたところ、「現状水準の維持」が64%で最多となりました。次に「小幅な賃上げの可能性」が34%で続き、「賃下げの可能性」についてはゼロでした。 2016年3月期決算は過去最高を更新した企業が多くみられましたが、今年に入ってから大幅な円高が進んだことによって、気になるのが2017年3月期決算です。日銀短観によると、2016年度の想定為替レートは、自動車が1ドル=109.13円、電機が1ドル=112.34円です。現在の為替レートは1ドル=103~105円なので、想定為替レートから見ると、円高水準にあります。 結果、このままの為替レートで推移すると、2017年3月期決算は、主要輸出産業を中心に業績が下振れする恐れがあります。さすがに内部留保が高まっている現状、賃下げを打ち出すのは難しい状況ですが、さらなる賃上げには慎重な姿勢を見せており、現状水準の維持が64%を占めたのは、やむを得ないところでしょう。 「VR技術を事業に導入すること」に関しては、「今のところ導入する見込みはない」が67%で最多となりました。「将来的な導入の可能性」と回答した企業は25%で、「導入済み・導入予定」は10%でした。 VRとは「バーチャルリアリティ」、仮想現実のことです。これを事業に導入するとしたら、どのような使い方が考えられるでしょうか。 たとえば、住宅の内覧を行う時にVR技術で臨場体験が出来る、自動車に乗らなくても、試乗したのと同じ効果が得られるなどが挙げられます。ただ、アンケートに対する回答を見る限り、「導入する見込みはない」という回答が全体の67%を占めていることからも分かるように、今のところVR技術を積極的に活用することで、ビジネスを拡大させていこうという動きは、あまり見られません。最新技術であるだけに、具体的な活用事例が次々に出て来ないと、ビジネスシーンへの活用はまだ時間がかかりそうです。

景況感底打ちは本物か? カギ握る「為替・金利・人件費」動向(10月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している10月のQUICK短観(9月29~10月12日調査分、上場企業426社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス14となり、前月調査から4ポイント改善しました。改善は3カ月連続となります。一方、非製造業DIは前月比4ポイント悪化のプラス25となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ1ポイント悪化のプラス21となりました。 日銀短観は横ばい見通しも、景況感に上昇の兆し QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。日銀短観は四半期に1度の公表ですが、QUICK短観は毎月調査・公表されているため、企業の景況感を見るうえで、各月での動きを細かく読み取ることができます。 10月3日に発表された9月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断DIがプラス6と前回調査と同じ、将来の業況を示す先行きDIもプラス6と横ばいの見通しとなりました。アベノミクスがスタートしてからの景気回復局面において、大企業製造業の業況判断DIは、2014年3月のプラス17が最も高く、そこから徐々に低下し、2016年3月にプラス6まで低下しました。 現在、日銀短観の業況判断DIに関して言えば、2016年3月以降、6月、9月と3カ月連続でプラス6の底這い状態が続いています。ここから力尽きてさらに落ちるのか、それとも今が大底で、ここから再び回復基調に向かうのか、その行方が注目されますが、QUICK短観によると、製造業の業況判断DIの推移は、次のようになります。 2016年3月・・・・・・プラス5    4月・・・・・・プラス8    5月・・・・・・プラス7    6月・・・・・・プラス9    7月・・・・・・プラス7    8月・・・・・・プラス8    9月・・・・・・プラス10    10月・・・・・・プラス14 このように、3月のプラス5を底にして、若干の一進一退はあったにしても、徐々に上昇傾向をたどっています。今後、為替レートがもう一段、円安・ドル高方向に進めば、製造業の景気の先行きに対する見通しが明るくなり、日銀短観が底を打って上昇に転じる可能性もありそうです。 非製造業の雇用不足は深刻 生産・営業用設備については、全産業ベースでみると、「過剰」の割合から「不足」の割合を差し引いたDIはマイナス5で、前月と変わらずでした。 雇用の過不足を見ると、全産業ベースでは前月に比べ2ポイント改善したものの、マイナス33で相変わらず雇用不足が問題になっています。特に非製造業DIはマイナス48であり、非製造業の雇用不足が深刻です。 全産業ベースの販売価格と仕入価格のDIは、販売価格DIが2ポイント低下してマイナス7、仕入価格DIが1ポイント低下してプラス5になりました。仕入価格は「上昇」と答えた回答比が高いのに対し、販売価格は「下落」と答えた回答比が高く、企業にとっては稼ぎにくい状況が続いています。 製造業・業績面の注目は為替・金利動向 10月の特別調査では、①貴社が10月以降の業績を見通す上で最も気がかりな要因について、②貴社での個人情報の取扱い方に関して――の2点について質問しました。 ①については、「為替・金利動向」が41%で最多となりました。次に「海外経済動向」と「人件費の上昇」がともに23%で続きました。 9月後半には1ドル=100円割れ寸前まで進んでいた円高・ドル安ですが、10月に入ってからは一転、円安・ドル高ムードが強まりました。10月13日時点では1ドル=104円台を付け、市場関係者の中には、明らかに潮目が変わったとまで言う人も出てきています。 一方、製造業・非製造業の別にみると、製造業は「為替・金利動向」に、非製造業は「人件費の上昇」に対する関心が高く、それぞれの収益に大きく影響する要因は何かが見て取れます。 QUICK短観によると、製造業は今の為替レートを「想定よりも円高」と考えているだけに、今後、もう一段の円安が進めば、業績の見直しなどを行ってくる可能性がありますし、非製造業は人件費の上昇が収益の圧迫要因になっているだけに、消費者物価指数が改善しない限り、業績面は厳しい状況が続くと考えられます。 情報漏えいリスクは経営リスクと直結 次に、「米ヤフーで大量の個人情報が盗まれていたことが発覚しましたが、貴社での個人情報の取り扱い方に関してはどうか」という点を聞いた設問では、「情報漏えいリスクを考慮し、必要最低限の個人情報に絞って収集・活用している」が64%を占めました。次いで、「むしろ個人情報は極力保有しないようにしている」が23%、「情報セキュリティの強化に努めながら、できるだけ多くの個人情報を収集・活用している」が13%でした。 日本企業でも、個人情報の漏えいは大きな問題になっています。いささか古いデータで恐縮ですが、東京商工リサーチが2015年6月に公表した調査データによると、上場企業およびその主要子会社で個人情報の漏えい・紛失を公表した企業の数は、2012年が54社、13年が87社、14年が59社、15年(1~6月)が31社でした。また、12年1月から15年6月までに漏えいしたと思われる個人情報は、累計で最大7148万人分でした。 顧客情報のデジタル化に伴い、今後は特にウイルス感染や不正アクセスによる情報漏えいが急増する恐れがあります。直近では米国ヤフーの個人情報漏えいが問題になりましたが、日本でも日本年金機構やベネッセホールディングスなどが、大量の個人情報漏えい事件として話題を集めました。 この手の事件を起こすと、情報漏えいによる直接的な被害だけでなく、企業の信用力が大幅に落ち、企業業績の悪化を招くことになります。実際、ベネッセホールディングスの当期利益(連結ベース)は、事件が起こる前の決算期に当たる2014年3月期では、199億3000万円の黒字でしたが、事件後の15年3月期決算では、107億500万円の赤字に転落しました。さらに、16年3月期も82億1100万円の赤字を計上しており、情報漏えいによる企業リスクがいかに高いかを物語っています。 終盤戦に入っている米大統領選でも、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官が私用メールの公務使用問題が攻撃の的となってしまいました。個人情報の取扱いは企業にとって、今後も重要な課題となりそうです。

衝撃の結果?仮想通貨技術「活用することなさそう」7割に(9月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している9月のQUICK短観(9月1~12日調査分、上場企業421社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス10となり、前月調査から2ポイント改善しました。改善は2カ月連続となります。一方、非製造業DIは前月比2ポイント悪化のプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ2ポイント上昇のプラス22となりました。 景況感は徐々に底入れ? QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 過去の日銀短観の推移を「大企業製造業」の業況判断DIでみると、次のようになります。 2014年3月・・・・・・プラス17    6月・・・・・・プラス12    9月・・・・・・プラス13    12月・・・・・・プラス12 2015年3月・・・・・・プラス12    6月・・・・・・プラス15    9月・・・・・・プラス12    12月・・・・・・プラス12 2016年3月・・・・・・プラス6    6月・・・・・・プラス6 このように、2014年3月のプラス17をピークにして、2015年6月まで一進一退を続けた後、2016年に入ってから下落傾向が強まりました。 一方、直近のQUICK短観をみると、製造業の業況判断DIの推移は、次のようになります。 2016年3月・・・・・・プラス5    4月・・・・・・プラス8    5月・・・・・・プラス7    6月・・・・・・プラス9    7月・・・・・・プラス7    8月・・・・・・プラス8    9月・・・・・・プラス10 今回の日銀短観は、7~9月期の景況観をベースにしたものを10月に公表します。そこで、日銀短観と平仄を合わせる意味で、2016年に入ってからのQUICK短観を3カ月の平均値でみると推移は以下のようになります。 2016年1~3月・・・・プラス9    4~6月・・・・プラス8    7~9月・・・・プラス8 このようにみると、10月3日に公表される9月の日銀短観の結果は、7月に公表された4~6月分の数字とほぼ変わらず、横ばいに近い数値が出ることを示唆しています。ただ、QUICK短観をみると、7月のプラス7から、8月、9月と2カ月連続して改善している点、DIの水準がプラス10に乗せたことなどから、企業の景況感は徐々に改善の兆しがみえつつあると言えそうです。 製造業の収益環境が悪化 生産・営業用設備については、全産業ベースでみると、「過剰」の割合から「不足」の割合を差し引いたDIは前月に比べ4ポイント悪化のマイナス5になりました。製造業は若干過剰気味ですが、非製造業は不足感が強く、DIは前月に比べ4ポイント悪化のマイナス10になりました。 一方、雇用の過不足をみると、全産業ベースでは前月に比べ2ポイント悪化のマイナス35でした。製造業の不足感もさることながら、非製造業での不足感がマイナス49まで悪化しています。日本企業というと製造業が目立ちますが、すでに産業構造ではサービス産業の比率が高いので、非製造業での雇用不足は、経済全体にとってマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。 また販売価格について、「上昇」の割合から「下落」の割合を差し引いたDIは、金融を除く全産業ベースで、前月に比べて2ポイント上昇のプラス6。仕入価格DIは、金融機関を除く全産業ベースで、前月に比べて2ポイント上昇のプラス6になりました。 全体でみれば、仕入価格が上昇する一方、販売価格も上昇しているので、企業の収益環境はそう悪化していないようにみえます。ただ、製造業についていえば、仕入価格DIがマイナス3であるのに対し、販売価格DIがマイナス11。前月比でみると、仕入価格DIが大きく上昇しました。販売価格に比べて仕入価格が上昇すれば、収益環境は悪化します。今後の為替相場の動向も踏まえたうえで、この点は要注意といえるでしょう。 マイナス金利深掘り、企業活動に中立要因か 9月の特別調査では、①日銀のマイナス金利深掘りは事業運営にどのような影響がありそうか、②仮想通貨の技術を活用することについてどう考えるか――の2点について質問しました。 日銀が9月20~21日に開催する金融政策決定会合では、これまで行ってきた金融政策についての「総括的な検証」が発表されることになっており、その内容が注目されています。現状では、金融緩和につながる内容になるのではないか、という見通しが多いようですが、企業の事業運営という点でみると、金融緩和政策のひとつである「マイナス金利のもう一段の深堀り」については、効果がほぼ限られるとの結果が出ました。 特に金融機関にとっては、マイナス金利が収益減につながる恐れがあります。アンケート結果をみると、「良くも悪くも影響はなさそう」との回答が65%と大半を占めました。一方、「良い影響」(17%)と「悪い影響」(18%)はほぼ同率になっています。 全体的にみた場合、マイナス金利の深堀りが企業経営に及ぼす影響は、ほぼニュートラルと考えられます。ゆえに、それはマーケットにとってある種、カンフル剤的な効果はあるかもしれませんが、実体経済に直接、何らかの影響を及ぼすかと言われると、いささか心許ない部分があることは否定できません。 仮想通貨技術の活用に消極的な意見 次に仮想通貨技術に関する質問です。ビットコインをはじめとする仮想通貨と、それを支える技術(=ブロックチェーン)に対する関心が高まっています。すでにリアル店舗でも仮想通貨による決済が行われており、今後、現金通貨に取って代わる新しい決済手段になる可能性が高いと期待されています。 ただ、アンケートによると「活用することはなさそう」との回答が70%に上り、「すでに活用している」と「将来的に活用することが決まっている」はそれぞれ1%にとどまりました。「将来的に活用する可能性はある」は29%でした。 まだ、ブロックチェーン技術に対する認識が広まっていないということも考えられますが、いずれにせよ仮想通貨を普及させるためには、幅広く認知させるための啓蒙が必要になりそうです。

ポリシーミックスは効くか? 上場企業「事業運営にプラス」3割(8月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している8月のQUICK短観(8月3~15日調査分、上場企業428社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス8となり、前月調査から1ポイント改善しました。非製造業DIも前月比2ポイント改善のプラス31となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ2ポイント上昇のプラス20となりました。 先行き見通し大幅改善 円高進行は引き続きリスク QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 QUICK短観の製造業DIについて、過去1年間の推移をまとめると、以下のようになります。2015年8月・・・・・・プラス29   9月・・・・・・プラス21   10月・・・・・・プラス14   11月・・・・・・プラス16   12月・・・・・・プラス172016年1月・・・・・・プラス13   2月・・・・・・プラス10   3月・・・・・・プラス5   4月・・・・・・プラス8   5月・・・・・・プラス7   6月・・・・・・プラス9   7月・・・・・・プラス7   8月・・・・・・プラス8 昨年の8月時点ではプラス29あった製造業DIですが、今年3月以降は1ケタ台で低迷しています。8月調査では7月調査に比べ1ポイント改善しましたが、現時点ではまだ底を打ったかどうかは何ともいえません。 その意味では、この先、数カ月間のQUICK短観には要注目です。低迷する業況判断DIが低下傾向をたどるようだと、この先公表される日銀短観にもネガティブな影響を及ぼすことになります。逆に下げ止まり、上昇の兆しがみえてくれば、全体の景況感も好転してくるでしょう。 希望が持てるのは、数カ月先の景況感を見通す「先行き」のDIが、やや改善に向き始めた点です。今年に入ってからの先行きの動向をトレースしてみましょう。数字は製造業DIです。2016年1月・・・・・・プラス13   2月・・・・・・プラス7   3月・・・・・・プラス6   4月・・・・・・プラス5   5月・・・・・・プラス10   6月・・・・・・プラス10   7月・・・・・・プラス2   8月・・・・・・プラス10 このように、前回調査で大幅に落ち込んだ先行きDIでしたが、8月は大幅に改善し、再び2ケタ台に乗せてきました。調査期間中の日経平均株価は一時1万6000円を割り込みましたが、その後は持ち直し、1万7000円に接近。こうした流れも企業心理の改善に一役買った可能性が考えられます。 ただし、足元では再び金融・株式市場には混乱の兆しもみられます。外国為替市場では、8月半ばにかけて再び円高・ドル安が進み、調査結果公表日となる18日は1ドル=99円60銭台まで円は上昇しました。 現状は完全に悲観するほどのものではありませんが、楽観視もまたできない状況にあります。円高は特に輸出企業の業績にとってネガティブ要因であり、製造業の業況判断DIを下押しする恐れがあります。その意味では、今後のQUICK短観および日銀短観が改善するかどうかは、為替の動向に左右される面が大きいともいえそうです。 企業の収益環境は著しく悪い状況ではない 生産・営業用設備の現状について、全産業ベースの「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、前月に比べて1ポイント低下し、若干の不足感が生じました。雇用状況については、前月に比べて2ポイント低下し、不足感が浮上してきました。特に非製造業DIは、マイナス49ですが、昨年8月時点ではマイナス38だったことを考えると、着実に不足感が強まっています。 販売価格と仕入価格の現状ですが、「上昇」から「下落」を差し引いた販売価格DIについては、金融を除く全産業でマイナス7。前月に比べて若干、下落しています。ちなみに、昨年8月の販売価格DIは、プラス4ですから、販売価格はややデフレ気味に推移していると考えられます。 一方、仕入価格DIは、同じく金融を除く全産業でプラス4。昨年8月はプラス27だったので、仕入価格の上昇圧力は弱まっています。販売価格にデフレ圧力がかかっても、仕入価格の上昇圧力が弱まっているので、企業の収益環境は著しく悪い状況ではないと考えられます。 ポリシーミックスとは?その効果は? 8月の特別調査では、①政府と日銀の政策協調(ポリシーミックス)が事業運営にどう影響するか、②厚生労働省が新たに承認した企業年金制度「リスク分担型確定給付企業年金」についてどう考えるか――の2点について質問しました。 まず、ポリシーミックスの効果についてですが、「特に影響はなさそう」との回答が71%を占めました。次に「ややプラスの効果が見込める」が27%で続きました。「大きなプラスの効果が見込める」(1%)を加えるとプラス効果を見込む企業は28%となりました。 ポリシーミックスとは、政府による財政政策と日銀の金融政策を組み合わせて行われる景気対策のことです。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」以降、日本の景気および物価の浮揚策は過度な金融政策に大きく依存する形で進められてきました。直近でも、日銀が国債を政府から直接引き受ける「ヘリコプターマネー政策」が話題に上りましたが、財政ファイナンスとの批判も多く、容易には踏み込めない領域とされています。 このように金融政策で行える景気対策の選択肢が狭まるなか、財政政策との組み合わせによるポリシーミックス効果に対する期待が高まっています。今回の調査では上場企業の3割程度が「プラス効果あり」と回答しています。7割が「特に影響ない」と回答したことを受けて、ポリシーミックスの効果は限定的と断定するのは時期尚早といえそうですが、企業側としても政策の内容をみてからの判断というのが本音なのかもしれません。 次に、新たな企業年金制度に対する企業側の反応ですが、「特に検討しない」が61%を占め、次に「これから検討する」が37%で続きました。「前向きに検討している」は2%にとどまりました。 リスク分担型確定給付企業年金は、DB(確定給付型年金)とDC(確定拠出型年金)とともに企業年金の新たな選択肢として導入されるものです。これまで企業年金の運用リスクは、DBの場合だと企業側が、DCだと加入者側が一方的に負担するものでしたが、これを双方で負担し合うようにしたものが、リスク分担型確定給付企業年金の特徴です。 ただ、「前向きに検討している」と答えた企業は全体の2%に過ぎず、制度の本格普及には時間がかかりそうです。

不透明感漂う先行き景況感 円レート「想定VS実態」なお乖離(7月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している7月のQUICK短観(7月4~18日調査分、上場企業424社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス7となり、前月調査から2ポイント悪化しました。一方、非製造業DIは前月比変わらずのプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ2ポイント悪化のプラス18となりました。 先行きDIが大きく悪化 政府・日銀の対応いかに? QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 7月1日に発表された6月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断DIがプラス6と前回調査と同じ、将来の業況を示す先行きDIもプラス6でした。しかし、気を付けなければならないのではこの調査時点で、英国のEU(欧州連合)離脱決定で金融市場が混乱した影響はほぼ反映していないとみられる点です。 その点、先行き業況判断についてはQUICK短観の結果を分析することは有効かもしれません。今年に入ってからのQUICK短観・製造業の先行きDIをみてみましょう。 1月・・・・・・プラス132月・・・・・・プラス73月・・・・・・プラス64月・・・・・・プラス55月・・・・・・プラス106月・・・・・・プラス107月・・・・・・プラス2 5~6月と2カ月連続で景気の先行き期待はやや高まっていましたが、7月調査で先行きのDIがプラス2に急落しました。英国のEU離脱決定をはじめ、世界の政治・経済に不透明感が漂っていることや外国為替市場で円高進行、アベノミクス効果がなかなか実感できない中で消費者物価の上昇率が低下し、デフレマインドが再び浮上しかねない状況にあることが先行き見通しの悪化につながっていると考えられます。 7月10日投開票の参院選では、安倍首相率いる与党が圧勝し、数字上はアベノミクスに対する信認を得る結果となりました。今後の焦点は10兆円規模ともいわれる大規模な経済対策など政府の政策対応に移ります。また、日銀による景気刺激策も期待されるところです。足元では株価も持ち直していますが、今後の景況感に明るさが台頭してくるのか、世界の政治・経済の行方とともに、政府・日銀の政策対応力が鍵のひとつになりそうです。 デフレ色強まる販売価格DI 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースはこれまでと大きく変わらず、構成比は「適正」が最も高いものの、「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、これまで若干の不足でした。それが7月調査では過剰と不足の構成比が同じになり、不足感が解消されています。特に金融機関はこれまで大幅な不足でしたが、一気に適正水準となり、それが全産業の不足感を解消する結果になりました。 また雇用人員の過不足ですが、こちらは相変わらず不足の状態が続いていますが、6月調査ではマイナス100だった金融機関のDIがマイナス80に改善し、金融セクターにおける雇用不足感はやや改善されていることを示しています。 販売価格、仕入価格の現状は、販売価格DIが全産業(除く金融)で、6月調査のマイナス3からマイナス6に低下。販売価格DIのマイナス幅拡大は、それだけデフレ傾向が強まりつつあることを示唆しています。また、仕入価格DIは、全産業(除く金融)でプラス7となり、6月調査分のプラス8から1ポイント低下しました。 英国EU離脱による企業業績への影響は軽微? 7月の特別調査では、①英国が実際にEUを離脱する場合の影響、②英国民投票後の円高圧力の高まりに伴い業績予想の前提となる想定為替レートを変更するかどうか――の2点について聞きました。 まず、「英国が『実際』にEUを離脱する場合、貴社の業績にどのように影響を及ぼすと考えますか」との質問に対し、最も多かった回答が「特に影響なし」で51%を占めました。一方、次に「マイナスへ少し影響」が46%で続き、「マイナスへ大きく影響」(2%)を加えると合計48%が「マイナスに影響する」とみていることが分かりました。 よもや「プラスへ大きく影響」する企業があるとも思えませんが、「特に影響なし」が過半数を占めたことは、株価にとってはややポジティブな材料と受け止められるかもしれません。6月24日の日経平均株価は1286円安と急落しましたが、そこから約1カ月間で反騰してきたのは、少なくとも現時点では、英国のEU離脱が経済的に大きなマイナス材料にならないことを、マーケット参加者が冷静に受け止めたからだと思われます。 為替を通じた業績下振れ圧力には警戒感 次に、「目先、業績予想の前提となる想定為替レートの変更を考えていますか」との質問に対しては、「円高方向への変更を考えている」との回答は25%にとどまり、「特に変更は考えていない」(74%)を大きく下回りました。 7月19日にQUICKが公表した7月のQUICKI月次調査<外為>によると、業績予想の前提となっている為替レートは、ドル/円で1ドル=110円80銭が平均値でした。これに対して、現在の為替レートは1ドル=106円前後で推移しています。一時は100円を切るところまで進んだ円高・ドル安ですが、7月雇用統計で米国経済が比較的堅調であることが示され、ダウ工業株30種平均も史上最高値を更新してきたことから、11月の米大統領選挙後の利上げ観測も浮上してきています。 一方、日本に関してはもう一段の量的・質的金融緩和やマイナス金利の深化を織り込む動きになっており、為替にとってはドル買い材料が揃いつつあります。こうした環境から、想定為替レートの変更を考えていない企業が7割を超えるのは妥当といえるかもしれません。 しかし、米国株の最高値更新は早期の利上げ観測後退が後押しした面は否めず、今後米利上げ観測が高まることで、「米株安⇒リスクオフ(リスク資産の敬遠)⇒円高・ドル安の進行」という動きが強まる可能性は否定できません。現時点で多くの企業の想定よりも円高水準で推移していることを考えても、為替要因が特に輸出関連企業の業績上振れ要因にならないのは確かです。サイクル論で言えば、すでにドル高はピークアウトしているだけに、再び円高・ドル安が進み、企業業績に重くのしかかるというシナリオも常に考えておく必要がありそうです。

日銀短観は緩やかな悪化にとどまる? 製造業DIは2カ月ぶり改善(6月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している6月のQUICK短観(6月1~15日調査分、上場企業414社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス9となり、前月調査から2ポイント改善しました。改善は2カ月ぶりとなります。一方、非製造業DIは2ポイント悪化のプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ1ポイント悪化のプラス20となりました。 将来の業況を示す先行きDIは製造業がプラス10と前月と同じ。非製造業DIは前月比3ポイント改善のプラス29でした。安倍政権は2017年4月に予定されていた消費税率8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半先送りすると正式に表明しました。今後の経済対策への期待も景況感の下支えになっているとみられます。 一方、世界の政治・経済を大きく揺るがしかねないイベントして、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る問題が浮上しています。23日にEU離脱の是非を問う国民投票が実施されますが、事前調査では離脱派と残留派がせめぎ合うシーソーゲームの様相を呈しています。投票結果次第で景況感にも大きく影響する可能性が高く、大注目のイベントとなりそうです。 日銀短観の悪化は限定的か QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 7月1日には6月の日銀短観が発表されます。4月に発表された3月の日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIはプラス6で、12月調査のプラス12を6ポイントも下回り、株価に大きな影響を及ぼしました。 QUICKが毎月発表している「QUICK短観」は、日銀短観の方向性を読むうえで参考になります。日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIは2012年12月調査でマイナス12まで落ち込んだ後、徐々に回復傾向をたどり、2014年3月にはプラス17まで上昇しました。しかし、2015年にプラス12~15のレンジで推移した後、2016年3月にはプラス6へと水準を一気に切り下げる展開となっています。 気になるのは、日銀短観の業況判断DIが、これで下げ止まるのか、さらにもう一段の下げがあるのか、という点でしょう。 QUICK短観は毎月発表されていますが、日銀短観と平仄を合わせるため、過去の3カ月平均の推移をみると、2015年1~3月・・・プラス16   4~6月・・・プラス21   7~9月・・・プラス24   10~12月・・・プラス162016年1~3月・・・プラス9   4~6月・・・プラス8となっています。 このうち、4~6月の数字が7月1日に公表される日銀短観(6月調査)の傾向を示すものだとすると、4月公表分ほどに大きな下げはないと予想されます。消費増税の延期など景況感にはプラスの材料もあり、底堅い数字が出る可能性があります。ただし、英国のEU離脱問題や米景気の拡大ペースの鈍化など不透明要因も多く、マーケットにとってポジティブ・サプライズとなるような数字が期待できる状況ではないという点は留意する必要がありそうです。 緩やかなインフレ醸成は困難? 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースはこれまでと大きく変わらず、構成比は「適正」が最も高いものの、「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、若干の不足という傾向が続いています。ただ、前回からの変化幅でみると、製造業(全製造業)は若干、過剰感が出始めている一方、非製造業が若干、不足感が生じ、金融機関は大幅に不足感が強まっています。 また雇用人員の現状をみると、相変わらず非製造業における雇用不足感は解消されず、金融機関もサンプリングの社数が少ないものの、調査対象となっている5社すべてにおいて雇用不足が生じており、構成比としては4月、5月調査分に引き続き、マイナス100%になりました。 販売価格と仕入価格の現状については、販売価格が「上昇」から「下落」を差し引いたDIでマイナス3%。製造業のDIがマイナス圏ではありますが、前回調査に比べるとやや改善しました。ただ、非製造業が前回調査に比べて低下し、プラス1%になりました。非製造業において、ややデフレ感が浮上しつつあるようです。 また仕入価格ですが、金融を除く全産業ベースで、「上昇」から「下落」を差し引いたDIがプラス8%で前回調査と変わらず。仕入価格の上昇には歯止めがかかってきた感があります。 なお、消費者物価指数の見通しについては、1年後で0.7%、2年後以降でも0.9%と、物価上昇に対する期待感は弱く、アベノミクスがスタートした時に掲げていた「消費者物価指数2%という緩やかなインフレの醸成」は、実現可能性が大きく後退しつつあるようです。 年末の日経平均予想は1万6000~8000円に集中 6月の特別調査では、年末の株価見通しと夏のボーナスについて質問しました。 まず、「今年の年末時点の日経平均株価の水準はどのくらいになると予想しますか」との質問に対し、一番多かったレンジは「1万6000円~1万8000円」で61%を占めました。次に「1万8000円~2万円」が18%、「1万4000円~1万6000円」が16%で続きました。「2万円以上」は2%にとどまりました。 6月16日の日経平均は終値で485円安になり、1万5434円まで下落しました。5月末に1万7234円まで上昇していたのに、わずか2週間程度で2000円近く下げたことになります。 理由は、マーケット全体に先行き不透明感が強まったこと。特に英国のEU離脱問題で、離脱派が優位という世論調査が出てからはリスクオフの色彩が濃くなり、英ポンドやユーロに下落圧力がかかり、リスクオフの対象通貨となった円への買いが加速。対米ドルでは一時1ドル=103円台をつけました。 英国がEUから離脱するべきかどうかを決する国民投票は23日に行われますが、それを仮に乗り越えたとしても、次は11月の米大統領選挙が待っています。共和党のトランプ候補は、マーケットにとって望ましい存在ではないだけに、選挙戦の行方次第ではマーケットが荒れる要素が残っています。それだけに、年末に向けての株価も読みにくいところです。 夏のボーナス「昨年並み」6割に 次に「貴社の夏のボーナス支給額は昨年夏に比べてどうなりましたか」との質問に対し、「ほぼ昨年並み」との回答が59%を占めましたが、「増加」とした企業は合計29%となり、「減少」の12%を上回りました。 「ほぼ昨年並み」が59%を占めたところから、企業業績の先行きに対する慎重な見方が広まりつつあるのが伺われますが、円高進行や世界経済の不透明要因など事業環境が厳しくなりつつあることを考慮すると、企業側も社員の頑張りに報いようとする姿勢もみてとれるといえそうです。 ただし、英国のEU離脱問題、米大統領選と今後相次ぐ世界的なイベントの結果次第では厳しい局面が訪れる可能性は否定できません。「円高進行→企業業績の悪化→ボーナスなど賃金下落→個人消費の低迷→景気後退」というシナリオは、常に頭の片隅に置いておく必要がありそうです。

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