中国の「シリコンバレー」が主導するデジタル革命 HSBCレポート

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC広東省チーフ・エグゼクティブのモンゴメリー・ホー氏がレポートします。   中国、テクノロジー利用拡大 シリコンデルタが目覚ましい成長 世界のテクノロジー産業における次の大変革はおそらく、中国国内で最も革新的な企業の多くが本拠地を置く広東省の都市集積地帯のシリコンデルタから生まれるだろう。起業家精神や創造性、市場構造、通信インフラ、壮大な規模などを併せ持つ中国本土のテクノロジーセクターが、中国全体のけん引役となる日がやって来るのは時間の問題である。 その萌芽は特に珠江デルタで容易に見出すことができる。世界最大級のハイテク企業の本拠地である深センをはじめとする珠江デルタ地域全体は、今や世界をリードする先進的デジタル製造業のエコシステムへと進化している。 中国でテクノロジーの利用が急速に拡大したことが、シリコンデルタの目覚しい成長のきっかけとなっている。HSBCの「トラスト・イン・テクノロジー(Trust in Technology、英文レポート:http://www.hsbc.com/trust-in-technology-report)」調査によれば、中国本土の回答者の100%がスマートフォンを所有し、そのうち82%がソーシャルメディア上の金融サービス・プログラムを利用し、43%が無線接続と音声操作の機能を備えたスマートスピーカーを所有している。これらを踏まえると、今年4月に深センに本社を置くインターネット企業騰訊控股(テンセント)が時価総額で世界第10位となり、11位に電子商取引大手のアリババが続いたことは驚くにはあたらない。 百度、アリババ、テンセントは単一プラットフォームでアプリ構築 西欧では、スマートフォン利用者がそれぞれ異なるニーズでワッツアップやアマゾン、フェイスブック、ウーバー、エアービーアンドビーなど異なるアプリを使用している。これに対し中国では百度(バイドゥ)、アリババ、テンセントのいわゆる「BAT」が単一のプラットフォーム上で作動するユニバーサルアプリを構築している。アプリからアプリに移動する必要が無く、一つのアプリをインストールすればほぼ事が足りる。 6年前にテンセントが微信(ウィーチャット)のサービスを開始したときは単純なチャットアプリに過ぎなかったが、現在のウィーチャットはソーシャルメディア、決済、マッチングサービス、ニュース、メッセージをはじめとするサービスを9億人以上のアクティブユーザーに提供している。いわば、スナップチャットやワッツアップ、スカイプ、インスタグラム、ペイパル、フェイスブックライブ、イェルプ、ティンダー、アップルペイなどのアプリが一体になったものと考えることができる。これに対し、ウィーチャットに相当する西欧のサービスでは、単一のプラットフォームで提供できるものは比較的限られたユーザー体験にとどまる。 しかしウィーチャットが、競合相手のサービスの単なる模倣版を寄せ集め、利便性を提供していると考えるのは大きな間違いである。わずか10年前に地味なスタートを切った中国のインターネット企業だったテンセントは、今や世界のテクノロジーセクターのクリエイティブなアイデアを生み出す中心的存在だ。3つの基本的なアプリを使えば、ほぼ全てのものを手にすることができ、どんなことでも可能で、誰とでも会うことができる。ウィーチャットを使えば、ショッピングモールに向かう前にその場所がどれだけ混雑しているかを色分け地図によってリアルタイムで表示することまで可能だ。 中国国内で一段と増加している洗練された若い世代は、デジタル技術とその革新を受容する能力が極めて高い。HSBCの調査では中国の回答者の90%がテクノロジーによって生活は改善され、また89%がテクノロジーの進歩によって世界はより良くなるとの見方を支持した。   実際、中国の消費者は新しいテクノロジーが秘める可能性に沸き立っており、79%の消費者が出来る限り新しいテクノロジーを使って用事の大半を済ませたいと考えている。事実、中国では指紋認証技術を取り入れることに積極的で利用率は40%と世界最高であり、インドが31%でそれに続いている。対照的にフランスとドイツでは指紋認証技術を本人確認に利用している比率は9%、カナダでは14%にとどまっている。 「BAT」をはじめとする中国のテクノロジー企業は巨額のイノベーション投資を行っており、人工知能の研究では最先端を走っている。人工知能は医療機器から自動運転、決済サービスなどの分野の製品の機能性をさらに高める技術として、電力の発明に匹敵するほどの影響を人類生活に及ぼすと予測されている。 13億人の膨大な消費者、迅速な規模拡大が可能 また中国では、国内の巨大なインターネット産業が生み出す膨大なデータの通信に必要な物理的インフラを、一部の先進国をはるかに上回る規模で構築している。中国の地方村落の大半では4G通信が可能であり、インターネット接続速度では欧州内の多くの首都をしのいでいる。これによってオンラインショッピングを利用する消費者の利便性は大幅に向上し、オンラインで購入した品物は効率化の進んだ配送会社と近代的な高速交通網によって玄関口まで配送される。 おそらく最も重要な点は、中国には13億8,000万人もの膨大な消費者が存在するということだろう。これを背景にインターネット企業やテクノロジー企業は迅速に規模を拡大することができる。有望な新興企業は、この巨大な市場のごく一部を捉えさえすれば、その将来性だけでベンチャーキャピタルから資本を引き出すことができる。 まさにこれが今、珠江デルタで起きていることである。米国のシリコンバレーに触発されて、深センにはベンチャーキャピタリスト、アクセラレーターそして巨大テクノロジー企業出身者が集まり、次に成功する新興企業を見出そうとしている。 こうした要素のすべてが、既成概念を覆す大変革を生み出している。中国のインターネット企業が世界的な成長を遂げている中で、次世代の世界的なインターネット巨大企業は中国から誕生すると考えるのが妥当だ。それは、中国の大手旅行サイトのシートリップ(Ctrip)がスコットランドの同業スカイスキャナーを買収したような企業買収の形で進むこともあれば、またアリババの決済サービス「アリペイ」のように小売業者の世界的ネットワークを構築し、事業の成長により拡大する形で進むこともあるだろう。 アイデアに詰まった米国のシリコンバレーのトップは、中国のシリコンデルタに目を向けてみると何か得られるかもしれない。数年中にはもっとはっきりとそのような状況になっているはずだろう。  

ASEAN発足50周年、インフラ事業を基盤とする経済成長の黄金期が到来 HSBCレポート

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC商業銀行部門アジア太平洋地域統括責任者のスチュワート・テイト氏がレポートします。 ASEAN主要経済圏、今後5年間でインフラ投資2倍に 今年で発足50周年を迎えるASEAN(東南アジア諸国連合)の主要経済圏は、今後5年間にインフラ投資を2倍に拡大して7,000億米ドル超とすることを約束している。これによって貿易や観光産業、今後数十年間の持続的な経済成長のための開発事業に弾みがつく可能性がある。 またASEANのメンバー10ヵ国の経済政策における財政支出計画の焦点は、主に2020年にかけて輸送環境を整備することにある。 世界経済フォーラムの国際競争力レポートでは、長期的に堅調な経済を創出する上でインフラが極めて大きな役割を果たすことから、こうした投資が重要であるとされている。 さらに、ASEAN内外の貿易や投資を活発化し、人とモノの流れを円滑にするために、一段と連携を強化することの重要性も軽視できない。 こうした取り組みは、世界最大の人口を抱えて急速に成長を遂げる、活気に満ち溢れたASEAN地域において域内外の企業が事業機会を最大限に拡大するための支援となる。ASEAN諸国全体のGDPは約2兆8,000億米ドルとすでに世界第7位の規模にあり、今後2030年までには世界第3位まで入ってくることが予想される。 ASEAN地域のサプライチェーンの輸送網が改良されれば輸入コストが減少する。現在の世界貿易の70%を中間財やサービス、資本財が占めているとの世界銀行の推計から判断してもコスト減少の効果は決して小さいものではない。   ASEANの潜在的な購買力に中国も期待 またASEANでは、今後数10年間に新たに創出が見込まれる5,700万世帯の中間層家計の消費活動を追い風に、貿易数量が2014年から2025年の間にほぼ倍増して2兆8,000億米ドルに達すると予想されていることからも、サプライチェーン改良のもたらす効果は小さくない。 こうした裕福で若い都市人口の増加により巨大な消費者購買力が見込まれることは、中国が「一帯一路」構想の下で貿易活性化につながるインフラ整備や投資、事業を強化しようとする大きな理由でもある。 ASEANと中国は、相互貿易額を昨年の5,000億米ドルから2020年までに倍増させて1兆米ドルにするとの目標を掲げている。こうした背景からもインフラ投資や主要プロジェクトに関わるエコシステム事業の機会は特に魅力的なものとなっている。   インドネシアに大規模な事業機会 ASEAN域内のあらゆる大国に事業機会はみられるが、直近で大規模なチャンスが生まれているのはインドネシアである。 インドネシアが2016年から2020年の間に計画しているインフラ投資は3,500億米ドルとASEAN主要5ヵ国の合計額の約半分に相当する。それには以下のような理由がある。 ASEANで最大の経済規模を有するインドネシアでの輸送インフラへの投資はGDP比6%と域内で最も低い水準にあり、フィリピンの同13%やマレーシアとタイの19%、シンガポールの31%に遅れをとっている。 インドネシア政府のインフラ予算は2014年以降に倍増したが全体的な支出必要額には遠い。また財務省は2015年から2019年までに民間セクターには1,300億米ドル相当の事業機会が生じると推計している。   タイは1,200億米ドルのインフラ支出を計画 インドネシアに次ぐ規模のインフラ市場を有するのはタイである。事業規模で700億米ドルに相当する56件の巨大プロジェクトを始めとする、1,200億米ドルのインフラ支出が計画されている。 タイでは、GDPの84%を製造業が占め、また製造業製品のほぼ全て(96%)が陸上輸送されているという現実が、輸送網の改善を促す背景となっている。 早期着工が予定される56件の巨大プロジェクトの事業規模が700億米ドルであることに加え、事業規模440億米ドルの「東部経済回廊」開発計画によりタイは民間セクターの資金調達の主要市場となり、必要資本の4分の1前後は「官民連携(PPP)」の下で調達される見通しである。   フィリピン、道路・鉄道整備の「ドリームプラン」 ASEANの議長国を50周年の節目の年に務めているフィリピンも、2017年から2022年までに1,440億米ドルの積極的なインフラ投資を行うことを念頭に、今後数十年間をかけて競争力を強化するための画期的な計画を策定している。 実施が予定されている投資案件の約90%は輸送網に関連するものであり、また政府が「ドリームプラン」と称する2018年から2020年までの道路と鉄道に係る直近の整備事業の規模は410億米ドルである。 フィリピンでは政府が税制改正に動いていることによって外国からの対内直接投資が促進され、外国資本による企業所有の規制が緩和されている。また一段の民間投資が促され、すでに中国企業がフィリピンのインフラ事業に参画し始めている。   マレーシアは鉄道投資を柱に輸送網を整備 マレーシアでは、輸送網を巡る大きな事業機会は、国内の各地域間の連絡や地方における連絡を活性化し経済効率を改善することであり、また適切に統合された輸送システムを創設し、ASEAN地域における国際貿易ハブとしてのマレーシアの地位向上につながる物流能力を高度化することにある。 2016年から2020年までの5年間のインフラ支出計画は850億米ドルとされ、2011年から2015年までの500億米ドルから増加している。 輸送網の整備への支出においては鉄道投資が柱とされ、シンガポールとバンコクをつなぐ高速鉄道を中心に、現存の大量輸送能力を強化し東海岸の開発を進める計画が立てられている。   シンガポール、地下鉄システムの規模を拡大 シンガポールの輸送インフラはすでに世界最高水準だが、さらに都市国家として地下鉄システムの規模を2030年までに2倍に拡大する政府計画の下で一段と進歩する見通しだ。 2016年から2020年までの期間に3つの新しい路線を建設して地下鉄網をさらに113キロメートル延伸させる事業では、600億米ドルの新規投資が生まれると予想される。これは2011年から2015年までの期間の投資額の500億米ドルを上回っている。   ASEANはインフラ事業を基盤に黄金期へ ここに挙げた全ての経済活動は、ASEANの各経済圏が未来を見据えて経済成長と経済開発の基盤作りに注力していることの表れである。 すなわち、50周年を迎たASEANではインフラ事業が貿易と投資の成長を下支えする黄金期が始まろうとしているのである。

10周年を迎えるグリーンボンド市場 HSBCレポート

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC グローバル・バンキング&マーケッツ、アジア太平洋地域統括責任者のゴードン・フレンチ氏がレポートします。 グリーンボンド、2016年の発行額は900億ドル以上 注目高まる 最初のグリーンボンドが発行されて今年で10年目となるが、グリーンボンド市場は成熟した市場を目指して現在も急成長中である。気候変動の影響を抑制する世界経済全体の取組みを支援するプロジェクトの資金源としてその重要性は一段と高まっている。 これまでの10年間を幼年時代とするならば、全く心配のない幼年時代だったとは必ずしも言えない。世界初の「グリーンボンド」が発行されたのは2007年7月で、その発行額は6億ユーロだった。その後に続く動きもまずまずだったが、当初の勢いは影を潜めていた。2013年には年間発行額が100億米ドルの節目を上回ったが、それでも債券市場全体から見れば極小さな存在だった。 しかし10年の年月を経た今、資本市場に生まれたグリーンボンドという幼子は目覚ましく成長した。昨年のグリーンボンド発行額は900億米ドルを突破し、2015年の2倍以上となった。その中にはポーランドが発行した、発行額7億5,000万ユーロの世界初のソブリン・グリーンボンドが含まれる。この1月にはフランスが22年物の発行額70億ユーロのグリーンボンドを発行した。これは発行額と長期年限の面で画期的だっただけでなく、投資家の需要が230億ユーロ超にまで膨らみ、発行予定額を大きく上回ったことでも大きく注目された。 成長を確信する3つの理由   気候変動は地球にとって差し迫った脅威であり、炭素集約度の高い技術やインフラを減らしていく取組みに充てる資金を確保するためにはまとまった資本注入が必要である。それは、風力発電タービンや太陽光発電企業、低炭素型交通システム、建造物や街全体のエネルギー効率と水資源利用効率を一段と高める技術などの進歩に向けて活用される。 グリーンボンド市場の発展は緩やかかもしれないが、今や低炭素社会を創り出す上で欠かせない存在になっている。気候変動を抑制する事業への投資機会を求めている資金は世界的に増加している。グリーンボンド市場は、企業がそうした資金を利用することを可能とし、またそうした資金を持続可能な環境に保つためのプロジェクト資金に振り向けていくものである。   現時点では世界の債券市場の1%にも満たない規模のグリーンボンド市場だが、我々が今後急速に成長すると確信する以下の理由がある: ①まず、汚染や世界的気温上昇から生じるリスクについての企業や消費者、投資家の認識に根底から変化が生じている。2015年に採択されたパリ協定では気候変動に対処する必要性について全会一致の世界的合意が成立した。その前提として、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して摂氏2度未満に抑える目標に向け、国家的な計画の推進を200ヵ国近い加盟国が批准することが必要だった。これを受けて環境技術の投資とそのための資金調達が活発化した。 ②次に、技術進歩によって(代替エネルギー技術から電気自動車、バッテリーまで)経済的合理性を備えた低炭素型技術がますます増えている。倫理的な意味だけでなく財政面からも環境投資は一段と理にかなったものとなりつつある。 ③3つ目の理由として、中国とインドが環境重視の経済を強く支持する立場をとったことが挙げられる。中国とインドの発行体が2015年にグリーンボンドを初めて起債したことにより、それまではスカンジナビア諸国や米国、英国が中心だった市場が地理的に広がった。昨年は中国で330億米ドルあまりの規模でグリーンボンドが発行され、15年にわずか10億米ドルで始まった中国でのグリーンボンド発行はすでに世界全体の3分の1を超えた。インドでの発行額はそれよりかなり小規模で、昨年はわずか10億米ドル強だったが、インドもやはり低炭素技術に関するパラダイムシフトを経験している最中である。 グリーンボンドを支援する潮流の勢いは増しているため、債券発行体も投資家もグリーンボンドを無視できなくなっている。 機関投資家の多くは気候に配慮した投資先を増やしたい 気候変動や環境を重視する「グリーン」の姿勢を疑われる債券があることも事実である。調達資金が本当に気候変動や環境に関するプロジェクトに充てられるのか、あるいは「グリーン」な姿勢に疑問のある企業に調達資金が向かっていないか、といった問題である。さらに、ある債券発行が他と同じように「グリーン」であることを誰が評価するのかという問題もある。こうした問題についての一貫した透明性のある回答がいまだ得られない状況に多くの投資家は置かれている。一方の債券発行体も、情報公開や運用報告、「グリーン」なベンチャー事業の認証などに追加的な作業やコストを投入することに消極的である。 しかし追加的な作業やコストは過大に見積もられる傾向があり、標準化と査定の取組みは進展している。例えば格付会社のスタンダード&プアーズは、ある債券がグリーンか否かだけではなくどの程度グリーンなのかを評価する仕組みをこの4月から実用化している。 またグリーンボンドへの然るべき評価がまだ十分に広まっていないと考えられるが、その利点は大きい。 まず、グリーンボンドの発行を通じて企業は、自らの投資ポートフォリオが炭素依存度の高い、持続可能でない債券発行体や事業に関わっていることを懸念している年金基金や政府系ファンドなどの投資家の間で増えている、グリーンボンドのような投資先を求める動きを捉えることができる。2016年の年初時点で、約23兆米ドルの資産が専門家による責任投資戦略の下で管理されている。これは2014年比で25%増であり、専門家が管理している世界全体の資産の4分の1を超えている。 同じように先にHSBCが行った調査でも、世界全体の機関投資家の3分の2が、低炭素型で気候に配慮した投資先への投資額を増やしたいと考えていることがわかっている。 さらにグリーンボンド発行によって、発行体は自らが地球温暖化という長期的な課題を意識しそれに備えていることを周知させることができる。 また気候変動に関するリスク特性の特定や最小化、監視を発行体に要請することは、低炭素型の発想を発行体の企業文化や事業戦略に組み込んでいく上での支援となる。こうしたことが長期的には企業価値評価(バリュエーション)や事業見通しにおいて、準備の遅れている企業よりも優位に立つことにつながる。 このように、グリーンボンド市場が成長を遂げてきたことに対しては歓迎の一語に尽きる。10周年おめでとう。

勢いを取り戻しつつある人民元の国際化 HSBCレポート

 QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBCグレーター・チャイナ統括 チーフ・エグゼクティブのヘレン・ウォン氏がレポートします。   人民元、世界的利用拡大へ インフラ整備拡充進む  人民元の国際化はこの1年減速したとみられるが、中国は水面下では人民元の世界的利用拡大のために引き続き金融インフラの整備拡充を進めてきた。国際取引での人民元の利用は2016年に大幅に減少した。世界中の銀行が国際資金決済のために利用している通信ネットワークであるSWIFTによれば、人民元建ての国際決済額は2016年に30%近く減少し、通貨別の国際取引額ランキングでは現在7位となっている(2016年初めには5位だった)。  オフショア人民元の預金も同様な状況にある。中国本土以外での人民元の預金残高は2015年初頭以来縮小してきた。オフショア人民元の世界最大の拠点である香港での人民元の預金は4月末現在で5280億元と、香港の預金残高がピークをつけた2014年末の1兆元強から50%近く減少した。  人民元の利用と保有の減少は、中国経済の減速、人民元の下落、国際資本移動に関する規制強化に対する懸念と無関係とは言えない。しかしこうした現状に対して、中国は外国人投資家が売買可能な国内資産の範囲を拡大して人民元の国際化を進めた。 3つのコネクト制度が人民元国際化の戦略を証明  まず中国の株式市場の開放が挙げられる。深セン市場と香港市場の間の相互株式投資制度(ストックコネクト)の導入が昨年8月に発表され、発表後4ヵ月足らずで運用が開始されたが、この制度によって外国人投資家は、より小規模で起業家精神あふれる企業に投資することが可能となった。こうした企業の成長は中国の経済改革の重要な構成要素となっている。現在では、世界中の投資家は香港市場を通して中国本土の市場に上場されている企業の大半に直接投資できるようになったが、こうした機会はわずか3年前には存在しなかった。 次に中国の債券市場の開放を挙げることができる。中国は今年5月に、中国の債券市場を世界につなぐ取引接続制度である「債券通(ボンドコネクト)」の導入を発表した。中国債券市場の発展におけるこの最新の画期的な改革が正式に導入されれば、中国の資本市場開放における重要な出来事となるのは確実とみられる。 急成長している中国の債券市場の規模は世界第3位であるが、海外投資家の参加は限られている。中国の国債市場における外国人投資家の保有比率は2%未満にとどまり、日本の10%、英国の25%超、米国の50%程度を大きく下回っている。中国の債券市場の段階的な開放によって、発行者、投資家だけでなく、両者をつなぐ全ての取引仲介業者にも豊富な事業機会がもたらされるとみられる。   3つのコネクト制度、つまりボンドコネクト、深セン・香港ストックコネクトと2014年に一足先に導入された上海・香港ストックコネクトの導入の意義は、中国本土の債券、株式の世界的指数への組入れを実現したことだけにはとどまらない(MSCIは2017年6月20日に中国A株を同社の新興国市場指数に組み入れると発表した)。これら制度は人民元の国際化が中国の中長期的な戦略となっていることを証明するものでもある。直近では今年3月に中国人民銀行がこの見方を再確認した。 人民元決済の拡大、一帯一路構想も影響  国際取引で人民元の利用が2016年に減少したにもかかわらず、外国為替市場と金融市場の改革を進め、中国経済と金融市場を開放し、人民元の国際通貨化を推進する姿勢を中国が明確にしているという事実に変化はない。   オフショア人民元市場は、貿易決済額と預金残高が減少しているため、短期的な課題に直面する可能性はあるが、引き続き戦略的に重要な市場である。ボンドコネクトのような国際投資のための制度を導入することは、オフショア人民元市場の広がり、深さ、健全性を改善させるだけでなく、同時に人民元の国際化に再度弾みをつけるであろう。  もう一つのきっかけは、一帯一路構想である。人民元国際化の背景には中国の貿易額の拡大に加えて、人民元によるその決済がある。2016年には一帯一路に関係する国々と中国との貿易額の伸び率が中国の貿易額全体の伸び率を上回ったことを考慮すると、一帯一路は、地域内および地域間の接続性を強化することにより長期的に一帯一路沿いの地域の貿易を拡大させるのに加えて、貿易決済での人民元の使用も拡大するとみられる。  さらに重要なのは、一帯一路構想によって資金調達の際の人民元利用の増加が見込まれる点である。政府の後押しもあって、中国企業は一帯一路関連プロジェクトに積極的に参加している。一帯一路関連プロジェクトを推進している国々で事業を展開することにより、これら企業は人民元建てのバランスシートで管理されるため、現地の人民元建て流動資産のプールは拡大するとみられる。プロジェクトを推進している国では全ての通貨が常に流動性不足に直面しており、また多国籍金融機関は十分な資金を供給できるとは限らないため、人民元は資金調達通貨として競争上の優位性を備えている。  従って、オフショア人民元の流動性プールの拡大に加えて、人民元建債券発行に対する需要の増加によって、価値保蔵手段としての人民元の魅力が高まるとみられる。さらに一帯一路関連のインフラ建設プロジェクトによって人民元のヘッジのための需要も増加するとみられる。中国の国内債券市場の開放も手伝って、人民元の国際取引での利用も増加するとみられる。  人民元の国際化はこの1年減速したかもしれないが、中国は資本市場の開放を続けてきた。さらに、一帯一路構想の影響で徐々に貿易取引および資金調達通貨としての人民元の利用は拡大するとみられる。人民元の国際化は勢いを取り戻しつつある。

ニューエコノミーの離陸 HSBC中国レポート

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC中国のデビッド・リャオ(David Liao)社長兼CEOがレポートします。 雲に覆われた風の強い5月の午後に、上海浦東国際空港から乗客を乗せていない旅客機が離陸した。オレンジ色のジャンプスーツを着た5人のテストパイロットが操縦するその旅客機は長江デルタの上空を1時間ほど飛行すると帰路につき、浦東空港に着陸した。 目的地のない短時間の飛行ではあったが、この飛行は中国初の国産大型旅客機となる「C919」の試験飛行の成功を象徴するものであった。過剰設備と非効率性から脱却し、国内製造業の生産能力を向上させようとする中国の経済改革路線における画期的な出来事である。  中国は、高度ハイテク産業を世界最大で最先端の国と競争できるものに仕立てることを通じて国内経済の新しい局面を切り開く取り組みを積極的に推進している。 中国、2016年から供給サイドの構造改革  市場規模は数兆ドルと推計される世界のジェット機市場において、今後20年のうちに中国の国産旅客機がボーイング社やエアバス社の旅客機と競争する存在となることは果たして可能だろうか。これを疑問視する見方もあるが、中国がしばしば驚くべき能力を発揮することも確かである。パソコンやスマートフォン、民生用ドローンなどの産業において中国は当初は全く意識されない存在だったが、その後世界を主導する立場に成長している。  GDP成長率が過去数年にわたる減速を経て安定化している現在は、中国にとって大切な経済転換のための過渡期である。重要なのは、2011年から減少が続いていた民間投資がようやく回復に転じ、素材・機械設備の製造業からサービス業にいたるまで広範なセクターで投資が反発を見せていることである。輸出も世界的需要の増加と供給サイドの改善を背景に成長していくと見込まれている。  2016年初めから中国は供給サイドの構造改革を進め、新しい技術や産業、製品を振興するかたわら非効率的な国有企業の経営刷新や生産設備の削減、負債の圧縮に取り組んできた。 これらの取り組みは、高度な製造業セクターでの「メイド・イン・チャイナ2025」戦略や、経済成長の新たなけん引役を育成するための革新的な「ニューエコノミー」戦略と統一性がとれている。 ニューエコノミー、起業家精神などの推進力が必要 ニューエコノミーが定義する範囲は広い。昨年、李克強首相はその概念について、eコマースやクラウドコンピューティングといった新興産業にとどまらず、スマート製造業や大規模カスタマイズ生産、家族経営農場までを包括するものであると説明している。このような経済には起業家精神や技術革新といった推進力が必要となる。従って中国の民間セクターがこのニューエコノミーをけん引する上でより大きな役割を担い、一段と持続可能な経済成長を実現するための課題に対応していくことになる。  すでに中国では、起業家精神にあふれる企業が先導的役割を果たす例が目立つようになっている。4月にはメッセージと通話のアプリのウィーチャット(WeChat)を生み出したIT企業テンセント(騰訊)が時価総額で世界10位となり、11位には中国の大手eコマース企業アリババが続いた。この2社が中国企業の時価総額1位と2位を占めていることは、国有銀行や国有エネルギー会社がかつての支配的地位から徐々に退きつつある実情を物語っている。  そしてニューエコノミーの勝者であるこれらの企業には、なお一層の成長の余地がある。HSBCがテクノロジーに対する消費者の信頼感に関して5月24日に発表した調査結果からは、テクノロジーで生活が向上するとの信頼感において中国の消費者が世界をリードしていることがわかった。これは巨大かつ有望な市場を創設していく機会を革新的な中国企業に与えるものである。 テンセント、メッセージアプリは月間9億4000万人が利用 深センを本拠地とするテンセントを例に挙げれば、3月末時点で同社のメッセージアプリのウィーチャットおよび微信(Weixin)の月間アクティブユーザーは約9億4,000万人に達し、より若い世代をターゲットとする「QQ」アプリでは8億6,000万人を超えた。消費者はこれらのアプリをオンライン・ゲームの支払いやその他の料金の支払いだけでなく、資産管理にまで利用している。しかしそれにとどまることなく、これらのプロダクトを収益化する斬新で創造的な手法が継続的に生み出されている。 中国のテクノロジー企業は未来への備えも進めており、人類の生活に将来与える影響としてはかつての電気の発明に匹敵するとも予想される、人工知能(AI)の最前線の研究に取り掛かっている。3社まとめて「BAT」と呼称される百度、アリババ、テンセントの大手テクロノジー企業はこぞってAIやソフトウェアに巨額の投資を行い、医療機器や自動運転車、決済サービスなどの面からプロダクトを強化していく態勢にある。  中国のハードウェア企業も技術革新の面では遅れをとってはいない。いずれも深センを本拠地とするスマートフォン製造のZTEとファーウェイ(華為技術)の2社による昨年中の特許出願件数は約8千件に達し、発明企業として世界1位と2位の座を占めた。国内のスマートフォン市場を制覇した中国ハードウェア企業のプロダクトは国外でも支持を伸ばし、ファーウェイやオッポ(OPPO)、シャオミ(小米科技)などの製造業企業は東南アジアからインドにいたるまでの新興国市場で市場シェアを獲得している。 中国のシリコンデルタとして急速に知られるようになった珠江デルタ地域を中心に、テンセントやファーウェイのような大規模テクノロジー企業がさらに出現する可能性がある。米国のシリコンバレーに倣って、深セン市はベンチャー投資家や起業間もない企業に少額投資を行うアクセラレーター、ハイテク大手の創始者などをつなぐエコシステムの構築を進め、次代の有望な新規事業の創出に備えている。 例えば、中国の配車サービスアプリ市場で米国のウーバー(Uber)との競争を制したことで知られる滴滴出行(Didi Chuxing)は、現在では世界における最も貴重な新興企業の一つとされる。創業者はかつてアリババで経営幹部を務めた人物であり、またテンセントは早い段階から同社に投資していた。 中国政府、ネット企業支援の1000億元基金を創設 こうした経済構造の転換を支える最近の動きとして、今年中国政府はインターネット企業を支援するための1,000億人民元の基金を発足させた。それに先立って広東省では、ロボット工学や医療機器の分野などの関係団体を地理的に集積させるスマート製造業クラスターの計画が発表されている。  中国の「ニューエコノミー」に参加したいと考えている中国国外の投資家の選択肢も広がっている。中国本土で上場されている株式が香港市場で取引されるようになったことで、国外投資家は一段と多くの中国企業への投資が可能となった。また中国の債券市場を、香港市場を介して国外投資家に開放することも計画されている。中国本土企業の株式や債券が世界的な指数に組み込まれる可能性があり、そうなれば投資機会はさらに広がる。  中国の経済構造転換の今後の道のりが長いことは、国産旅客機C919の初の試験飛行からも明らかである。そして国外から調達した部品がC919型機に使われていることと同じように、中国がニューエコノミーを確立するためには国際的な協力と専門的技術が欠かせない。そこに投資機会が存在する。  

台湾イノテラ完全子会社化の米マイクロン、台湾投資を拡大へ 中国進出は明言避ける

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。 (※この記事は2016年12月26日にQUICK端末で配信した記事です。) 米半導体大手マイクロン・テクノロジーが台湾DRAM大手の華亜科技(イノテラ・メモリーズ)を完全子会社化 米半導体大手マイクロン・テクノロジーは今月6日、台湾DRAM大手の華亜科技(イノテラ・メモリーズ)の完全子会社化を正式に完了した。マイクロンのマーク・ダーカン最高経営責任者(CEO)は完全子会社化完了後の12日に開催した祝賀会で、台湾への投資拡大を決定したと宣言した。台湾投資にはイノテラ工場の第2期拡張工事や台湾における初の3次元(3D)DRAMパッケージング・テスト工場の建設が含まれ、DRAMとNAND型フラッシュメモリーを結合するマルチチップパッケージ(MCP)をアジアへ供給する重要拠点にすることを明らかにした。 工場の用地確保に台湾政府が全面協力 マイクロンは台湾の桃園市政府に今後の拡張用地確保に向けた新たな土地提供を打診したと伝わっている。この件について、既に蔡英文総統の強い支持を得ており、蔡総統が鄭文燦・桃園市長に全面的に協力させることを承認したという。 また、タッチパネルメーカーの達鴻先進科技が中部科学工業園区(中科)に有する工場をマイクロン台湾支社が買収する計画もある。主にシリコン貫通電極(TSV)技術を用いた3D・DRAMのパッケージング・テスト工場の建設用地にする予定で、関連の用地購入計画について交渉が進行中だ。 一方、マイクロンは、半導体の後工程(組み立て)大手である米アムコアテクノロジーの台湾エリア総経理を務めた梁明成をマイクロンの台湾における3番目の総経理に迎え入れた。梁氏は主にメモリーの後工程とパッケージング・テストの業務を担当する。 ダーカンCEOは、イノテラのマイクロングループへの正式加入を取り仕切るために台湾を訪問した際、イノテラのグループ入りがマイクロンにとって重要な節目になると強調した。さらに、台湾での投資を継続し、台湾の従業員を優遇すると述べた。 また、ダーカンCEOは、台湾への投資拡大で中科を優先させることを率直に認めた。もっとも、関連の投資の詳細は明らかにしなかった。DRAM市場は現在、韓国のサムスン電子、SKハイニックス、マイクロンのビックスリーによる寡占状態にある。収益を安定して得られる現在の局面を大規模な増産で打破するようなことは各社いずれも望んでおらず、マイクロンもこうした局面を良しとするのだという姿勢が浮き彫りとなった。  (出所:DRAMeXchange、2016年第一四半期のデータより) 他方、中国本土がマイクロンの投資誘致に向けて強く働きかけている件について、ダーカンCEOは、中国本土は巨大な市場を持つ国だとした上で、特に今後、同国が「メイド・イン・チャイナ(中国製造)」を目標として強化する中、メモリーも重点発展産業のひとつとなるとの見方を示した。こうした中で、マイクロンとしても中国の様々な業界との商談を希望することは言うまでもないと指摘した。 同時に、ダーカンCEOは、台湾におけるマイクロンと化学最大手である台湾塑膠工業(台湾プラスチック)グループの企業によるイノテラの合弁設立はとても良い提携モデルだとし、こうした提携モデルを中国本土でも活用することは合理的であると強調した。 もっとも、マイクロンは現在、DRAM分野で日本の広島、台湾の中科と華亜科技園区に生産能力を有する。ダーカンCEOは、中科には今後の拡張計画を続行可能な土地もあり、台湾政府の支持も得ていると指摘。さらに、マイクロンが現時点で世界市場のシェアで重要な地位を占めており、ここ数年間の市況も安定しつつあるとの分析を示した。 中国本土での工場展開も検討している 一方、中国本土について、ダーカンCEOは、同国が製品の供給源の不足に対する懸念から現地供給を直接サポートできる生産能力の確保を望んでいると思われると分析。そのために他のDRAM大手メーカーとの提携獲得に積極的に取り組んでいると指摘した。ただし、マイクロンには同国に工場を建設して生産能力を拡大する切迫した必要性はないと述べた。 反面、NAND型フラッシュメモリーについては、景気と価格の変動が依然として大きく、今後、イノテラモデル(合弁と技術ライセンス提供)を活用して中国本土企業と提携する可能性は比較的高いと指摘した。 とはいえ、中国本土企業との提携合意の有無について、ダーカンCEOは詳しい情報を明らかにしなかった。市場の状況や各方面の条件次第だと強調し、現時点で具体的な計画はないと述べるにとどめた。   本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元である李臥龍氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。  

香港株、来年はハンセン指数2万6500台まで上昇か 中国経済の回復で

 QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。 (※この記事は2016年12月19日にQUICK端末で配信した記事です。)  2016年も残りわずかとなったことで、香港株と中国人民元建てA株のパフォーマンスを総括したい。今年年初から12月13日大引けの時点で、香港株式市場のハンセン指数は2.4%上昇した。可もなく不可もなし、といったところだ。一方、同期間にハンセンH株(中国本土企業株)指数は0.6%の上昇で、ハンセン指数を下回るパフォーマンスだった。これは中国の人民元建てA株の影響を大きく受けたためである。  (出所:QUICK) 中国経済は回復している  中国株式市場の上海総合指数は年初から12月13日大引けまでに10.9%下落した。もっとも、2017年は中国A株のパフォーマンスが今年を上回るだろう。主な要因は中国経済が回復の様相を呈することで、企業収益の増加が加速するとみられるためである。中国国家統計局が発表したデータによれば、今年1~11月の固定資産投資は前年同期比8.3%増だった。このうち、低迷が続いていた民間投資が同3.1%増と、1~10月から0.2ポイント伸びが拡大し、投資全体の61.5%を占めた。産業別では、第1次産業が21.9%増、第2次産業が3.3%増、第3次産業が11.3%増だった。第3次産業のうち、インフラ投資が18.9%増、ハイテク産業投資が15.9%増で、いずれも固定資産投資全体の伸びを上回った。  一方、過熱する不動産市場に対する中国政府による引き締め強化により、1~11月の全国の分譲物件の販売面積は前年同期比24.3%増と、増加率が1~10月から2.5ポイント縮小した。販売額の増加率は37.5%増と、3.7ポイント減速。もっとも、不動産開発投資は6.5%増と、1~10月からわずか0.1ポイントの減速にとどまった。不動産開発企業による土地購入面積は4.3%減で、減少幅が1~10月から1.2ポイント縮小した。土地の成約額は21.4%増加し、1~10月から増加率が4.7ポイント拡大した。これらは不動産開発企業が引き続き積極的に土地の保有を増やしていることを示唆する。全国の分譲物件の売り出し面積は11月末時点で6億9000万平方メートルで、10月末時から427万平方メートル減少した。9カ月連続で減少し、引き続き在庫調整が進んでいることが示された。   一方、11月の社会消費品小売総額は前年同月比10.8%増だった。増加率は10月と比べ0.8ポイント拡大。市場予想は10.2%増だった。1~11月の累計では前年同期比10.4%増で、1~10月から0.1ポイント拡大。また、全国のインターネット販売小売額が26.2%増と1~10月から0.5ポイント加速し、中国の全体的な消費が引き続き安定していることが示された。一方、11月の全国の一定規模以上(年間の主要業務収入2000万元以上)の企業による工業生産は前年同月比6.2%増で、伸びは10月から0.1ポイント加速した。ハイテク産業が10.6%増、設備製造業が10.5%増と、全体を上回るピッチで伸び、工業セクターの産業構造が引き続き高度化していることが示された。対外貿易では、11月の輸出入総額が前年同月比8.9%増だった。このうち、輸出額が5.9%増と、3.4%減だった10月から顕著に回復した。輸入額は13%増で、増加率が10月から9.8ポイント拡大した。  他方、11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.3%上昇した。上昇幅が10月から0.2ポイント拡大し、インフレ傾向の強まりを示した。1~11月のCPIは前年同期比2%上昇し、中国政府が設定した3%のインフレ目標にはまだ遠い。11月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比3.3%上昇と、上昇幅が10月から2.1ポイント拡大した。また、1~11月では前年同期比2%減と、減少幅が1~10月から0.5ポイント縮小。工業セクターでデフレが徐々に後退し、企業の収益改善につながりつつあることが示された。1~10月の全国の工業セクターにおける一定規模以上の企業の利益は前年同期比8.6%増と、増加率が1~9月から0.2ポイント拡大した。また、工業企業(一定規模以上)の主要営業収入100人民元当たりのコストは85.85元と、前年同期から0.17元低下した。主要業務利益率は5.71%と、前年同期から0.25ポイント上昇した。さらに、工業企業(一定規模以上)の負債比率は10月末時で56.1%と、前年同月から0.7ポイント低下。完成品在庫は前年同月比0.3%減となり、連続7カ月減少した。 PMIは4カ月連続で景気拡大期を示す  今後の展望に関しては、中国の製造業の見通しは引き続き良好だ。11月の中国政府発表の製造業購買担当者景気指数(PMI)は51.7と、4カ月連続で景気拡大期を示した。一方、同月の財新中国製造業PMIは10月から0.3ポイント低下して50.9。もっとも、2014年7月以来の高い水準は維持しており、5カ月連続で景気拡大期を示している。  全体的に見て、データはいずれも中国経済の回復を示唆している。(各データの)増加ピッチが全般に加速傾向にあり、それにより企業収益が改善しつつある。一方、中国政府が不動産市場に対する過熱引き締めを実施することで、不動産市場から株式市場への資金の流入が促進される見通しで、このことは株式市場に有利となるだろう。また、第19回中国共産党全国代表大会(略称は19大)が来年秋に開催される予定で、多くの改革措置が打ち出される見通しであることから、このことも株式市場にとってプラスとなるもようだ。 上海総合指数は2割超の上昇余地がある   バリュエーションの改善が進み投資家のリスク選好が強まるとの予測から、筆者個人としては、上海総合指数の目標値を3880に設定する。この予測目標が実現する場合、上海総合指数に2割超の上昇余地があることになる。一方、ハンセン指数については目標値を2万6500、ハンセンH株指数は1万1800に設定する。それぞれ足元の水準から2割前後の上昇余地があることになる。  (出所:QUICK)  本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元であるルイス・ウォン氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。 

香港ハンセン指数、年初来高値の更新が視野に 中国経済は「安定」を確認

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。 (※この記事は2016年10月28日にQUICK端末で配信した記事です。) 中国政府が発表した2016年第3四半期(7~9月期)の経済指標は景気が安定する中で前進していることを示す内容だった。政府の通年の成長目標は達成される見通しだ。1~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.7%増だった。 (出所:QUICK) 四半期別でも、第3四半期は6.7%増と、第1四半期(1~3月期)や第2四半期(4~6月期)と同じ成長率を維持し、市場の予想通りだった。産業別では、1~9月期における第1次産業の付加価値額が3.5%増、第2次産業の付加価値額が6.1%増、第3次産業の付加価値額が7.6%増だった。第3次産業の増加率が第1次産業、第2次産業を大きく上回り、GDP全体に占める割合が52.8%に達した。このことは中国経済の構造転換が続いていることを示唆する。   輸出は減少も、投資と消費が補う 輸出の勢いが引き続き弱く、投資と消費が中国の経済成長のけん引役を引き続き担った。中国税関総署が発表したデータによれば、今年1~9月期の中国の輸出は前年同期比1.6%減、輸入は同2.3%減だった。9月の輸出は前年同月比5.6%減と、市場予想の2.5%増よりも悪かった。輸入は2.2%増だったが、5.5%増の市場予想を下回る伸びだった。 ただ、幸いにも投資と消費の伸びがやや加速し、輸出減に伴うマイナス面の影響を補った。1~9月期の全国の固定資産投資は前年同期比8.2%増と、1~8月期から伸びが0.1ポイント加速した。インフラ建設の増加、そしてそれ以上に不動産市場の景気回復が寄与した。今年1~9月期の分譲物件の販売面積は10億5100万平方メートルだった。前年同期比26.9%増え、増加ピッチが1~8月期よりも1.4ポイント加速。また、同期の分譲物件の販売額は8兆200億人民元で増加率は41.3%と、1~8月期を2.6ポイント上回った。住宅販売の増加に伴い、全国の不動産開発投資額は前年同期比5.8%増え、1~8月期よりも0.4ポイント加速した。不動産物件の在庫調整も加速して、分譲物件の販売前面積は9月末時点で6億9600万平方メートルと、8月末時点から1258万平方メートル減少した。このうち、住宅物件の販売前面積は1177万平方メートル減少した。 一方、消費については、1~9月期の社会消費小売総額が前年同期比10.4%増の23兆8400億元だった。増加率は1~8月期を0.1ポイント上回った。電子商取引の伸びが引き続き急速で、1~9月期の全国のインターネット販売小売額が3兆4651億元と前年同期比26.1%増えた。このうち、実物商品のネット販売小売額は25.1%増の2兆7900億元で、社会消費小売総額の11.7%を占めた。 製造業は安定、工業企業の利益は改善 製造業は安定しており、1~9月期の全国の一定規模以上(年間の主要業務収入2000万元以上)の企業による工業生産が前年同期比6%増えた。増加ピッチは上半期(1~6月期)から横ばいだったが、工業の構造調整が引き続き進展し、ハイテク産業が10.6%増、設備産業が9.1%増と、全国の一定規模以上の企業の増加率をそれぞれ4.6ポイント、3.1ポイント上回った。工業部門の企業利益も改善し、1~8月期における全国の一定規模以上の工業企業の利益総額は前年同期比8.4%増の4兆500億元と、増加ピッチが上半期から2.2ポイント加速した。一方、9月の政府発表と中国メディアの財新がそれぞれ発表した製造業購買担当者景気指数(PMI)はいずれも、景気拡大を示す50以上の水準となり、製造業が引き続き緩やかに拡張していることが示された。 PPIプラスに転じ、生産に追い風 インフレに関しては、9月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比1.9%上昇した。上昇率が8月(1.3%)から拡大したものの、引き続き制御可能な範囲内だった。注目すべき点は、同月の卸売物価指数(PPI)が0.1%上昇し、2012年3月以来初めてプラスに転じたことである。このことは工業の生産に追い風となる。一方、雇用については、1~9月期の都市部(非農業地区)新規雇用者数が1068万人に達し、1四半期前倒しで通年予測目標(1000万人)を達成した。また、9月の31都市の失業率が2016年6月以来初めて5%を下回った。雇用の増加に伴って収入レベルも上昇し、1~9月期の全国1人当たり可処分所得は1万7735元と、名目ベースで前年同期比8.4%増加した。 10~12月期は減速も通年の目標は達成か、建材・インフラセクターに有利 今後の展望は、石炭業と鉄鋼業の生産能力の調整と不動産市場の過熱引き締めにより、中国景気が第4四半期(10~12月期)にやや減速し、成長率が1~9月期をわずかに下回る可能性がある。ただし、6.5~7%という成長率目標の範囲内に納まることはまず間違いない。こうした中国経済の安定は香港株に追い風となる。11月に中国深セン・香港間の株式相互取引制度「深港通」を始動する見通しでもあるため、香港株式市場のハンセン指数は今年第4四半期に再び年初来高値の2万4364に迫る見込みだ。 (出所:QUICK)  セクター別では、不動産市場における過熱引き締めの度合いが強まるとみられることから、銀行セクターや不動産関連セクターに引き続き重荷となるだろう。また、経済成長率の維持に向けてインフラ投資が加速する見通しであることが、建材とインフラ関連のセクターに有利となる。他方、人民元の為替レートについては、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測が強まる中で米ドル高が進むとみられる。加えて中国の輸出の勢いが依然として弱く、元の為替レートに引き続き下げ圧力がかかる見通しだ。これに伴い、より多くの中国国内の資金が通貨安に伴うリスク回避のために香港株に流れ込む可能性があり、香港株が間接的に恩恵を受けることになるだろう。 本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元であるルイス・ウォン氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

インドネシア、税収厳しく財政規律を堅持 投資環境改善の兆しも

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。 (※この記事は2016年11月7日にQUICK端末で配信した記事です。) インドネシア政府は税収の確保に苦戦 過去2年間、財政赤字が法定上限に達する危険性に直面したため、ジョコ・ウィドド政権は「経済回復のためにこれ以上財政拡大してはいけない」との決意を固めた。一次産品価格の低迷が家計、企業に打撃を与えており、政府は税収の確保に苦戦している。 インドネシア政府が2015年、赤字を法定上限である国内総生産(GDP)の3%に抑えることができたのは、土壇場で緊急性の低い政府支出を削減したためだ。今年は、積極的な支出削減に加え、比較的好調なタックス・アムネスティ(租税特赦)制度の運用を通じて100兆ルピアの税収の上振れが達成できれば、財政赤字はGDPの2.7%を超えない見通しだ。 (出所:QUICK) 政府は国債発行で388兆ルピア以上を調達 インドネシア政府は今年、これまでに国債発行を通じて388兆ルピア(300億米ドル)以上を調達した。これにより、金融機関の流動性が低下したことに加え、不良債権が膨らんでいることもあり、銀行はこれまで以上に融資を増やしにくい状況だ。 さらに悪いことに、インドネシアの国家予算は、2012年から基礎的財政収支が赤字の状態にある。GDPに占める基礎的財政収支の赤字額は、2012年(0.6%)から2015年(1.2%)に倍増した。負債を増やして調達した資金を、各地での道路や橋りょう、学校の建設ではなく、負債元本の支払いに充てていることになる。 このため、国会本会議で先週(10月26日)、赤字目標をGDPの2.4%に設定した2017年度予算案が成立したことに、多くの人が安堵感を示した。 バンク・ダナモン・インドネシア(コード@BDMN/JK)のエコノミスト、ウィスヌ・ワルダナ氏は、「今回の予算案には、『賄える範囲での支出』という考え方が示され、歳入次第という方針が堅持されている。必要な支出ありきで、歳入や調達資金を決めていたこれまでの予算案とは対照的だ」と述べている。 ワルダナ氏は、インドネシア政府が基礎的財政収支の赤字額目標をGDPの0.8%に縮小する方針を示すなど、来年度の予算に関して慎重になっていると指摘。「税収が目標を下回っている限り、重要性が低い支出を削減する方針は変わらない」と述べている。 インドネシアのスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相は、政府は今回の予算案では歳出のやりくりに注力したと説明。「政府は信頼感、安心感、信用を維持する必要がある。まず、我々が直面している経済の実情を予算案に反映させた」と述べた。 投資環境は改善しつつある 一方、投資環境の改善という明るい兆しもある。インドネシアは世界銀行の最新のビジネス環境レポートで順位を15ランク上げて91位となり、調査対象国の中で最大の伸びを示した。 世界銀行は、投資拡大と健全な財政政策が追い風になるとして、インドネシアの来年の経済成長率について今年の予想(5.1%)を上回る5.3%と予測している。 【翻訳・編集:NNA】  本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICK、翻訳・編集者であるNNAおよび情報提供元であるアディ・ビナルソ氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。    

中国の不動産市場、「緊縮すれば死」を防げ! 連休中の住宅販売が急減

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。 (※この記事は2016年10月24日にQUICK端末で配信した記事です。) 中国は一貫して計画経済を実施しており、政府は依然として多くの重大な経済活動の各所に介入している。しかし、政府による経済調整には、薬の処方を間違えたり、薬効が強すぎたりするという弊害がしばしば発生する。 緩和すれば乱れ、乱れれば緊縮し、緊縮すれば死んでしまう 中国人の間で政府の経済と投資市場の調整についての常套句がある。それは、「緩和すれば乱れ、乱れれば緊縮し、緊縮すれば死んでしまう」。つまり、中国人の投資に対する態度は成熟したものではなく、市場である種の投資商品への評価が高まると、冷静な判断もせずに一斉に同じ対象に投資をする。しかし、市場が過熱して政府が調整に乗り出すと、一気に谷底に落ちていく。 株式市場がまさにそれだった。最近、急速に過熱している不動産市場も、これと同じである。しかし、「緩和すれば乱れ」のあと、各地で不動産バブル抑制のため再び「乱れれば緊縮し」ということで、購入制限や住宅ローン制限が相次いで打ち出される。そうして「緊縮すれば死んでしまう」という歴史が繰り返される可能性がある。 中国政府のスローガンは「新常態」 中国経済は近年、成長が減速しており、中央政府はすでに早い時期から低成長率を「新常態」とするスローガンを打ち出し、経済成長に対する市場の期待を引き下げようと試みている。輸出という牽引力が不足する中で、不動産市場が経済成長を推進し、雇用を確保する重要な一環となっている。 (出所:QUICK) このため、中国政府は昨年、供給面で過剰生産能力を削減する改革を打ち出すと共に、不動産市場で売れ残り物件の販売を大きく推進し、不動産市場への投資によって経済を刺激することを期待した。中央政府による売れ残り物件の販売奨励を受け、土地売却を主要な収入源とする地方政府は喜んでこの政策に合わせて住宅購入の制限を緩和し、銀行による住宅ローン提供を奨励。これによって、不動産市場で需要が拡大し、価格は高騰した。中国には投資対象が不足しており、また国民に投機心理が充満していることから、資金が相次いで不動産投機に投じられ、不動産市場のバブルがますます拡大した。 中国統計局の発表によると、過去1年で住宅価格が30%以上も上昇した中国の都市は少なくない。廈門、合肥などの「二線」都市(地方中核都市)では上昇幅は40%に達しており、異常な情況にある。しかし、不動産価格が上昇すると同時に、中国の一般市民の間では、住宅購入難に対する不満がますます高まっている。現在、中国の「一線」都市(主要大都市)、「二線」都市の不動産価格は、すでに現実的な購買力から大きくかけ離れている。特に若い世代ほど、住宅購入に希望が持てず、安住の手段がない。そうした若い世代がどうやって将来身を立てて家庭を作れるというのか--。こうして、このような不動産バブルが社会の不安定要素となっている。 最近、浙江省杭州市である新築物件の販売が始まると、購入希望者が先を争って押しかけ、押し合いの末に販売センターのドアを倒してしまうという場面の画像がネット上で広まり、大いに話題になった。これは、不動産投機の熱狂が異常な状況にまで高まっていることを示す場面として、不動産市場の狂乱に警鐘を鳴らすものとなっている。 中国各地方政府は住宅購入や住宅ローンを制限 各地方政府は、不動産従来は不動産市場の繁忙期だった「金九銀十(1市場過熱の危機に気付いており、10月1日からの中国の国慶節連休の間に、約10都市で住宅購入や住宅ローンの制限措置が打ち出された。不動産投機ブームを冷却化させようとする制限措置を打ち出す都市は、ますます増えている。市場で突然、調整の風が巻き起こると、年のうちでも販売が伸びる時期とされる9月・10月)」に突然失速した。多くの都市で不動産市場が急速に冷え込み、崖を転がり落ちるような取引件数の減少が発生したのだ。南京市では、国慶節連休中の住宅販売が前週に比べて60%近く減少。買い手が模様眺めに入っている。投機ブームが終息し、短期内に価格を釣り上げて売り抜こうという投機家の皮算用は、すでに通用しなくなっている。このため、資金を不動産市場に投入しようという意欲が低下しており、取引はさらに縮小している。 中国の多くの都市が相次いで調整政策を打ち出していることから、不動産市場はすでに熱狂から模様眺めに転じている。ただ、中国の株式市場のように、不動産市場にも「緊縮すれば死んでしまう」という現象が起きるかどうかは、さらに観察が必要だ。中国の不動産市場には膨大な在庫があり、消化する必要がある。しかし、もし不動産市場が再び寒風に見舞われることになれば、低迷はかなりの期間続くことが予想される。 (出所:中国統計局) 本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元であるジェスロ・オー氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

インドネシア、ヤマハ発・ホンダの二輪カルテル疑惑で審理開始 11月末までに裁決か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。 (※この記事は2016年10月11日にQUICK端末で配信した記事です。) ヤマハ発動機、ホンダがカルテル行為を違反しているとの疑惑 インドネシアの事業競争監視委員会(KPPU)は、同国のスクーター市場で日本のバイクメーカーであるヤマハ発動機(7272)とホンダ(7267)がカルテル行為をしているとの疑惑に関してさらなる証拠を探している。この重要案件の審理は始まったばかりだ。 インドネシアの反トラスト規制当局であるKPPUは7月、2社によるオートマチック・スクーターの価格調整疑惑について事前ヒアリングを開始した。KPPUは当時、ヤマハ発とホンダの幹部が交わした電子メールなど、価格調整の証拠をつかんでいると説明していた。 KPPUは10月に入り、同案件の審理を開始した。事前ヒアリングでは、ヤマハ発とホンダの幹部に加え、インドネシア二輪車製造業者協会(AISI)のグナディ・シンデュウィナタ会長にも聴取し、審理するだけの十分な証拠があると判断した。 KPPUによると、2014年と2015年に二輪車市場全体の売上高は18%減少しているにもかかわらず、ホンダとヤマハ発の利益は同期間に2年連続で拡大しているという。 ホンダとヤマハ発動機でインドネシア国内シェア約96% 両社は、それぞれ現地子会社ヤマハ発・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(YMMI)とアストラ・ホンダ・モーター(AHM)を通じて、実質的にインドネシアの二輪車市場を支配している。AISIのデータによると、ホンダの市場シェアは67%、ヤマハ発の市場シェアは29%となっている。 (出所:本田技研工業、ヤマハ発動機決算書より作成) KPPUの申し立てによると、ホンダとヤマハ発はスクーターの価格を生産コストの約2倍に引き上げているという。KPPUはさらに、ホンダとヤマハ発が二輪車市場での支配的な地位を利用してこうした価格水準を維持し、消費者は両社の二輪車に対して本来よりも高い金額を支払う負担を強いられていると指摘する。両社はこの疑惑を否定している。 KPPUのヘルミ・ヌルジャミル調査官は4日公表した声明で「我々は他の二輪車メーカーに審理で証言するよう要請する方針だ。二輪各社がどのような事業展開を強いられているのかを知りたい」と述べた。ヘルミ氏は、KPPUが11月末までに裁決を下すとの見通しを示している。 最大1000億ルピアの罰金か? インドネシアの独占禁止法では、カルテル疑惑が証明された場合、企業は最大250億ルピアの罰金を科されることになっている。何らかの犯罪行為が明らかになった場合は、罰金額は最大1000億ルピアまで引き上げられる可能性がある。 ホンダとヤマハ発は委員会の裁決に対して、地方裁判所または最高裁判所に異議を申し立てることができる。 AHMのアフマド・ムヒブディン副部長(コーポレート・コミュニケーション担当)は「価格を操作することは不可能だ。販売実績に関しては、当社が積極的にプロモーション活動に取り組んだことによるものであり、それはヤマハ発も同じだ」とコメントしている。 YMMIのディニシウス・ベティ副社長は、KPPUは不正確な数字を基にこの件を申し立てていると指摘。そのうえで「最も大きな間違いの一つが、当社の収益だ。KPPUは当社の収益を47%増としているが、実際はわずか7.4%増だ」と指摘している。 ベティ副社長は「この件が顧客の当社に対するイメージに影響を及ぼし、販売が低下している。この審理が今後も続く場合、当社の疑惑が晴れることだけを期待する」と述べた。 KPPUがインドネシアの二輪車業界を調査したのは今回が初めてだ。インドネシアにおける同業界をめぐっては、タイやマレーシアなどの近隣諸国と比べて競争が少ないことが明らかになっていた。 今年に入ってから、KPPUは4月に肉牛飼育業者と輸入業者32社に対して、供給量を減らすことで牛肉の価格を操作したとして罰金を科した経緯がある。 【翻訳・編集:NNA】  本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICK、翻訳・編集者であるNNAおよび情報提供元であるアディ・ビナルソ氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

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