10月の株高、けん引役は欧州マネー 買越額は過去最高の2兆円

東京証券取引所が20日まとめた海外投資家の地域別売買状況によると、10月は「欧州」が日本の現物株を2兆41億円買い越した。買越額としては過去最高で、初めて2兆円の大台に乗せた。10月に日経平均株価は連騰し21年ぶりの高値を付けたが、けん引役は欧州マネーだった。 9月に6106億円を売り越していた欧州勢が買いに転じたのは「10月22日投開票の衆院選で与党が圧勝し、安倍晋三政権の安定が好感されたため」(みずほ証券の中村克彦シニアテクニカルアナリスト)。10月は北米勢が1988億円の買い越しだったことから、欧州勢の日本株買いの突出ぶりが分かる。 ゴールドマンサックス証券は11月17日付リポートで「9月末時点でロングオンリー(買い持ち主体)のグローバル投資家は日本株を平均7%アンダーウエートしていた」との試算を出した。「10月には幾分縮小した可能性もある」としており、それまで配分比率が抑えられていた日本株に買いが入ったという。 10年前は4割程度だった海外地域別に占める欧州投資家の割合は足元では7割強に高まっている。年末に再び2万2300円台乗せを目指せるかどうかは、欧州投資家の動向がカギを握る。 欧州の投資家の東京株式市場での存在感は飛躍的に高まっている。東京株式市場に参加する海外投資家のうち欧州勢は売買代金ベースで77%を占める。10年前は47%しかなかった。一般に欧州マネーは年金基金のような長期的な投資資金が多いといわれるが、「最近はヘッジファンドなど短期投資家も増えている」(大和証券の家入直希ストラテジスト)という。 10月以降の相場を主導したのがCTA(商品投資顧問)などヘッジファンドだったことを示す材料がある。QUICK・ファクトセットのデータによると、主要なCTAの運用成績を示すSG・CTAインデックスと日経平均の相関係数(最大1)は10月1日以降、0.94とほぼ連動している。年初から9月末まではマイナス0.34と逆相関だった。10月の欧州の買いはヘッジファンドとの取引が多いとされるフランス経由の公算が大きい。 【日経QUICKニュース・楠千弘】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した記事から厳選し、一部を再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

東芝の筆頭株主 エフィッシモ・キャピタルとは何者か?!

東芝は19日の取締役会で、約6000億円の資本増強を決議したと発表した。海外の投資ファンドなど60社を対象に第三者割当増資を実施する。割当先は筆頭株主であるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントのほか、米キング・ストリート・キャピタル・マネージメントなど。1株当たりの発行価格は262円80銭と、17日終値(292円)を10%下回る水準とする。これにより、東芝は来年3月末までに半導体メモリー事業の売却が完了しなくても、2期連続の債務超過に陥らず、上場廃止は回避できる見通し。 <東芝の第三者割当先上位10社> 「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」はシンガポールに拠点を持ち、旧村上ファンド出身者が運営する投資ファンド。株主提案などに積極的な「物言う株主」として知られている。投資先では、ヤマダ電機に圧力をかけて配当金の増加等を勝ち取ったほか、宝飾品大手TASAKIがMBKパートナーズによる買収でイグジッドに成功した経緯がある。エフィッシモは保有比率で最も高い川崎汽船(38%超)を筆頭に、日産車体、TOC、ヤマダ電機なども15%程度を保有。エフィッシモの投資スタンスは明らかではないが、主に東証1部上場で業績等が落ち込んだ銘柄を株価が低位に沈む状況で大量に仕込むというスタンスと推察される。 東芝に対しては、春先の巨額損失計上で急落した際に大量取得し、筆頭株主となった。その際の取得理由としては「企業価値に比べ割安と判断した。成長を促すために対話することもあり得るが、現時点では具体的に想定していない」と説明していた。今回、東芝が実施する第三者割当増資に応じることでエフィッシモの株式保有比率は現在の10%弱から11%強に上昇し、筆頭株主の座は維持される見通し。今後どのよう形で東芝に圧力をかけていくのか注目されそうだ。 <エフィッシモキャピタルマネージメントの投資先一覧> ・2017年に大量保有報告書を提出した銘柄 (保有比率順) 【QUICKエクイティコメント・本吉亮】 ※QUICKのオプションサービス「QUICKエクイティコメント」の記事を再編集しました。「QUICKエクイティコメント」は日本株を中心に日々の相場動向をリアルタイムでLIVE解説しています。 関連記事 日本株21年ぶり高値、あのファンドも動き出す

戌年はブル・ドッグ ゴールドマン、今後1年の日経平均目標は2万5200円

ゴールドマン・サックス証券は11月17日付のレポートで、今後12カ月の新たなTOPIXの目標水準を2000、日経平均株価を2万5200円とした。戌年2018年の日本株について「内需主導の経済成長、支援的な財政・金融政策環境、利益成長の持続、需給環境の改善を追い風に、さらに上昇する」と予想。短期的には調整があるが「当社の2018年度予想一株当たり純利益(EPS)成長率9%と、株価収益率(PER)が上昇しない」ことを前提に、「現在の株価水準から15%の上値余地を見込む」とした。 外国人投資家の動向については「国内ならびにグローバルの良好なマクロ情勢、利益成長の持続、市場に有利な政策環境、依然として軽めのポジションなどから、18年に外国勢による買いの拡大が見込める」と予想。日銀によるETF(上場投資信託)買い入れについては「今後見直しが行われるとすれば、規模の拡大よりは縮小の可能性が高い」としつつも、「黒田総裁の任期が満了する18年4月まで大きな変化はないだろう」と指摘した。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など年金の動向については「現時点で国内株式組み入れ比率は25.3%と推計され、公的年金が短期的に国内株式をさらに大量に買う可能性は低い」と見通した。 銘柄選定については「市場ではバリュエーションのばらつきが高水準に達し、指数の表面下に銘柄選別によるアルファ(超過収益)創出機会が多数存在する」との見方を示し、IT設備投資、サービス消費、防衛費、中小型株を注目のテーマに挙げた。 ※QUICKのオプションサービス「QUICKデリバティブズコメント」の記事を再編集しました。「QUICKデリバティブズコメント」は日経平均先物、債券先物を中心に日々の相場動向をリアルタイムでLIVE解説しています。

市場に出回るファストリ株、わずか9% 日銀が招いた流動性リスク

上がり続けたかと思ったら、突然、急変し、下げ止まらなくなる――。こうした「一方通行相場」が最近の日本株の特徴だ。その原因は日銀による上場投資信託(ETF)購入との見方がある。日銀が株式を吸い上げることで、流動性が乏しくなり、海外のヘッジファンドは、そうした東京市場の特殊性に着目して、投機を進めるという構図だ。 17日の東京株式市場でファーストリテイリングの時価総額が、わずか数時間で1300億円変動した。株価が急速に伸び悩んだためだ。同様の現象は、日経平均株価が乱高下した11月9日にも起きた。この時は時価総額がわずかの間に2400億円動いた。 ●17日のファストリの株価は大きく変動(QUICKの金融情報端末Qr1より) 日銀は一度、ETFを購入すると、いまの金融政策を続ける限り、売却しない。その結果、流通市場に出回る株数は徐々に減っていく。日銀によるETFの保有残高は21兆円で、東証1部の時価総額(650兆円)の3%強だが、一部の銘柄で加速する流動性の低下を危ぶむ声がある。 発行済み株式総数のうち、創業者一族などが保有し、市場には出回らない固定株を除いた株式(浮動株)の割合を浮動株比率と呼ぶ。 ETFに組み入れられている株式は通常、浮動株扱いだ。だが、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、日銀保有のETFに組み入れられている株式だけは固定株と考えて「実質浮動株比率」を試算した。 その結果、10月末時点でファストリは9%だった。昨年9月末時点よりも4ポイント強低下した。7年前の10年9月末時点では35%あった。このまま日銀がETFの買い入れを続ければ、18年10月末時点の実質浮動株比率は6.6%まで下がる見込みだ。 ファストリは浮動株全体に対して、日銀の間接保有割合が6割を超える。 同じく、2割を超えるアドバンテストや太陽誘電、TDKも実質浮動株比率は今後、1年間で3ポイント近く下がる。個別銘柄で日銀の保有比率が上がり、投資家の間で株式の品薄感が意識されると、「(需給逼迫がより強く意識されて)投資指標面で割高になったり、株価の変動率が上昇したりする可能性が高い」と井出氏はみている。 【日経QUICKニュース・田中俊行】 ※日経QUICKニュース(NQN)の記事から厳選し、一部を再編集しました。QUICKの情報端末ではすべての記事をリアルタイムでご覧いただけます。

激動の日本株 安心して買えそうなのは・・・。エクコメ注目銘柄 

日経平均株価は11月9日のザラ場ベースで2万3382円まで上昇した後、同日後場の崩れから調整色局面入りし、わずか1週間で1000円近く下落した。16日は寄り付き直後に心理的な節目の2万2000円を割り込む場面もみられたが、売り一巡後に切り返すと先物主導で上げ幅を拡大し、15日の急落分(351円)をほぼ取り戻した。しばらく波乱含みの展開は続きそうだが、終値ベースで25日移動平均(2万2000円)割れを回避したことで目先、底入れを確認した公算が大きい。  調整一巡で再び騰勢を強めるか 相場の過熱感を示す東証1部の騰落レシオは16日時点で106.47%。騰落レシオは100%が中立で、120%超が買われ過ぎ、70%以下が売られ過ぎとされる。9月中旬からの相場急騰局面で120%超えが常態化していたものの、足元の下落で100%強の水準まで下落しており、過熱感は薄れてきたと言える。 また、3月期決算企業の中間決算発表で通期予想の上方修正が相次いだことから、日経平均のEPS(1株利益)は日を追うごとに上昇して16日時点で1533円となった。直近の相場下落も相まって、日経平均のPER(株価収益率)は14.58倍となっており、バリュエーション面でも割安感が出てきたとみられる。 日経平均採用銘柄の騰落状況は・・・ 今回の上昇相場のきっかけは、衆院解散の報道が伝わった9月中旬であるため、9月15日終値を起点とし、日経平均が終値ベースで高値を付けた11月7日、そして11月16日終値時点で、日経平均採用銘柄の騰落状況および寄与度を確認しよう。上昇局面A(9月19日~11月7日)と調整局面B(11月8日~11月16日)の騰落状況を分類したのが下記の表だ。 【局面別の225銘柄の騰落率内訳(数字は騰落銘柄数)】 「局面A:上昇 + 局面B:下落」というパターンが多く173銘柄(日経平均採用銘柄の76.9%に相当)もあり、「局面A:下落 + 局面B:上昇」というパターンはなし。一方で、「局面A:上昇 + 局面B:上昇」が38銘柄(同16.9%)、「局面A:下落 + 局面B:下落」は14銘柄(同6.2%)あった。注目したいのは、両局面で上昇した銘柄、両局面で下落した銘柄だろう。 【上昇局面Aでも調整局面Bでも上昇した日経平均採用銘柄(局面Bでのプラス寄与度順】 東京エレクトロンは上昇局面で35%超も上昇して、指数上昇に大きく貢献したが、直近の調整局面でも逆行高するなど力強さをみせている。東京エレクを筆頭に中間決算時に業績予想を大幅に上方修正した好業績銘柄が多くラインアップしている。 【上昇局面Aでも調整局面Bでも軟調だった日経平均採用銘柄(局面Bでのマイナス寄与度順】 その一方、上昇局面で下落し、直近の調整局面でも売られた銘柄は、中間決算時に業績予想を下方修正した銘柄などが多い。 *本情報は、現時点までの値動きの分析であって、現在または過去における有価証券の価値の情報を提供するものであり、将来における有価証券の価値(値上がり益、利子、配当等の経済的価値)に関する情報を提供するものではありません。 【QUICKエクイティコメント・本吉亮】 ※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。  

米ステート・ストリート、取締役会ダイバーシティ指針を日本企業に拡大 女性いなければ反対票

米ステート・ストリート・コーポレーションの資産運用部門であるステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は15日、投資先の株式公開企業を対象とする「取締役会ダイバーシティ指針」を日本とカナダに拡大すると発表した。取締役会に女性役員または女性役員候補がいない場合、株主総会において指名委員長提案に反対票を投じるという。 発表資料によると、SSGAは2017年3月、ニューヨーク・ウォール街に「恐れを知らない少女(Fearless Girl)」像を設置。同時に米国、英国、オーストラリアに本社がある約600社に書面を送り、取締役会に女性役員または女性役員候補がいない場合、株主総会で指名委員長提案に反対票を投じることを通告した。通告後も取締役のジェンダー・ダイバーシティ向上への努力が見られなかった約400社に対し、SSGAは最終的に反対票を投じた。 こうした株主権の行使を受け、これまでに42社が取締役会のジェンダー・ダイバーシティを高める方針を決め、7社ではすでに女性取締役が就任したという。 ステート・ストリートによると、日本では東証株価指数(TOPIX)500を構成する企業の55%で女性取締役がいない。SSGAは2018年に日本とカナダの1,200社以上に対し、「取締役会ダイバーシティ指針」を提示するとしている。 ステート・ストリート・コーポレーションのロナルド・オハンリー社長兼最高執行責任者(COO)のコメントは以下の通り。 「他の条件がすべて同じ場合、ジェンダー・ダイバーシティが高い企業ほど、長期的により好業績を上げることをデータが示しています。『恐れを知らない少女』像の設置以来、株主資産15兆ドル超に及ぶ主要な資産保有者と資産運用会社として取締役会のジェンダー・ダイバーシティ向上に取り組んでいます。この取り組みを日本とカナダの企業へも拡大することにより、長期的な好業績とさらなる利益を投資家にもたらすと期待しています」  

膠着する円相場 115円の壁、ドル高アノマリーで突破なるか

外国為替市場で円相場の膠着感が強まっている。10月下旬以降、おおむね1ドル=113円台での小動きが続いている。市場関係者の間では115円の壁は厚いとの声も聞かれる。ドル円相場が再び動き出すきっかけは何か。北朝鮮など地政学リスクや米税制改革の行方に注目する向きが多いが、意外な材料もある。10~12月特有の「ドル高アノマリ―」だ。 「需給により年末に向けて115円を突破する可能性はある」。こう語るのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジストの植野大作氏だ。 植野氏によると、10~12月の円相場は円安ドル高に傾きやすい。「この時期の米国は感謝祭、クリスマス、そしてニューイヤーと『お祭りシーズン』。これに伴って米国内外でドルキャッシュの需要が強まるほか、米系の多国籍企業などによる本国へ資金還流が起きるとの思惑も強まる」。その一方、「日本では会計年度の下期入りを機に国内機関投資家マネーが動くとの観測が広がりやすいほか、確定申告時期との絡みから個人の益出しの売買は年明け以降に持ち越されやすい」。 <三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジストの植野大作氏> 実際、データで確認してみると、過去5年連続でこの時期は円安ドル高となっている。 <過去5年間の10~12月期のドル円相場の値動き(1ドル/円)> それでは、2018年のドル円相場はどう動くのか。植野氏は利上げで非伝統的な金融政策からの出口戦略を進める米国と、マイナス金利付き量的・質的金融緩和が続く日本との金利差拡大からドル高を見込み、1ドル=119円台半ば程度をドルの上値のメドと予想している。 「米国の懸念材料は米連邦準備理事会(FRB)理事の空席が目立つこと。米税制改革の先送りは米景気にはプラスに作用するかもしれない。減税は足元の景気が堅調な時期ではなく、腰折れした際に実施した方がカンフル剤として効くからだ」(植野氏)。 今年9月末の円相場は1ドル=112円台半ばだった。年末に向けて「ドル高アノマリー」は再現されるだろうか。 ※この記事はQUICKのオプションサービス「QUICKデリバティブズコメント」で配信した記事を再構成したものです。

黒田日銀総裁「リバーサル・レート」に言及 講演のポイントはここ

日銀の黒田東彦総裁は13日、スイス・チューリッヒ大学で講演した。タイトルは「『量的・質的金融緩和』と経済理論」。日銀が公表した講演の邦訳によると、低金利環境がもたらす金融機関の影響について長めに話している。なかでも低金利で「かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性がある」という「リバーサル・レートの議論」への言及に市場は注目した。三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア・マーケットエコノミストの六車治美氏が読み解いた講演のポイントは以下の通り。 ▼総裁としては珍しく、低金利環境がもたらす金融機関への影響について長めに話していた。 ▼具体的には「金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性がある」という「リバーサル・レートの議論」に言及。その議論について「注目を集めています」と述べた。 ▼もちろん「現時点で、(日本の)金融仲介機能は阻害されていません」との結論に変わりはないが、「経済・物価情勢だけでなく、金融機関や金融市場の状況について幅広く目配りすることができる中央銀行の機能を、最大限活用していく必要があります」という発言には新鮮味があった。 ▼さらに「日本銀行は、各種の定性的な情報も考慮しながら、2%に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形状を不断に追求していく方針」という発言の、「各種の定性的な情報も考慮しながら」という部分はこれまでなかったものだ。 ▼10月18日にNYで行われた中曽宏副総裁の講演(進化する金融政策:日本銀行の経験)でも、「先行き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、必要であればイールドカーブの形状についても調整を行っていく方針」という発言が、市場で「金利水準の調整を意識したものか?」との思惑につながったことは記憶に新しい。 ▼12月か1月の金融政策決定会合で、総裁・副総裁が海外講演で述べたような「必要であればイールドカーブ形状の調整も」「各種の定性的な情報も考慮しながら」などイールドカーブコントロールの柔軟化をイメージさせる文言が会合公表文に盛り込まれるかどうか注目される。 ※この記事はQUICKのオプションサービス「QUICKデリバティブズコメント」で配信した記事を再構成したものです。

顧客志向の証券営業、「ゴールベース資産管理」とは

日経平均株価が26年ぶりの高値水準まで回復してきた。この間、大手や準大手を中心に証券会社は個人向け営業を「フロー重視」から「ストック重視」に転換すると宣言した。株式の売買委託手数料などにノルマを設定し、顧客に回転売買を促すスタイルから、預かり資産残高を重視するスタイルへのシフトだ。 結果として証券会社の収益に占める委託手数料の割合は縮小した。こうした流れの中、ストック重視営業の理想的な姿のひとつとして意識されているのが「ゴールベース資産管理」だ。野村総合研究所、野村證券で日本株ストラテジストなどを務め、行動経済学が専門の岩澤誠一郎・名古屋商科大学経済学部長に「ゴールベース資産管理」について聞いた。 岩澤氏によると、新しい顧客志向の切り口とされる「ゴールベース資産管理」は、プライベートバンカーと呼ばれる人たちにとっては新しい概念ではないという。たとえば「3人の子供を大学に進学させたい」「家を建てたい」など、将来の大きな「ゴール」を目標に資産形成する手法だ。将来の大きな支出や、その現在価値を考慮して資産をアロケーション(配分)する。 しかし株式相場が活況になると、手っ取り早く稼げる委託手数料に先祖返りする例がこれまでは目立ったという。日経平均株価が上昇してきた今、証券会社の「ストック重視」の本気度が試されていると岩澤氏は話す。それを見分けるポイントは証券会社の相場見通し(ハウスオピニオン)ではないかと岩澤氏は考えている。 ゴールベース資産管理では、顧客(投資家)が「どういったリスクを、どの程度取れるのか」が重要な情報だ。定期的な収入はいくらか、日常的な支出はどの程度あるか、そのうえで余剰資金の量やリスク許容度などを勘案する必要があり、顧客との信頼関係が欠かせない。少なくとも手持ちの金融商品や不動産といった資産のすべてを、打ち明けてもらう必要があるだろう。 飛び込みの営業マンには厳しいかもしれない。場合によっては「〇〇証券さんとは父の代からのお付き合いで」といった世代を超えた取引関係を目指す必要がある。だから新参者の証券会社に商機がないのかというと、そうでもないと岩澤氏は語る。 上がるばかりが相場ではない。そのうち日経平均にも下落局面が来る。委託手数料を稼ぎたい証券会社であれば、「ぼちぼち株価が下がりそうだから手じまいませんか」と顧客に言うのは、なかなか難しいだろう。営業マンとして目先の手数料収入を投げ出すことになる。しかし、下げ相場への準備を事前に促して損失回避に成功すれば、その顧客からは絶大な信頼を勝ち取ることができるかもしれない。下げ相場こそ新規開拓のチャンスになるとの見方だ。ゴールベース資産管理を志向するのであれば、下げ相場のシグナルを嗅ぎ取ったとき、包み隠さず顧客に弱気見通しを伝えるのが合理的と岩澤氏は指摘する。 このところ株式相場は上値追いの展開だが、必ずしも足元に「相場下落の芽」がないわけではない。国際通貨基金(IMF)の国際金融安定性報告書(Global Financial Stability Report)10月号には、2016年時点で、リーマンショック前の2006年よりも国内総生産(GDP)に対する政府や民間の負債の比率が高まっている国が増えてきたとの指摘がある。「レバレッジ」が高まってきたという分析だ。 岩澤氏は「いますぐということはないだろうけど」と断りながらも、「たとえば米国でハイイールド債の利回りが急上昇するとか、誰かが投げ売りを出さなければならない事態に追い込まれると、連鎖的に売りが広がりかねない状況に、既に陥っている可能性がある」とみている。「それを証券会社のストラテジストは冬のセミナーで語ることができるだろうか」(岩澤氏)。 岩澤氏がある外資系のプライベートバンクのトップ営業マンに話を聞いたところ、ゴールベース資産管理を実践している営業マンは、数多くの顧客のうち数人だけから収益の大半を稼ぎ出していた。その数人とは、一言でいうと資産家だ。回転売買しないのであれば、売買1回あたりの規模は大きくないと営業マンは困るから、必然的に資産規模の大きな顧客に偏ることになる。管理手数料率の低いファンドを勧めるにしても同様だ。 となると、ゴールベース資産管理を志向する場合、プライベートバンキングを求めている資産家が日本にどれだけいるのか、という問題に突き当たる。一方、ネット証券の普及で比較的少額な単位でも株式を売買できる時代になった。ストック重視の観点からみれば、「たとえば中ぐらいの都市の駅前にある大手証券の支店などは、改めて存在意義を問われるのではないか」と岩澤氏はみている。 【QUICKエクイティコメント・山本学】

エヌビディアCEO「スイッチがゲーム業界けん引」  8~10月期純利益55%増【米決算】

画像処理半導体(GPU)大手のエヌビディアは9日、2017年8~10月期決算を発表した。純利益は前年同期比55%増の8億3800万ドル(約950億円)だった。 ▽エヌビディア 11月9日発表 2017年8~10月期実績(カッコは前年同期) 売上高     26億3600万ドル(20億400万ドル) 純利益     8億3800万ドル(5億4200万ドル) 1株益(GAAP)     1.33ドル(   0.83ドル) (NON-GAAP)    1.33ドル(   0.94ドル) 1株当たり利益(EPS)が市場予想を上回った。2017年11月-18年1月期(4Q)の見通しで売上高を26億5000万ドル±2%と見込み、市場予想(24億4000万ドル)を上回る数字で強気に見込んだことも好感され、同日の時間外取引では買いが優勢になる場面があった。 エヌビディアの決算資料によれば、相手先ブランド(OEM)と知的財産部門を除き、全てのセグメントの売上高が前年同期比で2ケタの伸びを記録した。特に増収率が高かったのが人工知能(AI)で需要が伸びている主力の1つデータセンター部門。前年同期比で2倍超に増え、売上高は5億100万ドルとなった。 エヌビディアのセグメント別売上高(百万ドル、決算資料より) <CEOコメント、決算資料より抜粋> 世界中の産業でAIの導入が進んでおり、素晴らしい四半期決算となった。GeForceとニンテンドースイッチは、ゲーム業界の成長の大きなけん引役となっている。また、わが社の新製品であるロボットDRIVE PX Pegasusは、世界各国の企業で採用されており、業績の拡大が続くと見込んでいる。 過去のインタビュー記事はこちら 任天堂スイッチからAI時代の必需品に エヌビディア日本法人代表に聞く        

日本株ETFにマネーの大規模流入、9カ月半ぶり

日経平均株価の上昇が止まらない。けん引役は海外の投資家だ。マネーフローも目に見える形で浮かび上がりつつある。QUICK FactSet Workstationのデータによると、米運用会社ブラックロックが設定する「iシェアーズMSCIジャパンETF」には7日、3億8800万㌦(約440億円)の資金が流入した。1月26日(4億5400万㌦)以来、約9カ月半ぶりの大規模流入となった。 ※QUICK FactSet Workstationより 上場投資信託(ETF)は機関投資家も個人も手軽に投資ができる金融商品。海外でも幅広い投資家層が日本株への関心を高めている可能性が出てきたようだ。それでも運用資産残高は180億㌦強。直近のピークにあたる2015年には200億㌦を超えていただけに、まだ買い余力があると言えそうだ。 【QUICKデリバティブズコメント・岩切清司】

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