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「休日を理由に介入をサボるのか」…プラザ合意30年、元副財務官の証言(後編)

記事公開日 2015/9/17 13:05 最終更新日 2018/1/5 17:25 経済・ビジネス コラム・インタビュー 金融コラム

1985年9月22日、日米独仏英5カ国(G5)蔵相・中央銀行総裁がドル切り下げで合意した「プラザ合意」時に当時の竹下登蔵相の通訳を務めた元大蔵省副財務官の近藤健彦氏(73)が合意に至るまでの秘話を語った。

(前編はこちらです)

協調介入、大場財務官は「秋分の日」の英訳を確認

プラザ合意に至るG5蔵相・中央銀行総裁会議でのハイライトのひとつは、ペール独連邦銀行総裁がドル高是正を模索する一方で表向きは「強いドル」を歓迎していた米国を批判すべきところで、日本に八つ当たりした場面です。

これは、協調介入で合意し、G5として初めて共同声明を出した1985年1月のワシントン会合が伏線になっています。当時はまだ市場介入反対論者だったリーガン氏が米財務長官だった事情もあり、協調介入でG5の足並みが揃わず、結局、独の単独介入になりました。ペール総裁はプラザ会合において日本の責任を追及したのです。

こうした状況を背景にプラザ会合でこんなやり取りがありました。大場財務官が「円レートは購買力平価からみて低すぎる」と発言すると、ペール総裁は「日本は今回、本気で介入するのか」と質問しました。大場財務官は「介入する。だが明日の9月23日は、日本は『秋分の日』の祝日で東京マーケットは閉まっている」と応じたのですが、ペール総裁は「今度は日本は休日を理由に介入をサボるのか」と毒づく場面がありました。

大場財務官は、こういうことも想定して会合前に「秋分の日」の英語を辞書で確認されていたそうです。

その後のG5会議で日独間でこんなやり取りがありました。

「この前は日本を批判して済まなかった。日本はよくやってくれた。日本に対する信頼を取り戻した」(ペール総裁)

「いや、あんたが批判してくれて、我々の方が大いに励まされた」(竹下登蔵相)

プラザ合意を成功に導いた竹下発言、大場財務官メモが決め手

1985年9月21日、プラザ会合に向けて竹下蔵相は成田空港近くのゴルフ場から抜け出し、ゴルフウエアのまま成田空港に向かいました。副財務官の私は成田税関支署長室で待っていましたが、そこに大場財務官も来て、会合で冒頭スピーチが必要かもしれないということで原稿を用意することになったのです。行き先のニューヨークに向けて乗り込んだパンナム機は2階建て。私は2階にいましたが、竹下蔵相や大場財務官は1階で対応にあたっていました。

プラザ会合は「ホワイト・アンド・ゴールド」というスイートルームで行われましたが、竹下蔵相は2回だけ発言をしています。ひとつが「自分が大平内閣時代に蔵相をつとめた時に就任時1ドル=242円だったのが辞めた時は219円まで円高になり、『円高大臣』と言われた。今回、円安のままではいつまでも蔵相を卒業できない」という発言です。この発言自体は竹下蔵相がされたものですが、これを会合で発言すれば協調介入に対する日本の強い決意を示すことができると考えた大場財務官が、発言要領のメモに入れておいたのです。この発言がプラザ会合を成功に導いたといえます。

竹下蔵相は当時、中曽根首相の後継者の最有力候補の一人でした。ワシントンの実力者でプラザ合意時のベーカー財務長官とのパイプを太くしておきたかった事情もあります。1985年10月14日のビジネス雑誌「ビジネスウィーク」は、「Japan’s Point Man in the Assault on the Dollar」なる表題で、プラザ会合での活躍が竹下蔵相をスターダムに押し上げたと論じています。政治的にはプラザ合意は竹下さんには大成功だったといえるでしょう。

 

近藤健彦

<近藤健彦氏略歴>

1941年生まれ。65年京都大学法学部卒業、大蔵省入省。仏グルノーブル大学法律経済学部で修士号取得、中央大学法学部でプラザ合意の研究で博士号取得。プラザ合意時は大蔵省副財務官として竹下登蔵相を補佐した。


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