「ブレグジット(Brexit、離脱)か、ブリメイン(Bremain、残留)か」――。6月24日、イギリスでEU離脱の是非を問う国民投票が行われ、イギリス国民が選んだ答えは「ブレグジット」、すなわちEUと袂を分かつことでした。この結果は金融市場に大きな混乱をもたらしました。歴史に残る一日、円相場と日経平均の激しい値動きをわかりやすくまとめました。
夜明け前 「残留派が勝つだろう」
前日の日経平均株価は小幅に続伸、為替は1ドル=104円から106円台を推移して、取り立てて大きな混乱はありませんでした。イギリス各紙が行った事前の世論調査の結果から、「残留派が僅差で勝利する」との見通しが立っていたためです。残留派議員の射殺事件を受けて、残留派に対する同情が集まっていると見られていました。
QUICK Money Worldのトレンドワード(こちら)には、投票直前までの投資家のツイートが確認できます。「残留」という見方が強いものの、最後まで分からない状況を前に静観している様子がうかがえ、さしずめ嵐の前の静けさといったところです。
AM6:00 イギリス国民投票が終了
日本時間の午前6時、イギリスの国民投票の受付が終了し、開票作業が始まりました。直後にイギリスのスカイニュース社による世論調査が発表され、その内容は残留派が僅差で勝利するものでした。これを受けて、離脱派急先鋒のイギリス国民党党首が「残留派が勝ちそうだ」と語るなど、大方の市場の予想通りの展開となり、円相場も落ち着いた動きを見せていましたが・・・
AM8:00 「離脱派がリード」の想定外
8時ごろからイギリスBBC社によって開票速報が伝わるようになります。しかし、その内容は「離脱派がリード」。これまで伝わってきた内容とは真逆の展開に市場は大きく動揺し、円相場は103円台まで急伸します。
「離脱派が多い地域から結果が報告され、残留派の多い地域は遅れて報告される」という報道もあり、この段階では以前として「残留派が逆転して勝つのでは」との憶測が広がっていました。とはいえ先行きの読めない状況で、円相場は開票速報の結果と連動する荒れた値動きを繰り返します。日経平均株価も取引開始後から大きく乱高下する展開に。BBCのサイトを固唾を飲んで見守っていた関係者も多かったようです。トレンドワード(こちら)では、多くの投資家が開票状況をリアルタイムでツイートしており、関心の高さがうかがえます。
AM11:00 離脱派が勝利へ、円相場は二桁台へ
開票速報では以前として離脱派と残留派が均衡していて、どちらが勝つのか予断を許さない状況が続きます。しかし、11時を過ぎたあたりから、徐々に離脱派がリードを広げていき、雲行きが怪しくなります。そして11時40分頃、為替がこれまで見たことが無いスピードで急騰しました。わずか2分間で103円台から99円台にまで上昇したのです。円相場が100円を割り込んだのは実に2年7か月ぶりの事です。
12時ごろ、ついにBBCが「離脱派の勝利確実」を伝えます。
PM12:30 急落する日経平均株価、先物はサーキットブレーカー発動
離脱派勝利を受けて、日経平均株価は後場の開始直後から大きく値を下げ、1万5000円を割り込みます。大きく値を下げた影響で、日経平均先物が制限値幅に到達、約3年ぶりに「サーキットブレーカー」が発動しました。
一旦は1万5000円を回復したものの、麻生財務大臣は記者会見で「協調介入を申し上げる段階ではない」と釘を刺すなど、介入についての積極的なコメントが聞かれなかったこともあり、ほぼ全銘柄が売られる展開となります。
PM 15:00 歴史的な値下がり
午後15時、日経平均株価は前日比で1426円も下げて1万4952円で取引を終了、値下がり幅は歴代8番目の大きさでした。東証一部の値上がり銘柄はわずかに6銘柄で、これはデータでさかのぼれる1997年以降での過去最少。円相場も、一日の変動幅が7円63銭で、こちらもデータでさかのぼれる2000年以降での最大です。まさに金融史に残る一日となりました。
その後は、イギリス中央銀行のカーニー総裁が「2500億ポンドを共有する準備がある」と述べたこともあり、ひとまずは落ち着きを取り戻しました。
イギリスは、いつEUを離脱するのか?
EU離脱が決定したイギリスですが、この後の展開はどうなるのでしょうか。
まず、EUから即離脱するというわけではありません。EU離脱のため、イギリスは他EU諸国に対してリスボン条約第50条の発動を宣言する必要があります。既に辞任を表明しているキャメロン首相は、その手続を次期首相に委ねる意向を示しており、首相決定まで先延ばしとなる公算が高いです。また、条約を発動しても、正式離脱までには2年間の協議期間が必要となります。
そのため、世界経済にただちに影響することはありません。ただ、「他のEU諸国でも離脱の動きが広がるのでは」との懸念から、市場全体には依然としてリスクオフの傾向が続いており、各国の金融政策の動きに注目が集まっています。
(編集 QUICK Money World)