QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はマレーシアの現地記者、ニック・ゴー(Nick Goh)氏がレポートします。※この記事は2016年5月30日にQUICK端末で配信した記事です。
中銀航空租賃上場…42億香港ドル規模調達予定
足元で香港株が低迷する中、市場では航空機リース会社の中銀航空租賃(BOCアビエーション、コード@2588/HK)のIPO(新規株式公開)が賑わっている。
中銀航空租賃は中国の国有大手銀行である中国銀行(コード@3988/HK)からスピンオフして株式上場する。公開株式数2億800万株の半数が売り出しで、上場株式数全体のうちのわずか7.5%を香港で一般投資家向けに公開する。公募価格は42香港ドルで、売買単位は100株。市場からの資金吸収額は87億4500万香港ドル(1香港ドルは約14円)で、中国銀行の保有株式売却額等を除いた正味の調達資金額42億4600万香港ドルは、全額を航空機の購入に充てる計画だ。中銀航空租賃は中核的な投資家を11社引き入れたと伝わった。中核的な投資家には、中国の政府系ファンドである中国投資(CIC)やシルクロード基金、国開国際投資、中国人寿フランクリン資産管理、聯想控股(レジェンド・ホールディングス、コード@3396/HK)傘下の弘毅投資、オーマン投資基金、米ボーイングが含まれるという。これらの投資家による出資額は5億8300万米ドル(約45億5000万香港ドル)と、資金吸収額全体の52%を占める。中銀航空租賃は6月1日に上場する予定だ。
市場から集めた資金でリース用航空機を調達
中銀航空租賃の歴史は1993年までさかのぼる。この年、シンガポール航空と米国の航空機リース会社ボーリオン・アビエーション・サービスによってシンガポール・エアクラフト・リーシングとして設立された。2006年12月に中国銀行に買収され、同行の完全子会社となった。そして、今年5月、国際公募に向けて株式公開会社に組織変更した。
中銀航空租賃が保有する航空機は昨年12月末時で270機(うち227機が自社所有、43機が管理代行。30カ国の航空会社62社へリース済み)。アジアに本部を置く航空機リース会社としては最大規模、世界でも5番目の規模となる。同社が保有する航空機の平均機齢は3.3年と、航空機リース会社の中で最も低い企業に属する。また、航空機リース契約の平均残期間は7.4年で、業界内で最も長期の契約期間を有する会社のひとつだ。中銀航空租賃は航空機を大量に新規購入することで保有機の規模拡大に取り組み続けている。昨年度末時の発注残は241機(主にA320シリーズやボーイング737シリーズといった、人気が高い単通路機)となっている。2016~20年の期間で毎年平均40機を取得する計算になる。これらの今後取得する航空機のうち74機については既にリースが確定している。
中銀航空租賃は、融資、債券市場、米輸出入銀行や欧州輸出信用機関からの有担保融資といった幅広い資金調達ルートを活用することで、競争力のある資金調達コストを維持している。同社の15年の平均資金調達コストはわずか2%と、航空機リース会社としては最も低い企業に属していた。また、同社の支配株主である中国銀行から20億米ドルの無担保融資枠(期限は22年4月)を取り付けている。
22年間連続で黒字…リース需要も拡大か
業績面では、同社は過去22年間連続で収益が黒字となっている。会社設立から15年までの累積利益は約21億米ドルに達した。15年12月期通期の売上高は10億9000万米ドルで、前の期に比べ10.3%増だった。純利益は同11.4%増の3億4300万米ドル。株主資本利益率(ROE)は15.1%、総資産利益率は2.9%だった。
世界の航空業は長期的に成長を遂げている業界だ。中でも旅客需要は1990年以降、毎年平均5.1%の成長率で伸び続けている。航空機も世界的に長期間にわたり増加傾向にあり、24年までに3万機超に達する見通しだ。リース方式は航空機ファイナンスに置き換わる形式として、航空会社に航空機の所有権や運営面でより多くのメリットを提供する。このため、航空会社は今後、航空機ファイナンス方式よりもリース方式を多く利用するようになることが予測される。これにより航空機リース業の成長が続き、中銀航空租賃に引き続き恩恵をもたらす見込みだ。