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トランプ氏人気が写し出す米国の現状

記事公開日 2016/3/17 17:59 最終更新日 2018/8/8 16:59 経済・ビジネス コラム・インタビュー 金融コラム

米国の大統領選挙では、トランプ氏の躍進が止まりません。いま、米国では何が起こっているのか。トレンドワードで過去に何度もキーワードとして登場しているトランプ氏。氏に関する議論を追いかけることで、探っていきたいと思います。

まず、前提知識として参考となるのは、以下の二つの記事でしょう。米国の現代政治史のおさらいにもなる記事ですが、要点のみを引用します。

①ニューズウィーク日本版:「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる – モーリー・ロバートソン 点と線

この支持者たちは誰なのか?なぜ溜飲を下げているのか? 表面的な「トランプ現象」から、より地面の奥にあるレイヤーに向かって掘削していくと、あまり見たことのない地層に突き当たる。裸のアメリカと呼んでもいい。そのむき出しのアメリカを理解する上で鍵となる人物がいる。1968年の大統領選に独立系候補として出馬したアラバマ州知事、ジョージ・ウォレス氏だ。

(中略)

さて、現在のアメリカはどうか?1960年代とは環境が一変している。学歴が低い白人男性の視点から現在の政治地図を見ると、あまりにハンデがうず高く積み上げられている。白人の人口が圧倒的多数ではなくなり、政治は非白人の有権者に媚びるようになった。男女平等で男性の特権が無化し、伝統的な「男らしさ」を軽々しく口にすればセクハラとみなされる。LGBTライツの考え方が浸透し、キリスト教的な価値観が都市部では風化していく。加えてユダヤ教、イスラム、ヒンドゥーなどの信仰にも配慮せねばならず、クリスマスのデコレーションを取りやめにするデパートも続出。肩身が狭い。

 そこに経済的なダメージも追加される。グローバル経済の浸透により、雇用が中国をはじめとした新興国へと流出。かつての工業地帯は再起不能だ。中産階級が没落し、国内の格差が拡大する。グローバル経済の中では学歴の格差が前の世代よりも拡大する。

 愛国心も打撃を受ける。アメリカの外交が複雑化したため「アメリカが一番」といった価値観が成り立たない。アメリカはもう世界の覇者ではなく、二流国へと滑り落ちていくようだ。経済的な立場が弱くなり、夢も見られず、自尊心が失墜した白人男性は最後にブチ切れる。そのブチ切れにトランプが正面から応えてくれる。「怒ってもいいんだ」と。

(中略)

トランプの扇動はウォレスの手法を何段階も進化させたものだ。多様化とグローバリズムを嫌う白人男性たちの「本音」に言葉を与え、感動をもたらしている。

②ウォール・ストリート・ジャーナル:米大統領選に向けた戦い、大きな影響残した1968年に酷似

68年は、ベトナム戦争や人種問題の緊張により、現在と同じような反体制の雰囲気が高まっていた。当時の公民権運動は、現在の移民政策のように社会を分裂させる問題だった。

(中略)

 ポピュリスト候補は自党のみならず、相手の政党の大物を脅かした。国内で起きている変化に不満を持つ人間の怒りに訴え、さらにそれをかき立てた候補だ。候補者の主張は支持者からすればまごうことない真実であり、反対派からみれば単なるデマゴーグとしか思えないものだ。

 このポピュリスト候補は68年がアラバマ州のジョージ・ウォレス知事(当時)であり、今回は不動産王のトランプ氏だ。2人は生い立ちや階級こそ異なるものの、指導者階級に無礼な(露骨と言う人もいそうだ)攻撃を行う点で共通している。ウォレス氏は、インテリやジャーナリストを「頭でっかち」と呼んだ。トランプ氏は、米国が「間抜け」で「弱虫」のリーダーらのせいで弱体化している、と批判する。

 ウォレス氏は公民権運動による恐怖心と怒りを利用したが、トランプ氏はちょうど同じように不法移民による恐怖と怒りを利用している。ウォレス氏のスローガンは「アメリカのために立ち上がれ」だったが、トランプ氏のそれは「アメリカを再び偉大に」だ。

今回、トランプ氏を支持しているのは単純に「共和党」とは言えず、世界の経済・政治状況の変化のなかで自尊心が薄れている「白人男性」ではないか、ということです。彼らの指導者階級への不満と未来に向けた鬱屈感を拾い上げているのが、ポピュリスト候補としてのトランプ氏という格好です。

自動車産業都市として知られるデトロイトでも、雇用につながらない大企業の業績回復に対する憤り、その結果としてのトランプ氏支持という現象が起こっています。工場、すなわち雇用が海外へ流出していることがその背景にあります。

それでも不満の声が出る理由は、経営破綻を期に自動車大手が手掛けたコスト削減が大きい。GMは、07年に米新車市場規模で1600万台だった損益分岐点を1100万台にまで落とした。固定費を減らし利益率重視のスリムな体質にした結果、働き手をたくさん雇わなくても車を量産できるようになった。

雇用が増えない状況はデータ面でもはっきりしている。05年に90万人を超えていたデトロイト地域の労働力人口は10年には80万人を割り込んだ。13年以降は75万人前後での推移している。フォードがメキシコ工場の増産を検討したり、GMが中国工場製の車を米国に輸入しようとしたり、いまの自動車メーカーの成長戦略は地元雇用とはなかなか結びつかない。

(出典:自動車王国デトロイトに見る「トランプ推し」

共和党もトランプ氏の躍進は、誤算だったのではないでしょうか。実際、在米30年のバンクアナリストという@TrinityNYC さんは、以下のように呟いてきました。

と指摘しています。5つの州で予備選挙が行われた3月15日のあとにも、以下のように共和党の誤算について語っています。

希望と多様性という価値観の元で大きな発展を実現してきたアメリカですが、その一方で肩身の狭くなった「保守的な白人男性」が存在してきました。彼らの不安はトランプ氏の支持として、今回噴出していると見ることができます。

まさにアメリカは「希望と多様性か、逃避と分断か。アメリカでは二つの相容れない世界観が競合している」のでしょう(ニューズウィーク日本版:「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる – モーリー・ロバートソン 点と線

大げさに言ってしまうと、今回の選挙は「アメリカ」とは何か、「アメリカが国民として守るべきは誰か」を問う選挙になるかもしれません。結果しだいでは、日米関係や、経済情勢に大きな影響を与えるかもしれません。

トランプ氏については、こちらのレポートで、市場への影響を探っていますので、合わせてお読みください。


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