「困った時の内需・ディフェンシブ株」選好極まれり、といったところか。25日の東京株式市場で上昇した銘柄を見ていくと、電鉄や陸運、小売り・消費など、内需株の中でも、より国内での需要が多い好業績銘柄ばかりが目立つ。中止となった6月の米朝首脳会談は実施に向けて交渉が継続するとされるが、米トランプ大統領が自動車や自動車部品に追加関税を掛ける方針を明らかにし、米保護主義に対する懸念も改めて意識された。
国内外の政治・経済情勢が混迷すると資金を避難させる意味で買われる内需・ディフェンシブ株だが、いわゆる「純ドメスティック」的な銘柄ばかりが上昇する状況は、先行きの投資判断がつきづらい資金の気迷いを現している。
25日の東京株式市場で、日経平均株価は前日終値比13円78銭高の2万2450円79銭で取引を終えた。トランプ米大統領が、6月12日に予定されていた米朝首脳会談の中止を表明したことを嫌気した売りが朝方出たものの、午前に外国為替市場で円相場が円安・ドル高方向に傾き始めると、東京株式市場でも徐々に買いが優勢となった。
とはいえ、資金が再び向かった先は化粧品や食料品、鉄道などの景気動向に業績が左右されづらいとされる内需・ディフェンシブ株。そのなかでも国内事業の比率が高く好業績が続く銘柄だ。ヤマトHDやJR東海のほか、今期も最高益見通しのセブン&アイが年初来高値を上回った。JR東日本やJR西日本も1%を超す上昇。ヤーマンなど一部のインバウンド(訪日外国人)・消費関連銘柄にも買いが続いた。
「避難壕(ごう)に入る」的に買われることが「防御=ディフェンシブ」と言われるゆえんだ。ここ最近は米中貿易摩擦問題や中東、北朝鮮情勢など外部環境に不透明感が出るたびに資金が流入し、足元では割高感も出ているという。例えば、ヤマトHDのPER(株価収益率)は34倍台と日経平均採用銘柄の13倍台をはるかに上回る。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は「消去法的に内需・ディフェンシブ銘柄に資金が入っているだけに過ぎなく、上昇は継続しない」との見方を示す。
足元の市場をみると、企業決算発表など目立つ取引材料は見当たらない。大和証券の壁谷洋和チーフグローバルストラテジストは「国内では取引を活発化させる材料に乏しい。今後も米朝問題などに関する外部発の材料が飛び出すたび、相場では同様の動きが繰り返される」と指摘する。日本株市場で大きなウエートを占める自動車や自動車部品などの自動車関連株が米関税問題で手掛けづらい状況では、相場全体が上昇局面に入る力は弱そうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 黒瀬泰斗】
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