「決算サプライズメーター」は、企業が業績を上方修正した際、市場の期待を上回れば上回るほど、サプライズレシオのプラスの値が大きくなります。下方修正でも、市場の予想よりも数値が悪化しなければプラスとなります。一方、下方修正幅が市場の予想値を超える規模であれば、レシオのマイナスが大きくなります。上方修正でも、期待に届かなければマイナスとなります。
伸び目立つインバウンド需要
直近1週間の対象銘柄59件(2月15日時点)に関する決算サプライズメーターを見ると、西武ホールディングスのサプライズレシオが+145.82となりました。2016年3月期の最終利益予想について、従来の365億円の予想から487億円に上方修正しましたが、上方修正幅が市場予想(375億円)を大きく上回ったことを示しています。
同社は鉄道をはじめとする公共交通機関の雄として知られていますが、同時にプリンスブランドによるホテル事業も展開しています。訪日外国人客の増加などを追い風に、ホテルの稼働率が上昇したことが、業績の拡大要因になりました。最終利益部分では特別利益の影響もありましたが、インバウンド需要の取り込みに成功したと考えて良いでしょう。
「中国の景気減速でインバウンド客の減少が懸念される」などと言われたのは、昨年の夏くらいだったでしょうか。
実際に出てきた業績を見ると、2015年のインバウンド需要は堅調だったことが分かります。日本政府観光局の統計、「訪日外客数の動向」を見てみましょう。2015年のデータは推計値ですが、これまでの推移は添付した図版のようになります。2003年からの統計で、過去最高を更新する予定です。ちなみに2014年の訪日外客数の総数は1341万3467人であるのに対し、2015年の総数(推計値)は1973万7400人ですから、前年比で47.1%も増えることになります。
株式市場でインバウンドが注目テーマになったのは、2014年の秋口くらいからのこと。同年10月に、免税対象品目が全品目に拡大されたことを機に、訪日外国人客による日本国内での消費、いわゆる「インバウンド消費」が注目されるようになり、インバウンド関連銘柄が一躍、脚光を浴びるようになりました。インバウンド関連は、非常に幅広いセクターを含んでいます。鉄道や航空会社などの運輸関係、ホテルなどの宿泊関係は定番ですが、この他にもレストランチェーン、小売関係などへも対象は広がっていきます。
西武HDをはじめ、インバウンド関連銘柄の今後の注目点は、今後、つまり2016年以降の訪日外国人客の動向がどうなるかでしょう。減少に転じないまでも、伸び率が鈍るようだと、株式市場は中国景気の悪影響を懸念し始めるかもしれません。
市場期待に未達の企業相次ぐ
一方、住友ゴムは今回、2016年12月期通期の業績予想を新規に発表。アナリストの大部分が最終利益について、前期比50億円減の505億円を見込んでいましたが、会社は570億円と増益予想を発表。その結果、サプライズレシオの数値は、業績が大幅な上方修正となった西武HDよりも高い、+185.73になりました。
ただ気になるのは、市場の期待に比べて、想定以上に業績が伸びなかった企業が多く見られることです。ヤマハ発動機のサプライズレシオは-231.8。業績は会社予想並みではありましたが、市場予想が高かった分、実際に出てきた業績は、逆に市場の期待を裏切るものになりました。他、第一生命の-152.32、T&Dホールディングスの-106.38が、会社予想通りの業績だったものの、市場予想よりも悪かったことでサプライズレシオが大幅マイナスに。また、三菱マテリアルやバンダイナムコホールディングス、太平洋セメントなどは、業績が市場予想を大きく下回っただけでなく、実際の業績も下方修正されました。
注視される為替動向
2015年10~12月期決算は、特に3月決算企業にとって、業績の上方修正・下方修正が明確に見えてくるだけに、投資家も注目しています。今決算に関して言えば、一瞬とはいえ1ドル=110円台に入った為替レートが気になるところです。日本企業の想定為替レートは、2月15日発表のQUICK月次調査(外為)によると、平均値で1ドル=117円38銭です。今の為替レートだと、多くの企業は決算時に為替差損を考慮しなければならなくなり、業績面でネガティブな要因になります。当然、株価にも影響が及ぶだけに、今後の為替レートの動向は注視したいところです。