14日の東京外国為替市場で円相場は急伸し、一時は1ドル=106円84銭近辺と米大統領選直後の2016年11月14日以来、1年3カ月ぶりの高値を付けた。前日13日の米株価が上昇したにもかかわらず14日の日経平均株価が一時大きく下げ、「きょうは動かない」とたかをくくっていた為替関係者の驚きを誘った。海外投機筋を中心にリスク回避の円買いが改めて進んだ。
「日銀の黒田東彦総裁が再任されると前週末に伝わり、海外勢の間に緩和縮小の思惑が再び強まった」。FXプライムbyGMOの高野保統チーフ・ストラテジストは日本株安・円高に歯止めがかからない理由について、そう解説する。
黒田氏は昨年秋以降、過度の金利低下が金融仲介機能の低下を通じて緩和効果を反転させる可能性に触れたり、物価上昇の兆候があると述べたりした。さらに日銀は1月9日、唐突に超長期債の買い入れ額を減らした。高野氏は「海外勢にとって、黒田体制は緩和策からの『出口』を目指し続けていると映っているのではないか」と深読みしていた。
欧米やアジアには、日本の積極緩和策の長期化を前提に根雪のように積みあがった円の売り持ちがある。ただでさえ相場が荒れてリスクをとれなくなっているところに日銀緩和の前提が崩れれば、持ち高整理の機運は高まらざるをえない。
米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週まとめているシカゴ先物市場の建玉報告によると、投機筋をあらわす「非商業部門」の円の売越額は円高進行時にもあまり縮まらず、6日時点でも11万2876枚と10万枚の大台を超えていた。市場では「新たにユーロや英ポンドを対ドルで買い、対ユーロや対ポンドで円売りの『合成ポジション』を作るなどしてどうにか円の売り持ちをキープしようとしている」(外国証券東京拠点の為替ディーラー)との指摘が多い。反動のエネルギーは相当たまっていると受け取れる。
円が昨年9月に付けた17年通年の高値である1ドル=107円32銭を上回ったことで、チャート分析上は16年11月高値の101円19銭近辺まで節目らしい節目がなくなった。あえていえば区切りのよい105円ちょうど前後になる。円の上値余地の大きさが意識される状況だ。
【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】
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