12日の米国市場で米10年債利回りは一時2.9%近くまで上昇する軟調な展開。売り一巡後は2.8%台前半まで買い戻されたが、後半にかけて2.8%台半ばに上昇している。NYダウは一時570ドルを超す上昇となるなど、堅調な展開。米金利上昇が株安をもたらす動きとはならず、景気の強さや株高を背景に金利が上昇する素直な動きだ。
次の節目となる3%を目指す展開になったときの株価の反応は気になるところだが、恐怖指数のVIXも一時は24.42まで低下しており(直近高値は今月5日の37.32)、マーケットは落ち着きを取り戻しているようだ。
原油価格の上昇基調に一服感が出ている。今月上旬に66ドル台まで上昇していたWTIは9日に一時58.07ドルまで下落し、約1カ月半ぶりの安値を付けた。ロシアやOPEC加盟国は減産を続けているものの、米国のシェール・オイルの増産観測の高まりが上値を抑えている模様。
原油価格は物価にストレートに効く。今月2日の米雇用統計を受け2.1%台半ばまで上昇していた米BEIも2%台前半2.1%を割り込んでいる。米金利急騰のきっかけになった賃金伸び率は特殊要因と言われており、次回雇用統計では賃金上昇からのインフレ懸念は後退するとの見方もある。今週14日に発表される米CPIで、インフレ加速がみられなければ、インフレ懸念を背景とした金利上昇圧力には一服感がでるかもしれない。
※QUICK FactSet Workstationより
「黒田総裁続投」は、市場でも本命視されており、サプライズはない。これまで通りの緩和スタンスが継続されることになろう。金利操作目標の変更など、緩和策の微修正はいずれ行われるかもしれない。ただ、足元の様に、為替が110円を割った状況ではマーケットに刺激を与えにくい。先月9日の輪番減額をきっかけとした円高や今月2日の指値オペの記憶が新しいうちは、「ステルス・テーパリング」も「ステルス利上げ」もないだろう。金利の上昇余地は乏しく、基本的には横ばい。ボラティリティの低下は金利低下(フラット化)要因であり、動くとすれば低下方向であろう。
(QUICKデリバティブズコメント)
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