2日の東京外国為替市場で円相場は底堅さが目立った。日銀が2日、固定利回り方式で国債を無制限に買い入れる指し値オペ(公開市場操作)を実施し、金利を抑える姿勢をはっきり示したが、外為市場では「好調な世界経済と欧米国債の利回り上昇がいずれ日本の量的緩和縮小を促す」との観測が消えなかったようだ。
日銀が10時10分に指し値オペを通知すると、過去の経験則に基づいて動くコンピューター経由の「アルゴリズム投資家」は早速円売りで反応した。だが、国内外ともに追随する動きは限られ、日経平均株価が下げ幅を広げたこともあって円は1ドル=109円台前半まで持ち直す場面もみられた。
2日の指し値オペは新発10年物国債349回債を0.110%で無制限に買うというもので、オペ通知前の市場実勢である0.095%よりも高く(価格は安く)、オペ参加者が応じられる水準ではなかった。実際に応札はなし。オペの実務を担う日銀の金融市場局は日経QUICKニュース社の取材に対し「長期金利がこのところ大きく上昇していることを踏まえ、10年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする『金融市場調節方針』をしっかりと実現するよう実施した」と説明したが、外為市場は額面通りには受け止めていない。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「円売り・ドル買いはコンピュータープログラムの条件反射にとどまる」と冷ややかに話す。米長期金利には日本時間2日午前の時間外取引でも上昇圧力がかかっており、確かに「空砲」指し値オペの効果が続くかは微妙だ。大和証券の亀岡裕次チーフ為替アナリストも「日銀の金融緩和策が今後も持続されるとの確信が持てないうちは円売り・ドル買いは進みにくいのではないか」とみている。
そんな中、市場は日本時間の今晩に明らかになる1月の米雇用統計に目を向けている。三菱東京UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「1月の米雇用統計では、賃金の伸び率が好景気を映して高水準となり、市場予想を上回る可能性が十分にある」と指摘する。原油高を受けて全般にインフレ圧力が高まっていることも影響し、米国の利上げペースが速まるとの観測につながりかねない情勢だ。米金利にはさらなる上昇圧力がかかるかもしれない。
ユーロ圏では相変わらず、量的緩和政策の早期縮小観測からドイツ国債などの利回りが高くなっている。国際分散運用を手掛ける投資家は債券比率を一定に保つため、欧米債券安が進めば機械的に日本国債にも売りを出す。日銀はどこまで本気で金利を抑える構えを見せられるのか。外為市場は引き続き注視している。
【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】
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